豪雨被災の酒蔵を手助けしたい 「日本酒界のカリスマ」が試飲会をプロデュースしたワケ

2019年3月15日 15:00
盛川酒造「白鴻」酒粕ペーストマカロン(画像提供:「HASHIWATASHI プロジェクト」事務局、以下同)
盛川酒造「白鴻」酒粕ペーストマカロン(画像提供:「HASHIWATASHI プロジェクト」事務局、以下同)

さて、いきなり問題です。

「日本の三大酒処として名高いのは、灘、伏見、もう一つは......?」

答えは、広島県の西条、現在の東広島市である。酒都(西条酒)とも呼ばれ、吟醸酒発祥の地(安芸津の酒)としても知られる、日本有数の日本酒の産地だ。東広島市に隣接する広島市、竹原市、呉市、三次市、三原市にも多くの酒蔵があり、古くから伝承する個性的な味を競い合っている。広島は知る人ぞ知る名酒の地なのだ。

この広島の酒蔵33蔵が集まり、77種類の銘柄が試飲できるイベント「がんばろう広島酒蔵の会」が、2019年3月9日、東京・青山スパイラルホールで開催された。当日は、約250人の日本酒愛好家が参加し、賑わったという。いったいどんな試飲会だったのだろう?

ピタッと合う感動のペアリングとは?

マリアージュを目指すイベント会場で
マリアージュを目指すイベント会場で

この試飲会のプロデューサーは千葉麻里絵さん。新宿の「日本酒スタンド?(もと)」店長を経て、2016年、恵比寿に「GEM by moto」をオープンさせた。日本酒に関する愛情と深い知識などから「日本酒界のカリスマ」と呼ばれている。

試飲会のテーマは、「広島の日本酒とのマリアージュ」。千葉さんは次のようにコメントした。

「広島の日本酒は、味わいの余韻が長く続くのが特長です。広島の日本酒の個性を知っていただくために、大きく4 つのタイプに分けました。タイプが違えば合わせるおつまみも変わります。A からD の順で飲んでいただくのはおすすめです。まずはそのまま、次におつまみと合わせて、ピタッと合う感動のペアリングを体感してください」

広島の日本酒とおつまみセット一例
広島の日本酒とおつまみセット一例

上の写真のように、4 つのタイプに分けられた日本酒には、それぞれのタイプに合うおつまみが用意されている。広島の日本酒とのマリアージュを楽しんでもらおうという趣向だ。

例えば、A タイプの「果実や花のような香りで、華やかだけどスッキリ系」のお酒としては、「雨後の月 純米大吟醸」(相原酒造)、「於多福 純米大吟醸初しぼり 復興1号」(柄酒造)など6銘柄が出品され、おつまみに「アボカドの西京漬け/苺と春菊の白あえ」が添えられている。そして、こんな説明が付けられている。

「苺やパイナップルのような強い甘味を感じる香りがありつつ、味はすっきり。乾杯のお酒になりがちだが、これは、ザ・食中酒。香りの成分と、オリーブオイルやアボカドがもつ脂肪酸が共通項となりピタッと合う。白あえには春菊の苦みで苺の甘味がさらに立って乳酸感のあるおいしさに」

A タイプのお酒に合うおつまみが並べられていた
A タイプのお酒に合うおつまみが並べられていた

またB タイプの「洗練された穏やかな香りで、バランスのよい食中酒系」には、「富久長純米吟醸 八反草720」(今田酒造本店)や「旭鳳 純米吟醸 泰平」(旭鳳酒造)など7銘柄が出品された。おつまみは「魚のフリット タルタルソース/ポテトサラダ 塩昆布」だった。

Cタイプ「円熟した甘味とコクがある、味わいしみじみ系」は、「賀茂泉 純米吟醸 朱泉本仕込」(賀茂泉酒造)や「菱正宗 栄助 純米吟醸」(久保田酒造)など10銘柄。「八角香る牛肉まん 燻製ナッツ/セロリのココナッツおひたし」が添えられた。

Dタイプは「味が重層的で、複雑味が広がるしっかり系」の酒で、「賀茂鶴 特別本醸造 超特撰特等酒」(賀茂鶴酒造)、「亀齢 辛口純米 八拾」(亀齢酒造)など10銘柄が出品され、「蕗と羊チーズのマカロニサラダ/いちじくがっこチーズ」が付けられた。

広島の日本酒とおつまみセット一例
広島の日本酒とおつまみセット一例

広島の日本酒の特徴というと、軟水から日本酒を仕込む技術が発展したため、大変口どけがやわらかく、とても飲みやすいと言われている。お酒をあまり飲まない人でも、料理を食べながら味わう食中酒として、非常に適しているというのが定説だ。用意されたおつまみと、出品されたお酒のペアリングを試し、確認し、発見するというイベントは、大いに盛り上がったようだ。

イベントに参加した広島県の蔵元たち
イベントに参加した広島県の蔵元たち

実はこの試飲会は、「広島日本酒販路拡大プロジェクト」の一環だ。「がんばろう広島酒蔵の会」というタイトルが付けられている。2018年7月の豪雨によって大きな被害を受けた酒蔵を支援しようという「HASHIWATASHI プロジェクト」が行ったものだ。

広島県内の酒蔵は、豪雨により出荷停止や飲食店の客数減など、大きな被害を受けた。呉市の「盛川酒造」は、床上浸水で出荷前の酒瓶約1000 ケースが泥に浸かった。竹原市の「藤井酒造」は、機械類やポンプが水没し、約6000 本を廃棄処分した。また、安芸津町の「柄酒造」は、床上浸水で大規模な修繕が必要な状態となった。

柄酒造「於多福」純米ティーカクテル
柄酒造「於多福」純米ティーカクテル

18年秋、少しずつ再建が始まった。今年に入って、ようやく酒づくりを再開した蔵もある。今回のイベント「がんばろう広島酒蔵の会」には、大きな被害を被った盛川酒造、藤井酒造、柄酒造も参加し、特製スイーツやスペシャルドリンクも提供された。広島の日本酒の新たな船出、限りない可能性が感じられるイベントとなった。

藤井酒造「龍勢」活濁カクテル
藤井酒造「龍勢」活濁カクテル

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