豚コレラ発生1年 終息兆し見えず 養豚場、4県40例
2019年09月10日
国内で豚コレラが26年ぶりに発生して9日で1年を迎えた。これまで養豚場での発生は4県40例、殺処分された豚は13万頭超に上る。現在も毎週のように発生が相次ぎ、終息の兆しは一向に見えず、対策を徹底してきた農家の疲弊感は強まっている。
豚コレラ発生農場は1年間で岐阜県から愛知県、三重県、福井県へと広がり、8日までに40例となった。ウイルスを広げて終息を困難にする陽性の野生イノシシは長野県、富山県、石川県でも確認が相次いでいる。
農水省の拡大豚コレラ疫学調査チームは、遺伝子分析などの結果から、ウイルスが中国やその周辺国から侵入したものと推定する。旅行客の手荷物や国際郵便で検疫を受けずに持ち込まれた豚肉製品が廃棄され、野生イノシシが食べて感染した可能性があるという。
岐阜市では発生前の昨年6月下旬には、野生イノシシがウイルスに感染していたとみる。市内の死亡イノシシが例年に比べて多かったためだ。
日本は国際獣疫事務局(OIE)の清浄国で、26年ぶりの発生だった。加えて、症状が弱くて致死率が低かったことも発見の難しさにつながった。感染したイノシシもすぐに死なず、ウイルスをまき散らしていることが分かったため、今年3月には国内で初めて、餌として食べさせる経口ワクチンを投入した。
発生農場の殺処分と消毒による早期封じ込め、農場への侵入を防止する飼養衛生管理基準の徹底で発生を食い止めようとする現場の努力が続くが、終息の見通しは立っていない。政府は5日、防疫対策本部を開き、野生イノシシ対策や農場への対策を整理。豚へのワクチン接種を含めて、あらゆる方策を視野に検討を進めている。
農水省の拡大豚コレラ疫学調査チームがまとめた発生農場の現地調査報告によると、多くの農場に複数の不備が見つかっている。同チームが“見落としやすいポイント”としたのは8項目で、1農場当たり3項目以上の不備があった。「着替えの不十分、防疫服・手袋の未使用」など人・車両の出入り対策の不備が目立った。同省はあらためて対策の徹底を呼び掛けている。
調査対象は7月29日に福井県越前市で発生した34例目まで。農場での発生は、感染イノシシや近隣の農場からのウイルスが、人や車両、ネズミなど野生動物を介し、農場や豚舎に侵入したためだとみられる。
ウイルス侵入防止対策の不備のうち最も多かったのは「作業服の着替え不十分、防疫服・手袋の未使用」で、発生34農場のうち24農場が十分ではなかった。「長靴の履き替えや洗浄が不十分」は17農場だった。野生動物の侵入防止対策では、「ネズミの侵入」対策が19農場で不十分だった。
同省はこれを受けて、①毎日の健康観察と早期通報・相談②野生動物の侵入防止対策の徹底③適切な洗浄・消毒④食肉処理場など関係施設での交差汚染防止対策の徹底⑤畜産資材の導入する場合の対策の徹底──などを呼び掛けている。
豚コレラ発生農場は1年間で岐阜県から愛知県、三重県、福井県へと広がり、8日までに40例となった。ウイルスを広げて終息を困難にする陽性の野生イノシシは長野県、富山県、石川県でも確認が相次いでいる。
農水省の拡大豚コレラ疫学調査チームは、遺伝子分析などの結果から、ウイルスが中国やその周辺国から侵入したものと推定する。旅行客の手荷物や国際郵便で検疫を受けずに持ち込まれた豚肉製品が廃棄され、野生イノシシが食べて感染した可能性があるという。
岐阜市では発生前の昨年6月下旬には、野生イノシシがウイルスに感染していたとみる。市内の死亡イノシシが例年に比べて多かったためだ。
日本は国際獣疫事務局(OIE)の清浄国で、26年ぶりの発生だった。加えて、症状が弱くて致死率が低かったことも発見の難しさにつながった。感染したイノシシもすぐに死なず、ウイルスをまき散らしていることが分かったため、今年3月には国内で初めて、餌として食べさせる経口ワクチンを投入した。
発生農場の殺処分と消毒による早期封じ込め、農場への侵入を防止する飼養衛生管理基準の徹底で発生を食い止めようとする現場の努力が続くが、終息の見通しは立っていない。政府は5日、防疫対策本部を開き、野生イノシシ対策や農場への対策を整理。豚へのワクチン接種を含めて、あらゆる方策を視野に検討を進めている。
出入り対策不備目立つ 農水省報告
農水省の拡大豚コレラ疫学調査チームがまとめた発生農場の現地調査報告によると、多くの農場に複数の不備が見つかっている。同チームが“見落としやすいポイント”としたのは8項目で、1農場当たり3項目以上の不備があった。「着替えの不十分、防疫服・手袋の未使用」など人・車両の出入り対策の不備が目立った。同省はあらためて対策の徹底を呼び掛けている。
調査対象は7月29日に福井県越前市で発生した34例目まで。農場での発生は、感染イノシシや近隣の農場からのウイルスが、人や車両、ネズミなど野生動物を介し、農場や豚舎に侵入したためだとみられる。
ウイルス侵入防止対策の不備のうち最も多かったのは「作業服の着替え不十分、防疫服・手袋の未使用」で、発生34農場のうち24農場が十分ではなかった。「長靴の履き替えや洗浄が不十分」は17農場だった。野生動物の侵入防止対策では、「ネズミの侵入」対策が19農場で不十分だった。
同省はこれを受けて、①毎日の健康観察と早期通報・相談②野生動物の侵入防止対策の徹底③適切な洗浄・消毒④食肉処理場など関係施設での交差汚染防止対策の徹底⑤畜産資材の導入する場合の対策の徹底──などを呼び掛けている。
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関東で記録的暴風 台風15号 各地に農業被害 強い台風15号は午前5時前、千葉市付近に上陸した。関東に上陸した台風としては過去最強級で、最大瞬間風速が千葉市中央区で57・5メートル、木更津市49メートル、東京都大田区43・2メートルなど、関東を中心に記録的な暴風に見舞われた。収穫直前の梨やキウイフルーツなど果実の落果が相次ぎ、ハウスの倒壊など深刻な農業被害が多発。JAは被害状況の確認に追われた。 15号は8日夜から9日にかけて伊豆諸島や関東を通過し、茨城県付近から太平洋側に抜けた。上陸直後の中心気圧は960ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は40メートルで、関東に上陸した台風としては統計開始から最強級だった。 降水量は、千葉県市原市で9日午前6時までの6時間降水量が194ミリ、静岡県伊豆市の天城山で同日午前12時半までの1時間降水量が109ミリと、いずれも観測史上最大値を記録した。 同庁によると台風15号は、10日夜に太平洋上で温帯低気圧に変わる見込みだ。台風に伴い、静岡、神奈川、千葉、埼玉、福島などで一時、土砂災害警戒情報が出された。 9日は首都圏の交通網で大混乱が生じた。また、東京電力によると、順次解消したものの、千葉県や神奈川県を中心に午前8時時点で約93万戸が停電した。静岡や南関東、福島で暴風による農業や施設の被害が多発している。 キウイ無残に 千葉・JAいすみ JAいすみ管内(いすみ市、勝浦市、大多喜町、御宿町)では、梨など旬の農産物の落果、タケノコ用竹林の倒竹、ビニールハウスの破損など、さまざまな被害が全域で発生した。送電線のトラブルで停電も起こり、9日午後6時30分現在、約2700世帯がまだ復旧していない。 生育中の農産物への被害も深刻だ。勝浦市でキウイフルーツを栽培する鈴木忍さん(70)の約25アールの園地では、果実の付いた棚を暴風が押しつぶした。 大量に葉がちぎれて落ち、果実は大きく育ったものを中心に100~200個が落果。11月ごろの収穫に向け、果実を大玉に仕上げつつあった矢先の出来事だった。 JAキウイフルーツ生産部会で部会長を務める鈴木さんは、大玉生産に熱意を持って取り組んでいただけに、「経験したことがないくらいに強い風で、大きく育った果実ばかり落ちてしまった。出荷まであと2カ月だが、大変な状況になり、今後に懸念が残る」と話す。 暴風15号 千葉、静岡、福島…秋の実りなぎ倒す 梨落果相次ぐ ハウスぐにゃり 梨産地の千葉県松戸市で「新高」など梨30アールを栽培する石橋明さん(85)は、園地一帯で落果被害が発生。「全滅だ。もう今シーズンは駄目だよ。もうすぐ出荷だったのに……」と暗い表情で、梨が散らばった園地で作業をしていた。台風が過ぎ気温が35度近くにまで上がった炎天下、石橋さんは汗びっしょりになり、ひたすら落果した梨を拾い園地に掘った穴に捨てる作業を繰り返していた。 今年は天候不順で、「豊水」に「蜜症」が発生するなど栽培には苦労した。それでも肥大は順調で、「新高」の収穫は来週を待つばかりとなった。その矢先に起きた、過去最強クラスの台風被害。梨は仕上がりを踏まえて収穫するため、前倒しで作業をすることが難しく、石橋さんは「本当にがっかりだ。捨てるのはつらい」と落ち込んだ。 静岡県では伊豆半島を中心にハウス損壊などの被害を受けた。県によると、東伊豆町でビニールハウス10棟が損壊。JA伊豆太陽は、ビニールが吹き飛んだり骨組みがゆがんだりする被害が出ているとする。県は、露地野菜の冠水やワサビ田の損害なども確認した。 東北南部の太平洋側では9日朝から昼すぎにかけて風雨が強い状態が続き、福島県でも農業被害が確認された。台風が接近したいわき市を管内に持つJA福島さくらいわき地区本部によると、強風によって多くの水田で稲が倒伏した。JA夢みなみ管内では、一部で収穫期を迎えた梨やリンゴの落果が発生。JA東西しらかわでは、収穫中のキュウリやインゲンが強風によって実が擦れる被害が出た。 台風で落果、塩害恐れ 今後の入荷量懸念 青果市場 台風15号が上陸、通過した9日、首都圏の青果、花き市場では一部を除き、通常通りの取引が行われた。産地が前日から出荷体制を整え、当日の入荷量に大きな影響はなかった。ただ、被害が大きかった関東の産地を中心に、今後の入荷に影響が出る可能性が高い。さらに卸売会社は「一部で見られた物流の乱れは明日以降も続く」と警戒する。 同日の東京都中央卸売市場大田市場の青果物の入荷量は4076トンと、前週月曜日と比べ4%減にとどまった。ただ、市場内では風雨の影響でタマネギなどの出荷箱が雨で濡れ、卸が荷物を移し替えるなど対応した。 横浜丸中青果(横浜市)では、ジャガイモなどの野菜置き場に雨が吹き込む被害が発生。同社は「昼の時点で場内整理が進んでおらず、荷受けも一部遅らせている状況」と説明。千葉青果(千葉市)は「荷物の延着が発生した」という。 JR貨物でも運休が発生した。出荷物の3割を鉄道で運ぶホクレンは「運行状況を把握しながら、出荷の対応に当たる」と説明。船便も同日は一部運休となるなど、影響が出ている。 関東近在産は今後の出荷に大きな影響が出る懸念がある。千葉県JAいちかわでは梨の3割が落果し、2割で擦れ果が発生したという。担当者は「明日の出荷から大きな影響が出そうだ」と話す。茨城県JA水郷つくばでは、今後出荷する梨「あきづき」「新高」などで落果被害が発生。担当者は「従来の台風被害よりかなりひどい」と話す。 また、冬春作に向けた野菜の種まきが始まる時期で、「海沿いの地域では塩害なども考えられる。出荷シーズンの冬場に量が少なくなる恐れもある」(JA全農ちば)と、長期的な影響を指摘する声もある。 花きせり遅らせ対応 花きでも、各市場とも9日の取引では大きな影響はなかった。しかし、関東を中心にハウス倒壊などの被害が発生し、今後は小菊や草花類の入荷に影響が出る見込み。秋の彼岸向け仕入れが活発化し、不足感のある取引が予想される。 東京市場の花き各卸は買参人の到着遅れを考慮し、せり開始時間を1時間遅らせた。大手卸の同日の取引本数は117万本。平年より少ない状況は続く中、前市から2割ほど増え、影響は限定的だった。 次回以降の取引には影響が出そうだ。卸売会社は「千葉の沿岸部や茨城で、ハウス被害が相次いだ」と話す。彼岸向け仕入れが来週にピークを迎え、16日の「敬老の日」、3連休の婚礼需要もある。「来週にかけ、婚礼の装飾で添え花に使う草花類を中心に品薄高となる」(同)と見通す。 関東・東海で生乳廃棄 指定団体の関東生乳販売農業協同組合連合会(関東生乳販連)によると、9日午後3時現在、関東や東海地方などの一部地域で酪農家が停電のために搾乳できず、生乳の廃棄が発生しているという。 千葉、茨城県では広域な範囲で停電が発生し、大量の生乳廃棄が懸念されている。千葉県内では一部乳業メーカーの一部施設などが停電し、生乳の受け入れができなかった。関東生乳販連は「停電の復旧状況によっては10日も廃棄が発生する可能性がある」と話す。 静岡県でも、数戸の酪農家が生乳を廃棄したとみられる。 2019年09月10日
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外食大手“月見商戦”が活況 吉野家 卵3個の「特製御膳」 マック 定番に新商品追加 大手外食チェーンで“月見商戦”が盛り上がりを見せている。牛丼チェーンの吉野家が国産鶏卵を3個使った初の月見商品を投入。ハンバーガーチェーンも定番商品として定着してきた鶏卵を使ったメニューを拡充。旺盛な業務需要に応じ、相場も9月以降堅調に推移している。流通関係者は「外食からの引き合いは価格上げ要因になる」と期待を寄せる。 「卵を三つも使った秋の特製御膳」。吉野家は今月上旬から、鶏卵を使った牛とじご飯と生卵、みそ汁などをセットにした「月見牛とじ御膳」(630円・税別)を発売した。同社によると、牛丼を注文する客の3人に1人は鶏卵を注文。今回の商品も「サイドメニューの一番人気になる卵の新しい食べ方を提案する狙いで企画した」(同社広報)と話す。同社が月見に絡めた商品を取り扱うのは今回が初めて。 5日から一部店舗を除く全国の店舗で販売を始め、商品全体の売り上げ構成比の10%台を占めるなど「想定以上の売れ行き」という。10月15日までの販売を予定する。 ハンバーガーチェーンでも、定番商品に加えて新商品を売り込む動きがある。「月見バーガー」シリーズを展開する日本マクドナルドでは、今期新たに国産鶏卵を使った「黄金の月見バーガー」(390円)をラインアップに加えた。一部店舗を除く全国で10月中旬まで販売する。 ロッテリアは、かつおだし風味の丸形の卵焼きを満月に見立てた新商品「満月月見 肉厚バーガー」(480円)など6種類の限定商品をそろえる。日本ケンタッキー・フライド・チキンは、国内産チキンに目玉焼き風のオムレツを合わせた「月見チキンフィレサンド」(460円)「月見和風チキンカツサンド」(同)を投入。「秋の定番商品として毎年好評を得ている」(同社広報室)という。 原材料の鶏卵は、生産調整事業による減産や実需の旺盛な需要を反映し、低迷が続いた相場も今月に入り上向いてきた。台風15号による停電などの影響も一部地域で出ており、需給は引き締まりそうだ。JA全農たまごの10日の相場は、東京M級基準値が170円と前日比10円高。170円台は約4カ月ぶり。 流通関係者は「月見だけでなく、涼しくなる秋口にこってりした味の味玉や半熟卵などをメニューに加える動きが定着してきた」と指摘。好調な外食需要に加え、台風による影響も予想され、「今後の相場は強い展開」(同)との見方が強まっている。 2019年09月11日
豚コレラ発生1年 経営再開2割どまり 再感染防止と資金繰り課題 本紙農家アンケート 豚コレラが発生して9日で1年が経過した。日本農業新聞は被害農家に経営再建のアンケートをし、回答があった36経営体のうち、「再開済み」と回答したのは7経営体(19%)にとどまっていることが分かった。「再開予定」は19経営体の53%。「再開済み」「再開予定」の課題上位は「再感染の不安」「資金繰り」で、それぞれ69%に当たる18経営体と46%に当たる12経営体が回答。課題にいち早く応える対策が急がれる。 アンケートは、岐阜、愛知、三重、福井の4県で豚コレラの発生で殺処分を経験した38例目までの44経営体を対象とした。回答率は81・8%(36経営体)。 8日までに経営を「再開した」との回答は7経営体(19%)で、「再開予定」は19経営体(53%)だった。26経営体が挙げた課題のうち「再感染の不安」が18経営体で最も多かった。発生から1年が経過しても発生が広がっている上、経営を再開しても、再び感染するリスクがあることに大きな懸念を抱いていることが分かった。 次いで多かった課題は「資金繰り」で、12経営体。殺処分に対する手当金・補償金などについて「発生から支払いまでが長過ぎる」「詳細が分からず、再開計画が困難」「経営再開には足りない」などの意見があった。「収入が途絶えている中、資金がだんだん減っているので不安」「再開に向けた設備投資で資金が底を突きそう」といった悩みもあった。 また、自由記述では12経営体が「豚へのワクチン接種」を認めてほしいと求めていた。 「経営再開した」と答えたのは全て愛知県の農場。既に再開を公表している豊田市の農場の他は野生イノシシでウイルス陽性が出ていない田原市にある農場だ。陽性イノシシの多発地帯でどのように再開を進めるかが課題として浮かび上がった。 「廃業する」は7経営体(19%)。そのうち6経営体は「豚コレラが収まらないから」「豚舎の改築・改修には多額の費用が掛かる」など、豚コレラ対策を理由に含めていた。4経営体は「年齢」や「後継者不在」を挙げた。 殺処分は13万3500頭 1年間で養豚場や研究機関など飼養施設での発生は岐阜、愛知、三重、福井の4県の40例を数える。殺処分の頭数は、発生農場から豚が運ばれた3府県の農場を加えた74農場・3食肉処理場の計13万3494頭となった。 毎週のように発生が続いており、1年間で移動・搬出の制限区域がなかったのはわずか6週間だけだ。 豚コレラウイルスに感染した野生イノシシの発生も相次ぐ。同省の調べでは5日までに岐阜、愛知、三重、福井、長野、富山、石川の7県で計1099頭で、陽性イノシシが見つかっている。 2019年09月10日
豚コレラ発生1年 終息兆し見えず 養豚場、4県40例 国内で豚コレラが26年ぶりに発生して9日で1年を迎えた。これまで養豚場での発生は4県40例、殺処分された豚は13万頭超に上る。現在も毎週のように発生が相次ぎ、終息の兆しは一向に見えず、対策を徹底してきた農家の疲弊感は強まっている。 豚コレラ発生農場は1年間で岐阜県から愛知県、三重県、福井県へと広がり、8日までに40例となった。ウイルスを広げて終息を困難にする陽性の野生イノシシは長野県、富山県、石川県でも確認が相次いでいる。 農水省の拡大豚コレラ疫学調査チームは、遺伝子分析などの結果から、ウイルスが中国やその周辺国から侵入したものと推定する。旅行客の手荷物や国際郵便で検疫を受けずに持ち込まれた豚肉製品が廃棄され、野生イノシシが食べて感染した可能性があるという。 岐阜市では発生前の昨年6月下旬には、野生イノシシがウイルスに感染していたとみる。市内の死亡イノシシが例年に比べて多かったためだ。 日本は国際獣疫事務局(OIE)の清浄国で、26年ぶりの発生だった。加えて、症状が弱くて致死率が低かったことも発見の難しさにつながった。感染したイノシシもすぐに死なず、ウイルスをまき散らしていることが分かったため、今年3月には国内で初めて、餌として食べさせる経口ワクチンを投入した。 発生農場の殺処分と消毒による早期封じ込め、農場への侵入を防止する飼養衛生管理基準の徹底で発生を食い止めようとする現場の努力が続くが、終息の見通しは立っていない。政府は5日、防疫対策本部を開き、野生イノシシ対策や農場への対策を整理。豚へのワクチン接種を含めて、あらゆる方策を視野に検討を進めている。 出入り対策不備目立つ 農水省報告 農水省の拡大豚コレラ疫学調査チームがまとめた発生農場の現地調査報告によると、多くの農場に複数の不備が見つかっている。同チームが“見落としやすいポイント”としたのは8項目で、1農場当たり3項目以上の不備があった。「着替えの不十分、防疫服・手袋の未使用」など人・車両の出入り対策の不備が目立った。同省はあらためて対策の徹底を呼び掛けている。 調査対象は7月29日に福井県越前市で発生した34例目まで。農場での発生は、感染イノシシや近隣の農場からのウイルスが、人や車両、ネズミなど野生動物を介し、農場や豚舎に侵入したためだとみられる。 ウイルス侵入防止対策の不備のうち最も多かったのは「作業服の着替え不十分、防疫服・手袋の未使用」で、発生34農場のうち24農場が十分ではなかった。「長靴の履き替えや洗浄が不十分」は17農場だった。野生動物の侵入防止対策では、「ネズミの侵入」対策が19農場で不十分だった。 同省はこれを受けて、①毎日の健康観察と早期通報・相談②野生動物の侵入防止対策の徹底③適切な洗浄・消毒④食肉処理場など関係施設での交差汚染防止対策の徹底⑤畜産資材の導入する場合の対策の徹底──などを呼び掛けている。 2019年09月10日
乳業 自家発電を拡充 非常時も生乳受け入れ 昨年9月の北海道地震により道内全域で発生した大規模停電を教訓に、大手を中心に乳業メーカー各社が道内工場の自家発電設備の拡充に動いている。非常時でも酪農家から生乳を受け入れ、生乳廃棄の発生を防ぐとともに供給網を安定させる狙いだ。各社の設備導入は2020年以降に本格化する。…… 2019年09月06日
米の景況8月調査 需給「緩む」へ転換 作付け意向調査反映 大幅下落の42 米穀機構は5日、米の需給や価格動向に関する景況調査(DI)について、8月分の結果を公表した。向こう3カ月の需給見通し指数は前月比9ポイント減の42と大きく下げた。3カ月ぶりに基準点の50を下回り、需給見通しは「緩む」に転じた。農水省が公表した産地の作付け意向調査を受け、2019年産米の供給量が潤沢になるとの見方が広がった。…… 2019年09月06日
ご当地おじさんはんこ ペタンと13人 農家、宿、食堂…地域で活躍 北海道 学生が発案 魅力や思い 冊子とセット 北海道内各地で活躍する農家らの顔を描いた「ご当地おじさんハンコ」が誕生した。札幌市立大学の学生がデザインし、各人の思いや住む地域の特色などをまとめた冊子「おじさん図鑑」をセットにして販売する。人口減少が進む地域や住む人の魅力を知ってもらい、交流人口を増やす起爆剤を目指す。(望月悠希) ファン獲得「応援を」 同大学と長靴などを作るゴム製品メーカーのミツウマ(小樽市)、北海道立総合研究機構(道総研)が開発した。商品開発を学ぶ同大デザイン学部の学生が実習で、「おじさんはかわいい。若い女性に受けるのではないか」と考案。はんこを通じて、地域をPRすることにした。人口3000人前後の町を中心に地元で活躍する「おじさん」を調べ、40~80代の13人を選んだ。 学生は現地を訪れ、日々の暮らしや町の自慢などの話を取材し、それぞれの思いや町の紹介などをまとめた「おじさん図鑑」を作成。取材の様子は、インターネットの動画で公開中だ。さらに、「イケメン」「優しさ」「モテる」などを学生目線から星の数で評価し、はんこに同封した。 モデルは冒険家や宿の経営者、食堂店主ら多様。その一人、置戸町で畑作に取り組む奥山忠明さん(67)は、タマネギやテンサイなど23ヘクタールを栽培する生産者だ。JAきたみらい理事も務め、同町で2017年度オープンした「おけと勝山温泉 ゆぅゆ」の理事長として活躍している。「かなり似ていて、びっくりした」と、完成度の高さに驚いたという。「イケメン」が5段階評価の四つ星、「やさしさ」は五つ星の「麗(うるわ)し系」と評価された。はんこは温泉の売店に置き、反響は大きい。「話題が広がって、温泉に来る人が増えればうれしい」と期待する。 はんこは、「おじさん」が暮らす町の道の駅や勤務先などで販売する。2個セットで1200円(税別)。1個は購入した町の「おじさん」で、もう1個は違う「おじさん」が入っており、他地域への関心を深めてもらおうと工夫を凝らす。 仲間と一緒に、はんこ作りに携わった同大学大学院1年の上山朝史さん(22)は「取材に行くと、どの人も快く受け入れてくれた。北海道は菓子や食品などが有名だが、その原材料を作っている人たちの重要性が分かった」と話す。 はんこの製造を担うミツウマは、創業100周年の記念商品として位置付けた。3月の発売開始以降、「推薦したいおじさんがいる」「おばさんはんこを作ってはどうか」などの問い合わせが相次いでいるという。同社工業用品製造部兼総務部の岡田秀敏次長は「これまで北海道から支えてもらったことへの感謝もある。地域おこしにつなげたい」と期待する。 2019年09月03日
豚コレラ余波 ヤギ市中止? 怖い感染拡大 人手不足も 愛知県ピリピリ 例年6月に愛知県新城市で行われる子ヤギのせり市が、今年は開催のめどが立っていない。2018年9月から続く豚コレラの影響で運営の人手が足りないことに加え、畜産関係者が集まることによって感染拡大につながる恐れがあるからだ。10年の口蹄(こうてい)疫の際に規模を縮小したことはあるが、中止は例がないという。さまざまな品種のヤギを手に入れる貴重な機会とあって、除草などで活用している農家からは落胆の声が漏れる。 せり市は愛知県緬山羊(めんさんよう)協会が主催。県ヤギ品評会と併せて毎年6月中旬に開く。同協会だけではスタッフが足りないため、後援する県畜産課職員の応援を得て、同市の家畜市場で実施していた。しかし、今年は同課職員が豚コレラ防疫対応に追われており、さらに流行が終息しないことから開催を延期。協会は「畜産関係者が集まるので、感染拡大のリスクがある。ひとまず延期しているが、現状では開催のめどが立たない」と打ち明ける。 協会によると、国内でヤギのせり市があるのは群馬、長野、沖縄と愛知の4県。このうち沖縄では主に食肉用、群馬と長野は乳用の「日本ザーネン種」を出品。トカラヤギや雑種、愛玩用の品種も取り扱うのは愛知県だけで、近年のヤギ人気の高まりもあって注目の市場となっている。 ヤギを除草に活用する農家にも影響が及んでいる。岐阜県白川町でトマトや有機栽培米を手掛ける佐伯薫さん(64)、美智代さん(57)夫妻は10年ほど前から、あぜの除草のためにヤギを飼養。昨年まで5頭いたが、譲ったり死んでしまったりで今は1頭だけに。例年なら草がきれいになくなっている堆肥置き場周辺は手が回らず、雑草が茂っている。 美智代さんは「近所の子どもたちが触っても危なくない、角がない子ヤギが欲しい。早くせり市が再開できるようになってほしい」と願う。 2019年09月03日
農水省推計 食料支出総額 人口減で縮小傾向 需要増の「加工」確保を 農水省は、国内の食料支出総額が2025年以降、人口減少などの影響で縮小傾向が進むとする推計結果を明らかにした。加工食品への支出が増え、1人当たり食料支出額は拡大するが、人口減少がその伸びを相殺する。一方、高齢化などを背景に中食のニーズが増えると見通す。食料支出総額が長期的に縮小することを踏まえ、輸入品の割合が高い加工・業務用需要の確保を提起する。…… 2019年09月03日
農産物輸出 検疫条件協議短縮へ 害虫防除事前に実証 農水省 農水省は、農産物の輸出解禁に向けた検疫条件の協議短縮化に乗り出した。相手国が警戒するとみられる害虫が発生していないことを事前に実証し、速やかな協議につなげる。一部の果樹で先行して取り組んでおり、薫蒸など従来の検疫ではなく、より品質が維持しやすい交信かく乱剤などを組み合わせた手法を採用。モデルを確立し、他品目の拡大も視野に入れる。 輸出解禁に向けた協議では通常、侵入する恐れのある病害虫を輸入国が特定する。輸出国はその病害虫の検疫措置を設定する必要がある。 日本はこれまで、相手国との協議で対象となる病害虫を定め、検疫措置の効果を実証していた。ただ、対象の病害虫の特定作業などに時間がかかり、同省によると、一つの品目の輸出協議が終わるまで平均9年かかっていた。農林水産物・食品の輸出拡大に向けて、同省は検疫協議の短縮が必要と判断し、これまでの協議の在り方を見直した。 相手国が公表している病害虫の情報や第三国との協議内容に基づき、協議に入る前に防除対象の病害虫を特定。その病害虫の防除を実証し、日本から輸出しても問題ないことを示してから、相手国との協議に臨むという対応の確立を目指す。 検疫措置は薫蒸の対応が主流だが、農産物の品質低下などを懸念する産地は多い。このため同省は交信かく乱剤や通常の薬剤散布などを組み合わせて病害虫を防除する手法を新たに取り入れた。 2017年度からリンゴやミカンなどの一部産地で採用し、害虫を無視できるレベルまで抑えることができたという。既に特定の国との交渉で、新手法の実証データを活用しており、協議短縮のモデルにする考えだ。 事前にデータを集める期間が必要で、同省は「国・地域ごとに情報を蓄積し、実証方法を確立することで、事前準備の期間も短くしたい」(植物防疫課)と考える。将来的に、輸出解禁に向けた協議を6年程度に短縮することを狙う。 2019年09月02日