ツマジロクサヨトウ 早期防除徹底を 農水省
2019年09月07日
農水省は、ツマジロクサヨトウの発生拡大を受け、被害のある飼料用のトウモロコシやソルガム、サトウキビについて防除対策をまとめた。被害を抑えるには、早期発見と早期防除が重要なことを強調。同省は、発生農場で使える農薬をホームページで紹介し、早期防除を呼び掛けている。
被害の確認が相次いでいるのが飼料用トウモロコシ。定期的に農場を見回って早期発見に努めることがポイントだとした。ツマジロクサヨトウの登録農薬はないが、発生農場ではBT水和剤やカルタップ水溶剤、アセタミプリド水溶剤、MEP乳剤などが使える。新葉の葉鞘(ようしょう)基部に潜り込む幼虫に届くよう、株の上部までしっかり散布する。
農薬散布が難しい場合や隣接農場への飛散が懸念される場合は、早期刈り取りや耕うんで対応する。すぐに収穫ができない場合は、すき込みで被害の拡大を抑える。幼虫やさなぎをつぶしたり、土中深く埋没したりするとともに、土の表面に作物が見えなくなるまで、深さ12センチ以上を目安に、すき込みを2回行う。
ソルガムはアセフェート水和剤、サトウキビはBPMC・MEP乳剤やカルボスルファン粒剤、クロラントラニリプロール水和剤などが使える。
ツマジロクサヨトウはヤガ類で、幼虫が稲やトウモロコシなどを食害する。国内では7月に鹿児島県で初めて発生を確認。6日時点で東北から九州の17県に拡大している。
被害の確認が相次いでいるのが飼料用トウモロコシ。定期的に農場を見回って早期発見に努めることがポイントだとした。ツマジロクサヨトウの登録農薬はないが、発生農場ではBT水和剤やカルタップ水溶剤、アセタミプリド水溶剤、MEP乳剤などが使える。新葉の葉鞘(ようしょう)基部に潜り込む幼虫に届くよう、株の上部までしっかり散布する。
農薬散布が難しい場合や隣接農場への飛散が懸念される場合は、早期刈り取りや耕うんで対応する。すぐに収穫ができない場合は、すき込みで被害の拡大を抑える。幼虫やさなぎをつぶしたり、土中深く埋没したりするとともに、土の表面に作物が見えなくなるまで、深さ12センチ以上を目安に、すき込みを2回行う。
ソルガムはアセフェート水和剤、サトウキビはBPMC・MEP乳剤やカルボスルファン粒剤、クロラントラニリプロール水和剤などが使える。
ツマジロクサヨトウはヤガ類で、幼虫が稲やトウモロコシなどを食害する。国内では7月に鹿児島県で初めて発生を確認。6日時点で東北から九州の17県に拡大している。
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