一時、ちょっとしたブームにもなった不動産投資。成功談もあれば失敗談もあり、「結局、不動産投資って儲かるの?」と考える方も多いでしょう。しかし不動産といっても「アパート・マンション」「新築・中古」「木造・RC系」と種類がありますので、考えれば考えるほど儲かるかどうかが分からなくなります。そこでこの記事では「新築 vs 中古」「木造 vs RC」を比較し、利回りや空室率、価格などを解説します。果たしてどちらが儲かるのか、ご自身の目で確かめてみてください。
構造別【利回り】相場
まずは構造別の利回り相場を見てみましょう。以下はLIFULL HOME‘Sが提供する「見える!賃貸経営」に掲載されている全国の利回り相場を平均した数値です。
- アパート:10.65%
- 区分所有マンション:11.83%
アパートの方が利回りは低くなっていますが、明らかに大きな差ということはありません。空室対策次第ではカバーできる範囲と言って良いでしょう。ただ上記のデータは、LIFULL HOME’S 不動産投資に掲載した不動産会社が「賃料 × 12ヶ月 ÷ 購入価格」で計算した利回りです。アパートの構造も木造に限らず、RCや鉄骨もあるため一様に上記の利回りになるとは限りません。そこで新築と築年数5~15年ほどに絞り、全国の物件から木造アパートと区分所有マンションをランダムに500軒ずつ物件を抽出。最後に平均を取ったところ以下の利回りとなりました。
| 新築木造アパート | 7.03% |
|---|---|
| 新築区分所有マンション(RC/SRC) | 4.40% |
| 木造アパート | 7.17% |
|---|---|
| 区分所有マンション(RC/SRC) | 5.44% |
不思議なことに今度はアパートの方が利回りは高くなっています。少し空室対策をしただけではカバーできるかどうか微妙なラインです。賃貸需要の面で言えば、木造アパートより区分所有マンションの方が人気はあります。故に物件価格も区分所有マンションの方が高くなるため、適正な家賃相場で計算すると利回りが多少低くなる傾向にあります。つまり、利回りが高いアパートは空室のリスクが高い分利回りが高い。RCなどの区分所有マンションは、空室リスクは低いが利回りも低いと考えると良いでしょう。
構造別【空室率】の比較
では、実際のところ空室率は木造とRCではどのように違うのでしょうか。株式会社タスでは毎月「賃貸住宅市場レポート」を公表しており、レポートの中では一都三県における空室率の遷移を確認できます。2018年12月時点でのレポートを見てみましょう。
【出典】株式会社タス
木造と軽量鉄骨のアパートは最も低い埼玉県の30ポイントほどなのに対し、神奈川県は42ポイント近くとかなり高い空室率になっています。鉄骨系のマンションに関しては、どのエリアもアパートの半分以下の空室率です。やはり区分所有マンションの方が空室率では圧倒的に有利のため、先ほどの利回り相場に影響していると考えて間違いないでしょう。
構造別【物件価格】の目安
では、「新築」と「中古」という点でもう少し詳しく利回りの違いを考えてみましょう。中古物件は物件価格に相場というものがありません。「築年数が古くなるほど安い」とは限らず、立地が良ければ築古物件でも価格は高くなります。そこで新築物件ならいくらで建てられるかという点で見てみましょう。
総務省がまとめている建築着工統計調査では、「㎡あたり」と「1戸あたり」の工事費単価が公開されています。以下は、2019年6月の調査結果から「貸家」に絞り込んで各構造別で工事費を抽出したデータです。
| 工事費 | 木造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 鉄筋コンクリート造 | 鉄骨造 | その他 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1㎡あたり工事費予定額 | 17万円 | 18万円 | 23万円 | 24万円 | 24万円 |
| 1戸あたり工事費予定額 | 612万円 | 1106.3万円 | 1035.9万円 | 1126.6万円 | 1246.7万円 |
木造は1㎡17万円の工事費なのに対して、RC系は20万円を優に超えます。1戸あたりの単価で見ても1.8倍ほどの差があるため、新築はよほど資金力がない限り木造アパートが有力候補となるでしょう。仮に家賃7万円の1K(25㎡)を1戸所有した場合、木造とRC系で比較して利回りがどう違うか見てみましょう。
- 【木造】
- (7万円 × 12ヶ月)÷ 1戸あたり工事費612万円 = 13.72%
- 【鉄骨鉄筋コンクリート造】
- (7万円 × 12ヶ月)÷ 1戸あたり工事費1106.3万円 = 7.59%
- 【鉄筋コンクリート造】
- (7万円 × 12ヶ月)÷ 1戸あたり工事費1035.9万円 = 8.10%
- 【鉄骨造】
- (7万円 × 12ヶ月)÷ 1戸あたり工事費1126.6万円 = 7.45%
新築の木造建築なら、不動産投資で目指すべきラインと言われる10%を超えました。ただ上記まではあくまで建築費のみですので、他諸費用を含めれば10%を切るのは間違いないでしょう。それにしても木造かRCかで利回りが倍ほども違うことに驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産投資はもうかるのか?
ここまで「新築 vs 中古」「木造 vs RC」で利回りや空室率の違いを見てきましたが、改めて以下の違いがあるのは認識しておきましょう。
| 木造 | RC系 | |
|---|---|---|
| 中古価格 | 安い | 高い |
| 中古利回り | 7.17% | 5.44% |
| 空室リスク | 高い | 低い |
| 新築建築費(㎡単価) | 17万円 | 20万円前後 |
どちらが良いと決められないのがもどかしいところですが、アパートかマンションか、はたまた中古か新築かは上記を基本として物件スペックを比較するのが重要です。特に不動産投資で成功している人の多くは「限りなく土地値に近い価格で買う」というのをモットーにしているケースが多くあります。つまり、利回りや物件スペックに加えて「物件価格の安さ」が不動産投資で儲けられるかどうか決まるのです。
例えば、区分所有マンションは空室が出ると利益がゼロ。対するアパートは複数戸あるのが一般的なため、ある程度の空室が出ても利回りがゼロになることはありません。かといってアパートを選ぶべきとは言えず、木造なら老朽化に伴って修繕費が嵩みますし、空室リスクもRCより高め。しかし、RC系の建物なら長期間保有しても損がないわけではなく、築年数が経過するほど価値がゼロに近くなり売るに売れません。対するアパートなら土地が残るため、最低でも土地の売却による利益は見込めます。
このように「利回りに対するリスク度」「価格に対する収益性」「将来的なコストと資産価値」という視点で考えるのが、不動産投資の正しい考え方なのです。
Source: 不動産投資を考えるメディア
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