6回、無死三塁。ぜいたくを言っているのはわかっているけど「犠打」ではなく「犠飛」を見たかった。というのも1試合4犠飛ならプロ野球タイ記録。ドキドキしていたのは僕だけだったとは思うが、大野奨が投前にきれいに転がし、勝利を不動にする8点目が入った。
それでも1試合3犠飛は今季両リーグ2度目にして最多。前回も中日がDeNA戦(7月28日)で記録している。2回には無死満塁から京田が左翼へ勝ち越しの犠飛。ビシエドも1死から右翼に打ち上げた。3回は1死三塁から大島が中堅へ。少し浅かったが「大野がよく走ってくれました」と走者に感謝した。
「最低限の仕事」。これは犠飛を打った選手の定番コメントだ。アウトは増えるが、得点が入る。自分の打率はそのままだが、打点は増える。謙遜も含めた「最低限」だろうが、決して簡単ではないはずだ。球団史上最も犠飛を打った男に、その極意を聞いてみた。
「犠牲フライには打ち方があるんです」。歴代18位の69犠飛。立浪和義さんはそう言った。上位は本塁打王争いの常連が名を連ねる中、二塁打タイプの立浪さんが積み重ねたのはコツを知っていたからだ。
「投手は前に飛ばさせたくない。ゴロを打たせたい。こちらは何としても1点ほしい。その読み合いなんですよ」。内角への厳しい球で詰まらせる。外角に逃げる球で引っかけさせる。そんなバッテリー心理を知っていれば、打者有利のカウントに持ち込める。そうなれば主導権は立浪さんが握っている。
「ちょっとだけ遅らせて打つんです。右打者だと二塁手の頭に打ち返すイメージですね。もちろん狙うのはヒットですが、その意識があれば打ち損じてもセンターから逆方向へのフライになってくれるんです」
狙うのは安打だが、たまたま打てるほど甘くもない。それが最低限。立浪さんの極意通り、この日の3犠飛はすべて中堅から逆方向だった。