愛工大名電(堂上)が同点打を打った接戦は、中京大中京のサヨナラ打と東邦の敗戦投手で幕を閉じた。被打率1割4分9厘でマウンドに上がった藤嶋が、打率8分3厘で打席に入った堂林に痛打される。数字は勝率を上げる助けにはなるが、勝利そのものは運んでこないのだ。
野球は2死から。古くから伝わる格言だ。そこには「最後まであきらめるな」というスピリッツだけでなく、粘りの攻撃こそが本当のチーム力を養うという考えがある。
5回の失点は、2死から高橋の失策(邪飛落球)をきっかけにピンチを招き、松山に打たれた。直後の攻撃でも2死から連打と四球で満塁とし、代打・堂上が右前に同点打を落とした。その後も「2死の攻防」は互いに続き、中日は7、8回と満塁を耐えたが、7回は二、三塁でビシエドが倒れ、8回も一、二塁を代打・亀沢で攻めきれなかった。
「東京ドームで勝った試合あたりから、チームの粘りが出てきたんじゃないかな」
与田監督が振り返るのは5日の巨人戦だ。2点をリードされた8回に、巨人の勝利の方程式を打ち崩した。2死一、三塁から、代打・石垣、福田の連続二塁打で一気に3点を奪い、逆転勝ちした。11日の今季マツダ初勝利もそうだった。5回の2死二塁から安打、四球、安打で2点差を追いついたところから延長戦に持ち込めた。
9月の10試合(7勝3敗)のアウトカウント別の得失点を調べた。42得点のうち2死からあげたのは16点。逆に29点のうち11点が2死からの失点だ。打つ側にとっては併殺だ、進塁打だと考えなくていい代わりに、自分がやらねば後がない。守る側から見れば攻守交代まであと一息。どちらも書くのは簡単だが、やるのは難しいからチーム力であり、粘りの指数なのだろう。
そのときのスコアにもよるが、得点圏打率や表面のデータだけでは測れぬ強さは、与田野球が求めているものだ。試合には敗れたが「2死の攻防」の光は、少しずつ見えている。