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失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~ 作者:進行諸島

第一章

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第8話 最強賢者、剣術の衰退に気付く

 読めたぞ。ビフゲルは痛がるふりで、時間を稼ごうとしている。

 ならば俺のするべきことは、追撃だ。

 俺がビフゲルを降参させるのが早いか、ビフゲルが魔法を完成させるのが早いか。これはそういう勝負だ。


 そう理解した俺は、木剣を持ってビフゲルに攻撃を加え始めた。

 ――だがビフゲルは痛がったり怖がったりするばかりで、いつまで経っても魔法を発動する様子はない。


 流石に怪しいと思い始めた俺は、身体強化を少し削って、巧妙に隠されたものでもない限り全ての魔力を探知できる魔法【能動魔力探知】を発動してみた。

 範囲内にそれらしき魔力反応は――存在しない。


「マティ。その辺でやめてやれ」


 俺が探知の結果を確認したところで、父カストルから声がかかった。

 よく見てみるとビフゲルは、泡を吹いて気絶している。


「……ビフゲルは、何をしようとしていたんだ?」


「マティを倒そうとしていたんだ」


「わざと隙を見せたのは?」


「あれはわざとじゃない。普通にバランスを崩しただけだ」


 ……ビフゲルは、そこまで弱かったのか。

 ああ。父カストルの伝えたいことが、分かった気がする。


「分かった! つまり父上が伝えたかった常識っていうのは、練習してもできるようにならない、ビフゲルみたいなのもいるって事だね!」


「ダメだこいつ! 全く分かってない!」


 ……気がしたのだが、違ったようだ。


「じゃあ、何を伝えようと?」


「ビフゲルの強さだ」


 ほら。やっぱり当たってるじゃないか。

 どこが違うというのだろうか。


「ビフゲルは別に弱くないぞ。同年代から見たら、むしろ強めの部類に入る」


 ……え?


「このビフゲルが、強め?」


「そうだ」


「いやでも、父上は……」


 父カストルの強さは、ビフゲルとは比べものにならなかったはずだ。

 ビフゲルが100人いたところで、父カストル一人に傷一つつけられないのではなかろうか。


「自分で言うのもなんだが、私は強いぞ」


 いや。「強い」と「強め」で差がありすぎだろう。


「じゃあ、伝えたかったことっていうのは……」


「マティの強さが、明らかに異常だということだ。少なくとも15歳未満に、お前に勝てる奴はまずいないだろうな」


 マジかよ。いくら知識があるって言っても、訓練もしていない6歳の体だぞ。

 魔法だけではなく、剣術まで衰退してしまったのか?


 いや。剣術がそこまで衰退した世界で、父カストルのような剣士は生まれないはずだ。仮に生まれたとして、こんな場所の領主などではなく、剣術の大流派の開祖か何かになっているはず。


 それと、だ。

 父カストルの行動には、今の説明だけではつじつまが合わない部分がある。


「ところで、父上」


 俺は,その点をつついてみることにした。


「何だ?」


「模擬戦の前、ビフゲルの要求に片っ端から従ってたけど……あれは、どうして?」


「ああ。どうせ一方的な戦いになるだろうから、適当なところで止めようと思っていたんだがな。ビフゲルがあまりに綺麗に墓穴を掘るものだから、好きなだけ掘らせてやったんだ」


 ああ。確かに手加減無用だの審判不要だのと、自分から墓穴を堀りに行っていたもんな。


「まあ、ビフゲルにもいい薬になるだろう。できればこれで、考えを改めてくれればいいんだが……」


 父カストルはそこで、言葉を切った。

 気絶していたビフゲルが、目を覚ましたのだ。


「ビフゲル。何か言うことはあるか?」


 父カストルがかけた声に、ビフゲルはすぐさま反応する。


「不正だ! 失格紋ごときが、俺に勝てるはずがない! こいつは何かいかさまをしたに決まっている! 父上、こいつを処罰してくれ!」


 さっきまで気絶していたというのに、随分と元気のいいことだ。

 父カストルもあきれ果てて、半笑いになっている。

 読心魔法も使っていないのに、「ダメだこいつ、早くなんとかしないと」という声が聞こえてくるようだ。

 いや、「ダメだこいつ。もう手遅れかもしれない」のほうが正しいか?


 そんな表情のまま、父カストルはビフゲルに声をかけた。


「そうかそうか。マティが不正をしていたと、お前はそう言いたいのか」


「そうだ!」


 その言葉を聞くと、父上はニッコリと笑ってこう告げた。


「じゃあ次は、不正がないかどうかちゃんと気をつけるといい。私もちゃんと見ておいてやるから、正々堂々と戦うといい」


「え? いや。別にもう一度戦うとは……」


「何を言っているんだ。模擬戦は5回勝負だろう? お前が言い出したことじゃないか」


 慌てるビフゲルを、父上が追撃――

 いや、違うな。あらかじめ掘っておいた墓穴に、ビフゲルが勝手にはまっただけだ。


「というかさっきの模擬戦、ビフゲルはまだ降参していないよな? 喜べビフゲル。お前はまだ負けて――」


 ビフゲルは逃げ出した。

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