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異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ 作者:コーダ

第12章 真紅帝国編

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第175話 廃坑探索と瘴気

前話の後書きですが、ジョナサンは林檎の種類です。同母の兄妹が居ます。

アッシュは赤に絡めた名前ではありません。もちろん、理由があります(ある意味ネタバレ)。

 カーマインを撃退した翌日、俺達はお勧め観光ポイントである廃坑に向かった。

 『朽葉の街』?ああ、完全にスルーしたよ。理由は、(恐らく)メインイベントであるカーマイン登場が街の外で終わっているからである。


「へぇー、廃坑と言っても、資源が無くなった訳じゃないのか」

「うむ、私も聞いただけの話だが、資源が無くなった訳ではなく、他の理由で鉱山として機能しなくなったらしい」


 ルージュ曰く、これから向かう廃坑は10年前までは鉱山として使われていたが、何らかの理由により、ある日急に廃坑になったらしい。

 ここまで聞いて、イベントが起きないと思えるか?


 なお、既にマップ上に廃坑が表示されているが、ネタバレ防止の為に見ていない。

 アルタが何も言わないと言う事は、危険度が低いと言う事なのだろう。もちろん、0ではないのだろう。


 馬車を走らせること数時間、俺達は廃坑に到着した。


「なるほど、これは厳しいな」

《くさーい!》


 入り口前の時点で、何故廃坑になったのかと言う理由が察せた。

 そこは、溢れんばかりの瘴気が渦巻いていたのだ。


 瘴気と言うのは魔力の淀みだ。

 大気中には魔力が蔓延しているが、多かれ少なかれ淀んでいる。

 一般的に、その淀みが大きくなり、黒い煙のようになったものを瘴気と言う。


 瘴気にもいくつかパターンがあるのだが、この瘴気はどれに当たるのかね?


A;この瘴気は


 ……あ、アルタ。答えなくていいから。

 自分で見に行くから。


A:承知いたしました。


「俺達はステータスも高いし、<毒耐性>があるから問題にならないけど、一般人には悪影響が大きそうだな」

「そりゃあ撤退するしかないわよね。ある意味、毒ガスが噴出したのと同じような物かな」


 廃坑の現状にミオも納得している。


「カナリア……」

「止めなさい」

「ハーピィ……」

「それも止めなさい」

「エル……」

「……………………」


L:妾の事も止めて欲しいのじゃー!


 ミオが使い魔エルだけは止めなかったので、エルを呼び出した。


「ホントに呼ばれたのじゃ……。でも、呼ばれた以上は頑張るのじゃ!」

「仁様、廃坑に入るのでしたら、私の作る結界の中にお入りください」

「ああ、そうさせてもらう」


 マリアの<結界術>も瘴気対策としては有効だからな。


「妾には瘴気など効かんから良いが、ちょっと寂しいのじゃ……」


 エルは1人だけ結界の外で先行することになり、少し寂しそうだ。


「ルージュ達はどうする?」

「ここまで来て、ついて行かないという選択肢も無かろう」

「ルージュ様が行くのに、私達がついて行かないと言う事はありません」


 ミネルバの言葉に他の面々も頷く。

 ルージュ一行は全員同行するようだ。相変わらず、仲が良い連中だね。


 念のため馬を屋敷に送り返し、馬車を<無限収納インベントリ>に入れて廃坑探索をスタートした。



 基本的に瘴気が濃い空間には、瘴気に強い耐性のある魔物以外は立ち入らない。

 また、その瘴気から魔物が発生する場合も、生まれつき瘴気に強い魔物が産まれる。


「つまり、コイツ等は瘴気に強い魔物と言う事だ」

「見たままじゃな」


 目の前の魔物(死骸)を見て呟く。

 真っ黒いトカゲのような魔物だ。


イヴィル・ヤモリ

LV30

<瘴気蔓延LV1>

備考:瘴気の中で活動し、徐々に瘴気の範囲を広げていく。爬虫類型の魔物。


 瘴気に強いというか、瘴気に特化している魔物ですね。

 名前にツッコミを入れるか悩み中……。


 現在、マップの設定を弄り、視認済み領域だけが見えるようにしている。

 簡単に言えば、ゲームなんかでよくある『既に通った場所』と『今見えている』場所だけがマップに表示されているのだ。


 故に総数は分からない。

 しかし、歩いて10分経たないのに、既に5回以上遭遇エンカウントしている。

 露払いのエルが尻尾アタックで瞬殺しているが……。


「弱い魔物をいちいち潰すのは面倒なのじゃー。ブレスで一掃したいのじゃー」

「いや、鉱山で火の息吹ブレスとか、相当の馬鹿じゃないとやらないだろ」


 普通に自殺行為である。


「この結界なら、多少の大爆発でも耐えると思うのじゃ」

「それはそうだけどな」


 毒を通しません。空気を通します。爆風などは通しません。

 都合よすぎない?


「結界が無くても、メンバーの半数は爆発でも無事だと思うのじゃ」

「その場合、我々が死ぬ可能性が高いな」


 メインパーティはともかく、ルージュ達は少し厳しいかもしれない。


「のじゃ!」


 またイヴィル・ヤモリがいたのでエルの尻尾アタック。相手は死ぬ。

 ここに出てくるのはイヴィル・ヤモリだけなのか?


「弱すぎて、張り合いが無いのじゃー……」

「私達も大分インフレしたからね。……でも、スキルが無いとはいえ、レベル30は普通の人からしたら強敵よね。廃坑になるのも当然だわ」


 エルの愚痴を聞き、ミオが呟く。


「冒険者で言えばCランクとか、Bランクが相手にするレベルだったか?少なくとも、ただの鉱夫にどうこうできる相手じゃないよな。筋肉があっても、魔物を倒さないと簡単にはレベルが上がらないし……」


 この世界の歪な部分の1つだ。


 個人の鍛錬よりも、魔物を倒して経験値を得た方がレベルアップによるステータスの上昇により簡単に強くなれる。筋トレも全くの無駄ではないが、効率が違いすぎる。

 まるでゲームのような、摩訶不思議なルールである。


「でも、軍隊なら何とか出来そうよね?」

「冒険者ギルドはないですけど、その分兵士は精強でしたわ」


 ミオとセラの言う通り、この国の軍隊なら制圧できる魔物であるのも事実だ。

 だが、恐らく軍はここに来ていない。定期的に討伐しているにしては、出て来る魔物の数が多すぎる。

 各地の魔物を掃討しているのに、ここの魔物は放置しているのだから、何か特別な理由があるのだろう。進んで行けば分かる事かな?


「のじゃ!」


 また、イヴィル・ヤモリが出たので、エルが尻尾アタックで倒す。


「いや、ちょっと待て」


 倒した魔物をよく見ると、イヴィル・ヤモリではなかった。

 真っ黒な4足歩行生物なのは同じだが、ディティールが若干違う。


イヴィル・イモリ

LV35

<瘴気蔓延LV2>

備考:瘴気の中で活動し、徐々に瘴気の範囲を広げていく。両生類型の魔物。


「ヤモリがイモリになっている……」


 後、少しだけ強くなっている。


 ……全く意味が分からない。


「倒した感触は大して変わらんのじゃ」

「魔物に爬虫類型とか、両生類型とか、違いがあるのでしょうか……?」


 さくらも首をかしげる。


 魔物だから、生物的な分類に意味があるとは限らない。

 この世界、割とその辺いい加減だから……。


「さくら様、イモリは両生類だから、水辺が主な生息地域ですよ。……もしかして、鉱山のどこかに水場があるのかな?」


 意外。ミオがイモリについて知っていた。

 なるほど、生息地域の分類は意味があるかもしれないな。


 そこからは徐々にイヴィル・ヤモリの出現率が減り、イヴィル・イモリの出現率が上がっていった。

 ……とても、ややこしいですね。


 しばらく歩き、とうとう原因と思われる存在を発見した。

 余談だが、一本道ではないし、マップも先の方は見ていないが、一発で辿り着いた。


「徐々に瘴気が濃くなってきたと思ったけど、これは酷いな」


 開けた空間に出て、一番に目についた物、それは瘴気の泉だった。

 直径50m近い黒い泉、そこに溜まっているのは、水ではなく瘴気。


 先にも述べた通り、瘴気とは黒い煙だ。

 だが、気体が凝縮して液体となるように、瘴気も液体になるようだ。


 当然、濃度も高くなっており、悪影響も増しているだろう。


「水場は水場でも、瘴気の水場かぁ……。これは軍でもどうにもならないわね」

「精強な兵士でも、この濃度の瘴気に触れればタダでは済みませんわ」

「私の結界や、相当高レベルの耐性が無いと厳しいと思います」


 それでも防げるマリアの<結界術>、超優秀。


 確かに、これは国でも対処できないな。

 諦めて廃坑にして放置。納得である。


 なお、この廃坑、立ち入り禁止ではなかった。地元民なら近づかないし、余所者が入っても誰も困らないからな。

 廃坑の周囲にも瘴気は漂っていたから、余所者も入ろうとは思わないだろうが……。


 そこまで考えて閃く。


「ああ、そうか。廃坑の周囲にイヴィル・ヤモリがいなかったのは、外に出た分は軍が対処しているからかもしれないな。中まで入らないだけで、対処はしていたのか?」

「ふむ。もしかしたら、カーマインの部隊が討伐したのかもしれないな」


 この廃坑に一番近い街は『朽葉の街』だ。

 カーマインが廃坑周辺の対応をしていた可能性はある。


A:カーマインの部隊は『朽葉の街』で瘴気を浄化していたので、間違いないと思います。


 アルタが推察を補強してくれた。

 ちなみに、瘴気の浄化は<回復魔法>の仕事だ。<毒耐性>で防げることからも分かるように、基本的な扱いは毒と同じなのである。

 今更の話ではあるが、カーマインは<毒耐性>が高めだった。<毒耐性>が必要な王族って……。


「そんな、瘴気を浴びてまで国民の為に魔物を倒したカーマインを、ルージュ叔母さんは国民の見ていないところでボコボコにした訳だな」

「凄く人聞きの悪い表現だ……。後、叔母さんと言わないでくれ」


 ルージュがとてもとても嫌そうな顔をする。


「疲れているなら、街で休んでいれば良い。何故、態々挑発の為だけに街の外まで来るのだ」

「昔から、カーマイン様はそう言うところがありましたよね」


 ミネルバ曰く、多少の無理を推してでもルージュを馬鹿にするのは昔からだそうだ。

 他の兄弟や親族とは普通なのに、ルージュだけは毛嫌いしているとの事。


「私が何をしたというのだ……」


 知らない内に、何かしていた可能性はあるよな。ルージュだもの。



 瘴気の泉から少し離れた所で呑気にお喋りしていると、不意に違和感を覚えた。


「何だ?」


A:マスター。瘴気の泉から大量の魔物が発生いたします。


 次の瞬間、瘴気の泉から大量の魔物が発生した。

 正確には下記の通りである。


イヴィル・ヤモリ×48

イヴィル・イモリ×59


「見分けがつかない!」


 ワサワサと動いている2種類の魔物(どちらも真っ黒な4足歩行型魔物)を見て、無力感に押しつぶされそうになる。

 浅井なら、難なく魔物を見分けられただろうに……。


「倒すのに関係ないと思うんだけど……」


 ミオが呆れたように言う。

 それはそうなんだけど、なんか悔しい。


「それでご主人様。折角の大量の魔物だし、偶にはミオちゃんにやらせてくれない?」

「ああ、良いぞ」

「やった!それじゃあ、お言葉に甘えて……」


 そう言って、ミオは『彗星弓・コメット』に魔力を込め、矢を引き、放つ。

 魔力で出来た矢が一斉に放たれ、100匹超の生まれたてイヴィル・○モリを自動で追尾して貫く。


「手応え無いなー」

「知ってるのじゃ」

「だよねー」


 遠距離攻撃職の常として、戦力差があると戦った実感が無くなるんだよね。

 まあ、近接攻撃をしていたエルも同じ感想みたいだけど……。


「ここでは、あのように魔物が大量発生するのだな」


 ルージュが考え込むように呟く。


「どうかしたのか?」

「いや、どう考えてもコレの対処が無理だと思ってな……」

「普通に考えれば、そうだろうな」


 高濃度の瘴気の泉で、触れることは不可能に近く、近づくことすら困難。挙句、大量の魔物が発生することもあるとなれば、対処は不可能と言っても過言ではないだろう(一般論)。


「仁様なら、何とか出来るか?仮にもこの国の皇族として、出来ればこのような危険な場所、放っておきたくは無いのだ」

「出来るか出来ないかで言えば、恐らく出来るだろうな」


 パッと思いつくだけでも、片手で足りない数のアイデアがある。


「ならば、頼みたい。奴隷の分際で主人を使おうなどと、本来ならば許されないというのは承知の上だが……」

「良いぞ」

「え?良いのか……?」


 俺があっさりOKしたので、ルージュの方が驚いている。


「ここまで来て、何もしないでサヨナラとか、有り得ないだろう?」


 冒険者演技ロール中ならばともかく、観光で、イベントを期待して来たのだ。

 珍しくて、潰した方が良いモノなら、潰さないという選択肢はない。


 なお、冒険者演技ロール中ならば、自分の趣味より冒険者の流儀を優先します。

 演技ロールって言うのは、全力でやるからこそ意味があるのだ。


「そ、そうか……。それならば、頼む」

「ああ、任せておけ」


 アルタ、一応聞くけど、アレは消しても良いんだよな?


A:はい。消して悪い事はありません。


 さて、それじゃあ、どうやって瘴気の泉を消滅させようか。

 一番簡単なのは、「<無限収納インベントリ>に放り込む」だけど、流石に情緒がなさすぎるよな。


-ゴゴゴゴゴ-


 そんな事を考えていると、瘴気の泉が震え出した。


「また、大量の魔物が発生するのか!?」

「いや、少し違うみたいだな」


 瘴気の泉が徐々に形を変えていく。


 ルージュの言う『大量の魔物の湧出ポップ』ではない。

 どちらかと言えば、これは『瘴気の精霊化』である。


 魔力とは本来生命ではない。

 しかし、意志を持ち、精霊となる事もあるし、精霊は瘴気を取り込むことも出来る。

 魔力、瘴気、精霊と言うのは、それぞれがかなり近しい存在なのだ。


 それならば、瘴気が直接精霊になってもおかしくはないだろう。


A:異常事態です。


 おかしかったようだ。


 しばらくすると、瘴気の泉は姿を消し、一体の精霊(っぽい何か)が現れた。


「黒い……レインか?」


 瘴気の精霊は、俺の契約精霊であるレインが黒くなったような容姿をしていた。

 全身は黒い、褐色を通り越して真っ黒だ。女性型で、当然のように全裸で、身長やプロポーションもレインにそっくりで、芸術作品のような美しさ……禍々しさがある。

 髪もレインと同じように身長以上の長髪になっている。

 生まれたばかりだからか、まだ意識がはっきりしておらず、ボーっとしている。


A:瘴気と魔力の違いを考慮しなければ、瘴気の泉は精霊が発生してもおかしくない状態でした。そして、精霊レインがこの場に来たことにより、指向性を持って瘴気が変質したのだと思われます。レインを指針にしているので、外観もレインに似たのでしょう。


 まさしく、レイン2Pカラーと言う訳だな。


「…………」


 噂をすれば、レインがポンっと出てきた。


「どうした?」


 俺が尋ねると、レインは考え込むようなそぶりを見せた後、瘴気の精霊を指差し、俺に訴えかけてきた。


「あれの相手は任せて欲しいって?」


 こくこく頷くレイン。


「分かった。任せる」


 レインは強く頷き、やる気に満ちた表情を見せる。


「ご主人様、良くアレだけで言いたい事が分かるわね……」

「契約しているからだろうな。何となく言いたい事が分かるんだ」


 レインは喋らない。多分、喋れるけど、喋らない。

 それでも、言いたい事は何となくわかるので困っていない。


 レインはフヨフヨと浮かびながら瘴気の精霊(面倒なので瘴霊と呼ぶ)に近づいていく。

 瘴霊の正式名称は後でミオと相談して決めよう。


-ピトッ-

-ビクン!-

-プルン!-


 レインがボーっとしたままの瘴霊に触れると、瘴霊が大きく仰け反った。

 形の良い胸がプルンと揺れる。


 レインはしばらくの間、黙って瘴霊に触れ続ける。

 瘴霊は黙って為すがままにされ、時々「ピクン!プルン!」となる。


「あの子、何やってるの?」

「分からん」


 ミオが不思議そうに聞いてくるが、俺も何をしているのかは分からない。


A:瘴霊に自身の魔力を与えています。瘴霊は生まれたばかりで、自我が薄い状態でした。レインの一部である魔力を与える事で、瘴霊の性質を自分に近づけています。


 最終的にどうなるんだ?


A:端的に言えば、瘴霊を味方にしています。恐らく、瘴霊との精霊契約を望まれるかと思います。


 アルタの説明を聞いている間に、処理を終えたレインが瘴霊の手を引いて近づいてきた。


 瘴霊はレインとお揃いで色違いの黒いクロークを着て、似たような半透明の黒い羽根で空を飛んでいた。

 その闇のように深く黒い目には、先程までは無かった明確な知性が宿っている。


「…………!」

「なるほど、この子をウチの子にしたい、と……」


 レインにとって、この瘴霊は妹のような存在になるそうだ。

 ちょっと、普通の精霊とは性質が異なるが、そもそもレインも精霊としては異端な方なので、今更気にするような事でもない。


「分かった。でも、契約するのは良いけど……」


 話の途中で、瘴霊が<精霊術>で用いる陣を飛ばしてきた。


>「大精霊」が精霊契約を要求しています。許可しますか?Y/N


 瘴霊はレインと同じように自分から精霊契約を望んで来た。

 この場合、精霊側が不利な契約となるので、普通は有り得ないらしいんだが……。


「本当に良いのか?」


-コクリ-


 意思は固いようなので、俺は瘴霊との契約を受け入れた。


>「大精霊」と精霊契約(主)をしました。

>「大精霊」に名前を付けますか?


 さっきも見たけど、瘴霊って大精霊扱いなんだな。


「名前は……」


-コクリ-


 付けて欲しいみたいだ。


>「エクリプス」と名付ける

>「レイク」と名付ける

>「ゆかり」と名付ける


「それじゃあ、お前の名前はエクリプスだ」


 レインと同じ、瞳の色からイメージした名前だ。

 吸い込まれそうな深い闇色の瞳から日蝕をイメージした。


 ちなみに、レイクの方はレインと語感を合わせつつ、瘴気の泉もといレイクから取っている。瘴気の泉と呼んでいるが、成り立ちを考えれば湖の方が近いし……。


 俺が名づけると、エクリプスはパアッと笑顔になった。

 性質を似せただけあって、レインそっくりな笑顔だ。


「それで、『精霊の輝石』は……」


 精霊の消耗を抑えるためには、『精霊の輝石』という鉱石が必要になる。

 大精霊に相応しい『精霊の輝石』、まだあったかな?


「…………!」

「え、いらない?レインと同じく、俺の吸収した『精霊の輝石』に入る?」


 レインの分の『精霊の輝石』は、俺が<生殺与奪ギブアンドテイク>で吸収した。

 その為、俺自身がレイン専用の『精霊の輝石』の役割を持っているのだ。


 そもそも、1つの『精霊の輝石』に二柱の精霊は入れるのか?

 そして、一度吸収した『精霊の輝石』に新しく精霊を入れる事は出来るのか?


A:どちらも、普通は無理ですが、性質をここまで合わせ、同じ主を持っているので、例外的に可能になっています。


 アルタが出来るというのなら、出来るのだろう。

 俺はエクリプスに触れ、『精霊の輝石』に入れてみる。


 入った。

 出した。


「問題なさそうだな。同時に入れるのか?」


 二柱入った。

 二柱出した。


「これも問題なさそうだな。それじゃあ、これからよろしく」


-コクリ-


 こうして、俺は新たに瘴気を司る大精霊、エクリプスと精霊契約をすることになった。

 そして、エクリプスも喋らないんだね……。


 あ、こちらがステータスです。


名前:エクリプス

LV1

性別:女

年齢:0歳

種族:大精霊

スキル:<精霊LV-><瘴気支配LV->

備考:瘴気を司る大精霊。


 <瘴気支配>は瘴気の吸収、放出、拡散、変質など、大体何でもできるそうだ。

 レインが精霊と魔力を支配して、エクリプスが瘴気を支配する。まさしく姉妹だな。


「と言う訳で、ルージュ、何とかしたぞ」

「私の思っていた方向とは違うが、何とかなったみたいだな。瘴気が消え、空気が澄んでいるような気さえする。本当に助かった。ありがとう」


 瘴気の泉はエクリプスになったため、すでに消滅している。

 エクリプスは瘴気を放つ、放たないを自由に選べる。今は周囲の事を考慮して、瘴気を出さないようにしてくれている。

 結果、瘴気の泉跡地では、普通の土地よりも瘴気が少なくなっている。


「俺も満足だ。新しい精霊も仲間になったし、やっぱり、廃坑はイベントの宝庫だな」

「まあ、瘴気の泉が消えた以上、この廃坑も再度坑道として使われるだろうがな」

「あ、そっか……。廃坑じゃなくなるのか……」


 俺のテンションがガクッと下がった。

 もう、ここは廃坑ではなくなってしまうのか……。


「え、ご主人様、そこでテンション落とすの!?」


 ミオが驚いているが、廃坑でなくなる坑道になど用はない。


「帰ろう」

魔力だろうが瘴気だろうが、女の子の姿をしていたら愛せます。

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