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失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~ 作者:進行諸島

第二章

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第157話 最強賢者、装飾する

「次は、邪魔な建物をどけるぞ! あそこにある宿を移動させれば、住民が集まれるスペースができるはずだ!」


壁の強化と罠の仕込みが終わったところで、俺はそう宣言する。

すると、ルリイ達3人が、驚いた顔をした。


「どけるって……解体するってこと?」


「いくら緊急事態っていっても、勝手に壊すのはまずいんじゃ……」


「壊したら、怒られそうです!」


ああ。壊すと思ったのか。

でも建物をどける方法は、壊す以外にもあるんだよな。


「壊さないぞ! ただちょっと、移動してもらうだけだ!」


言いながら俺は、町の外壁を跳び越える。

ルリイ達は、疑問を口にしながらもついてきてくれた。


「こ、こんな大きい建物を、壊さずに動かすんですか!?」


そう言ってルリイは、俺が指した宿屋を指す。

幸い、中に人はいないようだが、石造りで3階建ての、とても重そうな建物だ。

確かに、力ずくで押して動かそうとすれば、壊すことになるが……。


「宿屋が建ってるのは、地面の上だからな。方法は色々あるんだ」


そう言って俺は、宿の中に入って、いくつかの魔法を使う。

それから、3人に向かって言った。


「よし、押してくれ! あっち向きだ!」


俺の指示を聞くと、3人が宿の壁に手を当てて、建物を俺の言った方向に向かって押し始める。


「わ、分かりました!」


「こんな大きい建物が、押したくらいで動くわけ――」


3人は、半信半疑のまま建物を押したようだが……イリスが押し始めたのとほぼ同時に、建物が動く。

壊れることもなく、地面の上を滑るように移動したのだ。


「動いた!?」


「こんな重い建物が、押しただけで!?」


「いくらイリスさんがいても、流石におかしいんじゃ……一体、何をやったんですか!?」


そう言ってルリイが、俺に聞く。

確かに、宿の建物が動いたのはイリスの力も大きいが……一番の理由は、地面にかけた魔法だ。


「浮遊の魔法で宿を支えながら、地面を軟化させたんだ! 地味に魔力消費が多いんだけど、今は時間がないからな!」


言って俺は、宿の入り口近くの地面に向かって石を投げる。

普段であれば、跳ね返ったり地面を転がったりするはずの石は、そのまま水にでも沈むように、地面に埋もれていった。

このくらい地面が柔らかければ、建物を壊さずに動かせる訳だ。


……とはいっても、宿が結構広いので、失格紋だと範囲がギリギリだ。

もうちょっと広い建物が相手だったら、別の方法を使う必要があったかもしれない。


そんな話をしながらも、宿は順調に移動し、迷宮都市の壁際には住民を集められるスペースができた。

これで、本格的に魔物の誘導を始められる。


魔物の状況は……そろそろ少し危なそうだな。

迷宮都市にたどり着く魔物が、だいぶ増えてきた。

……多少は状況が混乱してくれた方が、住民は集めやすいのだが。


「よし、ここに人を集めるぞ!」


そう言って俺は、地面の軟化と浮遊を解除しつつ、手元にあった小さい魔石に付与を施して、できたスペースの真ん中に放り投げる。

すると魔石が青く光りながら、ちょうど空いた場所と同じくらいの大きさの魔法陣を展開し始める。


基本的な見た目は、結界魔法だな。

特徴があるとすれば、光り方が派手なことと、その光りがかなり上空にも届いているということくらいか。


「こんな小さい魔石で、こんなに大きい結界が……これ、どういう魔法なんですか?」


俺が放り投げた魔石を、ルリイが驚愕の眼差しで見つめる。

……実際にはこれ、今まで作った魔法陣の中で、一番レベルが低いやつなんだけどな。

ちゃんとした性能がほしければ、自分じゃ無くて栄光紋のルリイに作ってもらうし。


「これの効果は……飾りだ」


「……飾り?」


「ああ。特に効果はない。ただ光って綺麗なだけだ。……でも、こういう魔法も、役に立つ時はあるんだよな」


そう言って俺は、次に使うための魔法を起動する。

あまり時間がないので、急いで住民を集めないといけないからな。

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