外伝 進堂凛
ifストーリー、「もしも仁に妹がいたら」です。
以前、未登場人物紹介で出た妹ちゃんのお話です。
ギミックは後書きに。
2019/04/10改稿:
サブタイトルを「偽伝」→「外伝」に変更。
それは屋敷でゴロゴロしている最中のお話。
「そう言えば、ご主人様達の学校の話は聞いたけど、ご主人様自身の事については、ほとんど聞いていないわよね」
切っ掛けはミオの何気ない一言だった。
「言われてみればそうですわね。さくら様のお話は……あまり良い物はありませんが良く聞きますが、ご主人様のお話は非常に少ないですわ」
「とても興味があります」
「私もです……」
《ドーラもー!》
ミオの発言に、その場にいたメインパーティの4人全員が興味を示した。
確かに俺はこの世界に来てから、自分の身の上話をほとんどしてこなかった。
「ご主人様、何か言いたくない理由でもあるの?」
「いや。聞かれて困るような事はないけど、自分から話すような事じゃないだろ?面白い話がある訳でもないし……」
「いや、ご主人様の過去話なら、面白いに決まっているわよ。今までの断片的な情報からでも断言できるわ」
ミオは確信を持っている様子。
「そんなに聞きたい事か?」
俺が尋ねると、メンバー全員が頷いた。
自分から話すような事ではないが、聞きたいというのならそれはそれで構わない。
「分かった。それじゃあ、皆から質問を受け付けよう。俺はそれに答えるよ」
『自分についてフリートークで説明しろ』と言うのは難易度が高すぎる。
質問に答える形が一番話しやすいだろう。
「じゃあ、最初の質問はミオちゃんからね。ご主人様の家族構成を教えてください」
まずは最初だからか、当たり障りのない普通の質問が飛んできた。
逆に言えば、こんな普通の事すら俺は話していなかったと言う事だ。
「妹と2人暮らしだな。両親は大分昔に他界している」
「え?ご主人様、妹がいたの?今まで、全く話に出て来なかったけど……」
「それこそ、自分から話す様な事じゃないだろ?ああ、補足すると義理の妹だな」
「ラノベの主人公か!」
ミオが全力でツッコミを入れた。
「兄妹2人で生活できたんですか……?」
さくらが不思議そうに聞いてくる。
「ああ、両親の遺産が結構な額だから、生活する分には困ることはなかったな」
「ラノベの主人公か!!」
ミオの全力ツッコミ(2回目)。
「ご主人様の料理はアレですから、料理は妹さんが作っていたのではありませんか?」
人の料理をアレとか言わない。
なお、俺に作れる最も複雑な料理は肉の丸焼きである。
「ああ、妹が作る事が多かったな。妹が作らない時は、隣の家の幼馴染が差し入れてくれた」
「ラノベの主人公か!!!」
ミオの全力ツッコミ(3回目)。
「妹さんが残っているのに、元の世界に帰るのを優先しないで良いのですか……?」
「言われてみれば、たった1人の家族なのに、心配している様子がないわよね?」
さくらとミオが尋ねてくる。
なお、マリアは俺の話をメモるので忙しく、話には加わってこない。
「まあ、心配いらないだろ。妹は料理を含めて生活能力高いからな。俺が居なくても困る事は少ないと思うぞ。最近、ようやく兄離れも出来たし、ある意味、いい機会とも言えるな」
《「「「兄離れ?」」」》
マリア以外の声がハモった。
「ああ、妹は昔から俺に懐いていた……ベッタリ懐いていたんだよ」
「頭に『ベッタリ』が付く程なんだ……」
「ああ、ベッタリだな。兄離れを始めさせたのが、転移の1年くらい前からだけど、その前は風呂にも一緒に入ってくるくらいだからな」
『一緒に入る』ではなく、『俺が入ると、妹が後から入ってくる』が正しい。
「……妹さん、おいくつ?」
「俺の3つ下だから、転移の時点で中学2年。その1年前だから、中学1年まで風呂に入ってきていた事になるな」
「確かにそれは『ベッタリ』だわ」
「親友に言われるまで、異常だと思わなかった俺にも責任はあるが……」
同い年の妹を持つ浅井に言われなければ、兄離れさせようと思わなかったかもしれない。
「流石に問題だと思って、妹に兄離れさせること1年。ここ数カ月でようやく問題無しと思えるようになった。そのタイミングで俺が転移することになった訳だ。ある意味、丁度いいタイミングだろ?後、話題に出なかったのは、意識的に距離を置いていた名残だと思う」
兄離れを促す為、意図的に距離を置いていた。
その状態で転移したから、無意識のうちに話題に出さなかったのではないだろうか?
「まあ、前から言っている通り、俺は元の世界に戻る事を諦めたつもりはないぞ。幸い、この世界の方が時間の進み方が遅いみたいだし、そこまで慌てる必要も無いだろう。この世界に永住することになったとしても、元の世界に1度は絶対に戻るからな」
精力的に活動している訳ではないが、元の世界への帰還を諦めてはいない。
今はこの世界の観光がメインになっているが、元の世界を捨てるつもりもない。
なにより、親友である東と浅井が死んでいるなら、遺品くらいは元の世界に持って行って弔ってやりたいからな。
《ドーラもごしゅじんさまのお家にいきたーい!》
「ミオちゃんも忘れないでよね!」
「当然ついて行きます」
元の世界に戻る、あるいは行くのなら、ドーラやミオ、マリアも一緒に連れて行くことになるだろう。
時間の進み方が違うのは若干気になるが、それはまあどうとでもなるだろう。
「そう言えば、セラには聞いていなかったけど、俺が元の世界に戻るとしたらどうする?」
以前、元の世界への帰還が話題に出たのはセラが配下に加わる少し前だ。
「ご主人様のいた世界で魔法が使えるかどうか次第ですわね。もし、そちらの世界で魔法が使えないとなると、『
《あんまりおいしくなーい》
「美味しくなくても、
元の世界でセラの食欲を満足させるとなると、相当な負担になるだろう。
この世界は何だかんだで(俺の周りだけは)食料事情は安定しているから。
「多分、『
「この世界に残りますわ」
セラは残留決定である。
セラにとって、食料事情は生死に直結するからな。
「話を戻すけど、妹さんのお名前は?」
「進堂
ステータス画面に当てはめると、こんな感じ。
名前:進堂
性別:女
年齢:13
種族:人間
「仁、と似ているのね」
「ああ、俺が付けた名前だ。アイデアその3だな」
「その1と2は?」
「全員に全力で反対された」
今のフォームに合わせると、こんな感じ。
>「ジニー」と名付ける
>「仁子」と名付ける
>「凛」と名付ける
「英断ね」
お勧めは「仁子」だったんだが……。
「仁君、1つ質問良いですか……?」
「1つと言わず、いくつでも質問して良いぞ」
質問数を制限した記憶はない。
さくらはもっと自己主張を強くしても良いと思う。
「さっき、仁君が名付けたと言っていましたけど、義理の妹に対して、名付けるというのはおかしくありませんか……?」
「そう言えば、おかしいですね?ご主人様、一体何をしたの?」
ミオは俺が何かやらかしたと決めてかかっている。
「いや、義理の妹と言っても、元は従妹なんだよ」
「一応、血は繋がっているんですね……」
従妹の両親が死んで、ウチの両親が引き取った。それで妹だ。
「ああ、両親との仲が良くて、妹が生まれてすぐに会いに行ったんだ。その時に色々あって、俺が名付けることになった」
「色々って?」
「妹が一番懐いていたのが俺だから、俺に名付けて欲しいって従妹の両親が言ったからな」
今考えれば、結構無茶苦茶な事を言っているよな。
「名付ける前に、既にご主人様に懐いていたの?」
「ああ、実の親より俺に懐いていたな」
「そこまで行くと、筋金入りね。……本当に兄離れ出来ているのかしら?」
ミオは不思議そうに首をかしげる。
「多分、大丈夫だろ。呼び方も『お兄ちゃん』だったのが、『兄さん』に変わったし、お風呂に突撃してくる事もなくなった。朝起きたらベッドに潜り込んでいると言う事も無い。」
余談だが、カスタールでサクヤに『お兄ちゃん』と呼ばれたとき、約半年ぶりだったので、懐かしくて少し感動していたりする。
「普通の事過ぎて、参考にならないわね。うーん……」
ミオが額に手を当てて唸った。
「ご主人様、お願いだからもう少し元の世界に戻る手段の捜索に力を入れて」
「何故?」
「多分、妹ちゃん、兄離れできていないから」
「大丈夫だろ?」
「良いから!お願いだから!」
「まあ、ミオがそこまで言うのなら、とりあえず、了解だ」
ミオがゴリ押すくらいなのだから、妹が兄離れできていない可能性はあるのだろう。
元の世界に帰る方法か……。女神に聞くのが1番手っ取り早いんだろうな。
その後もチョコチョコと色々な話をした。
時間が経ち食事の時間になったので、質問タイムを終了することになった。
「何か、妹の話をしてばかりだったな」
「ご主人様がいきなり強烈な話題を出すからよ。質問せざるを得ないじゃない」
そんなに強烈な話題だったかな。
別に兄弟がいるくらい不思議な話じゃないだろ?
親友の浅井にも妹がいて、ウチの妹と同じ年で、仲が良かったはずだ。
もう1人の親友、東だけは一人っ子だったから、時々妹トークで仲間外れになっていた。
懐かしい思い出だ。
時は遡り、進堂仁達が転移する前、
「
「よしよし。凛は頑張っていると思うよ。でも、それは女子中学生がしていい顔じゃないからね?」
浅井義信の妹、浅井
この日、凛は兄離れのストレスが限界になり、親友である聖に泣き言を言いに来ていた。
「そんな酷い顔をしていますか?」
「うん、夜中に子供が見たら確実に泣くね」
「そこまでですか……」
凛は10人中10人が認める程度には顔が整っている。
そんな凛だが、今は酷くやつれている。血色が悪く、髪が長いのも相まって、ホラー的な意味で迫力がある。子供は泣く。
「どうしても無理なら、仁
「いいえ。お兄ちゃんが私の為に言ってくれているのは分かっています。だから、私はその期待に応えたいのです。だから、まだ頑張れます。……死にそうですけど」
「ホント、凛は健気だね……」
凛を褒めつつ、聖は心の中で思った。
(それ、『兄離れ』出来てないよね?『兄離れしたフリ』をしているだけだよね?)
聖も兄である義信とは普通に仲が良いが、兄離れが必要な程ではなかった。
最近まで一緒に風呂に入っていたと聞き、驚いたくらいである。
「ただ、そのまま帰ると仁
「そこまでですか……」
「うん」
子供は泣く。
「さて、それじゃあ、気晴らしに何かする?」
「そうですね。テストも近いですし、勉強でもしますか?聖、歴史が不安と言っていましたよね?教えますよ?」
「ホント!?凄い助かる!持つべき物は、天才な友人だよね!」
聖、暗記モノが少し苦手なのである。
「私は天才なんかじゃありませんよ。どこにでもいる、普通の女の子です。テストの点も、通知表も平均だったでしょう?」
「凛は頑なに普通と言い張るけど、振れ幅無く平均をとる事を、普通とは言わないと思うよ」
全科目クラスの平均点ジャスト、それが凛の成績の全てである。
「普通ですよ。それに天才と言うのは、東さんみたいな人の事をいうのです」
「ああ、東さん。確かにあの人はあの人で別格だよね」
仁と義信の親友である
東だけは兄弟が居らず、兄妹揃って仲の良い凛、聖とは若干の距離がある。
「他人事みたいに言いますけど、義信さんも別格に入りますからね?」
『浅井さん』では区別がつかない為、凛は浅井義信を『義信さん』と呼ぶ。
「仁
「それは勿論です。お兄ちゃんは凄いのです」
凛の仁への信頼には、限度も根拠もない。故に強い。
「まあ、仁
当然、そんな事は無い。
聖は聖で、周囲の人間が凄すぎて、感覚が麻痺している部分がある。
「ただいまー」
「噂をすれば、帰って来たみたいね。おかえりー」
義信の話をしていたら、本人が帰宅してきた。
「お、凛ちゃん、久しぶり」
「お邪魔しています」
凛は比較的良く浅井家に来るが、外出の多い義信と会う事は少ない。
「……母さんはいないみたいだな。ひじきだけか」
「ひじきって言うな!この馬鹿アニキ!」
怒れるひじきはポケットに手を突っ込み、取り出したものを義信に投げる。
「当たらん!」
動体視力も良い義信は、顔面に向かって来たボールを軽々と避ける。
-ゴン!-
「ぐはっ!」
次の瞬間、義信は後頭部を抑えて蹲る。
後ろの壁に当たり、跳ね返って来たスーパーボールが後頭部に当たったのだ。
義信の目は確かに優れている。
しかし、残念な事に義信の目はたった2つ、顔にしか付いていない。
よって、背後を見ることは出来ないのだ。
……正確に言えば、物に反射した像から背後を把握することも出来るが、自身の頭部に隠れ、スーパーボールの軌道が分からなかった。
そう、ひじきはここまで読んでいたのだ。兄対策は十全である。
「ま、待て……。滅茶苦茶痛いんだが!?」
義信、ガチの涙目である。
「重くて弾性の強い素材を用いた、特製スーパーボールだよ。対馬鹿アニキ決戦兵器として、東さんにお願いして作ってもらったの」
実の兄に、兄の友人が作った重量級スーパーボールをぶつける。
ひじき呼ばわりの怒りはそれほどに大きい。
「トーメーーーーー!!!」
親友の手酷い裏切りに義信が絶叫する。
『トーメイ』は義信の使う東の渾名だ。実は東本人はあまり気に入っていない。
「ひじきって呼ばれたら使うって言ったら、快く引き受けてくれたよ」
年下の女の子に頼られて、満更ではなかったらしい。
「あの野郎。余計な物をひじきに与えやがって……」
「もう1発、喰らっておく?」
「マジで止めろ!イテテ……。コブになってないよな?」
冗談抜きで痛かったようで、義信はしきりに頭を触って確認している。
「……うん?凛ちゃん、何かやつれたか?顔色が悪いぞ?」
そこで、義信は今更ながら凛の幽鬼のような顔色に気付く。
実際、義信は目が良いので、些細な変化にもよく気付く。
ただし、凛に限って言えば、誰が見ても明らかなレベルである。
今回は気付くのが遅かったと言っても良いくらいだ。
「はい、お兄ちゃんと距離を置くことになったのですが、それが辛くて……」
「ジンと距離を置く? ……もしかして、この間の話か?」
「どうかしましたか?」
凛も聖も『兄離れ』の話は義信には話していない。
「この間、ジンと妹ネタで話をしていたんだよ」
「え、アニキ、キモい」
一瞬の躊躇なく義信を貶める聖。
「うるせえよ!その話の中で、ジンと凛ちゃんの距離感について
流石の義信も、一緒に風呂に入っていると聞いた時は、開いた口が塞がらなかった。
仁も人との距離感については鈍い部分があるので、他人から言われるまで、不自然だとも思っていなかったようだ。
「義信さんの入れ知恵でしたか……。余計な事を……」
「ホント、余計な事ばっかりする馬鹿アニキだよね」
「えぇ……。これ、俺が悪いのかぁ……?」
急に2人から責められ、納得のいかない義信。
義信的には親切心からの行動だったし、凛の方に負担のある話だとは思っていなかった。
常識的に考えて、義信は悪くない。
「義信さん、お兄ちゃんに教えた『適切な距離感』を教えてもらえませんか?」
「ああ、なるほど。最低限の条件を確認するんだね。抜け目ないなぁ」
凛の質問の意図を理解して、聖は苦笑した。
凛は義信の教えた『適切な距離感』が『兄離れ』の必須条件と考えた。
逆に言えば、そこに無い項目に関しては、譲歩の余地があると光明を見出したのである。
「どうかお願いします」
メモ帳を取り出し、準備万端の凛である。
「ああ、別に良いよ。……とりあえず、一緒の風呂は有り得ない」
「くっ、それは仕方がありませんね。一番のスキンシップだったのですが……」
本気で悔しそうにする凛。
「ああ、背中を洗い合っていたのか」
義信は納得しつつも、高校生男子(親友)と中学生女子(親友の妹)が背中を流し合う姿を想像して、微妙な気持ちになる。
「背中?」
凛が首を傾げる。
「「え?」」
「え?」
浅井兄妹が凛の発言に驚き、凛も浅井兄妹の反応に驚く。
義信と聖は、それ以上突っ込まない方が良いと判断した。
知らなくていい事もこの世にはある。
その後、義信は仁に話した他の内容を凛にも教えた。
「大体、こんな所かな」
「ありがとうございます。参考になりました」
思っていたよりも穴のある条件だったため、内心で喜んでいる凛だが、表情には表さない。
「後、『兄離れ』の成功を主張する為には、呼び方を変えるのも手だろうな。『兄さん』くらいにしておいた方が良いと思うぞ」
「本当、参考になります」
凛は持っていたメモに追記する。
「もちろん、アニキ呼びは駄目だぞ。そんな妹は可愛くないからな」
「可愛くなくて悪かったね!」
なお、聖はボーイッシュな雰囲気だが、可愛くない訳ではない(少なくとも見た目は)。
「おいおい、俺はひじきの事なんて言ってないぜ?」
「ぶっつけるよ!」
特製スーパーボールを取り出す聖。
「じゃ、じゃあ、俺はそろそろ行くよ。凛ちゃん、ごゆっくり!」
「ありがとうございました」
そうして義信は退散していった。
「仲が良いですね」
「冗談じゃないよ!人の事をひじきひじき呼んで」
「なら、聖も義信さんを渾名で呼んでみたらどうですか?」
「……ヨッシー?」
「とても普通ですね」
義信さんの渾名候補筆頭である。
その後、聖の部屋で予定通りにテスト勉強を始めた。
「ちょっと休憩!」
「結構時間が経ちましたし、そうしましょうか」
思い切り伸びをする聖と、全く疲れているようには見えない凛である。
「そう言えばさ……。仁
「いきなり何を聞いてくるのですか!?」
冷静沈着な凛を動揺させたければ、仁の話題を出すだけで良い。
「いや、ウチのアニキ、アレで結構モテるんだよね。それで、一応別格仲間の仁
義信は人を見る目も有り、交友関係も広い。当然モテる。
ただ、今は恋人を作るより、親友と遊ぶ方を大切にしているが……。
「そうですね……。お兄ちゃんはモテませんよ」
「あれ?幼馴染の水原さんとか、時々見かける追っかけとかは?」
水原咲。仁の隣の家に住む、仁と同い年の幼馴染だ。
「咲お姉ちゃんですか?」
仁の幼馴染と言う事は、凛とも付き合いが長いと言う事でもある。
「咲お姉ちゃんがお兄ちゃんに向ける感情は、普通の恋愛とは全く別物です」
「アレで!?」
「ええ、よく見ていれば分かりますよ」
両者ともに仁の事が大好きだが、その方向性が完全に異なるため、競合することもなく、2人の仲は良好だったりする。
呼び方も『咲お姉ちゃん』である。余程親しくないと、こう呼ばないだろう。
「追っかけの事は私も知っていますけど、彼女達はお兄ちゃんに関わる気は無いようです。ですから、お兄ちゃんへの告白なんて、考えてすらいないでしょうね」
「そうなんだ。仁
周囲に女の子はいるのに、明確な恋愛に話が繋がらない。それが進堂仁である。
「聖はどうですか?お兄ちゃんの事が好きですか?」
「好きは好きだけど、恋愛じゃないかな。多分、僕の手には負えないから……」
聖は良くも悪くも普通の子なのである。
凛のような似非普通の子ではないのである。
「凛こそどうなの?仁
「お兄ちゃんが望めば嫌とは言いません。何でもしてあげると思います。ですが、私の好きはあくまでも親愛です。それだけは、変わらないと思います」
「嫌とは言わないんだ……。何でもしてあげるんだ……」
聖、ドン引きである。
「まあ、仁
「ええ、そうだと思いますよ。それで良いのです。従妹なら……妹なら、何があっても縁が切れる事はありませんから」
夫婦と言う関係は契約的な意味合いが強く、その関係性は永遠ではない。
『死がふたりを分かつまで』の文言の通り、死によって分かたれてしまう。
しかし、従妹……兄妹と言う関係は血の縁だ。
その関係は誰かに認められる必要もなく、死ですら分かつことは出来ない。
変わることなく永遠の関係と言える。
「ホント、筋金入りの『妹』だね」
どう考えても、『兄離れ』が出来るようには見えない。
「ええ、私はいつまでもお兄ちゃんの妹です。永遠に」
仁に妹がいるかいないか。その答えは実はまだ決まっていません。
ifと言う単語には、真実がどちらかを決める力はありません。
「いる」とも「いない」とも明言していません。
皆さんの応援(感想)があれば、「いる」と言う事になるかもしれません。もしくは今後の話の都合。
そして、「いる」と言う答え(Answer)になれば、偽伝(Giden)に答え(A)が足され、外伝(GAiden)になります。
「いない」ならば、少女(Girl=G)が消え、偽伝(Giden)は異伝(iden)になります。
どちらとも決まらなければ、偽伝はずっと偽伝のままです。
2019/04/10追記:
感想により、Aの追加を決定。