スパイとIS 作:在日チョッパリ
机に突っ伏す俺。
周りから突き刺さる視線。
鼻腔に刺さるような、香水の匂い。
あたりにいるのは、女性ばかり。
それはまさしく、『女子校に入学してきた主人公』のような状況で……
というか、それで説明が付いてしまうのだ。
「……これは、予想以上にキツい。」
どうしてこうなったのだろう。
それは、丁度数日前に……
「ねえ、君」
「……ああ、俺ですか?」
突然、話しかけられた。
上を見れば、そこにいたのは一人の女性だった。
染めたらしき不自然な金髪を膝まで伸ばしている。
所々にビビットな色のヘアピンを刺しており、どことなくアメリカ辺りのカップケーキを連想させる。
女性としてはなかなかいないレベルの長身で、狐や狼を思わせるようなツリ目ではあるが、裏の感じられないような、さわやかな笑顔を浮かべているためかチャーミングですらあった。
……だが、その手にあるのはこれまた派手な名刺。
ネオンブルーにブラックのドットで出来た下地に、文字なんてゴールデンだ。
どうやら、この人は相当変わった趣味をお持ちらしい。
「うん。……ああ、こういう者なんだけど」
「韓国代表候補生、産業スパイ、
産業スパイを公言するなんて人はじめて見たぞ。
……っていうかそんなことしたら消されるんじゃないのか?
「うん。なんか本国から君にまつわる情報よこせってことで送られてきたんだよねー。ところで君、キムチは好き?」
「あっ、はい。好きですけど」
なんだろう、韓国人らしくしようとでもしてるんだろうか。
だからこの不自然な流れでのキムチなんだろうか。
「おっけー。……ところで整形は未経験な。女性経験もなし。うん、見たところそんな感じだわ。……よし!今月分の給料請求してこよ。」
……なんだろう、今すっごい安心した。
っていうかそれは給料泥棒って言うんじゃないのか。
……見た感じ給料強盗って言葉のほうが似合いそうだな。うん。
「はーい、大臣。織斑一夏はキムチ好きらしいよ。あと整形してない。うん、それに童貞だよ。うん。……え?真面目にやってますよー。ってか切って良いですね?良いですよね?答えは聞いてない!」
うわ、切りやがった。
スパイ相手にまじめにやれって思ったのは初めてだぞ。
……いや、スパイ相手に話するのも初めてなんだけど。
「あ、ところでとなりに女の子いますね。白リボンの子です。」
「箒の事ですか」
あ、コラ。勝手にポニーテールを弄るな。
怒られても知らないぞ。
ほら、睨まれたじゃないか。
「あなたが煙草を吸わなければ、あの子と今頃付き合ってたかもしれないんですよ」
「いや、煙草吸ってないです」
なんでそんな話になったんだ。
煙草って。
そんな健康に悪いことをした覚えは無いぞ。
「名前知ってるんだ。やっぱ恋人?」
「いや、幼馴染です。」
なんでそんな以下略。
ホラ、箒に睨まれただろ。
「ごめんごめん。ところで篠ノ之くん。君は日本人だね?侍だね?うん。これも報告しておこうかな。」
「……侍ではありません。」
「そっか。篠ノ之くんが侍だという情報はフェイクだね。ほかのエージェントに報告報告。」
他のエージェントがいるのかよ。
……それは戦犯って言うんじゃないか?
いや、スパイはダメだけどちょっとは仲間の負担も考えろよ。
オープンスパイって本当にスパイなのか?
スパイって呼んでいいのか?
「はい、それでさ。マジな話だけど」
今の今まではマジじゃなかったのかよ。
いや、今の今までがマジだったら困るけどな。
「ちょっとウチと戦争してくんない?いや、軍事的な情報全部バラすからさ。なんつーか、仕事めんどくなった。祖国無くなったら仕事消えるまである。」
やっぱこの人戦犯だ。
ってか愛国心を持て。もう少し躊躇え。
「あー、でも織斑千冬が戦争止めるかもな……やっぱ戦争はなしだ。中国とかとトラブっても困るし。あと君多分織斑千冬の弟だね?となりの篠ノ之くんは束さんの妹だ。珍しい苗字だし、篠ノ之さんは見た限り望んでここにいる感じはゼロ。となれば姉が原因での強制入学だ。……この情報はどうでも良いから報告書には書かないどこ。」
「どうして……⁉︎」
うわ、全く似てない姉妹なのに態度だけで当てやがった。
そしてあっさり情報を捨てやがった……おい、スパイ。
いや、違うな。
あんた、スパイやないな……?
「あ、そうだ。ところで君達って……」
だが。
そこでようやくチャイムが鳴り響いた。
「おう、情報を抜き取るのは後だ。世文兵よりは固い口を絶対に開かせてやる。」
なにやら妙な捨てゼリフを残したまま、彼女は席に戻って行った。
……ネットの架空偉人を知ってるなんてマニアックな奴だな。