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失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~ 作者:進行諸島

第二章

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第162話 最強賢者、再利用する

『ルリイ、妨害の調子はどうだ?』


『今のところ、向こうの動きをちゃんと止められてる……と思います! マティ君はどうですか?』


『今31層にいるが、下に降りるルートがない。恐らく龍脈に細工をして、そういう内部構造にしたんだろうな。今の人間の魔法技術なら、31層をふさがれると手が出ないし』


そう言って俺は、壁の魔力を調べる。

……この感じからすると、恐らく迷宮の内部がいじられたのは、数時間前だな。

準備の方は、けっこう前から進められていた気がするが。


『迷宮の床って、壊せないんですよね? 私が龍脈に干渉して、道を作ればいいんですか?』


迷宮の壁を破壊するのは簡単だが、床を破壊して階層を移動するのは、意外と難しい。

というのも、迷宮の床は表面こそイリスが踏み抜いてしまう程度の硬さだが、ある点を過ぎると急に硬くなって、それ以上は掘れなくなってしまうのだ。


第一層の床であっても、ミスリル程度では歯が立たない硬度。

さらに、階層が深くなるほど、その硬さは増していく。

この階層だと……恐らく、ダイヤモンドとかを持ってきても、削ることは不可能だろう。


――だが。


『いや、今回はこっちで対処する。ルリイは妨害を続けてくれ』


確かにルリイの言った通り、そういうことを可能にする魔法はある。

だが、今のルリイには、この短時間でその処理を終えるのは荷が重い。


魔族への妨害をあきらめて作業に集中したとしても、3日はかかるだろうな。

……なので、壊すしかない。


『こっちで対処……もしかして、床を壊すってことですか!? 無理なはずなんじゃ!?』


『壁よりは難しいってだけで、不可能って訳じゃない。龍の姿になったイリスの10倍くらい力があれば、力ずくでも壊せるさ』


『それって、無理ってことですよね!?』


まあ、龍の姿になったイリスの10倍の力を出すのは、今の俺じゃ無理だな。

だがそれだけの力が必要なのは、力ずくで壊す場合の話だ。


『一応、迷宮の床を壊すのにもコツがあってな。1秒に200回くらい魔法を展開できれば、壊せなくもないんだ』


まず俺は『掘削』の魔法を発動する。

これは普通に、ドリルのように地面を削り取って穴を開ける魔法だ。


『掘削』の魔法は最初、順調に迷宮の床を掘り進んだが、数メートル掘ったところで急に止まり、そこから1ミリも進まなくなった。

ここが、迷宮の床の本体という訳だ。


『1秒に200回!?』


通信魔法から、アルマの声が聞こえた。


『ああ。共振って現象があってな。爆発が起こったりすると、ちょっとだけ地面が揺れるだろ? その揺れにタイミングを合わせて魔法を連射すると、普通壊せないものが壊せたりするんだ』


『いや……もしそうだとしても、1秒に200回って、いくらマティ君でも無理だよね!? ほとんど同時に魔法を発動してるようなもんじゃん!』


確かに、まともなやり方でその数を展開するくらいなら、力押しの方が早い。

だが、同じ魔法を何回も展開するだけなら、実は裏技がある。


『何種類もの魔法を混ぜるなら、確かに無理なんだけどな……』


そう言って俺は、圧力魔法を起動する。

圧力魔法は、地面をわずかに揺らし、その役目を終えて消滅しようとする。


その圧力魔法に――俺は、追加の魔力を突っ込み、無理やり魔法を建て直した。

――これが、その裏技。魔法の再利用だ。


当然、普通の使い方ではないので魔力の制御力がかなり問われることになるが、ごく短時間の魔力操作だけで魔法を発動できるので、魔法の発動ペースは跳ね上がる。


……とはいえ、失格紋以外の紋章だと、失格紋の次に早い小魔紋でも1秒に130回くらいが限界なのだが。

もともと近接戦闘と遠距離攻撃では、戦闘のスピードが違うからな。

他の紋章は、高速で魔法を発動するようにはできていないのだ。


そんなことを考えながら、俺は魔力を供給するペースを上げていく。

地面を揺らす振動が、段々と大きくなり――数秒後に、迷宮の床が崩落した。


「……まあ、31層ならこんなもんか」


俺は魔法で崩落から身を守りながら瓦礫の山から抜け出し、近くの壁に触ってルリイとの通信をつなぎ直す。


『マティ君! 龍脈の反応が、急に変わりました!』


『ああ。それは階層を崩したからだな。迷宮の床は魔力の通り道でもあるから、壊すと龍脈にも影響が出るんだ』


そう言って俺は、周囲の魔力反応を探る。


……近いな。

恐らく魔族がいるのは、この2つ下の階層だろう。


『魔族のいる階層が近い。こっちの龍脈に干渉する準備もしておいてくれ!』


『分かりました!』


今の崩落音で、向こうにもこっちの動きはバレただろうから、いつ戦闘が起きてもおかしくはない。


しかも、龍脈を操作して階層をふさげるとなると、それなりの力を持った魔族だ。

久しぶりに、まともな戦闘になりそうだな。

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