第119話 最強賢者、リーダーを任せる
「大体、予想通りの時間だな」
魔族を倒し、結界を起動した日の翌日。
俺達は学園生とともに、王都近辺にある平原へと来ていた。
言うまでもなく、昨日魔道具を埋めた――つまり、魔物が出現する場所の近くである。
魔力の流れを見る限り、魔物が出てくるまでは、あと30分といったところだろう。
ほとんど予想通りだ。
「魔物は、見当たらないな……」
「こんなに平和そうな感じなのに、本当に魔物なんているのか?」
「マティアス君が出てくるって言ってたんだし、出てくるんじゃないかな……」
そんな中、学園生たちはあれこれ話しながら、陣形を組んでいる。
まあ陣形とはいっても、今回使うのは、かなり簡易的なものなのだが。
例の誘導魔法を使う以上、あまり複雑なものは必要ないからな。
「ほ……本当に、僕がリーダーでいいんですか?」
学園生達を見て、俺の近くにいた生徒の一人が、心配そうに俺に聞く。
今回の作戦のリーダーとして指定された、メイラードだ。
「ああ。この平原に魔物が現れてから、平原の魔物がいなくなるまでは、メイラードがリーダーだ」
俺は学園をやめる予定だし、ルリイ達もリーダー向きというわけではないので、学園生の中からリーダーの素質がありそうな生徒を選んで、リーダー候補にした。
メイラードは、そのうちの一人だ。
「はい! マティアス先生!」
ちなみにメイラードは、なぜか俺を先生扱いしている。
というか、最近はメイラードに影響されたのか、生徒の半分くらいが俺を先生扱いしている気がする。
俺はあくまで、生徒枠なのだが……。
そんなことを考えながら、俺は生徒たちから離れて、魔物の発生地点や生徒達の様子を見る。
俺とルリイ、アルマ、イリスは、今回の第一波討伐の作戦からは除外されることになっている。
第二波については、伝えていないが――
「最後にメイラード、不測の事態への対処は、覚えてるか?」
「はい! 躊躇せず、学園生を連れて王都に逃げる、ですよね!」
こういうことになっている。
最初から第二波の襲来が分かっていては、せっかくの訓練が台無しだからな。
集団で撤退するというのは、けっこう難しいのだ。
今回は第二波との戦闘を俺達が全て引き受けてしまうため、難易度は大きく下がることになるが、体験しておくのはいい経験だろう。
――そんなことをしている間に、魔物が姿を現し始めたようだ。
うん。弱そうな魔物だな。
これでは、俺達が倒しても面白くも美味しくもなかっただろう。
だが、生徒達にはそう見えていないようだ。
「なんだあの数!」
「めちゃくちゃ多いぞ!」
次々に現れる魔物を見て、生徒たちがうろたえ始める。
魔物の数は、およそ1200といったところ。
戦闘に参加する生徒数は150人ほどなので、一人につき8匹ほど倒せばいい計算だ。
「うろたえるな! 魔物の数は、マティアス先生の予測とほぼ完全に同じだ! 予定通りに討伐するぞ!」
生徒の多くがうろたえる中、メイラードが叫ぶ。
すると生徒たちは落ち着きを取り戻し、予定通りに魔法を撃ち始めたようだ。
遠距離攻撃に向かない失格紋の生徒は、魔法の撃ち漏らしを倒すべく、前へと出て行く。
やはりメイラードも、リーダー候補となるだけある。
なかなか頼りにされて――
「マティアスが倒せるって言ったんだ! 倒せる!」
「マティアス先生が設置した、魔道具だってあるんだ!」
「みんな、マティ……メイラードの指示に従うぞ!」
「よっしゃ、倒すぜ!」
……あれ?
想像してたのと違うな。
まあ、何だかんだで命令はしっかり通っているようなので、よしとするか。
そんな感じで、魔物は次々に倒されて、その数を減らしていった。
――そして、そろそろ本命が登場する頃だ。
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