アルベドさん大勝利ぃ!   作:神谷涼

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間が空いてすみません。
イベント後の疲れと、急に上がった気温で死んでました……。



26:いのちをだいじに!

 

「シャルティア・ブラッドフォールン、お前は私が失望する理由がわかるか?」

 

 モモンガが、冷たく問う。

 

「わ、私の戦い方が(つたな)かったせいでしょうか」

 

 主の冷たい視線、仲間の憤怒の視線を浴びるシャルティアは、カタカタと震えながら答える。

 絡みつく絶望に、設定された口調さえ紡げない。

 

「違う」

 

 モモンガは断じた。

 

「で、では御身の気に入られた人間に害を与えたため?」

「違う」

 

「さ、先ほど反省の言葉もなく御身を求めたため?」

「違う――」

 

 モモンガが、深々と失望の溜息をついた。

 至高の御方の失望は、NPC全ての絶望である。

 玉座の間に集った全員が恐怖に青ざめ、またシャルティアに怒りを抱いた。

 

「……もうよい。お前は本当に何もわかっていないのだな」

 

 傍らのアウラとシズの頭を軽く撫で。

 エクレアをシズに手渡し、モモンガは立ち上がる。

 絶望のオーラなど一切発していないが……それだけに、NPCは恐怖を感じる。

 部外者のハムスケも空気を読んで黙っていた。

 カツカツと歩き――デミウルゴスの前に立つ。

 

「お前たちは、見事に働いてくれている。私が何を求めたがゆえ、働いているか……覚えているか?」

「ハッ、至高の御方たるモモンガ様の安住の地ナザリックを、永劫に維持すべく働いております!」

 

 モモンガは微笑み、頷いて――次に、セバスの前に立つ。 

 

「お前には最も危険な任務を任せている。私がお前に下した最優先の命令を、覚えているか?」

「真なる脅威、未知数の力に出会ったならば、撤退こそ優先いたします」

 

 満足げに頷き――続いて、マーレの前に立つ。

 

「今回の魔樹討伐、お前には討伐以外にも重大な任務があった。守備はどうだった?」

「は、はい。あのモンスターの重要そうな部位は全て採取しました。残る肉体も、コキュートスさん配下の力も借りて運搬中です」

 

 微笑み、マーレの頭を撫でる。

 姉を妬んでいた少年の顔がゆるみ、赤らむ。

 しばし、マーレの髪に指を絡めてから、アルベドの前に立った。

 

「さて。アルベドよ、ナザリックの現ギミック稼働率はいかほどだったかな」

「現在、稼働中のトラップその他はありません。また、ダンジョン内での戦闘訓練は第一層以外では禁止となっております」

「この会議中の浅層部守護はどうしている?」

「各階層の自動配置モンスターの位置をいじっておきました」

 

 アルベドの答えに、少なからぬNPCがざわめくが。

 高い知性を持つ者らは頷き、モモンガもまた微笑んだ。

 配偶者たる守護者統括の頬に軽くキスをし、離れ――玉座の間の隅、一人離れた場所にいたナーベラルの前に立つ。

 

「ナーベラル・ガンマ。この世界に来て最初に、私を失望させたのはお前だった」

「……はい。その通りです」

 

 ほぼ全員が初耳だったのだろう。

 無数の視線が黒髪ポニーテールのメイドに突き刺さった。

 姉妹たるプレアデスの面々、上司たるセバスも、目を見開いている。

 ナーベラルは震え、消え入らんばかり。

 同じNPCならば、姉妹とて許してはくれまいと、彼女は黙っていたのだ。

 

「なぜ、私を失望させたのだったか?」

「……私が、死んで詫びると申し上げたから、です」

 

 デミウルゴスが「愚かな」と吐き捨てるように呟く。

 アルベドとパンドラズ・アクターも頷いた。

 とはいえ、他の多くは困惑するばかり。

 失望させた意味のわからぬ者が圧倒的に多いのだ。

 

「では今、改めて詫びてみせよ」

「っ……この身は御身の財が一つ。でありながら、御身を損なわせる言葉を謝罪として吐いた罪、魂に刻みました。どうか、至らなかった私にお慈悲を」

 

 息を飲み、跪いて、言葉を搾りだすナーベラル。

 

「よかろう。お前の全てを許す、ナーベラル・ガンマ。以後は決して、己の価値を見損なうな」

「あ、ありがとうございます!」

 

 ひれ伏し、床に(ひたい)を擦り付けた。

 プレアデスの他の面々も安堵する。

 この罪ゆえ、他の姉妹らが名誉ある仕事を与えられる中……ナーベラルは一人、閑職に追いやられていたのだ。

 

「他の者も、以後はナーベラルの罪に言及すること禁じる。また、死を詫び代わりに使う者は、彼女と同様に我が失望を受けると知れ」

 

 言いつつ、ナーベラルの手を取り、立ち上がらせた。

 そして抱擁し、髪を撫でる……ナーベラルの瞳から涙がこぼれた。

 そして、モモンガは再び歩を進め、シャルティアの前に立つ。

 

「モ、モモンガ様……」

 

 シャルティアが渇いた口で、必死に言葉を紡ぎ、慈悲を乞わんとする。

 

「お前の罪はわかったか?」

「こ、コキュートスを、ルプスレギナを、アウラの魔獣を……危険に晒した、からかと……」

 

 モモンガが、再び歩き始める。

 ルプスレギナの前へと。

 

「仮にコキュートスが死んでいたなら、その蘇生には金貨5億枚が必要となる。ルプスレギナも相当額が必要だ。アウラの魔獣には、補充の効かないものも多い。傭兵モンスターとして雇いなおすしかあるまい。ルプスレギナがいれば、ペナルティ覚悟の即時蘇生もできたろうが……今回、最も危機的状況にあったのは彼女自身」

 

 人狼メイドを抱えるように抱きしめ、撫でる。

 目を細め、緩みそうになる顔を引き締める、ルプスレギナ。

 そして一方で、モモンガは別の守護者へと振り向き、尋ねる。

 

「パンドラズ・アクター――我が子よ、この世界で億単位のユグドラシル金貨を獲得する方法の目途はついたか?」

「いえッ! あーらゆる物資を試しておりますが、換金率に優れた品は見つかっておりませんッ! 目下の現地で獲得した最大額物資は霜の竜(フロストドラゴン)の皮。しかァーし、換金額は100金貨~前後ッ! 今回の魔樹の素材による換金は期待しておりますッ! もっとも、生命体やモンスターの直接換金は……不可能かと」

 

 最後に憂いに俯き、視線を主に向けて言う。

 モモンガは眉を寄せ、憂鬱な顔で、頷いた。

 この失望はパンドラズ・アクターの責任ではない。

 元は中級以上のアンデッドを直接、換金すれば……と思っていたが不可能。スキルで作成したアンデッドらは死後に消えてドロップ品を残さない。土台に人間の死体を用いれば永続化できるとわかったが……データクリスタルや金貨を落とさぬ以上、収入とも呼べない。

 ナザリック・オールド・ガーダーの装備を剥いでもみたが、ユグドラシルでも下級アイテムゆえだろう。さしたる金額とはならない。

 定期的な金貨獲得手段は、ナザリック全体の最優先課題だった。

 

「幸運にも全員が無事に帰れたが……誰か一人でも欠けていれば、ナザリックの財政は相当の痛手を受けていた。だからこそ、私は生還を至上命令としたのだ。わかるか?」

 

 全員を見回し、言う。

 

「死とは何だ? 少なくともお前たちのそれは、私に対する嫌がらせに他ならん。お前たちはナザリックを放棄し、外でだけ生きたいのか? お前たちの多くは外で強者かもしれんが……一般メイドたちやエクレアはどうなる? 私は外で風雨に晒されるのが似合いか? ナザリックが維持できぬとはそういうことだぞ。死を以て詫びる愚かさが、わかるか?」

 

 ナーベラルと同じ言葉を、ともあれば口にしかねぬ者は多かったのだろう。

 全員がひれ伏し、地に頭を擦り付けた。

 

「ならば、私が現地の戦力を重視し、彼らを重用する理由もわかるな? お前たちがいかに強かろうと使い潰したりはできぬ。我らにとっては、彼らこそ真の兵力たりうるのだ」

 

 全ては己たちへの優しさと知り、NPCたちは全員がむせび泣いた。

 

「再び言っておこう。召喚や作成系のスキルや呪文で呼び出したモンスターはかまわんが……ナザリックの者は誰一人として欠けるな。死は、私に対する最大の反逆と知れ」

 

 再び、全員が床に頭を打ち付けんばかりにひれ伏す。

 そして、モモンガはシャルティアに目を向けた。

 

「ゆえに、同じナザリックの仲間を殺す以上の罪はない。釈明に値する理由もなければ、なおさらにな」

 

 冷たく見据え。

 そして、断罪は為される。

 

 

 

「で、そいつに延々と戦闘訓練させてるわけかい」

 

 ヒルマが呆れたように溜息をついた。

 

「うむ。まあ、アルベド様を始め、他の守護者にも交代でするよう言っているし……私が細かく指示するより、自主的に戦術を習得してほしいからな」

「んっ……もうちょっと体重かけていいよ」

 

 モモンガはヒルマにのしかかり、圧力を強める。

 

「こうか?」

「そうそう……加減はしっかりね。力を入れすぎてもいけないよ」

 

 モモンガは、ヒルマに指導されつつ、マッサージの習得に余念がなかった。

 性的な奉仕よりも、日常に疲れをねぎらう方向で技巧を入れた方がいいと言われたのだ。

 

「アンタのことだし、アルベド様にするつもりなんだろう?」

「そうだ」

「回数はアルベド様優先でいいけど、他の奴にもやってやりなよ」

「む……? ねぎらいとして、か?」

「そうだよ。特にそのシャルティアって子は、みんなの前で叱ったんだろ? 恥もかかせたし、放っておくと妙な遺恨になるかもしれないからね」

 

 NPCというシステムと、その服従性を知らないヒルマにとってみれば、人前で叱りつけた従僕など、いつ裏切るとも知れぬ存在だ。それも利害ではなく、古い遺恨からの逆恨みで、行動を起こす。

 妹分のようなこの娘――モモンガが、そんな部下を扱いきれるとは思えない。

 逆に、周りの忠誠心によっては、シャルティアとやらが他の部下から虐待じみた目に合わされる可能性だってある。早めに、(みそぎ)は終わらせるべきだと……ヒルマは考えた。

 

「あいつにはもっと反省させたいんだが……」

「そりゃ、すぐにしてやる必要はないさ。他の連中も順番にマッサージしてやって、最後にするくらいでいいだろうよ。アルベド様にと、他のやつに一回、そうして毎日してやればいいんじゃないかい?」

「なるほど……皆の前では恥ずかしい奴もいるだろう。各自の部屋を回ってしてやるべきかな」

「ああ。それがいいね。とはいえ、性的なマッサージは控えておきなよ」

 

 先日の机下での奉仕を聞いて、死すら覚悟したヒルマである。

 釘を刺すのは忘れない。

 

「む……アルベド様とも、か?」

「そうだよ。むしろアルベド様にこそ、しない方がいい」

 

 モモンガに衝撃が走る!

 

「なぜ……だ?」

「がっついて見えないようにだよ。さりげなく触れるに留めておきな」

「う……でも……」

「がっついてくより、アルベド様から求められたくないかい?」

 

 ぶんぶんと、何度も頷くモモンガ。

 

「だったら、アルベド様にも普段はさりげなくアピールするだけにしときなよ。仕事の時間、ねぎらう時間、愛し合う時間、としっかり切り替えるんだ」

「き、切り替えか……私もがんばっているつもりなんだが、アルベド様との時間はなるべく触れあっていたいというか……」

「アンタ自身が辛抱できないなら、それこそ他の子を使っちゃどうだい。私だっているだろ」

「そ、そうだな……じゃあさっそく……頼んでもいいか?」

 

 いそいそと、ヒルマに顔面騎乗を始めてしまうモモンガだった。

 





 資産管理的に考えて、NPC死亡とか悪夢……というモモンガさん。
 保身より維持、なのでアイテム消費は無論、お金の消費にもうるさいです。
 ポーションもスクロールもなるべく使わせてません。
 目下の目的は換金率よくて、定期的に手に入る品を見つけること。

 なお、まだまだゲーマー脳も残ってるモモンガさんからすれば、ヘイト管理もできないアタッカーが失望されるは当然。開幕ぶっぱしてフレンドリーファイアする戦犯シャルティアが晒されるは道理。
 その後、守護者やプレアデスはみんな戦闘連携訓練を命じられてます。
 アルベド含めNPC組がモモンガさんの傍にいる率、下がりました。
 クレマンティーヌとヒルマが、臨時側仕えになってます。

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