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失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~ 作者:進行諸島

第二章

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第158話 最強賢者、結界を守る

「……さて、やるか。3人とも、耳をふさいでくれ」


そう言って俺は、さっき組んだ魔法に口をあてる。


「耳……ですか?」


「よく分からないけど、分かった」


3人がしっかりと耳をふさいだのを確認して、俺はもう一つの魔法を起動し、魔法に向かって言った。


『迷宮都市の住民諸君!』


すると、その声が何千倍にも拡声され、周囲に響き渡った。

この大きさであれば、街にいる全員に声が届くだろう。

そして……この魔法の特徴は、もう一つある。


「うわっ! なんて大きさの声!」


「この声……もしかして、マティ君ですか?」


「聞いたことない声ですけど……」


そう。

声色が変えられているのだ。


それも、前世で合った国王やら大魔法使いやらを元に合成した、威厳のある声に。

変声魔法なんて、普段では変装くらいにしか使えない魔法だが……場面によっては、これも大きな効果をもたらすのだ。


俺はそこでいったん言葉を切って、聴覚強化の魔法を起動して、町中の反応を見る。


「なんだなんだ?」


「もしかして、救援か?」


「でも、こんな声は聞いたことが……」


うん。予想通りの反応だな。

そんなことを考えながら、俺は展開した魔法に、次の言葉を言う。


『たった今、迷宮都市の東側に、防護結界を起動した! 絶対というほどではないが、町の外壁よりは頑丈だ! 自分で身を守れない者、それと結界の守護に協力してくれる者は、街の東端にある、結界の元まで来てくれ!』


俺の魔法は、その言葉を、迷宮都市の隅々にまで響き渡らせた。

平時であれば、こんな得体の知れない奴の言葉なんて、誰も信じないだろう。


しかし……今は街が魔物に襲われて、パニックに陥っている状況だ。

さらに、こういう時に指揮を執るべき領主は反逆の罪で拘束されており、指示を出す人間は誰もいない。

こういう時に、派手な結界(に見せかけた、ただの装飾魔法)と、町中に響き渡る威厳ある声などが合わさると……。


「あっちに行けば、助かるのか!」


「誰だか知らないが、あれだけ大きい結界を展開できるんだ! 超高レベルな魔法使いのはずだぞ!」


「助かる! 助かるぞ!」


こんな感じになる。

一部、魔法の不自然さに気付いている人もいるみたいだが、多勢に無勢だ。

行き場を求めた住民たちは、俺が張った結界の元へと集まり、その住民を守るべく、冒険者たちも集まってくる。


結果……。


「……思ったより、集まったな」


住民のほとんどが、俺達の張った結界の元へと集まっていた。

街の入り口には、魔物の侵入を防ぐための冒険者が残っているようだが……魔物は人数が少ない場所に向かわないので、そっちの守りも大丈夫そうだな。


「ここ、本当に安全なのか!?」


どうやら、ちょっと疑われているみたいだ。

魔物が集まるまでには少しだけ時間がかかるので……ちょっとだけ時間を稼いでおくか。


『……イリス、ちょっと姿を隠すから、結界に向かって岩でも投げてくれ』


今度は、拡声魔法ではなく通信魔法を使って、イリスへと呼びかける。


「分かりました!」


イリスは、すぐに意図を察してくれたようだ。

そして、地面を適当に砕いて、ちょうどいい大きさの岩を切り出し――待て、ちょっと大きすぎないか?


『なあ、結界の性能を見せるだけなんだから、もうちょっと小さいのでも……』


『そぉい!』


聞いていなかった。

こうして投げられた巨大な岩は、猛然と結界(に見せかけた、ただの飾り)に向かって飛んでいく。


……まあ、何とかなるか。

失格紋の魔法は近接戦闘向けだけあって、短時間でコントロールを効かせやすいし。

そんなことを考えながら、俺は急いで自分の姿を隠し、岩へと近付く。


それから、岩の弱点に向けて、攻撃魔法を発動した。

ついでに適当な電気系の魔法を起動して、結界で守っているっぽい雰囲気を醸し出しておく。


岩が予想外に大きかったこともあって、かなり広範囲に破片が散る形になってしまったが……まあ、見た目は派手になったな。

反応は……


「すげえ! あんな巨大な岩を跳ね返したぞ!」


「あの岩、どっから飛んできた!?」


「魔物の攻撃じゃないか? にしても、凄まじい結界魔法だな……」


うん。いい感じの反応だな。

今まで、結界から少し離れた場所にいた人たちも、ちゃんと結界に入ってくれたようだ。

そうして、釣られた魔物たちも、強化された壁の向こうへと集まってくる。


……今度こそ、本物の結界の出番だな。

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