8日にソウル競馬場で行われた韓国G1「コリアカップ」「コリアスプリント」を観戦した。昨年は、胆振東部地震の影響で北海道から身動きが取れず、ソウル行きを断念せざるを得なかったので、2年ぶりのカップデーに気持ちも高ぶっていた。そんななか、朝鮮半島に接近する台風13号の影響が心配され『今年も大丈夫か?』と思われたが、7日朝に何とか到着。その後、競馬場へ向かい、毎年来ている日本人マスコミと合流した。ところが、開催中に風雨がピークを迎え、パドックで写真を撮ろうと思った時に折れた枝や葉が飛び交い、自身の安全確保に苦労した。無事に最後まで競馬を終えたことに、関係者も安堵の様子だった。
カップデー当日は台風一過。雲に覆われてはいたが、ほど良い暑さで、馬場も回復傾向にあった。
今年は様々な状況が考慮され、日本馬の遠征はなかった。KRA(韓国馬事会)の関係者に聞くと、日本馬を招待したくなかった訳ではなく、むしろ日本馬がいない状況を残念がっていた。この状況で韓国馬が勝ったとしても日本馬がいないから勝てたと言われる可能性もあり、素直に喜んでいいか悩ましい、という感情も見て取れた。世間で言われているような対抗意識ではなく、日本馬の強さをリスペクトしている中で、いつか日本馬を破って真のチャンピオンに立ちたいと思う陣営や関係者が多くいることは強調したい。
「コリアカップ」はアメリカ2頭、イギリス1頭、香港1頭、「コリアスプリント」はアメリカ3頭、イギリス1頭、フランス1頭、香港1頭がそれぞれ海を渡って参戦。遠征組は慣れないサンドコースへの戸惑いを感じ、力を発揮できない馬たちが多数いた。「コリアスプリント」は、韓国勢が掲示板を独占。「コリアカップ」は、韓国馬2頭が3着以下を引き離し、イギリスのアンバサドリアルが3着、香港のグロリアスアーティストが4着に食い込むのが精一杯だった。
「コリアスプリント」を快勝したブルーチッパー(セン4歳、父ティズナウ)は、1分11秒1の好時計で勝利。「オーナーズカップ」という重賞を含め、それまで6連勝中だった勢いから1番人気に支持され、見事期待に応えた。この内容なら、例え日本馬が参戦していても、おそらくブルーチッパーは好勝負を演じていたし、当然勝っていた可能性も高い。これは、来韓していた日本人マスコミ全員の意見でもあった。
「コリアカップ」は、ムン・セヨン騎手が騎乗したムーンハックチーフ(牡4歳、父パイオニアオブザナイル)がスローペースを見越して向正面で先頭に躍り出ると、そのまま脚色が鈍ることなく、昨年4着のチョンダムドッキ(牡5歳、父トゥオナーアンドサーブ)を退けて勝利した。勝ち時計は1分53秒3と、例年より明らかに遅く、17、18年と連覇したロンドンタウンが1分50秒台半ばで勝っていたことを考えれば、こちらは正直、相手に恵まれた印象は拭えない。
サンドコースは、やはり適性がモノを言う。砂を被る経験がない馬たちにとって、前に進んでいかない傾向があり、今回の遠征馬たちはその不安に直面した。2016年の「第1回コリアスプリント」を勝利した香港馬スーパージョッキーは、砂を被らない位置でレースを進めることができたことが大きい。日本馬と韓国馬ががぜん有利な舞台であることを、再認識させられた。
ただ、地元馬が勝った時の場内の大歓声はもちろん、ムン・セヨン騎手がまくっていった時のどよめきと、そのまま押し切った時の場内の興奮度合いは、私にとっても忘れられないシーンとなった。アメリカ血統が主流の状況で、スピード面を重視した配合から、短距離路線なら韓国馬にも通用する可能性は十分ある。来年は、日本馬との対戦で堂々たる走りを見せて欲しいと強く願う。(競馬ライター)