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異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ 作者:コーダ

第12章 真紅帝国編

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第176話 瘴霊と2層の街

やっと、12章が書き終わりました。

13章は短めにまとめて、章ストック作りします。

 瘴霊エクリプスと精霊契約を終えた後、俺達は廃坑内を掃除していくことにした。


 瘴気の源泉は消えたが、発生した魔物イモリとヤモリはまだ残っている。

 瘴気が消えたからと入って来た者が、残っていた魔物に殺されるのは少々偲びない。


 アルタ曰く、もうイベントはないそうなので、マップを解禁してサクサク倒していく。


 自動追尾機能のあるミオの弓が大活躍だ。

 エルの<竜術>も自動追尾機能があるので役に立つ。


「妾、こんな出番ばっかなのじゃ……」

「え、ミオちゃんは満足だけど?」


 それともう1人、大活躍しているのが新規参入のエクリプスだ。


「……!」


 エクリプスが手招きすると、周囲の魔物がフラフラと寄ってくるのだ。

 何か、瘴気を操って、瘴気に反応する魔物をある程度誘導できるようだ。


「……(にこにこ)」


 そして、そんなエクリプスを微笑みながら見守るレイン。

 妹が頑張っている姿を見て、ほっこりしているらしい。


「……(にこにこ)」


 なお、そんなレインは見ているだけで何もしていない。

 え、俺?何もしていないよ。

 いや、廃坑を壊滅させていいなら簡単なんだけど……。


「頼むから止めてくれ」


 ルージュに止められちゃってさ。

 することも無いので、大人しく見守る係になりました。


 速足で廃坑内を駆け巡り、10分少々で魔物を全滅させる。

 そう言えば、この廃坑エリアの全滅ボーナスって有るのかな?


A:ありません。エクリプスの発生により、エリア内の瘴気が消滅している為、ボーナスは発生しません。


 駄目だったか。

 それじゃあ、今度こそ廃坑には用が無くなったな。


 ……いや、少し試してみようか。


「少しエクリプスの能力を調べても良いか?」

「この中の誰が仁様の決定に否と言うと思う?」


 ルージュのセリフに全員が頷く。

 それじゃあ、お言葉に甘えて……。


「エクリプス、瘴気を出してみてくれ」


 俺が頼むと、エクリプスはその場で手を挙げる。

 手の上に瘴気が沸きだした。


 相当に濃度の濃い瘴気だ。


「この瘴気から直接魔物を産むことは出来るのか?」

「……(ふるふる)」


 エクリプスが首を横に振る。

 やはり、エリア全体の濃度をある程度上げないと魔物は発生しないようだ。


「エリア全体の瘴気濃度を上げる事は出来るのか?」

「……(こくり)。……?」


 エクリプスが『瘴気を上げて欲しいの?』と聞いてきた。


「いや、上げて欲しい訳じゃない。つまり、その気になれば魔物を自由に発生させられるのかが気になったんだ」


 実際にはイコールではないが、瘴気を操れると言う事は、魔物の発生も操れるのではないか?と考えたのだ。


 エクリプスによると、ある程度は魔物の発生にも干渉できるようだ。

 かなり強引な方法なので、環境に影響を与える可能性が高いとの事。

 やはり、自然の摂理を無理に捻じ曲げるのは良くないんだな。

 ……ああ、俺は地震、噴火、突風を自由に発生させて、自然の摂理を滅茶苦茶捻じ曲げられますよ。


 ついでに言うと、魔物の発生は操作できても、発生した魔物自体は操作できない。

 発生した時点で、瘴気とは無関係な個体になるから、当然である。


「ご主人様、魔物の発生をコントロール出来て、産まれた魔物すら支配下に置けるなら、それはもう魔王と言っても良いんじゃないかな?」

「魔王って、魔族の王であって、魔物の王じゃないぞ?」


 ミオ、そんな事を言うと、本物の魔王さんに怒られるよ?


「創作物によっては、魔物の王の事を魔王って言う事もあるし、些細なことよ」

「それはそうだが……」

「ついでに言うと、既に迷宮ダンジョンでさっき言ったような事をやっているわよね?」

「それもそうだが……」


 迷宮支配者ダンジョンマスター迷宮ダンジョン内に発生した魔物を全て支配下に置いているので、魔物の王と言っても過言ではない。

 そう言う意味では、俺は既に魔王なのか?


「ミオちゃん、仁様を魔王如きと一緒にしてはいけません。仁様は魔物だけの主ではないのですから。むしろ、万物を支配する……いえ、何でもありません」

「そ、そう言う切り返しは想定していなかったかな……」


 本物の魔王さんの前に、信者マリアが反応していた。

 絶対、最後に『万物を支配する神』、とか言おうとしていたよな。


 待てよ、瘴気を司る精霊だろ……。


「エクリプスと『精霊化』をしたらどうなるんだ?そもそも、『精霊化』出来るのか?」


A:出来ます。ただ、大量の瘴気を取り込むので、一時的に身体が黒くなります。『精霊化』を解けば、元に戻ります。


「ふむ、つまり『ダーク精霊化』と言う事だな。瘴気は闇属性とは関係ないけど……」


 勘違いしやすいが、闇属性であることと、瘴気の様に魔力が淀んでいる事は違う。

 瘴気とは、属性ではなく、魔力的な淀み、言い換えれば毒である。


「ご主人様がついにダークフォームに変身できるようになった!」

《みせてみせてー!》


 ドーラは自前で変身できるよね?


 あ、俺の・・変身が見たいと……。

 そう言われちゃあ、変身しない訳にはいかないよな。


「その『精霊化』のメリット、デメリットを教えてください」


 マリアは見た目よりも、性能の方に興味があるようだ。

 もっと言えば、俺の安全に関わる事かな。


A:身体能力の強化は同程度、飛行能力もあります。メリットは瘴気を操作できるようになること、デメリットは魔法の威力が上がらない事です。負荷に関しては通常の『精霊化』よりも少し大きいですが、ご主人様に影響のある範囲ではありません。


 俺自身が瘴気を扱えるようになるのか。

 問題なさそうなので、『ダーク精霊化』をしよう。……名称は『瘴霊化』の方がいいかな?


「そうですか。それは良かったです」


 マリア的にセーフだったようで、俺を止めようとはしない。


「来い!エクリプス!」

「(コクッ)」


 そして、合体。

 俺の全身が黒く染まり、瘴気が身体の中を流れる。


「完全にダークサイドのスキルだわ」

「下手をすれば敵キャラですよね……」

《かっこいー!》

「とても強そうですわ」


 反応は上々だな。

 俺を神聖視しているマリアの反応は如何に?


「これはこれで……」


 有りだそうです。


 そして、それを見ていたレインが自己主張をする。

 俺の頭を胸で抱きしめながら……。


「……!」

「え?レインも『精霊化』したいのか?と言うか、出来るのか!?」


A:本来は出来ません。ですが、どちらもマスターの魔力を基本とした精霊である事、エクリプスが普通の精霊ではなく、瘴気の精霊である事、レインが特定の属性を持たない事、これらの条件が合わさり、奇跡的に可能となっています。


「来い!レイン!」

「(コクッ)」


 そして、合体。

 黒く染まった身体が、部分的に元の色を取り戻し、発光する。


 これぞ、『ダブル精霊化』だ!

 もう少し格好いい名前でもいいかな?


-ゴゴゴゴゴゴ-


「何か、空気が震えているんだけど……」

「凄まじい存在感ですわ」

「周辺の動物が逃げて行きます……」

《ちょーかっこいー!》

「素晴らしいです」


 自分でも、エネルギーに満ち溢れているのを感じる。

 まるで、普段は封印している災竜の力を解放したかのようだ。


「今なら、この国を永劫なる不毛の地に変える事すら出来そうだ」

「ご主人様、何で新しい仲間の力を確認するだけで、邪神みたいな発言をしているの?」


 ミオが少し引きながら聞いてくる。


「折角だし、それっぽい事を言おうと思って……」


 最終決戦で到達するようなフォームに、特にイベントでもない状況で変身してしまった。

 最終フォームに相応しいセリフを言わないと、収まりが悪い気がしたのだ。


「仁様、頼むから止めてくれ。いや、もう本当に何でもするから」


 ルージュのガチ懇願が入る。


 いや、流石に冗談だから。

 何が悲しくて、折角観光にやってきた国を、首都にも行かない内から消滅させなければいけないのか。


「解除!」


 俺は『ダブル精霊化(仮)』を解除する。

 レインとエクリプスが再び現れた。


「普通の『精霊化』よりも疲れるな」


 能力の向上に比例して、負担も大きくなっているようだ。


「仁様、大丈夫ですか?」

「ああ、これくらいなら全く問題はない。……レインやエクリプスとの相性が良い俺でも疲れるって事は、普通の奴にはまず無理って事だな」


 アルタが『奇跡的に』と言っていたのも納得だ。


「とりあえず、確認したい事は確認し終わったから、そろそろ出発しよう」


 廃坑の外に出て、馬車を呼び出して乗り込む。

 ふと思い出して、マップを確認した。


「しまった。やり過ぎた……」


 さくらが先程言っていた通り、周辺から動物の姿が消えていた。

 『ダブル精霊化(仮)』に驚いた動物達が逃げた結果である。



 あっという間に2層の街、『紫苑シオンの街』が近づいてきた。

 ウチの天使(種族)であるアンジュの前の名前がシオンだったな。関係ないけど……。


「本当に問題ないんだよな?」

「ああ、性格的にも問題は無かったし、彼との関係は良好だったからな」


 俺の問いに対し、ルージュが自信満々に答える。


 マップで確認した所、『紫苑の街』には皇族の一人、第三皇子が来ていた。

 カーマインの時のような面倒を避けるため、この街は通過しようか考えていたら、ルージュが問題ないと言ったので、街に寄る事にしたのである。


 こちらが第三皇子のステータスである。


名前:アッシュ・クリムゾン

性別:男

年齢:15歳

種族:ハーフエルフ

称号:真紅帝国皇子

スキル:


 何と、驚きのハーフエルフだ。

 更に驚きなのは、赤系の色の名前ではない事だ。

 更に更に驚きなのは、スキルが1つも無い事だ。


 スキルが多くて驚くことはあっても、スキルが少なくて驚くことは無い。

 ただ、0まで行くと逆に驚く対象となる。多かれ少なかれ、10数年生きればスキルは得られる物だから。


「私の知る限り、それなりに器用な子だったはずなのだが……」


 ルージュによると、4年前の時点で武術や学問で優秀な成績を修めていたそうだ。

 ただ、スカーレットの子供達の中で、殊更に優れていた訳ではない様子。


「スキルはあくまでも補正だから、絶対に必要と言う訳ではないぞ」

「それは聞いたことがあるが、腑に落ちないな……」


 スキルと言うのは、一種の補正だ。


 一番分かり易いのは<料理>だな。

 スキルが無くても料理は出来る。スキルがあると、失敗しにくくなるし、味にもプラス補正が付いたりする。

 ただし、器用に物事をこなすのに、絶対に必要な物ではない。


「後、真紅帝国の皇帝って、人間以外でもなれるのか?彼、ハーフエルフみたいだけど?」

「駄目、というルールはないが、私の知る限り、人間以外が皇帝になった記録は無いはずだ」


 ルールじゃなく、暗黙の了解とかだと面倒だよね。

 破るのが……。


「質問とは関係ないかもしれないが、アッシュは第三皇子だが、帝位継承権はかなり低いぞ。母親が不明だからな」

「母親は……エルフだろうよ?」

「いや、そう言う事ではなく……」


 曰く、アッシュはある時にスカーレットが突然連れてきた子供だったらしい。


 スカーレットは、母親が誰か話さず、ただ、皇子として育てると強行した。

 どこかで愛妾に産ませたのだろうというのが大方の予想だが、他の愛妾の子は皇族として育てていないのに、何故アッシュだけ、と結構揉めたそうだ。

 最終的に、皇族として育てる事にはなったが、親族と言う後ろ盾がないため、継承権も低くされている。一応、絶対に逆転できない程の差ではないそうだが……。


「まあ、兄の子供の中で、継承権を本気で狙っている者の方が少ないのだが……。大半は、なりたい奴がなればいい、というスタンスだ」


 真紅帝国だけに、血生臭い権力争いの坩堝かと思っていたら、そうでもないようだ。


「アッシュは穏健どちらでもいい派の筆頭だな。……ああ、カーマインは過激なりたい派筆頭だ」

「なるほど」


 納得の派閥である。


「少し面白そうな人物だが、態々近づく気も無いし、対応はルージュに任せる」


 穏健派とは言っても、皇族に自分から会いに行くとか無いです。


「ああ、どうせこの街でも領主への挨拶は必要だからな。そこで会うことになるだろう」


 そして、『紫苑シオンの街』に到着した。


 まずは宿に向かい、馬車を預け、ルージュ達は領主の元へ向かう。

 残された俺達は宿でのんびりしている。


「街を行き来するのは基本的に貴族だけだから、高級宿以外ある訳ない、と言う事か」


 俺達がとった宿は、貴族御用達の高級宿だ。

 2層の街に入れる者は限られるので、宿もそれほど多くないし、高級以外の宿もほぼない。


「そうみたいね。この街に来るのは、身元の明らかな上流階級だけだから当然よね」


 部屋でおせんべ(持参品)を食べながらミオが反応する。


わたくし達はルージュさんの護衛として同行しているから、例外的に入れていますが、本来は入るのも大変なんですわよね」

《そらをとべばかんたんにはいれるよー?》


 この世界で、ドーラの侵入を防げる街が一体いくつあるだろうか?


「そ、そう言う意味ではありませんわ。正規の手順で、という意味ですわ」

《そっかー。ざんねーん》

「力づくを除けば、外国の人間に、この街に入る方法はありませんよね……」


 王族ルージュに同行する以外の方法で、2層の街に入るのは不可能だ。


 さくらの言うように、力づくで入る事を除けば。

 そして、この国の兵の力なら、多少の力づくは跳ねのける事が出来る。


「流石にここまで来ると、他国の間者は一人もいません」

「防衛機構、しっかりと機能しているみたいね。感心、感心」


 マリアの話を聞き、ミオが感心する。


「間者がいないのは国にとっては良い事だが、観光客もいないから、観光名所が無いのは俺にとってマイナスだな。まあ、仕方ない事だけど……」


 そう、事ここに至って、ついに観光の余地がなくなってしまった。


 目新しい名所が無い、高級感だけがウリの観光客的につまらない街なのだ。

 一応、料理に関しては余地があるが……。


「だから、部屋でゴロゴロしているのよね」

「偶にはこういうのも良いですね……」

《のんびりー》

「ご飯にはまだ少し早いですわね。おせんべで小腹を満たしますわ」

「仁様、お茶のお代わりは如何ですか?」

「あ、もらおうか」


 と言う訳で、食事の時間まで宿でのんびりすることになっているのだ。


 ミオ特製おせんべ美味い。お茶も美味い。

 あ、一応言っておくと、別に和室じゃないからね。



 のんびりとしながら、お茶をすする。


「それにしても、まさかスカーレットがいないとはなぁ……」


 実は、『紫苑シオンの街』は首都……帝都から3エリア以内にある。

 つまり、帝都の情報はマップにより確認できるのだ。


 しかし、肝心要のスカーレット・クリムゾンが帝都に居なかった。

 アルタに帝都の状況を確認してもらっているのだが、スカーレットがどこに行ったのか、知っている者は一人もいない。

 大臣の話を盗み聞いたところによると、1月くらい不在にするそうだ。関係者ですら、知っているのはその程度の情報なのである。


 また、帝都を含め、今確認できる範囲にはスカーレットはいない。


「今からでも2~3週間は足止めされる事になる。流石にそれは嫌だなぁ……」

「ご主人様にしては珍しく……本当に珍しく、タイミングが悪いわね」


 俺が尋ねた相手が不在なんて、珍しいこともあるモノだ。


「一旦帝都に向かって、その後でスカーレットを探しに行くか」

「闇雲に探し回るくらいなら、待っていた方が良いんじゃありません?」


 セラが常識的な事を言うが、首を横に振って否定する。


「マップがあるから、闇雲に探し回った方が速い」


 3エリア単位で確認できるので、居なかったら他のエリアに高速で移動すれば、人探しなんて簡単にできる。

 基本的には、ネタバレによって観光がつまらなくなるから、使わない手法だが……。


「……それもそうでしたわね。ご主人様の闇雲、普通の方の闇雲とは、精度が全然違うんでしたわね」

「セラちゃん、まだ常識なんて持っていたの?捨てた方がいいわよ?」

「捨てたつもりでしたけど、まだ残っていたみたいですわ」


 それはそれで失礼な言い方ではないだろうか?

 もちろん、否定はしない。出来ない。


 そこで、アルタからの連絡があった。


A:マスター、ルージュからアッシュに会って欲しいという要請が来ました。


 どういうこと?


A:ルージュとアッシュの話の中で、マスターの話題が出たところ、アッシュが強く反応し、会わせて欲しいとルージュに頼みました。まだ、回答はしていませんが、アッシュが真剣に訴えているので、検討して欲しいとのことです。


 ふむ……。

 アルタの聞いた限り、アッシュとやらは真っ当か?


A:現時点の情報で判断すれば、マスターの言う『真っ当』に当たると思われます。


 そうか、ルージュの言っていた通り、真っ当な奴なのか。

 分かった。ルージュにそちらから会いに来るなら面会を許可すると伝えてくれ。


A:承知いたしました。


「と言う訳で、第三皇子と面会することになった」

「良いのですか?仁様のお嫌いな『貴族のトラブル』になる可能性がありますが……」

「可能性は0じゃないが、アルタが真っ当だというし、向こうから会いに来るというのなら、拒絶する程でもないだろう」


 マリアの懸念も分かるけど、元々少しは面白そうだと思っていた相手だ。

 自分から会いに行くのは『無し』でも、向こうから来るのなら『有り』になる。


「そう言えば、どういう話の流れでご主人様に会いたいなんて話になったの?」


 ミオの質問は俺ではなく、アルタに向けたものだろう。


A:ルージュの帰郷の話になり、同行者の話になりました。マスターの名前は伏せていなかったので、そのまま話したところ、アッシュがマスターの名前である『ジン』に反応いたしました。


「うわー……」

「それ、どう考えても、俺の関係者が絡んだ時の反応じゃん……」


 俺の知る限り、この世界の有名人に『ジン』と言う名前の者はいない。

 『ジーン』に反応したというのならともかく、『ジン』に反応したとなると、俺と直接関わりのある相手の可能性が高くなる。


 そして、真紅帝国において、俺と関わりがありそうなのは、転生者である皇帝、スカーレット・クリムゾン以外にあり得ないだろう。

 転生前の関係者だとして、思いつく相手が全くいない。いや、シャロンの時もそうだったが、転生者の転生前を想像するのって、ノーヒントだと無理ゲーだから。


 うん、考えても分かる訳ない事は、考えるだけ時間の無駄だ。

 なので、思考を放棄することに決めた。会って聞けば分かるでしょ。


「それにしても、ご主人様の知り合いって、王族に転生するのがデフォなの?私も前世からご主人様の知り合いだったら、奴隷になる事も無く、悠々自適の王族ライフだったのかしら?」

「それで、マヨを作って、王族に毒を持ったと言う事で処刑されるんだな?」


 ミオ、涙目でぷるぷる震える。

 ミオが犯罪奴隷落ちで済んだのは、マヨネーズを渡した相手が普通の村人だったからだ。

 相手が親族とは言え、王族の毒殺未遂だとタダでは済まなかった可能性もある。


「あ、有り得るのが怖い……。王族に転生してても、絶対に料理に口を出したと思うし……」

「確か、マヨネーズは少量なら平気でも、大量に食べると毒になるのでしたわよね?」

「言い方は悪いですが、王族向けの毒物に最適ですね」

「あぅ……」


 セラとマリアの追撃に崩れ落ちるミオ。

 多分、やらかしていただろうな。


 おっと、またアルタからの連絡だ。


A:マスター、アッシュとの面会ですが、明日の午前で構わないでしょうか?


 ああ、構わないぞ。

 もっと言えば、別に今からでも構わないが……。


A:本来でしたら、ルージュはマスターと連絡を取れませんので、絶対に問題のない時間帯を設定するのが無難だと思われます。


 それもそうか。


 ルージュの立場を客観的に見れば、同行者への面会を急に頼まれた状態だ。

 俺の予定も知らず、いきなり『今から行ってもいい』とは言えないだろう。


 それに、もうそろそろ……。


「そろそろ夕食の時間だな」

《おなかすいてきたー》


 何だかんだで時間が経ち、夕食の時間と言って良い頃合いになった。

 ルージュ達は向こうで食事をとるみたいだし、食後に面会と言うのも気が進まない。


「それじゃあ、お勧めの店に行くとするか」

《わーい!》

「食事に関しては、層が上がるたびに少しずつ洗練されていくから、まだ楽しみが残っているわね。中華料理の研究が捗るわ」

「ミオさん、頑張ってくださいな」


 観光名所も無いので、意味も無くぶらつくのは気が進まないが、食事は別である。

 折角異国の街にいるのだから、可能な限りその土地の物を食べるべきだろう。

 ミオの言う通り、徐々にレベルが上がっている感もあるし……。


アッシュ君は真面です(唐突なネタバレ)。


実は、仁と同年代で真っ当な男性は本編に出てきていない気がします。

勇者はかませだし、奴隷は基本女性だし、数少ない男性奴隷のクロードは同年代と言いにくいですし。

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