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この作品「魔法少女同盟　東京都の魔法少女たちの場合」は「魔法少女大戦」「悪堕ち」等のタグがつけられた作品です。

少しずつですが、再開していきます。まず魔法少女大戦の巫女魔法少女たちから。

魔法少女同盟　東京都の魔法少女たちの場合

T・H・I

2015年2月21日 22:56

少しずつですが、再開していきます。

まず魔法少女大戦の巫女魔法少女たちから。

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[newpage]

　東京都の闇堕ち魔法少女雨切レイの場合

　流星雨を迎えた東京上空にて――。

　「フフフッアハハハ!」
　「くっ、このままじゃ」
　負ける――!

　少々露出が派手で胸を強調し、黒色のニーハイロングブーツがエロスさえ発している。全体的に黒色の洋風の面が強い魔法装束を纏ったこの黒髪長髪の美少女は、ニヤニヤと薄気味悪く微笑みながら戦いを圧倒的に有利に進めている。
　対するお嬢様といった風貌の魔法少女は、薄緑色の上衣と灰色と黒をベースにしたスカートを身に纏っている。巫女というにはスカートと黒タイツを着用していて洋風だが、紐の結び方や装飾品、模様などは地元東京というより江戸から今日まで伝わってきた伝統的なものが見受けられる。

　「どうして、魔法少女同士でこんな戦いを!?」
　戦闘を相手から仕掛けられてすぐに劣勢に追い込まれてしまったほうの東京都の魔法少女/小張凜(こばりりん)は、相手に事情を話してもらおうと何度も訴え続けているが、生憎相手はニヤニヤと薄気味悪く微笑んでいるだけだ。そして同性であるにも関わらず凜は相手の少し年上の少女の妖しさに、エロスを感じてしまっている。
　この少女は、御先神のモ助(鳥のユリカモメの姿をしている)の言ったとおり、闇堕ちしてしまった魔法少女なのだろう。
　しかも、自分と同じ本来この東京を守護する筈の。
　と、いうのも、凜の封具はスカイツリーとソメイヨシノをイメージし、プティボヌールと名づけたステッキなのだが、相手の封具もまた東京由来のもので、東京タワーとスカイツリーを模してしかも合わせた両刃の槍なのだ。加えて、周囲には数多くの折鶴が本当に千羽いるのではないかと思うほどに浮かび、鋭利な刃物と化したそれらが凜の身体のあちこちに浅いが無数の切り傷を作り、魔法衣装にもダメージを与えていた。

　魔法少女はその都道府県に原則的に一人である。つまり、凜は自分がこの少女が闇堕ちしてしまったがために新たに任ぜられた東京の魔法少女なのだと、そこまでは想像を膨らませることが出来たが、現実は非情であった。

　ギィン!
　ガァン!
　
　「あぁぁぁぁぁっ!」
　何度も相手に呼びかけながらステッキで槍とかち合ってきたが、ついに凜の十三歳の肉体が闇堕ちした魔法少女――雨切レイ(十五歳)の穢れの力の込められた一撃を捌ききれずに東京タワー下へと墜落してしまった。

　凜に対し一日の長が、レイにはあったのだ。

　東京都の魔法少女/小張凜は敗北した――!

[newpage]

　穢れによってマガツヒが出現すると、現場が異界に引きずり込まれたようになり、力無き一般人は基本的に姿を消されてしまう。

　しかし、この東京上空での戦い、しかも中心になった東京タワーの下には小忌衣(おみごろも)を纏った何十人、いや何百人もの怪しい男たちがいて、神聖な儀式の場に立ち会ったかのように二人の魔法少女の、一方的な戦いを見届けていた。

　彼らは闇鍋会という、闇に魂を売り渡した人間達だ。東京の地下に潜んでいた彼らだが、凜が夢の中に現れたレイを探しているうちにアジトを嗅ぎつけられ、凜を口封じしようと追いかけているうちにこうして上に上がってきてしまったのだ。
　しかし、彼らにとって闇堕ちした魔法少女は神だ。ましてや、実際の戦闘となると、それはまさに神聖な儀式に映る。

　尤も、当のレイにとって闇鍋会なんてどうでもいい存在で、今も彼らを歯牙にもかけていない。そもそも、彼らの存在を今知ったくらいだ。

　「ハァハァ、くっ」
　高空から墜落してしまっても、変身しているから死には至っていないが、凜は重傷を負ってしまった。今の衝撃で肝心のプティボヌールを手から離してしまった。モ助もレイの御先神リビー(東京のアンテナをイメージしたセキレイ)の発する毒電波にやられて目を回して気絶してしまっている有様だ。

　「フフフッ」
　闇鍋会の男たちが遠巻きにレイと凜を囲む中、レイは凜が立ち上がり体勢を整えるのを許さずに、その封具リコレクションズの切っ先を突きつけた。
　それでも戦いを放棄せずにいる凜は、手を動かそうとするも
　「あぁぁぁぁっ!」
　レイの周囲に浮かぶ折鶴のうちの一羽が、キツツキが木を突くかのように凜の右手の甲を貫いた。
　ついに凜を手から血の朱色に染めていく。
　「フフフッ」
　残った左手も、レイがリコレクションズの東京タワーを模したほうの刃で貫いてしまう。
　「ひぎゃぁぁぁぁっ!」
　「フフフッ」
　両手をもう使い物にならなくされてしまった凜は、苦痛と敗北した悔しさから来る涙と鼻水とで可愛らしい顔をぐしゃぐしゃにしてしまい、それで――レイは決定的に興醒めした。
　
　弱い。
　殺す価値も無い。
　護りたいものも護れない魔法少女に存在価値は無い。

　ガチガチと歯を鳴らして恐怖に顔を歪ませた凜を、最後にニーハイロングブーツに包んだ片足で蹴飛ばし、吹っ飛んでゴロゴロと転がってようやく止まったところで凜が気絶したために変身が解けた。
　そして、レイは流星雨の空を見上げた。

　とてつもなく強力なマガツヒと様々な力が、この東京の上空ではなく神奈川よりも向こうの西のほうから感じるが、もっと西に行けとリビーからの毒電波が伝わってくる。
　
　「おぉぉぉぉぉぉっ!」
　闇鍋会の者共がレイの勝利を祝い、ひれ伏すが、それすらも無視して彼女はリビーに導かれて西へと飛んでいった。
　
　
　小張凜は闇鍋会によって東京の地下のどこぞへと運ばれてしまったが、レイにはもうどうでも良いことであった。

　雨切レイが東京都から飛び去ったところで異界から通常空間へと戻り、凜は数時間後捜索願を出されることになったが、大都市では別に珍しくも無いことであった。

　闇堕ちした雨切レイの後を継いで今日まで地味に東京を護ってき小張凜という十三歳の少女が、その闇堕ちした先輩魔法少女に敗北して闇の世界へと連れ去られて消えてしまっただけである。

　異世界を救う伝説の魔法騎士にとって大切なこの東京タワーで――。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京都の魔法少女/小張凜　再起不能(リタイア)

[newpage]

　一方その頃――京都御苑0条探題にて。

　京都府の魔法少女/近衛めぶきの場合

　「けったいな夜やなぁ」
　羽織袴を着用の稲荷の姿をした御先神おあげが、縁側から流星雨の夜空を見上げてキセルを吹かしながらそう呟いた。
　その隣には、今や京都を護る魔法少女の代表格になった近衛めぶきが魔法少女姿で座っていた。およそ、『はんなり』といった京都育ちの美少女のイメージからはかけ離れた女子高生である。
　「んー?　こんな流星雨なんて毎年時期が決まってるやろ?」
　普通にニュースで天体ショーくらい流すものだ。まぁ、天体にあまり興味の無い手合いでもこんなはっきりと見られる流星雨なら暫し夜空を見上げることもあるだろう。
　「どうもマガツヒの活動が活発になりそうでなぁ」
　「だったら潰せばいいんちゃう」
　魔法少女の中でもかなり過激であるが、千年間に渡って京都を守護してきた魔法少女の家系のひとつに生まれ、マガツヒとの戦いで戦死した姉の後を継いで十八代目を名乗るようになってから月日がそれなりに経過した。
　何しろ、血筋からしてめぶきは全ての魔法少女の中で最強格だ。代を継いだその瞬間から千年の歴史の中で歴代最強という特性を帯びている一族だ。

　めぶきに匹敵するのは、石川県の魔法少女(魔法姐さん)犬鷲由里くらいであろう。

　「ウチら、そのためにいるんやし」
　カラスをイメージして黒く、そして喪服でもあるめぶきの魔法少女装束は(プリキュアなどと異なり)徹底的に余分なフリルなどを排除して実用性重視で戦いやすい作りだ。
　今や普段着になってしまっているこの装束でめぶきは、学校を除けばこの格好でパトロールに出る。心配なら今から夜の京都をパトロールしたっていい。元々京都は要所、魑魅魍魎/マガツヒがはびこる街なのだから。
　「せやなぁ。でもまあ今夜はやめとこ」
　「なんでや?」
　少し肩透かしを食らってしまった。
　「嵐の前の静けさっちゅうのかな、流星雨が始まってからどうも雑魚共が鳴りを潜めとる」
　「ふぅん?」
　「ま、その分何か大物がいるっちゅうことになるが」
　「こっちからそいつ、潰しにいけへんの?」
　「京都界隈じゃあらへんな。今は龍脈がおかしいから例えめぶきでも京都から出ようとしたら、力が落ちる」
　「あぁ、そんなこと前に聞いたわなぁ」
　おあげは秘密主義で基本的なことすら最初隠していたものだが、珍しく向こうから話してくれたのが龍脈の異常のことだった。京都から出ようとしたら力が落ちてしまうというのは、相手によっては確かに死活問題になってしまう。
　「ま、今夜はこのままゆっくりしてようや。もし粋がった雑魚が沸いて出てきたら出動や」
　「なんや、結局いつもと変わらない悪即斬やん」
　昼間だろうが夜中だろうが、マガツヒは現れるときは現れ、街や人々に危害をもたらす。他の地域と異なるのは、ある程度その存在が警察に知られてしまっているということだ。なので、情報統制を彼らにしてもらっている。被害が大きくなって揉み潰せなくなってしまう前にマガツヒを速やかに始末するのがめぶきとおあげの任務であった。
　「せやなぁ」
　おあげはキセルを返し、まったりと流星雨を見上げ続ける。
　めぶきも、別段することが無いので付き合う。

　めぶきは、今夜もこの京都御苑0条探題に宿泊することにした。戦死してしまった姉の後を継いだ頃から、彼女は近衛の家に帰らなくなって長い。

　

この星には、竜が眠る場所がいくつかある。 　眠りを維持できれば、その土地に豊穣をもたらすが 　目覚めさせてしまうと災厄をもたらす。 　数年前、日本の下に眠るその竜が寝返りを打った――。 　その規模たるや、想像を絶する被害を巻き起こした。 　 　『竜が目覚めそうだ』 　事態を重く見た日本の神々は 　竜の目覚めとともに発生する『穢れ』を祓うため 　巫女/魔法少女を必要としていた。 　 　神々は自らの力を分け、式神として日本中に放った。 　 　魔法少女は封具と呼ばれる力をもった武器を与えられ、式神がサポートする。 　望むと望むまいと『魔法少女』になった巫女の少女達は 　神々の力とともに日本中に発生する 　『災い』を食い止めるために日夜奔走する。 　――地味に、地元を。 　 [newpage] 　東京都の闇堕ち魔法少女 雨切レイの場合 　流星雨を迎えた東京上空にて――。 　「フフフッアハハハ!」 　「くっ、このままじゃ」 　負ける――! 　少々露出が派手で胸を強調し、黒色のニーハイロングブーツがエロスさえ発している。全体的に黒色の洋風の面が強い魔法装束を纏ったこの黒髪長髪の美少女は、ニヤニヤと薄気味悪く微笑みながら戦いを圧倒的に有利に進めている。 　対するお嬢様といった風貌の魔法少女は、薄緑色の上衣と灰色と黒をベースにしたスカートを身に纏っている。巫女というにはスカートと黒タイツを着用していて洋風だが、紐の結び方や装飾品、模様などは地元東京というより江戸から今日まで伝わってきた伝統的なものが見受けられる。 　「どうして、魔法少女同士でこんな戦いを!?」 　戦闘を相手から仕掛けられてすぐに劣勢に追い込まれてしまったほうの東京都の魔法少女/小張凜(こばりりん)は、相手に事情を話してもらおうと何度も訴え続けているが、生憎相手はニヤニヤと薄気味悪く微笑んでいるだけだ。そして同性であるにも関わらず凜は相手の少し年上の少女の妖しさに、エロスを感じてしまっている。 　この少女は、御先神のモ助(鳥のユリカモメの姿をしている)の言ったとおり、闇堕ちしてしまった魔法少女なのだろう。 　しかも、自分と同じ本来この東京を守護する筈の。 　と、いうのも、凜の封具はスカイツリーとソメイヨシノをイメージし、プティボヌールと名づけたステッキなのだが、相手の封具もまた東京由来のもので、東京タワーとスカイツリーを模してしかも合わせた両刃の槍なのだ。加えて、周囲には数多くの折鶴が本当に千羽いるのではないかと思うほどに浮かび、鋭利な刃物と化したそれらが凜の身体のあちこちに浅いが無数の切り傷を作り、魔法衣装にもダメージを与えていた。 　魔法少女はその都道府県に原則的に一人である。つまり、凜は自分がこの少女が闇堕ちしてしまったがために新たに任ぜられた東京の魔法少女なのだと、そこまでは想像を膨らませることが出来たが、現実は非情であった。 　ギィン! 　ガァン! 　 　「あぁぁぁぁぁっ!」 　何度も相手に呼びかけながらステッキで槍とかち合ってきたが、ついに凜の十三歳の肉体が闇堕ちした魔法少女――雨切レイ(十五歳)の穢れの力の込められた一撃を捌ききれずに東京タワー下へと墜落してしまった。 　凜に対し一日の長が、レイにはあったのだ。 　東京都の魔法少女/小張凜は敗北した――! [newpage] 　穢れによってマガツヒが出現すると、現場が異界に引きずり込まれたようになり、力無き一般人は基本的に姿を消されてしまう。 　しかし、この東京上空での戦い、しかも中心になった東京タワーの下には小忌衣(おみごろも)を纏った何十人、いや何百人もの怪しい男たちがいて、神聖な儀式の場に立ち会ったかのように二人の魔法少女の、一方的な戦いを見届けていた。 　彼らは闇鍋会という、闇に魂を売り渡した人間達だ。東京の地下に潜んでいた彼らだが、凜が夢の中に現れたレイを探しているうちにアジトを嗅ぎつけられ、凜を口封じしようと追いかけているうちにこうして上に上がってきてしまったのだ。 　しかし、彼らにとって闇堕ちした魔法少女は神だ。ましてや、実際の戦闘となると、それはまさに神聖な儀式に映る。 　尤も、当のレイにとって闇鍋会なんてどうでもいい存在で、今も彼らを歯牙にもかけていない。そもそも、彼らの存在を今知ったくらいだ。 　「ハァハァ、くっ」 　高空から墜落してしまっても、変身しているから死には至っていないが、凜は重傷を負ってしまった。今の衝撃で肝心のプティボヌールを手から離してしまった。モ助もレイの御先神リビー(東京のアンテナをイメージしたセキレイ)の発する毒電波にやられて目を回して気絶してしまっている有様だ。 　「フフフッ」 　闇鍋会の男たちが遠巻きにレイと凜を囲む中、レイは凜が立ち上がり体勢を整えるのを許さずに、その封具リコレクションズの切っ先を突きつけた。 　それでも戦いを放棄せずにいる凜は、手を動かそうとするも 　「あぁぁぁぁっ!」 　レイの周囲に浮かぶ折鶴のうちの一羽が、キツツキが木を突くかのように凜の右手の甲を貫いた。 　ついに凜を手から血の朱色に染めていく。 　「フフフッ」 　残った左手も、レイがリコレクションズの東京タワーを模したほうの刃で貫いてしまう。 　「ひぎゃぁぁぁぁっ!」 　「フフフッ」 　両手をもう使い物にならなくされてしまった凜は、苦痛と敗北した悔しさから来る涙と鼻水とで可愛らしい顔をぐしゃぐしゃにしてしまい、それで――レイは決定的に興醒めした。 　 　弱い。 　殺す価値も無い。 　護りたいものも護れない魔法少女に存在価値は無い。 　ガチガチと歯を鳴らして恐怖に顔を歪ませた凜を、最後にニーハイロングブーツに包んだ片足で蹴飛ばし、吹っ飛んでゴロゴロと転がってようやく止まったところで凜が気絶したために変身が解けた。 　そして、レイは流星雨の空を見上げた。 　とてつもなく強力なマガツヒと様々な力が、この東京の上空ではなく神奈川よりも向こうの西のほうから感じるが、もっと西に行けとリビーからの毒電波が伝わってくる。 　 　「おぉぉぉぉぉぉっ!」 　闇鍋会の者共がレイの勝利を祝い、ひれ伏すが、それすらも無視して彼女はリビーに導かれて西へと飛んでいった。 　 　 　小張凜は闇鍋会によって東京の地下のどこぞへと運ばれてしまったが、レイにはもうどうでも良いことであった。 　雨切レイが東京都から飛び去ったところで異界から通常空間へと戻り、凜は数時間後捜索願を出されることになったが、大都市では別に珍しくも無いことであった。 　闇堕ちした雨切レイの後を継いで今日まで地味に東京を護ってき小張凜という十三歳の少女が、その闇堕ちした先輩魔法少女に敗北して闇の世界へと連れ去られて消えてしまっただけである。 　異世界を救う伝説の魔法騎士にとって大切なこの東京タワーで――。 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京都の魔法少女/小張凜　再起不能(リタイア) [newpage] 　一方その頃――京都御苑0条探題にて。 　京都府の魔法少女/近衛めぶきの場合 　「けったいな夜やなぁ」 　羽織袴を着用の稲荷の姿をした御先神おあげが、縁側から流星雨の夜空を見上げてキセルを吹かしながらそう呟いた。 　その隣には、今や京都を護る魔法少女の代表格になった近衛めぶきが魔法少女姿で座っていた。およそ、『はんなり』といった京都育ちの美少女のイメージからはかけ離れた女子高生である。 　「んー?　こんな流星雨なんて毎年時期が決まってるやろ?」 　普通にニュースで天体ショーくらい流すものだ。まぁ、天体にあまり興味の無い手合いでもこんなはっきりと見られる流星雨なら暫し夜空を見上げることもあるだろう。 　「どうもマガツヒの活動が活発になりそうでなぁ」 　「だったら潰せばいいんちゃう」 　魔法少女の中でもかなり過激であるが、千年間に渡って京都を守護してきた魔法少女の家系のひとつに生まれ、マガツヒとの戦いで戦死した姉の後を継いで十八代目を名乗るようになってから月日がそれなりに経過した。 　何しろ、血筋からしてめぶきは全ての魔法少女の中で最強格だ。代を継いだその瞬間から千年の歴史の中で歴代最強という特性を帯びている一族だ。 　めぶきに匹敵するのは、石川県の魔法少女(魔法姐さん)犬鷲由里くらいであろう。 　「ウチら、そのためにいるんやし」 　カラスをイメージして黒く、そして喪服でもあるめぶきの魔法少女装束は(プリキュアなどと異なり)徹底的に余分なフリルなどを排除して実用性重視で戦いやすい作りだ。 　今や普段着になってしまっているこの装束でめぶきは、学校を除けばこの格好でパトロールに出る。心配なら今から夜の京都をパトロールしたっていい。元々京都は要所、魑魅魍魎/マガツヒがはびこる街なのだから。 　「せやなぁ。でもまあ今夜はやめとこ」 　「なんでや?」 　少し肩透かしを食らってしまった。 　「嵐の前の静けさっちゅうのかな、流星雨が始まってからどうも雑魚共が鳴りを潜めとる」 　「ふぅん?」 　「ま、その分何か大物がいるっちゅうことになるが」 　「こっちからそいつ、潰しにいけへんの?」 　「京都界隈じゃあらへんな。今は龍脈がおかしいから例えめぶきでも京都から出ようとしたら、力が落ちる」 　「あぁ、そんなこと前に聞いたわなぁ」 　おあげは秘密主義で基本的なことすら最初隠していたものだが、珍しく向こうから話してくれたのが龍脈の異常のことだった。京都から出ようとしたら力が落ちてしまうというのは、相手によっては確かに死活問題になってしまう。 　「ま、今夜はこのままゆっくりしてようや。もし粋がった雑魚が沸いて出てきたら出動や」 　「なんや、結局いつもと変わらない悪即斬やん」 　昼間だろうが夜中だろうが、マガツヒは現れるときは現れ、街や人々に危害をもたらす。他の地域と異なるのは、ある程度その存在が警察に知られてしまっているということだ。なので、情報統制を彼らにしてもらっている。被害が大きくなって揉み潰せなくなってしまう前にマガツヒを速やかに始末するのがめぶきとおあげの任務であった。 　「せやなぁ」 　おあげはキセルを返し、まったりと流星雨を見上げ続ける。 　めぶきも、別段することが無いので付き合う。 　めぶきは、今夜もこの京都御苑0条探題に宿泊することにした。戦死してしまった姉の後を継いだ頃から、彼女は近衛の家に帰らなくなって長い。

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