cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_fadef3c4b87e_「仮想敵は日本」韓国GSOMIA破棄の裏に軍備増強の歴史あり! 田岡俊次が解説 fadef3c4b87e

「仮想敵は日本」韓国GSOMIA破棄の裏に軍備増強の歴史あり! 田岡俊次が解説

 機密軍事情報をやりとりする「GSOMIA」の終了を通告してきた韓国。実は冷戦終了後、韓国軍は常に日本を「仮想敵」として軍備の増強を進めてきたという。

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 韓国政府は8月23日、日本との「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)の終了を日本に通告した。これは日本と韓国が得た機密軍事情報を相互に提供することや、その機密を保全する手続きなどを定めた協定で、2016年11月23日、日本の長嶺安政駐韓大使と韓国の韓民求(ハンミング)国防部長が署名した。有効期限は1年で、期限切れの90日前までにどちらかが終了を通告しないと自動延長されるはずだった。

 日韓のGSOMIAは米国が締結を勧めたものだ。協定締結以前には、北朝鮮の核実験やミサイル開発、発射の兆候、飛行コース、北朝鮮軍の動向などにつき、日韓がつかんだ軍事情報は、在日、在韓米軍に伝えられ、両国は米軍経由で情報を得ていた。だが本来、米軍が日本や韓国から入手した情報を第三国に漏らすのは信義に背き、日米、韓米のGSOMIAにも反するから、米国は日韓に直接協定を結ばせ、円滑に情報交換できるようにしたかったのだ。

 日本では民主党(当時)のタカ派が日韓軍事協力に熱心で、菅直人内閣の前原誠司外相は10年12月7日の日米韓外相会談で「安全保障、防衛分野での日韓協力を推進したい」と述べた。日韓が機密の軍事情報を交換し合うのは同盟への第一歩だ。

 韓国では日本との軍事協定締結に反対の世論が強かったが、何とか12年6月29日に野田佳彦内閣の玄葉光一郎外相と駐日韓国大使が外務省で署名することになった。ところが予定時刻の50分前、韓国の李明博(イミョンバク)政権が突如、署名の延期を申し出てドタキャンになった。経済界出身の李大統領は、当初は日本と協調的だったが、5年の任期末には世論を意識して反日的言動が多くなった。今回の日韓対立も、文在寅(ムンジェイン)大統領の左傾思想よりも韓国人一般の対日感情に起因するところが大なのでは、と思われる。

 一般の韓国人だけではなく、韓国軍は日本を「仮想敵」とする姿勢を露骨に示してきた。冷戦が終了した1990年代から「主な敵は日本か北朝鮮か」との「主敵論争」が起き、国防白書から北朝鮮を敵視する表現が削られたこともあった。

 北朝鮮の海軍、空軍は装備が旧式なため、韓国海軍、空軍が軍備増強、近代化の予算を獲得するには日本を仮想敵にする必要があった。

 たとえば韓国海軍が87年、ドイツに「209型」潜水艦(潜航時1300トン)3隻を発注した際には、議会で「日本の通商路を遮断するため」と説明した。07年には1万9千トン級のヘリコプター空母を就役させ、「独島(ドクト)」(竹島の韓国名)と命名。日本との対決姿勢を示している。

 現在、韓国海軍は潜水艦(1300~1900トン)を16隻、ヘリ空母1隻、巡洋艦3隻、駆逐艦6隻、フリゲート艦17隻、1200トン級の哨戒艦18隻を持ち、海上自衛隊の潜水艦(3500~4100トン)20隻、ヘリ空母4隻、その他の護衛艦43隻という陣容に数的には迫りつつある。

 また韓国空軍は「1千キロ圏」での制空権確保を目標としており、その圏内には東京が入る。韓国空軍の代表が米国防総省を訪れ、空中給油機の売却を要請したこともある。米国側が「北朝鮮の奥行きは300マイル程度。給油機は不要では」と問うと、「東京を爆撃する際に必要だ」と言い放ったという。国防総省の担当者は驚いて日本側にそれを伝え、給油機は売らなかった。

 だが韓国空軍は欧州のエアバス社製のA330給油機4機を発注、最初の1機は昨年11月に到着した。韓国空軍は「独島防衛に有効」と言っている。このほか、爆弾や対地ミサイルを最大11トン積める複座の戦闘爆撃機F15E(韓国用はF15K)59機を保有する。かのB29の最大9トンを上回る積載能力で、戦闘行動半径は1250キロ。空中給油無しでも東京を爆撃できる。

 現在韓国空軍は戦闘機、戦闘爆撃機計590機を持ち、航空自衛隊の330機をはるかにしのぐ。北朝鮮空軍は極めて貧弱なため防空の必要性は少なく、対地攻撃が主な任務だ。

 さらに韓国は、射程800キロで名古屋まで届く弾道ミサイル「玄武2C」や射程1500キロの巡航ミサイル「玄武3C」を開発している。北朝鮮の奥行きは500キロ、韓国から北京までは900キロあまりだから、1500キロの射程は日本全土を射程内に入れるためと考えられる。また韓国の潜水艦、水上艦の一部も陸上攻撃用の巡航ミサイルを搭載している。

 韓国陸軍は人員49万人で、米陸軍の46万7千人を上回り、陸上自衛隊の3.6倍だ。戦車2500両、装甲車3300両、ヘリコプター595機を保有、西欧諸国の陸軍なみに近代化している。在韓米陸軍は1989年には3万1600人いたが、今では1万9千人に減らした。これは韓国軍が通常戦力では圧倒的優位だからだ。

 冷戦時代のイデオロギーがなお残る日本では「韓国は味方」という感覚があるから、韓国軍の増強が報道されることは少ないが、韓国はすでに軍事大国であり、日本を仮想敵としていることを認識するべきだ。

 経済でも韓国のGDP(16年)はロシアの1.2兆ドルをしのぐ1.4兆ドル。1人あたりGDP3万2千ドルは日本の78%だが、物価を加味した購買力平価では日本の94%。23年ごろに日本を抜くとみられている。韓国の今年の国防予算は46.7兆ウォン(約4兆円)で日本の76%だが、韓国の中期国防計画(5年)では年率7.5%ずつ増やすとしており、23年には今年度の日本の防衛予算を上回りそうだ。

 今回韓国がGSOMIAの終了を通告したことで、日韓の直接の情報交換は11月23日から停止となるが、協定が締結された16年以前の状態に戻り、米軍経由で情報が伝わればあまり支障はなさそうだ。韓国が「GSOMIAは終了した。日本に情報を流すのはけしからん」と米国に抗議することは考えにくいし、それは日本も同じだろう。

 GSOMIAで機密の軍事情報を交換するのは准同盟国関係とも言える。米国は日韓が緊密となり、日米韓の連携で北朝鮮に圧力をかけることを期待していただけに、それを韓国が切ったことに怒ったのも当然だ。

 だが韓国人の多くは日本との軍事協力に反対で、韓国軍は日本を仮想敵として装備を整え、毎年2回は「独島」防衛の演習をしているのだから、GSOMIAを両国に結ばせてもうまくいくはずはなかった。並んで生えた2本の竹を接着剤で無理にくっつけるようなもので、いずれ接着が外れるのは宿命だったと言えるだろう。(軍事ジャーナリスト・田岡俊次)

※AERA 2019年9月9日号

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cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_c7faed601996_稲垣えみ子「猛暑の五輪を乗り切るアイデアは…」 c7faed601996

稲垣えみ子「猛暑の五輪を乗り切るアイデアは…」

 元朝日新聞記者でアフロヘア-がトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。



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 今年もなんだかんだと暑い夏であった。東京は、長く冷たい梅雨が一転してギラギラムシムシ攻撃となり、結局は熱中症注意が再び連呼される事態となったわけだが、そんな中「オリンピックまであと1年」のニュースが。つまりはこんな中でオリンピックっすか!

 熱中症対策といえば、屋外に出ず室内でエアコン使用というのが大定番だが、観客もそれと真逆の行動を取らねば成立しない世紀の大イベント。これはやはり大変なことだなあと考えていて、ふと気づいてしまったのである。

 今こそ私の出番ではないか。8年前から家でエアコンを使っていないということは、エアコンに頼らずとも熱中症に負けぬ身体を追求してきたとも言える。ようやくその成果が世間様のお役に立つ時が来たのだ。だが誰も助言を求めに来ない。勿体ないので勝手にアドバイスさせて頂く。

 この8年、実に色々なことを試してきた。床で寝ると涼しいとか、ハッカスプレーを浴びると僅かな風でもひんやりするとか、豆腐やキュウリなど体を冷やすものを食べるとか。どれも悪くはない。だがダントツに効果を感じたのは「汗をかくこと」である。

 今や我が猛暑日の楽しみといえば、熱~い銭湯に入った後に熱~い鍋を食すこと。この世のものとは思えぬ大汗をかくが、汗が引いた後「スッ」とする。この「スッ」ってえのが……クセになるねえ。憑き物が落ちるというか、超デトックス感覚。調べてみたらちゃんと科学的根拠もありまして、汗をかくことで体にこもった熱が外に逃がされるのだ。熱帯夜でもそこそこ涼しく眠れるのも納得である。

 こうして日頃から、体の熱を外に追い出す機能を鍛えておきましょうぞ各々方! 便利社会の中で縮こまっていた本来の自分の力を取り戻すのである。やってみればわかるが「おっ」と思う。「大丈夫だ」とも思う。生きる力みたいなものが自分にもちゃんとあったと驚く。

 それを実感する人が猛暑五輪を機に増えたなら、もう思い残すことはない私である。

※AERA 2019年9月2日号

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cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_08f6528d7c3e_あなたは何タイプ? 自分の持ち味を生かす方法をしいたけ.さんに聞いた! 08f6528d7c3e

あなたは何タイプ? 自分の持ち味を生かす方法をしいたけ.さんに聞いた!

 仕事やふだんの生活で、自分の持ち味を生かし、能力を最大限に生かすにはどうしたらいいか──。現代人の悩みをすくいあげるスペシャリスト、しいたけ.さんに自分の持ち味を生かす方法を相談した。



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 まずは海辺に子どもが2人立っている絵を見てほしい。この絵をどこから見るか? 選んだ番号によって、あなたのタイプがわかる。

(1)全体像を見る。どういう状況にあるのか全体が気になる
(2)手前の子ども2人の表情に目がいく。笑っている? 泣きそう? 表情で状況を感知
(3)配色に目がいく。絵のきれいさやかわいさに注目する
(4)周辺の情報に目が留まる。背景にいる浮輪の子どもや、海辺の生物などに注目

【タイプ診断】
(1)リーダータイプ
 1を選んだあなたは、全体の状況を把握していないと不安なリーダータイプ。

 ものごとに対して、自分が向き合う価値があるものか、値踏みするような見方をします。話題性があるかどうか、ネタとして使えるかなどがものさし。「何のために◯◯をするか」とよく自問し、ムダな時間は1秒でも使いたくないタイプです。

(2)組織人タイプ
 2を選んだあなたは、人の顔色が気になる組織人タイプです。

 本当の笑顔なのか、作り笑いなのか、表情から状況を感知しようとします。子どもが泣きだしそうだったら「世話しなきゃいけないな」と、自分が「しなければいけないこと」をよく考えるタイプだと言えます。

(3)ムードメーカータイプ
 3を選んだあなたは、ムードメーカータイプです。

「わー楽しそう、ここ行きたい」と、直感的に考え、ポジティブシンキングで、ちょっと自己チューです。絵を見るときも「配色がきれい」「ここに行ってみたい」と、おもしろそうかどうかで考えます。承認欲求が強いですが、根は組織人と同じく小心者。サービス精神で自分からおどけたことを言って、周りを盛り上げようとする人たちです。

(4)作家タイプ
 4を選んだあなたは、作家タイプ。

 中心にいるタイプではないので、絵を見るときも、立ち位置として自分に似た、孤独で脇役的なものを探します。コミュニケーションは苦手で、得意分野以外の話は聞かず、人に何か相談をするときにはすでに自分の中で「決定」した後という特徴があります。職人気質とも言えます。

【自分の持ち味を生かすには?】
 いま、潜在的にみんなが人間不信を抱えている気がします。

 それはどうしてか。「この人の言うことを聞いてれば大丈夫」「この組織に所属していれば大丈夫」が揺らぎ、消えつつあるからです。自分のことは自分で考えないといけない、まさに時代の転機にあります。

 ただ、あまり怖がらなくて大丈夫です。

 そのときに、どうやって自分の持ち味を生かしていくのか。それを知ることって、もしかしたら、占いが担える部分でもあるのかなって思うんですね。

 リーダータイプの人にお伝えしたいのは、「いちばん目立たない人の声を聞いてほしい」ということです。リーダータイプって普段、声の大きい人の話だけを聞いて、「喋らないなら、あなたも私に賛成でいいね」って封じちゃうようなところがあります。見切っちゃう人たちだから、彼らにとって声を出さない人はいないも同然なんですね。

 今は時代的に全員が声を上げているとき。聞こえにくいけれど、新入社員とか、声の小さい人も声を上げています。そういう人の話をちゃんと聞いて、どれだけ巻き込めるかが、リーダーの評価になります。「ああこの子、実はすごく頼りになる」「ちゃんと考えてるんだな」って発見できると、みんなで問題を共有して向き合っていくことができます。


 組織人タイプはちょっと特殊で、自力で運を切り開くっていうより、誰かを応援してその人から運をもらう、っていうタイプの人たちです。

「この店もうちょっといろんな人に知ってもらえると嬉しいな」と思ったら、勝手にそのお店のPRをしちゃってください。そうすると、自分にもいい流れが来やすい。家族とか同僚とかお店とか、アイドル、いわゆる「推し」でもいいと思います。身近に応援する人を何人か見つけて、勝手に応援団活動を。持ち味が生きます。

 組織人タイプが苦手な質問があります。僕も言われるのが苦手なのですが、「あなたは何がしたいの?」って言われるとうまく答えられない。

 自分は何がしたいのか目標を持って主体的に生きることがよしとされがちですが、実は人を応援することでそれ以上の結果を出していける、そういう持ち味がある人たちもいることをみなさんに知っておいてほしいです。

 ムードメーカータイプは、力が強そうな人についていくというか、いわゆる太鼓持ちみたいなところがある。でも今年はそうやって頼りにしてきた先輩や同僚たちが自分の道を歩き出していくとき。ついていく人がいなくなって、「え、私どうしよう」という状況に陥ります。キーワードは「自立」。「私はこう思う」「私はここに行きたい」って、間違ってもいいから自分の意見を喋ったほうがいい。

 それには自分で自分を励ますことが必要です。具体的にやってほしいのが、夜寝る前の「今日よかったこと会議」ですね。ひとつだけでいいので、「今日頑張ったこと」を挙げて自分を褒めてください。例えば「今日早めに事務所に来てみんなのためにクーラーをつけておいた。よくやった、グッジョブ」って。自信を蓄積していきましょう。

 作家タイプが今年持ち味を生かすためには、「耳に痛い意見も聞くこと」が必要です。

 今は、新しい分野ややりたいことをやるために扉を開けようとしているときです。いろんな人とコラボしたり助けてもらったりする必要があるから、自分の世界だけで閉じちゃうともったいない。経験が多い人に話を聞いて、弱点とか足りないことを指摘されたら、すごくラッキーだと思ってください。それを手直ししたらもっとよくなるだけだから。

 作家タイプは自分の弱点を指摘されるとすぐLINEとかをブロックしようとしがちですが、それはやめておきましょう。自分をもうちょっと開くことって、怖いかもしれないけど、必要だし本当に自分のためになると思います。(編集部・高橋有紀)

※AERA 2019年9月2日号より抜粋

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cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_e0371d4e6c71_1万円のワインは高い? 稲垣吾郎が飲んできたワインがマジ、スゴイ e0371d4e6c71

1万円のワインは高い? 稲垣吾郎が飲んできたワインがマジ、スゴイ

 芸能界屈指のワイン好きとして知られる稲垣吾郎さん。今年3月1日号で作家・林真理子さんと対談した際、山梨のワイナリーを巡ろうという話が持ち上がりました。今回は、ワイナリーを巡りながらの対談という初の出張編! 二人がワインを語りつくします。



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林:今日は私の故郷の山梨県に、吾郎さんをお連れしちゃいました。ワイン造りが盛んなここ勝沼で、ワイン好きの吾郎さんにたっぷり楽しんでいただけたらと思います。

稲垣:ありがとうございます。今日はすごく楽しみにしてきました。山梨のワイナリーをちゃんと巡るのは初めてです。

林:吾郎さんは、ワインはどこで飲むことが多いですか?

稲垣:やっぱり家が多いですね。自分の好きなものに囲まれた自宅で、くつろいで飲むのが好きです。もちろん外もいいと思うんですけど。

林:外で飲むときは、お店に持ち込んだりするの?

稲垣:持ち込みはしないですね。やっぱりいいワインじゃないと持ち込みづらいですし……。微妙なワインを持ち込むと、「店のでいいじゃん」とか言われそうだし、難しい(笑)。

林:そうですよね、確かによっぽどいいワインじゃないと、お店には持ち込みづらいですよね。私もそんなに高いもの持ってないし、いつも知り合いのお金持ちに飲ませてもらってます(笑)。知り合いで、いつもどんなお店にも、高級ワインを7~8本持ち込む人がいて……。

稲垣:へぇ~、そりゃすごいな。

林:希少なワインを持ち込んで、ソムリエさんにも「一杯どうぞ」って薦めると、ソムリエさんたちが店の奥に持っていって、勉強のために一口ずつ飲んだりするのよね。

稲垣:ああ、そうでしょうね。ソムリエさんって、お客さんにそうやって育てられるイメージがあります。僕は25歳のときに「ソムリエ」というドラマ(1998年・フジテレビ系)でソムリエを演じて、それがきっかけでワインに興味を持つようになったんです。

林:そうだったんだ。あのドラマ、見てましたよ。

稲垣:ソムリエ役を演じるにあたって、ソムリエの田崎真也さんの弟子だった広瀬一峰さんという方に、いろいろと教えてもらいました。そこからプライベートでもワインを飲むようになったんです。今よりもワインが安かったのもあって、広瀬さんに教わりながらいろいろ飲みました。

林:じゃあ高級ワインもたくさん?

稲垣:はい。今はすごく高くなって無理だと思いますが、それこそ高級ワインの代名詞として語られるロマネ・コンティ(フランス・ブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネ村にあるピノ・ノワール種の特級畑でとれるブドウから造られる赤ワイン)やシャトー・ムートン・ロートシルト(1855年の公式格付け以降、昇格を果たした唯一のシャトー)のワインなんかも飲みました。今思えばすごい贅沢な話なんですけど、昔、番組の景品で「100万円までだったら何でも買ってOK」という夢のような話があって。それで思い切って、僕の生まれ年(1973年)から、99年くらいまでのシャトー・ムートンを20本くらい買ったんです。今じゃ値段が高騰して買えないですけど、当時は今ほどは高くなかったから、まとまった数を買うことができて。

林:うわあ~。うらやましい!

稲垣:もらい物だから飲んじゃえって感じで、それを友達とかと「78年がいいね」なんて言いながら飲み比べたりしたんです。そうやってるうちに、ちょっとずつ覚えました。

林:すごい贅沢な経験ですね。テレビ局にもまだ潤沢にお金があった時代ですよね。

稲垣:はい。さすがにそれだけ続けて飲むと、得るものがありましたね。しかも同じ銘柄の年違いとかで飲んだから、すごく勉強になって。それが僕の中で大きかったです。その短期集中での原体験を今も大切にしています。本当に良いワインを飲んだときって、朝起きたときにも口の中に余韻が残ってるような感じがあるんですよね。

林:なるほど。一定量、飲まないと覚えないというのは確かにありますよね。それで言うと私の場合は、お金持ちで気前の良い人のところにすり寄っていって飲むというのが一番かもしれない……(笑)。よく言うんだけど、20万円のお金をくれる人はいないけど、20万円のワインを3本くらい平気で開けてくれる人って、世の中に結構いるのよね。不思議だなと思うんだけど。

稲垣:確かにそうですね。それもワインの持つ力なのかな。

林:吾郎さんは、お酒はワイン一筋という感じですか。

稲垣:一回、焼酎ブームもありましたね。ウイスキーも好きで、蒸留酒も結構好きなんです。香取(慎吾)君とか草なぎ(剛)さんも、ウイスキー好きですよ。

林:私は体質的にワインが一番飲めますね。

稲垣:強そうですよね。林さんはワインを飲むのはほとんど外ですか?

林:ええ、高い持ち込み料を払って、外で飲んでます(笑)。家ではあんまり飲まないかな。だって週に5日、フレンチのフルコースやらお鮨やら懐石料理なんかの会食があって飲んでて、土日も家でまた飲むのは、さすがの私もちょっとねぇ……。外でしこたま飲んで、家でも飲んでたら、アルコール依存症になっちゃいそうだし(笑)。

稲垣:週に5日も会食があるんですか。すごいな。

林:そうなの。でもごくたまに、家で飲むこともありますよ。家で飲むワインは1万円ぐらいかな。夫はそれでも高すぎるって言うけど。

稲垣:そりゃそうですよ。1万円のワインは日常使いにしては高い。でもワインって、感覚がどんどん麻痺しちゃうところがありますよね。

林:そうなんです。買い置きしておいても、どれがどの値段なのかわからなくなっちゃったり……。

稲垣:それは危ない(笑)。今、ワインのラベルを撮ったら値段から評価まで出るアプリがあるじゃないですか。

林:そうなの? 私、ワインの名前をGoogleに打ち込んで調べてた。

稲垣:それでもいいけど、アプリを使うと結構便利ですよ。

林:へぇ~、やってみます。こないだ近所で集まって飲んだとき、ちょっといいワインを2本持ってったの。でも、そこにワインに詳しい人がいなかったから、誰も反応してくれなくて(苦笑)。一人だけ「こんなところにこんないいワイン持ってきて!」って反応した人がいたけど、わからない人はわからない。逆に「この程度のワインを持っていけば大丈夫だろう」と思って持っていったワインが、思った以上に安かったりして、冷や汗をかくこともあります。そういうことってないですか?

稲垣:わかります。ビールとかと違って、ワインってどうしても値段がピンキリだから、場や人に応じて選ぶのが難しいですよね。開けてみないとわからないから、投資するのも怖いし。

※後編【夢は「吾郎ワイン」 稲垣吾郎が語る“ワイン道”】に続く

(構成/本誌・松岡かすみ)

※週刊朝日  2019年9月6日号より抜粋

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cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_05cb32815895_夢は「吾郎ワイン」 稲垣吾郎が語る“ワイン道” 05cb32815895

夢は「吾郎ワイン」 稲垣吾郎が語る“ワイン道”

 かつてドラマでソムリエ役を演じて以来、ワインにハマっている稲垣吾郎さん。作家・林真理子さんの故郷、山梨のワイナリーを巡りながらお二人が対談しました。

※前編【1万円のワインは高い? 稲垣吾郎が飲んできたワインがマジ、スゴイ】より続く



*  *  *
林:私がいつもうちに常備してるのは、「オーパス・ワン」(カベルネ・ソーヴィニヨンを主体としたブレンドで、フルボディーのカリフォルニア高級ワイン)のセカンドラベルの「オーヴァーチュア」。1万5千円ぐらいで、ちょうど良い価格帯で、おいしいのよね。人のうちに行くときは、何も考えずにこれって決めてます。そういうワインを決めておくと、いざという時に便利ですよ。

稲垣:なるほど。「オーヴァーチュア」はいいですよね。下手したら、「オーパス・ワン」よりおいしい年もあるぐらいで。名前で高くなっちゃうワインもありますしね。

林:そうそう。

稲垣:昔、シャトー・ラトゥール(1855年の格付けで第一級格付けに選ばれたボルドー5大シャトーのひとつ)の人から聞いたんですけど、ワイン造りの担当者に「何年のが一番おいしかった?」って聞いたら、「八十何年の『レ・フォール・ド・ラトゥール』(「ラトゥール」のセカンドラベル)が一番おいしかった」って言ったんですって。

林:へぇ~、そうなんだ! そんなことってあるんですね。

稲垣:はい。年によってはセカンドラベルのほうがおいしくできちゃうってことも、なくはないことだよなぁと思って。

林:造ってる人が言うなら間違いない。いい話聞いちゃった。後でアマゾンで買っちゃおうかな。だけどワインの値段って、昔と比べてずいぶん高くなりましたよね。三十数年前にも、「ある大物作家のお中元はロマネ・コンティです」という話を出版社の人から聞いて、「偉い人はそんなに高いお中元なのか」って思いましたけど、今は1本100万円を超えるでしょう。そのとき、「林さんが直木賞を獲ったら、うちからロマネ・コンティをプレゼントしますよ」って言われて頂戴しましたが、今はないだろうなあ。

稲垣:今はプレゼントするなんて無理な値段ですよね。とにかく値段の高騰ぶりがすごい。でも僕、ロマネ・コンティを造ってる、ブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネ村の畑、行ったんですよ。行って何でそんなに高いのかがわかりました。畑がわずか1.8ヘクタールと小さくて年間6千本しか造れない。それで世界中の人が買おうとするから、そりゃ希少価値は上がりますよね。

林:私も行きました。今は投資のために買う人もいるのかな。

稲垣:そういうクラスになるとあるかもしれないですね。だけどそうなるとなんか、楽しくないですよね。やっぱりワインは楽しく消費するものだと思う。

林:ワインのいいところって、友達と複数人で飲むものというところですよね。みんなで飲むと、味わう喜びとか、幸せを分かち合うという感じがするし。

稲垣:そうですね、それが楽しい。

林:だからケチな人はワインのコレクターには合ってないよね。ワインって、一人で飲むものじゃなくて、人に飲ませなきゃいけないから。宝石とかと違って、いくら高いものでも一人じゃ飲まないでしょ。

稲垣:だからワインごとに、そして飲む人ごとにストーリーがありますよね。そういうところも、ワインっていいなあと思います。僕、いつかワインを造ってみたいなあ。

林:えっ、ほんと?

稲垣:そりゃ好きだし、興味はありますよ。そしてせっかくワインを造るんだったら、海外でより日本がいいな。

林:「吾郎ワイン」、いいじゃないですか。

稲垣:日本だとワイン造りに適した土地ってどこなんだろう。

林:やっぱり山梨ですよね。特にここ勝沼は、甲府盆地の東側に位置していて、ブドウが作りやすいし。山梨は今も全国1位の生産量ですよ。

稲垣:やっぱり山梨ですか。でも新しく始めようと思っても、土地がないんじゃないですか?

林:高齢化で畑やワイナリーを手放す人も多いですよ。居抜きで譲ってくれるところがあったらいいのにね。山梨だと東京からも車で1時間だし、アクセスもいいし。

稲垣:やってみたいですねえ。なんて軽々しく言えるほど楽な話じゃないと思いますけど……。

(構成/本誌・松岡かすみ)

※週刊朝日  2019年9月6日号より抜粋

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cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_97fdc70e6def_ブラック・ジャックが現代に! “天才外科医×最先端医療”どう描く?  97fdc70e6def

ブラック・ジャックが現代に! “天才外科医×最先端医療”どう描く? 

 手塚治虫が描いた孤高の天才外科医が現代によみがえったら──。7月に出版された『小説ブラック・ジャック』(誠文堂新光社)は「AI」「iPS細胞」「終末医療」など現代的なテーマのもと、手塚マンガの人気キャラクターが復活したと話題を呼んでいる。進化する最先端医療はどこまで患者を救うのか。著者の瀬名秀明さんに聞いた。



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──瀬名さんは『ブラック・ジャック』だけでなく手塚治虫の作品をずいぶん読んでいるそうですね

 子供のころからたくさん読んでいました。どの作品も、ストーリーの面白さに加えて、毎回作者のアイデアが光っていましたね。

 今回小説化を引き受けた『ブラック・ジャック』も大好きで、単行本も子供のころ全巻そろえていましたよ。1話20ページあまりという少ないスペースで完結しなければいけなかったのに、あれだけの世界を描けるのはすごいと思いますよ。

 実際は大人の世界の話だけど、子供にもわかるように手塚さんは描いてたんだと思います。とはいっても当時の子供読者には手術代が1千万円とか1億円とか言われてもその高額さはよくわからなかったです(笑)。

 それでも、将来のことをよく考えて生きろとか、一生かけて治さなければいけない病気は人生を変えるものだなどの教訓が含まれているのは感じましたね。

 ブラック・ジャック(BJ)は法外な治療費を要求しますが、大金持ちの客でも命を大切にしない人のことは嫌いなんです。病を抱えていても、貧しくても生きることに価値を見いだしているような人からは大金を取らないんですよ。時代は変わっても、手塚先生が描いた「生きる」という本質は変わりません。それは何なのかということを私の作品にも込めたつもりです。

──小説ということで戸惑いはなかったですか

『パラサイト・イヴ』から24年ぶりに手術のシーンを書いたわけです。ずっと医学ものを書いてなかったんですよ。今回お話をいただいたとき、書籍でというのは想定外なので驚きましたが、BJを現代によみがえらせて自分の創作で描けるのはうれしかったです。

『小説ブラック・ジャック』を執筆するために、復刊された241話を購入してすべて読みました。原作は1話ずつが短いので小説もそれがいいと思い、短編5話構成にしました。

──作品が連載されていたころと今の医療の世界はどう違いますか

 改めて手塚作品を読み返して、連載されていた70年代と今の医療や病院の違いを感じました。

 当時は医師の権威が強かったなと思いました。「白い巨塔」みたいに大名行列のような院長回診とかがあり、医師会がとても力を持っていた。そういうことが描かれています。そして社会的には公害の問題が大きかったので、その公害が病気の原因になったとかいう話が多かったですね。

──手塚作品ということで特に工夫したことなどありますか

 書いていて、医師免許を持ってた手塚先生だけに各話のエピソードの核心と病気がぴったり合っていることが改めてわかりました。

自分の作品でも手塚先生の言い回しを生かし、ギャグとシリアスの配分とかでも手塚作品らしい感じを出したいと思いました。

 セリフにしても、BJならこの場合、「おまえさん、やるじゃないか!」と言うだろうなと、ファンの人も同感してくれるようにいろいろ考えました。

 そして手塚ファンに楽しんでもらうため、各話にBJシリーズ以外のおなじみのいろいろな手塚作品の印象的なキャラクターをゲストとして登場させました。

──医療者にもBJのファンが多いって本当ですか

 BJを読んで医師とか医療関係者を目指したという人が多いんですよ。マンガに出てきた症例を解説する本を出した人もいます。そういうファンの中のひとりの医師に監修をしていただきました。ほかにも多くの医師に病気や手術などについて、「今ならBJはこういう問題にこう立ち向かうのではないか」などと相談して書きました。皆さん喜んで協力してくれたのがうれしいですね。その中にはあのiPS細胞の山中伸弥教授のところで働いている人もいます。

──作品中のiPS細胞、AI医療ロボットなどの最先端医療のこれからが気になります

 小説では例えばBJの留守中にケガをした犬をピノコが手術することになりますが、リアルタイムで海外にいるBJがスマホで症状を見ながら指示をするんです。今の時代ならではのストーリーだと思います。

 iPS細胞は連載時にはありませんでしたが、山中先生がノーベル賞を取られて以後、実際に新薬の開発に役立てたり、人体機能を取り戻すための再生医療での治療ができるようになったりしてきました。小説の中でもBJが昔の患者さんと再会して、あのころはできなかった治療ができるようになったと告げます。

 医療関係者もかつては夢だったものが、今は確信を持って語れる時代になってきたんです。パーキンソン病なども治る可能性がとても高くなってきたといえるでしょう。治らなかったものが治る身体機能の再生医療と、病気を進行させないような新薬開発の両方の前進への期待があります。アルツハイマーとかの症状の進行を止めるための新薬が開発されると、健康寿命が延びますね。

──AI医療ロボットはどこまで性能が向上していくのでしょうか

 昔の医療ロボットは工場ロボットみたいにごつかったですが、今使われている手術支援ロボットなどは、データを取り込んで自分で学習して動くというレベルには達していません。しかし、これからはさらに進化したAIロボットが実現するのではないかと思います。

 AIの研究者によれば、ロボット単体で手術するのは突然の出血とか不測の事態には対応できないので、やはり医師がついていないといけないだろうと言っています。ロボットの手術技術も進歩しますが、かつては患者の見守りは人にしかできなかったのがAIにも分担させることで患者の情報を多くの関係者と共有し、省力化をすることにはなるだろうということです。

──BJが連載されていたころより平均寿命が延びています。まだまだ延びそうですか

 今回、終末医療の患者が出てきますが、苦痛緩和ケアしかないわけです。安楽死をさせるキリコというおなじみの安楽死専門の医師が出てきましたが、実際に海外の数カ国でしか安楽死は許されていません。

 私は今後、人があまり病気にならず100歳まで元気なままでいられる時代が来るだろうと思っています。予防医学も先端医療ももっと発達するでしょうし、寿命が終わるまでよりよく生きられるように医学が進歩すると思います。

 ただ、今の高齢者が100歳まで元気で生きられるような社会システムや医療はまだ確立されていません。

 今は人が100歳まで大きな病気をせずに元気でいられる時代の入り口だと思います。時間がかかるとは思いますが、きっとそんな時代が来ると思います。

──面白く読ませてもらいました。BJが読んだら「おまえさん、やるじゃないか!」と言いそうですよ

(聞き手・構成/土肥慎也)

※週刊朝日  2019年9月6日号

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cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_0e8f81b7a367_“天然”渋野日向子のファッションは? ドン小西がチェック! 0e8f81b7a367

“天然”渋野日向子のファッションは? ドン小西がチェック!

 メジャー初挑戦の「AIG全英女子オープン」で優勝し、話題となった渋野日向子選手。8月18日、NEC軽井沢72ゴルフトーナメントに出場した彼女を、ファッションデザイナーのドン小西氏がファッションチェックした。



*  *  *
 いやいや、令和のスターが、こういう昔懐かしいタイプだったとは。驚いたよ。彼女の一番の武器は、作られていない天然物っていうところ。純粋で素朴でマイペースで。今どきのヒット商品からぷーんと匂ってくる、小賢しいマーケティング臭がゼロだよね。昔はこういう子ばっかりだったのに……。そんな遠い目をしたお父さんたちを、メロメロにさせてるよ。

 契約している選手が全英女子オープンで優勝するなんて、宝くじに当たるようなもんだもの。たまたまなんだと思うけど、彼女と契約していて一時品薄になったこのゴルフウェアのブランドも、彼女のキャラに合ってるよ。ゴルフウェアといえば、スポーツメーカーが作る機能性重視の未来っぽいデザインが人気だけど、それとは対照的な、デザインに凝ったファッション系ブランドのひとつ。古き良き時代のゴルファーが着ていた鹿の子のシャツとか、レトロ感覚がデザインのテーマになっているんだよね。

 それにしても、あたし世代のおじさんにまで勇気をくれるシブコマジック。プレッシャーに負けずに、ここは踏ん張ってくださいって。

(構成/福光恵)

※週刊朝日  2019年9月6日号

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cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_fd1f33d43a8b_「カップヌードル七福神」そろう ふたたび登場「味噌味」を食べてみた  fd1f33d43a8b

「カップヌードル七福神」そろう ふたたび登場「味噌味」を食べてみた 

 4月1日の販売開始早々に完売続出、わずか10日後に一時販売休止となり、幻の商品化していた日清カップヌードルシリーズの新商品、「カップヌードル 味噌」が、8月26日、販売再開された。

 日清食品によると、同シリーズ全体の販売量は18年から好調な推移という。そこに加えて「味噌」の販売直前となる今年3月頃は、さらに需要が高まっていた。ちょうど、日清食品の創業者・安藤百福夫妻の即席ラーメン開発の奮闘を描いた連続テレビ小説「まんぷく」が、好評のまま終盤を迎えた頃だったのだ。

 味噌味のカップヌードルは過去にも日清が発売した経緯がある。今回の人気過熱ぶりについて、インスタントラーメン研究家、大山即席斎さんにたずねた。

「1992年に発売した、『カップヌードル MISO』は、ジェームス・ブラウンがシャウトするCMが話題となるなど、かなり力を入れていましたが、長続きしませんでした。カップヌードルのシリーズは、その名の通り、もともと洋風の味を意識したものなんです。カレーやシーフード、チリトマトといったラインナップもそうですし、かつて発売した味噌味も、ローマ字表記でした」

 けれども今回は……。

「非常に目立つ形で『味噌』と書かれています。それが逆に個性を際立たせ、店頭でも非常に目立った。ネットやSNSの影響も大きいですね。例えばツイッターでは、一度話題になったものを大勢の方がリツイートして爆発的に拡散する現象も起こりますから、それも一つの要員としてあると思います」

 さて、販売再開となった「カップヌードル 味噌」。記者は数軒のコンビニ、スーパーをめぐり、なんとか確保。お湯を注いで3分。味噌の香りが漂ってくる。濃厚。麦味噌・赤味噌・白味噌をブレンドしたという味噌に、ショウガとニンニクがパンチを効かせる。シリーズで有名な“謎肉”をはじめ、コーン、キャベツ、ニンジンといった味噌ラーメンに合う具材が彩りをみせる。

 日清は「おむすびに合うランキング1位」として具だくさんの味噌汁としての一面もアピールしている。

「かつての味噌味の商品の延長上にある印象ですが、バランスの良い味ですよね。粉末の調味料では味噌の風味を感じにくかった部分もありますが、今回はよく感じられます。最近人気の、ご飯とのマッチング商品を意識した味だと感じます」(大山さん)

 せっかくの販売再開も、買い占めや転売などの心配もあるが、日清では、そのような事態にならないよう、十分な量を流通させるとのこと。

 日清食品は「味噌」「しお」「欧風チーズカレー」の3種を“NEXT STANDARD”と位置付け、「カップヌードル」「カレー」「シーフード」「チリトマト」の定番4種と合わせて、「『カップヌードル七福神』と弊社では呼んでおります」(同社担当者)という。七福神のひとりが欠けることないよう準備万端のようだ。(本誌・太田サトル)

※週刊朝日オンライン限定記事

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cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_c32016fffc79_二階幹事長は留任、進次郎氏は復興相、三原じゅん子氏の名前も 内閣改造で派閥間のポスト争いが激化 c32016fffc79

二階幹事長は留任、進次郎氏は復興相、三原じゅん子氏の名前も 内閣改造で派閥間のポスト争いが激化

 まさかあの人がというビックリ入閣の隠し玉はあるのか──。

 9月10日にも行なわれるとみられる内閣改造・自民党役員人事。近づくにつれ、自民党内の派閥争いが復活、激化してきた。



「入閣するのは狭き門なんだよ。70人とも言われる入閣待機組がいるからね。今回が安倍政権の最後の組閣になるかもしれないから、安倍首相に近く、閣僚未経験の連中は必死の売り込み作戦ですよ。安倍首相に直接売り込んだり、安倍首相と親しい経済人や地元の人にまで頼み込んでいる議員もいます」(安倍首相出身派閥の清和会幹部)

 昨年10月の第4次安倍改造内閣では「在庫一掃内閣」と呼ばれ、19人の閣僚のうち12人が初入閣だった。ところが、初入閣組の桜田義孝前五輪相、片山さつき地方創生相、吉川貴盛農水相らはみな、スキャンダルで叩かれた。

「だから、今回は安倍カラーを前面に打ち出すのではないか。小泉進次郎や三原じゅん子あたりが若手のフレッシュな目玉で、進次郎は復興相がおさまりがいい。本人もそれが希望だそうだ。野党に『恥を知れ』と発言し、物議をかもした三原は何を言い出すかわからないから、目立たないポストだろうね。あとは女性を2~3人起用するのではないかな」(前出・清和会幹部)

 地方創生相就任の認証式では、ど派手なシルバーのドレスで出席し、話題をかっさらった片山さつき氏の動向は気になるところ。

「口利き疑惑で騒がれた片山さつきは留任したくて仕方ないそうで、あちこちに自分で『留任だ』と触れまわってますよ。絶対ないと思うけどね」(自民党幹部)

 病気療養中の竹下亘会長が率いる竹下派(平成研究会)では茂木敏充経済再生相、小渕優子元経産相、加藤勝信総務会長の3人の総裁候補がしのぎを削る。

「小渕は2014年、『政治とカネ』の問題で経産相を辞任したけど、あれから5年近くたち、ジワリと復活しつつある。小渕が復活すると、茂木は派内で自分の芽がなくなるから、面白くないはず。ただ、安倍首相はアメリカのトランプ政権との交渉をまとめた茂木の実力を評価しているから、茂木は大臣残留濃厚だね」(同)

  このほか、安倍直系では西村康稔官房副長官も大臣待望組。

「西村さんは大臣になりたくって仕方ないよ。けれど、まだ当選6回だ。派閥内でも安倍首相の間に入閣しておかないと政権が変われば無理だ今がラストチャンスと、内輪で熾烈な争いですよ」(同)

 安倍首相は会見で内閣改造について、「新たな人材に突破力を発揮してもらう」と発言しているが、小泉進次郎衆議院議員の大臣就任はなるのか。進次郎氏は8月31日、地元横須賀での結婚後初めての国政報告会で、報道陣から閣僚の打診があった場合について質問されると、「決めるのは総理。これからどんな立場であっても、思いをもってしっかりと自分のできることを最大限にやって行きたい」と語った。


 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう見る。

「安倍首相の『新たな人材』というのは、同じ派閥(清和会)の西村官房副長官と萩生田光一幹事長代行の2人も含まれているのではないか。2人とも安倍直系だし、ここらで入閣させないと、自分が総理の時に大臣にさせるチャンスがなくなるから」

 閣僚ポストの新人争いも見物だが、一方で、党役員人事では、二階俊博幹事長の交代論が飛び交っている。

「二階更迭だという話と留任に決まっているだろうという話と、毎日、日替わりメニューのように大きくなったり、小さくなったりしています。安倍内閣は麻生太郎財務相、菅義偉官房長官、二階幹事長で続けてきているので、これが崩れるとメリットとデメリットがある」(角谷氏)

 メリット、デメリットとは何なのか。

「たとえば、韓国や中国とのチャンネルは二階さんが担ってきているわけで、二階さんが抜けたりするとどうなるか。安倍3選の流れを作ってくれたのも、二階さんだったわけです。二階さんは幹事長という強力なポストにいることで、党内に睨みをきかせたり、人とカネを動かせる。二階さんを替えるだけのメリットを後任者が作り出せるか。ここはすごく難しいと思いますね」(同)

 安倍首相は「憲法改正」のために衆議院解散を虎視眈々と狙っているとみられている。

「次の幹事長に誰がなるかで、選挙が遠いか近いかが見えてくる。岸田さんが幹事長になれば少し選挙は遠くなるのかな。二階さんが続投すれば早いかもしれないし、遅いかもしれないとまたもやブラフをかけるでしょう」(同)

 前出の清和会幹部はこうみる。

「二階幹事長は替えられないでしょう。参院選でも勝利したからね。二階さんを副総裁、党幹事長を麻生太郎財務相にし、甘利明元経産相を後釜の財務相にということを言う人もいるが、難しいんじゃないか。麻生さんがウンと言わないみたいだ」

 二階派幹部は「とにかくうちは二階先生の留任が一番」と言う。

「参院選で勝利して、公明党との良好な関係を築けているのは二階先生のおかげですよ。二階先生が失脚したら後釜には岸田文雄政調会長が取り沙汰されているけど、岸田派は参院選で広島、秋田、滋賀、山形と4つも落とした。幹事長は選挙に強いことが絶対条件。安倍さんが広島で『令和は岸田さん』なんて言って喜んでいたが、そうもいかないよ」(二階派幹部)

 その岸田派幹部も弱気になっているという。

「うちの派閥は参院選で負けてばっかりだったので、次の組閣で強気に出られないね。勝っていれば、二階さんの後は、岸田先生が幹事長ってことだったんでしょうが、これじゃあ偉そうには言えないよ。根元匠厚労相が留任するかもという話もある。根本さんは安倍さんとのパイプもあり、力をつけているので、岸田会長もひやひやものですよ」
 

 石破茂元幹事長が派閥領袖の石破派からは山下貴司法相が内閣にいるが、組閣ではどうなるのか。

「石破さんのところは、山下法相は交代かもしれない。そうなると、大臣はゼロ。石破派では後藤田正純氏が何とか大臣がやりたくて仕方がないようだが、地元徳島でも問題ばかり起こして、県議らが幹事長に陳情にくるほど。あれだけスキャンダルがあったら身体検査、通らんよ」(前出・二階派幹部)

 次の改造内閣で誰がどんな閣僚ポストを獲るかで、派閥の浮き沈みも占えそうだ。(今西憲之/本誌 上田耕司)

※週刊朝日オンライン限定記事

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cat_oa-rp73450_issue_fadef3c4b87e oa-rp73450_0_7b1dbb3e31b1_知らないと損する65歳からの“失業保険” 年金と一緒に給付可 7b1dbb3e31b1

知らないと損する65歳からの“失業保険” 年金と一緒に給付可

 65歳からでももらえる失業保険があることをご存じだろうか。「高年齢求職者給付金」というが、シニアの雇用急増などを受けて、この失業保険、仕組みがパワーアップされたという。「長く働く」が一大テーマになるなか、うまく活用できればシニアの強い味方となる。知られざる失業保険をご紹介しよう。



 都内のA男さん(68)は、この3年間で「失業保険」を3回受け取った。大手事務機器メーカーの出身。2015年3月まではそのメーカーの関連会社に勤めていた。

「大企業のサラリーマン一筋で来たので、常識知らずになっていると感じていました。税金など世の中の仕組みも知らなかったので、役所で働こうと思ったんです」

 たまたま広報紙で地元自治体が嘱託職員を募集しているのを知り、応募した。運よく採用され、国民健康保険を扱う職場で1年半、働いた。

「わけあって退職せざるを得なくなりました。辞めてハローワークへ行ったのですが、そこで初めて失業保険をもらったのです。合計約24万円でしたね」

 いろいろと仕事探しをしていたら、別の自治体から「臨時職員なら採用できる」と声がかかった。介護保険の係で書類のコピーや電話取りなど事務補助が仕事だった。3カ月ごとの契約更新で今度は1年3カ月働いた。そこを辞めてもらった失業保険は約14万円。

 また仕事探しを始めたら、同じ自治体の別のセクションから臨時職員の誘いがあった。同じく事務補助の仕事だが、今度は期間が決まっていた。10カ月間働き、3回目の失業保険は約9万円だった。もらったのは、この6月のことだ。

 A男さんは言う。

「現役から見ると10万~20万円は大した金額ではないでしょうが、第一線を退いた身には大金になります。それぞれ、ずいぶん助かりましたよ」

 A男さんがもらったのは、雇用保険の「高年齢求職者給付金」。65歳以上で働いている人が失業した場合、一定の条件を満たせばもらえる。

 この給付金、64歳までの失業保険(基本手当)と対比する形で、「65歳からの失業保険」といわれることが多い。

 基本手当は加入期間などに応じて一定期間、退職時の賃金などに応じた手当が支給される。例えば会社に20年以上勤めていたのにリストラで退職させられた45~59歳の人なら、所定給付日数は330日になる。

 これに対し高年齢求職者給付金は、一定期間ではなく一時金として受け取る。また、基本手当を受給すると公的年金は支給停止になってしまうが、この給付金は年金と一緒にもらうことができる。

 以前は65歳以上で新たに雇われた人は雇用保険の対象外で、この給付金も65歳前から同じ会社に勤めていた人が65歳を過ぎて辞めた場合に限って1回だけ支給されるものだった。企業の人事出身の社会保険労務士の柳田恵一氏が言う。

「63、64歳で辞めると言いだした従業員に対して、『65歳まで頑張ると出る一時金がある。しかも、年金と一緒にもらえますよ』などと、引き留め策として使っていましたね」

 高齢化が急進展するにつれてシニアの雇用はどんどん増え、働く年齢は上がる一方だ。そこで2年前に改正法が施行され、65歳以上も雇用保険に加入することが義務づけられた。

 今は激変緩和措置で保険料は猶予されているが、来年度からは徴収されるようになる。負担あるところに給付あり。一回こっきりだったこの給付金も、条件を満たせば何回でももらえるようになった。

 労働側から見れば「権利拡大」だが、制度の知名度は低いままのようだ。先の社労士の柳田氏が、

「働く側は制度自体を知らない人がほとんどでしょうね。会社側も中小企業になると2年前の改正さえ知らない企業がけっこうありますよ」

 と言えば、労働問題のコラムをブログで展開している広島の社労士、村上公政氏も、

「ネットで私のコラムを読んだ人が、『保険料を払っていないのに本当にもらえるのか』と問い合わせてくるケースがあります。中には、明らかに会社の人事・総務担当者と思われる人もいますね」

 と話す。

 冒頭のA男さんもこうアドバイスする。

「私が給付金をもらえたのは、ひとえに制度の存在やその改正を知っていたからです。現役時代は会社がすべて面倒を見てくれますが、いったん離れると誰も何も教えてくれませんよ」

 外部に頼れないとなると「自衛」するしかない。65歳以上で働く人は、失業保険の存在を知っておくべきなのだ。

 高年齢求職者給付金の概要、すなわち受給資格を得る条件と一時金の基準、金額を調べると現役社員らを対象にした基本手当より、受給資格が得られやすくなっていることがわかる。基本手当をもらうには、週20時間以上働くなど一定条件を満たし、過去2年間で12カ月間雇用保険に加入する必要があるのに対し、この給付金は過去1年間で6カ月間雇用保険に加入していれば済む。

 ただし、失業状態でないと給付金は出ない。「もうこれでリタイア」とか「辞めて骨休めしたい」はダメ。自己都合で会社を辞めた場合は、3カ月経たないと一時金が出ないという給付制限もある。

 一時金の基準はシンプルだ。加入期間が1年未満ならば「基本手当日額の30日分」、1年以上ならば「50日分」の二つだけだ。

 金額は賃金によって異なり、基本手当日額は次のようにして求める。

 まずは平均日給を意味する「賃金日額」を出す必要がある。表にある通り、離職直前の6カ月の賃金の合計額を出し、それを「180」で割って求める。

 毎月の賃金にあまり変動がなければ、月給を30で割っても概算額にはなる。求めた賃金日額に金額によって違う給付率をかければ基本手当日額(賃金日額の50~80%)が出る。それに30日、50日をかければ一時金の金額となるわけだ。

 ご覧の通り一時金の金額は、30日分で6万~約20万円、50日分で10万~約34万円となっている。

 確かに、条件を満たせばこの金額が何度でももらえるとなれば、「魅力的」だ。65歳を超えて失業状態になっても一定の金額を受け取れるなら、転職の機会も広がる。先の社労士の村上氏はこう言う。

「少し前なら65歳を超えればもう雇ってくれるところはないと思って、ずっと働きたい人は会社を辞めませんでした。それが今、変わり始めています。一つは人手不足。65歳を超えた人も雇っていかないと、業務がこなせません。それに、給料など、より条件のいいところが見つかれば、すぐ移ろうというシニアも増えています。この一時金も、そういう流れに乗って利用者が増えていくでしょう」

 ただし、利用が広がるにつれ悪知恵を働かせる人が出てくる恐れもある。例えば基本手当でも一時、問題になった、「循環的離職者」という働き方だ。一定期間内に何度も同じ事業所に就職し、失業保険を繰り返してもらおうとする人のことを指す。

「例えば自動車などの期間工のケースがあります。出稼ぎ労働者が毎年半年ずつ工場で働けば、2年で基本手当がもらえてしまうんです。翌年も同じ会社に雇われることが確実なのに、です。高年齢求職者給付金は雇用保険の加入期間が6カ月でもらえてしまうため、そういう利用がより発生しやすくなるともいえます」(先の柳田氏)

 厚生労働省によると、今では同じ事業所に何度も就職すると「警報」が出て、ハローワークが働く側と会社側に事情を問い合わせるシステムができているという。それでも全てチェックすることは現実的ではない。

「いったん辞めて関連会社に再就職したりすると、同じ事業所ではないので捕捉は難しいでしょうね」(同)

 こういう手当でよく見られる、抜け道探しと規制強化のいたちごっこが、今回も起こるのかもしれない。しかし、逆から見れば、こうした過程を経て65歳以上の雇用が一般化していくという見方もできる。

 最後にもう一つ。この給付金は、受給資格を得てから1年以内なら給付金をもらえる。もし皆さんの周りに、昨年夏以降に仕事を辞めた65歳以上のシニアがいれば、ぜひ情報を教えてあげてほしい。仕事探しを続けていれば、この給付金をもらえる可能性がある。

 知らないことによる「損」ほど悔しいことはない。ゆめゆめ情報収集を怠らないことが大切なのだ。(本誌・首藤由之)

※週刊朝日  2019年9月6日号

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