第169話 風災竜解放と戦利品
滅びの呪文の人気に嫉妬。
-ゴゴゴゴゴゴ-
俺が滅びの呪文を唱えた事により、天空城は崩壊を始めた(一部誇張表現有り)。
今はまだ揺れているだけだが、ユリエラが死んだ以上、直に崩壊するのは確定している。
マップを見ると、エルフ達が遠くの方で右往左往している。
「仁様、脱出しましょう」
見れば、天空城を守っていた『風雲の障壁』が消えている。
今なら、『ポータル』でなくても脱出できそうだ。
「いや、ここをこのまま放って置く訳にはいかない。アルタ、回収部隊の編成を頼む」
A:承知いたしました。
天空城は『風災竜・テンペスト』を核とした陸地だ。
ユリエラの死により、『姫巫女』の封印が解け、『風災竜・テンペスト』が復活すると、天空城は崩壊することになる。
つまり、高高度から天空城の残骸が地上に降り注ぐことになる。天空城があるのは海の上だが、各地への影響が0と言う事はないだろう。
そこで、
「『
俺達は『
ある程度『
あっという間に100組以上の竜騎士が揃う。
俺は大声で竜騎士達に指示を出す。
「まもなく、この天空城が落ちる!残骸が被害を出さないように、<
正直な話、ここのエルフには、義理も無ければ何の思い入れも無いため、死んでも構わないと言えば構わない。ただ、訳あって一部のエルフは生かしておく必要がある。
「はい!」×100以上
俺の指示を受けた竜騎士達が続々と天空城から降りて行く。
『テンペスト』の覚醒時に何が起こるか分からないので、最初はある程度距離を取って待機してもらう。
竜騎士達が減ったところで、さくら達メインパーティ、ブルー、リーフ、ミカヅキの
「俺は今から『風災竜・テンペスト』を倒す」
「空中戦なら私の出番ね!」
「私もお供します」
「無理だ」
ブルーとマリアが自己主張をしてきたが、一刀両断にする。
「ブルー、あの風の中、飛行する自信があるか?」
「え?あ、えーっと、正直に言うと厳しい、かな」
いくら飛行特化の
「マリア、ブルーに乗らず、俺に付いてくることが出来るのか?」
「……いえ、難しいです」
基本的にマリアには飛行手段がない。
空中移動は出来るが、ブルーと同じく暴風の中ではまともに行動できないだろう。
「心置きなく『テンペスト』と戦うためだ。今回は諦めてくれ」
亜空間で圧倒的に有利な状況で戦うのとは訳が違う。
周囲への影響を考えれば、俺が1人で本気を出し、封殺するしかない。
「分かった、私も今回は我慢する。ご主人様、頑張ってね。それと、後で乗ってよね」
災竜の力を知っているブルーは、災竜相手では気軽に『空中戦』と言えない事を悟った。
「……………………」
一方、顔色を青くしたマリアは、しばらく葛藤していたが、がっくりと肩を落とした。
「……災竜に及ばない自分の実力が恨めしいです。仁様、どうかお気を付けて」
流石のマリアも移動手段が無ければどうしようもない。
俺を説得では止められないと判断し、諦めたようだ。
「さくら達は竜騎士達と同じように、残骸の対応をしてくれ」
「分かりました……。仁君、無理はしないで下さいね……」
「地上の事はお任せくださいですわ」
《ドーラもがんばるー!》
さくら達は
勇者組は『火災竜』の時と同じように、<勇者>スキルのレベルアップ目的だ。
一応、シンシアは
リコは予知による危機回避を期待している。機会が無いに越したことは無いが。
「ところでご主人様、ブルーちゃんに乗らないって事は、どうやって戦うの?」
思いついたようにミオが尋ねてくる。
「他の飛行手段と言うと……『
「いや、今回は本気の本気だから……レイン、頼む」
契約精霊であるレインが俺の身体に入ってくる。
精霊と同化することで能力を向上させる秘儀、『精霊化』である。
レインとの『精霊化』には飛行能力の獲得と言う副次効果があるのだ。
これが1番安全な飛行手段だ。万が一の時、他の誰か、何かが傷つくことはないからな。
「ご主人様が本気ね。それだけの相手って事かしら?」
「ああ、そうだ。……そろそろ崩れるな。全員、退避の準備をしろ!」
俺の指示により、それぞれが
全員が天空城から退避した後、天空城の陸地部分がボロボロと崩れて行った。
待機中の竜騎士メイド達が残骸の回収を始める。後、おまけで落下エルフ達も。
『テンペスト』はまだ完全覚醒していないのだろう。
寝ぼけてベッドの中でモゾモゾしているくらいの感覚だ。
「ご主人様、今の内に攻撃しちゃえばいいんじゃない?まだ起きてないんでしょ?」
「俺は『テンペスト』が完全覚醒するまで攻撃を仕掛けるつもりはないぞ。理由は2つ」
ミカヅキに乗るミオの提案を却下して理由を説明する。
今回の天空城崩壊と『テンペスト』覚醒は、ユリアやクロード達に多少の関わりがあるとはいえ、基本的にはユリエラやギレッドが原因だ。
『テンペスト』が被害を出した場合、その責任はユリエラやギレッドにあると言える。
もし、完全に『テンペスト』が覚醒する前に攻撃を仕掛けた場合、『テンペスト』の覚醒と無関係だと言えなくなってしまう。
俺達は善意の第三者として、『テンペスト』の被害を抑える、そういう立場でありたい。
俺は誰かの尻拭いで責任を負う気は無い。例え、それで被害が出ようとも。
「ご主人様も難儀な性格してるわね……」
「それは理解している。言い訳みたいなものだけど、大事なのは大義名分……と言うか、自分が納得しているかどうかだからな」
大事なのは人目の有無ではなく、自分自身が納得しているかどうかだ。
俺、主義を第一に持ってくるタイプなんで。
つまり、こう。
俺の主義>越えられない壁>周囲への被害>>>落下エルフ
「それで、もう1つの理由は?」
「嫌な予感がする。中途半端な状態で攻撃すべきじゃないと俺の直感が訴えかけている」
「その理由だけで十分じゃない?」
「それは否定できないな」
もう少し具体的に言うと、色々と暴発しそう。
一撃で止めを刺せる自信があれば別だが、そうでなければ止めた方が良い気がする。
ギリギリまで側に居たいと言うマリアを除き、仲間達も落下物回収へと向かって行った。
「そろそろ、完全覚醒しそうだな」
『テンペスト』の上にあった陸地は大部分が崩れ落ちた。
覚醒が近いのか、徐々に周囲に吹く風が強くなってきた気がする。
『風災竜・テンペスト』は『地災竜・アースクエイク』とは異なり、西洋の竜型だった。
翡翠のような鱗、蝙蝠型の羽、長い尻尾が特徴だ。
こちらも『アースクエイク』と同じように、全長10km程だろう。
そして、とうとう『テンペスト』が完全覚醒した。
『テンペスト』の翡翠色の瞳が開かれると同時に、大きく口を開け、咆哮した。
「ァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
咆哮と言ったが、実際にはほとんど音は出ていない。
ただ、衝撃波が響いただけだ。
「やべっ」
衝撃波だけなら良かったのだが、そのついでに残っていた天空城の残骸が飛散した。
大物残骸が凄まじい勢いであちこちに飛んで行く。
……人里に落ちたら、とんでもない被害が出る!
「マリア!」
「はい!」
俺とマリアは『
「流石災竜だな、起きただけで災厄をもたらすとは……」
当然、起きた後も災厄をもたらすようだ。
俺が少し目を離した隙に、『テンペスト』の周囲を竜巻が覆っていた。
いや、直径10km以上の竜巻とか、もはや台風とかそんな感じの何かである(語彙力低)。
当然、周囲への風も強くなっている。
下の方で待機していた竜騎士メイドの内、
しかも、それだけではなかった。
気付いたら、俺の服がびしょ濡れになっている。
「ただの風じゃなく、暴風雨なのか?……」
雲の上なのに風に雨が混じっている。
……いや、違う。これは雨じゃなくて海水だ。
『テンペスト』の周囲を覆う竜巻が、はるか下にある海から海水を巻き上げている。
それが風と混じり合い、暴風雨のようになっていたようだ。
駄目だな。
災竜はやはり、この世界に居てはならない存在だ。
あらゆる面で、俺の
「仁様、お気を付けて」
「ああ」
マリアに見送られ、『風災竜・テンペスト』に向かう。
まず、第一に優先する事は、周囲への被害を抑えることだ。
『風災竜・テンペスト』は雲の上に居ても各地に被害が出る可能性が高い。
ならば、もっと高い場所に行けば良い。
俺は『精霊化』したまま『テンペスト』に接近する。
竜巻に覆われているが、勢いよく飛び込めば何の問題も無く突き抜ける。
竜巻の中は外以上の暴風に晒されているが、単身なら行動できない程ではない。
俺は『テンペスト』を移動させるため、『テンペスト』の真下から、ケツを蹴り上げた。
-ドゴン!!!-
その衝撃で『テンペスト』の高度が上がる。
-ドゴン!!!-
-ドゴン!!!-
-ドゴン!!!-
-ドゴン!!!-
何度も何度も『テンペスト』のケツを蹴り上げる。
どんどん、どんどん『テンペスト』は空高く上がっていく。
当然、『テンペスト』も抵抗する。
今まで以上に強力な暴風を俺1人に向けてきた。
「わっぷ」
顔に暴風が叩き付けられ、変顔になる。
例えば、カスタールの王都にこの暴風が直撃したら、地面ごと土地がひっくり返るくらいの威力があるだろうな。当然、王都は壊滅だ。
(なんで、態々カスタールで例えるの!?)
一番慣れ親しんでいて、規模感がイメージしやすいからだよ。
それはともかく、やはり、コイツは地上に近づけちゃ駄目だな。
一応、俺1人なら我慢できる範疇だ。
本当にマリアやブルーを連れて来なくて良かった。
『テンペスト』の抵抗を無視しながらどんどん蹴り上げ、ついには成層圏を越え、宇宙と呼ばれる領域に足を踏み入れた。
「空気が無ければ、『風災竜』と言えども弱体化は免れないだろ?」
見れば、いつの間にか『テンペスト』の周囲にあった竜巻は消滅していた。
もう少しよく見れば、『テンペスト』がなんかグッタリしている気がする。
「さあ、戦いを始めようか。ここなら、本気を出しても周囲への被害はないだろうからな」
流石に声は聞こえていないだろうが、『テンペスト』も俺の事を認識しているのは間違いなく、しっかりと俺の事を見据えていた。
不思議な話だが、『テンペスト』の腰が引けている気がする。気のせいだよな?
『テンペスト』が咆哮し、俺に向けて突進してくる。
風は?
俺は『テンペスト』の突進を避けつつ、その横っ面をぶん殴る。
大きく吹っ飛ぶ『テンペスト』。
更に容赦なく連撃を加えて行く。
アッパー!ジャブ!ジャブ!ストレート!足刀!貫手!功夫!
『テンペスト』に余計な事をさせないよう、容赦なく、本当に容赦なく攻撃をする。
徐々に『テンペスト』が弱っていく実感がある。
「そろそろ、止めを刺してやる」
俺は拳を握り、全力を込める。
「死ねええええええええ!!!」
全力で接近し、全力で振りかぶり、全力で振り抜く。
その一撃は『テンペスト』の腹に突き刺さり、『テンペスト』の身体から力が抜ける。
『テンペスト』の魂に触れ、死んでいる事を確認する。
俺は『テンペスト』の魂を<
これで、他の災竜と同じように性質を吸収できるようだ。
肉体の方も色々と使い道があるからな。
「うん?」
見れば、『テンペスト』の頭部があった辺りに何かがある。
A:結晶のような物があります。中には人間の幼女が入っていますが……どうやら、『テンペスト』が作り出した存在のようで、その意識を保持していると思われます。
災いの神を倒したら、幼女が出てきました。
まあ、割とよくある話だね。
遠目だが、全く脅威を感じない。
アレ、戦えるのか?
A:無理だと思われます。見た目相応の戦闘能力しか持っていません。
『テンペスト』の真意は分からないが、放っておく訳にもいくまい。
俺はそれほど大きくない結晶を小脇に抱え、仲間達の元へ帰還する。
あ、この結晶、<
「皆さんお待ちかね、戦果リザルトの発表です!」
「わー、ぱちぱちぱち」
《ぱちぱちぱちー》
ミオとドーラがノってくれたので、無事にスベらずに済んだ。
俺達メインパーティは現在、エステア迷宮の隠しエリア(51層)に来ている。
『風災竜・テンペスト』を倒したことで得られたモノが色々とあり、その発表・検証をするのに秘匿性の高い空間が必要になったのだ。
ざっくり、得られたものを紹介していこう。
「まずはスキル系だ」
マリア<勇者LV9>、シンシア<勇者LV7>、リコ<勇者LV5>。
「マリアは後で<勇者>で得られたスキルの説明をしてくれ」
「はい」
ブルー<竜魔法LV7>、リーフ<竜魔法LV5>、ミカヅキ<竜魔法LV6>。
「今回、ドーラの<竜魔法>は上がらなかったな。次でLV10だったのに」
《ざんねーん……》
セラ<英雄の証LV9>。
「相変わらず、効果は地味だな」
「まだ、LV10がありますわ。きっと、何かあると信じていますわ」
基本的に前回(火災竜)同様のラインナップだ。
この短期間でスキルレベルがガン上がりである。
「マリア、説明を頼む」
「はい。<勇者>がレベル9になった事で得られたスキルは、<
「名前は予想通りね」
「そうだな」
俺とミオの予想通り、三種の神器だったな。
「このスキルを発動すると、MPが継続的に消費されます。その代わり、一時的に肉体が魔力……精霊に近づき、ステータスが向上します。加えて、精霊のように空中を移動出来るようになります」
「セルフ『精霊化』じゃねぇか!」
簡単に言えば、「契約精霊無しで使える『精霊化』」である。
「もう少し早く手に入っていれば、仁様を追うことが出来たのですが……」
マリアが悔しそうに言う。
『テンペスト』との戦いでは、マリアでも付いてくる事は出来なかった。
普通の『精霊化』では飛行能力は手に入らないが、<
間の悪い事だ。
「仁様に置いて行かれないよう、集中的に鍛える所存です」
「マリアちゃん的には有用そうなスキルですね……」
「そうですわね。同じLV9なのに、<英雄の証>に比べて派手な効果で羨ましいですわ」
「そもそも、生来のレアスキルが無いミオちゃんに隙は無かった……。はぁ……」
とりあえず、これで三種の神器スキルが揃った訳だな。
ちょっと整理してみよう。
<
<勇者>スキルLV7で取得。
光で出来た剣(不壊、魔族・魔物特効)を作り出すことが出来る。本数は無制限。ただし、使用者が持っていないと消える。また、通常の武器に重ねて発動することも出来、その場合は攻撃力上昇と魔族・魔物特効の付与が入る。
<
<勇者>スキルLV8で取得。
所有者、およびパーティメンバー全員の状態異常を無効にし、各種属性攻撃のダメージを低減する。低減率は所有者50%、パーティメンバー30%。また、光属性の攻撃は無効化する。
<
<勇者>スキルLV9で取得。
MPを消費し続けている間、肉体を精霊に近づけ、ステータスを向上する。使用中はHPが自動回復するが、MPは回復できなくなる。MPが切れると解除される。また、精霊のように空中を移動することが出来る。
並べてみると、結構強力なスキル群だ。
流石は勇者と言ったところか。
こうなると、LV10で得られるスキルが楽しみになってくるよな。
「マリア、<勇者>スキルのレベルアップを狙ってもらっても構わないか?」
「承知いたしました。仁様がお望みでしたら、手段を選ばずにレベルを上げます」
「いや、手段は選べ」
マリアが言うと、本当に手段を選ばずにやりそうだから怖い。
真っ当な方法でスキルレベルを上げてもらいたい。
「スキルはこんなものか」
「異能は良いの?」
ミオ、それは駄洒落か?いのうはいいの……駄目だな。
「ああ、異能は後回しだ」
「また、ヤバいからかな?」
「違う。少し面倒だからだ」
今回、そこまでヤバくはない。
「と言う訳で、次は取得アイテムの
「それはアイテムなんですの?」
セラの疑問はスルー。
「これで俺は『テンペスト』と同じように風を操れるようになった。スカートも捲り放題だ」
「魔法でも同じことが出来ますわよね?」
「魔法と違って、MP消費が無い。魔法よりも繊細に調節できる。利点はいくらでもあるぞ」
その気になれば、スカートを捲るどころか、風でパンツを降ろすことも出来る。
自由自在に操れる風。それは、もはや触手である(暴論)。
「ご主人様、パンツくらい言ってくれれば見せるわよ?」
《パンツみるのー?》
ドーラが躊躇なくスカートをたくし上げる。白と水色の縞々。
違う。パンツを見たいのではなく、スカートを捲りたいのだ。
ただパンツが見えればいいのではなく、スカートを捲った結果として、パンツが見えると嬉しいのだ。俺は何を熱く語っているのか……。
「ドーラ、はしたないから止めなさい」
《はーい》
「え?それをご主人様が言うぴっ!?」
ミオが股を抑えてモジモジしている。
「じゃあ、ミオ、パンツ見せてくれるか?」
「今は無理だから!勘弁して!」
流石のミオにも限度はある模様。
「便利な能力だが、パッと使い道を思いつかないので次に移ろう」
風を操れると言ったら、エロい事しか思いつかなかったのだ。
「次は同じく『風災竜・テンペスト』の肉体……死骸と言ってもいいな」
「死骸をアイテムと呼ぶのは、若干抵抗があります……」
さくらが苦笑いしている。
「魔物由来の素材って基本死骸だから今更だろ?」
「言われてみればそうですね……」
肉だって角だって死骸の一部であることには変わりがない。
素材をアイテムと呼ぶのなら、死骸をアイテムと呼ぶことと等しい。
「『テンペスト』は損壊無しで倒したから、ほぼ生前の姿のままだ。流石にここで出す訳には行かないけど……」
「全長10km程でしたよね……?<
「無限の名は伊達ではないって事だな」
ここでは出せないが、その気になれば出すのも一瞬だ。
「ご主人様がアイテム呼ばわりするって事は、その死骸にも何か効果があるの?」
「実はこの死骸、封印状態と同じで宙に浮くんだ」
「それってもしかして……」
「ああ、俺達の天空の城を作ることが出来る!」
「よっしゃ!」
ミオ、渾身のガッツポーズ。
「ついでに言えば、エルフ達が栽培していた、地上では絶滅している希少植物も回収しているからな。地上で育てられなければ、天空城で育てさせるぞ」
崩壊する天空城において、希少植物の回収を最優先で竜騎士メイド達に回収させたのだ。
畑泥棒をするつもりはないが、崩れ落ちる場所から回収する分には文句はないだろう。
「その為にエルフを回収したんだからな」
「エルフの救出、その為だったんだ……。ご主人様、容赦なさすぎない?」
今回、俺は落下するエルフ達を竜騎士メイドに助けさせた。
その際、エルフ達には落ちて死ぬか、俺の奴隷となって助かるか選ばせた。クロード達の件も含め、友好的とは言えない関係なので、容赦はしなかった。
落ちる途中で死んだ者、死にそうな状況でも人間を見下している者、態度の尊大な者など、助ける意味のない相手は無視し、従順に従う者だけを助けた。
最終的に約3割、三百数十名を助けることになった。
「エルフの畑なら、エルフ奴隷の主人となった俺の物にして問題はないよな」
「はい、問題はありません。奴隷の物は主人の物です」
マリアのお墨付きを貰った。
エルフから畑の所有権を奪う為、天空城の崩落からエルフを助けた。だからこそ、全員は助けなくていいと考えた。
「同じ理屈で天空城にあった
「あれ?そっちはユリエラって『姫巫女』が作ったんじゃなかったけ?」
「ああ、ユリエラも蘇生させて、奴隷にしているから問題ないだろ」
落下するユリエラの死体を回収し、『
正直に言うと、ユリエラを蘇生するメリットは無かったのだが、アルタの頼みで蘇生することにした。正確には、蘇生を許可した。
アルタがそう言った理由は、確認したい事があったからだそうだ。
それは、死んだ『姫巫女』を蘇生するとどうなるのか、と言うモノだ。
結論から言うと、『人柱』の称号と『姫巫女』のユニークスキルが消えていた。
折角のユニークスキルが……。まあ、こちらは救済があったんだけどな。
「スキルが残っていたのは良いんだが、復活したユリエラ、記憶の大部分を失っていたらしい。それほど時間が経っていないはずなんだが、予想よりも早く記憶が欠損していたそうだ」
死後、蘇生までに時間が経つと記憶の欠損が起こる。
今回、天空城の崩壊によりユリエラの死体を回収するのに多少の時間がかかった。
本来なら、そこまで記憶が欠損する時間ではない。しかし、ユリエラはその短時間で大部分の記憶を失っていた。
ユリエラ個人の話なのか、ハイエルフの話なのか、『姫巫女』の話なのかは不明だ。
「エルフの記憶喪失率高いわね。それで、どんな状況なの?」
「命令をすれば単純なことは出来るが、何も言わなければ何もしないらしい」
記憶と言うのはその人の全てと言っても良い。
その大部分を失っては、まともな自我が残らないのも無理はない。
「自分から何かを言う事も無いから、下の世話も必要で、現在はオムツ装備だそうだ」
「何でミオちゃんの方を見て言ったの!?」
ミオがその道の先駆者だからだよ?
迷宮でオムツ装備だったことを忘れてはいない。
そんな訳で、ユリエラは現在、要介護のおばあちゃん状態である。
「今は何とか使い道を考えているところだ」
「相変わらず、容赦の欠片も無いわね」
「ご主人様基準で『まとも』に含まれなかった者の末路ですわね」
正常とは言えないが、ユリエラを奴隷にしたことに変わりはない。
つまり、ユリエラの
オマエノモノハオレノモノ。
「実質、天空城関連はそっくりそのまま俺の物になったって事だ」
「是非、是非、天空城の建設にはミオちゃんも関わらせてください」
ミオがへへーと土下座する。
「ミオなら、俺の思い描く天空城に近い物を作ってくれるだろうからな。任せても良いか?」
「もち!お任せあれ!」
どうせ、俺にはデザインセンスが無いので、人任せになるのは確定しているからね。
俺が関わっても良いことは無いが、天空城には理想形がある。
なら、俺と同じく理想形を知っている者を携わらせるのは当然の事だ。
ちなみに、天空城を作る事に、明確な目的がある訳ではない事をここに宣言しておく。
作りたいから作るだけだ。
閑話休題。
「最後の戦利品……と言うか、ドロップアイテムがコレだな」
そう言って、俺は<
結晶の中には4~5歳くらいの幼女(当然全裸)が眠りについている。
災竜の鱗のような光沢のある翡翠色の髪が肩まで伸びている。見た目は4~5歳くらいなのに、わずかに胸が膨らんでいるのは気のせいだろうか?
「この子が『風災竜・テンペスト』の意識を持っているんですか……?」
「信じ難いですわね」
《この子、ドラゴンじゃないよー》
「ああ、もしかしたら、対話のできる災竜となるかもしれん」
今まで、災竜と対話が出来るとは考えていなかった。
もし、この幼女が人の言葉を理解するのなら、災竜にも自我、意志があると言う事になる。
「しかし、何故に幼女?ご主人様の趣味?」
それは俺も疑問だ。
後、俺の趣味ではない。
作者の趣味です。
次回、11章終わります。12章の進捗ヤバいです。
3/30に170話。4/1に偽伝。4/10に登場人物紹介と何か(本編じゃないかも)となりそうです。