8/30 「株式会社 枝の上」を名乗る会社からA4のクッション封筒が届く。中には手焼きと思われる真っ白なDVD(ラベルには「鳩羽つぐ 夏休み 1)、カセットテープ(ラベルには「鳩羽つぐ 音読 1)、クリアファイルに入れられた24枚の写真と10枚の絵日記が入っていた。
鳩羽つぐのキャンプファイアーを確認したところ、それぞれの詳細については下記の通りとなる。
A. 鳩羽つぐ 夏休み
・鳩羽つぐの夏休みの記録映像(30分)です.
・#6 - #15 (日記, 練習, 掃除, 工作, 探検, 音読, 川, 祭り, 花火, 海) が収録されています.B. 鳩羽つぐ 絵日記
・鳩羽つぐが夏休みの宿題で書いた, 絵日記10枚のコピーをお送りいたします.
C. 鳩羽つぐ 音読
・鳩羽つぐが夏休みの宿題で録音した, 教科書の音読が収録されたカセットテープをお送りいたします.
この絶妙にモヤモヤする句点ならぬドットの使い方に「まさかこれも考察要素の一つでは…」と思うも、話が進まなくなるので、一旦考察は絵日記、DVD、音声データのみのものに限定する。
鳩羽つぐの存在はファンが考察しあうことによって、その異質な存在感・魅力が深まっていくものだと筆者は固く信じてはいるが、クラウドファンディングで販売されたものであるという点を考慮して、完全な再現性を持ったデータの転載・掲載は控えさせていただく。
筆者がざっくり模写した絵、校正なしで書き写したテキストを、各人がそれぞれの脳内で補完してまとめていただきたい。ちなみに、「B. 鳩羽つぐ 絵日記」は、A4サイズの上がフリースペース、下が13行の記入スペースに分かれた、絵日記風の用紙に絵と文がまとめて描かれている。つまり、Aの絵にはAの文章が、Bの絵にはBの文章がそれぞれ添えられていると考えてほしい。
A
7月21日 鳩羽つぐ
きょうはあめがふっていま
した。ベランダで あさがお
がないて いるところにかた
つむりがあそびにきてい
ました。
さわるとつめたくてねばね
ばしてます。つぎのひかた
つむりはいませんでした。
B
7月27日 鳩羽つぐ
きょうはよるにおまつりに
行きました。
あつかったです。
きんぎょがいました。1人う
いてるきんぎょがいました。
それはさむそうでした。
りんごあめかたかったです。
C
7月30日 鳩羽つぐ
きょうははれました。み
ずたまりがいっぱいあり
ました。
ふむといろんなおとがし
ます。あたらしいながくつ
がかわいいです。
くつしたがぬれました。
がんばってかわかします。
D
8月3日 鳩羽つぐ
きょうははじめてあさがおの
花がさきました。
つぼみが2こできました。
まいにちまいにちあさがおに
水をあげるとちょっとずつおお
きくなります。うれしいです。
たねができたらとります。
E
8月14日 鳩羽つぐ
きょうはかるいざわにき
ました。
はっぱのあいだから空が
見えてきらきらしてきれ
いでした。
もりがおはなししてたけど
こわくなかったです。
かたくていいぼうがたのし
かったです。
F
8月15日 鳩羽つぐ
きょうは川あそびに行き
ました。
たくさん石がありました。
わらってる石がありました。
たからものにします。
いっぱいあるくとつかれるの
で早くねます。
G
8月22日 鳩羽つぐ
きょうはうみに行きました。
かみの毛と足がべたべたし
ました。
ヤドカニがすなをたべてと
おくを見ていました。いっしょ
にとおくを見ました。
こんどもやもやを見に行
きたいです。
H
8月23日 鳩羽つぐ
きょうは花火を見てきま
した。おおきくてまるく
てひろがりました。おとが
大きくてからだがびっくり
しています。
あめみたいな花火がす
ごくきれいでした。
ライターはこどもにはむ
ずかしかったです。
I
8月30日 鳩羽つぐ
きょうはゆうがたがずっと
ながかったです。
いっぱいあそびました。
おひさまもいっぱいあそび
ました。
だんだんながくなってだん
だんうすくとけました。
さがすのがたいへんです。
J
8月31日 鳩羽つぐ
きょうは早おきをしておさ
んぽしました。
アリがたくさんたくさんある
いていました。白いものをもって
るアリとなにももってないア
リがいました。はんちょうを
さがしたけどみつけられませ
んでした。
いっしょにえんそくに行きたか
ったです。
一旦、内容についての考察は後回しにし、まず事実についてのみ考察を重ねていきたい。すなわち、使用されている漢字について注目していこうと思う。使用されている漢字がかなり限られていることから、おそらく、我々は今回の絵日記から「鳩羽つぐ」の履修状況を確認することができるはずだ。使用している漢字は「花、水、空、見、川、石、早、毛、足、火、白、行」だが、このうち「花、水、空、川、石、早、足、白」が小学一年生で習う漢字。「毛、行」が小学二年生が習う漢字となっている。「海」という漢字なども二年生で習う漢字となっているが、これは、単純におそらくまだ習っていないのだろうと考えられる。
つまり、「8月3日〜8月31日の鳩羽つぐ」は小学二年生の一学期の国語内容を履修した状態であると推察することができる。
※参考サイト
さて、何故筆者が「8月3日〜8月31日の鳩羽つぐ」とわざとらしい表記をしたのか、というと勿論理由がある。これは筆者が「7月21日〜7月30日の鳩羽つぐ」と「8月3日〜8月31日の鳩羽つぐ」は別人であるという説を提唱しているためである。
この説の根拠は大まかに二つある。
①7月21日、7月27日、7月30日の絵日記には一つも漢字が使われていない
わざとらしく一年生の履修漢字である「雨」と「金」魚、「水」たまりという単語に触れておきながら、どれもすべてひらがなとなっている。これは、「7月21日〜7月30日の鳩羽つぐ」が小学校一年生未満の未就学児であるのに対し、「8月3日〜8月31日の鳩羽つぐ」は小学二年生一学期履修済みの学生であることを示しているのではないだろうか。
②筆跡が微妙に異なる
筆者が見た限り微妙に「7月21日〜7月30日の鳩羽つぐ」と「8月3日〜8月31日の鳩羽つぐ」は筆跡が異なるように思えて仕方ない。鳩羽つぐの名前などはうまく真似ているが、例えば「7月21日〜7月30日の鳩羽つぐ」の「あ」はカーブが丸みを帯びているのに対して、「8月3日〜8月31日の鳩羽つぐ」の「あ」はカーブが微妙に角ばっているように見える。
これについては、クラウドファンディングに参加した人は「あ」の筆跡を是非確認してほしいし、クラウドファンディングに参加していない皆様については、是非公式からの再販を祈ってほしい。一瞬だけオタクの素に戻るが、これ本当に世界観の作り込みがとても見事な商品なので……。
さて、本題に戻るが、上記のことから筆者は「8月3日〜8月31日の鳩羽つぐ」は「7月21日〜7月30日の鳩羽つぐ(オリジナル)」の代わりに宿題を引き継いでいる別人説を提唱したい。
「鳩羽つぐ」においては、別人説については唐突な説というわけでもない。参考までに、以前から提唱されている「鳩羽つぐ」が二人いる説についても紹介しておく。
また、送付された動画については公式から販売があるということなので、是非買って検証してほしいのだが、今回届けられた動画「A. 鳩羽つぐ 夏休み」の中には『どこかの部屋で、タブレットのようなものを見ながら、アサガオらしきものを描いている様子の鳩羽つぐ(絵は映っていないが、大きいストロークでアサガオの支柱のようなものを描いていることから推察)の姿』が収録されている。上記の仮説を当てはめるとするなら、このシーンでは、オリジナルの鳩羽つぐの代わりに、絵日記を進める「8月3日〜8月31日の鳩羽つぐ」の姿が映っているのではないだろうか。
となれば、反対に7月の絵日記のシーンに記されている鳩羽つぐはオリジナルなのだろうかという疑問もよぎる。「かたつむり」、「水たまり」についてのシーンは確認できなかったが、7月27日の「夏祭り」と思われるシーンについては動画内で収録されていた。こちらのシーンは、動画内でもかなり異様な雰囲気を放っている。人間が一人もいないお祭りの屋台で、たった一人、金魚を取っている鳩羽つぐの姿が映っているのだ。準備中の夕方ならともかく、真夜中の出店に誰もいない、人気の一切ない状況。オリジナルの鳩羽つぐかどうかは判断できないが、他のシーンとは一線を画す現実離れした雰囲気が漂っている。
この、現実ではありえない人気の無さは初めてではない。昨年11月に投稿された『雨宿り』でも、人の気配が一切存在しない。思えば、動画の最後に意味深に映った二枚の折り紙のアサガオも、そもそも「鳩羽つぐ」が二人いることを示唆していたような気がする……。
一方で、上記、お祭り以外のシーン、8月の絵日記の内容と思われるシーンの鳩羽つぐの姿には常に現実感が漂っている。少なくとも、異様と思われるほどの違和感はない。古いホテルで遊ぶ女の子という印象である。
ただし、上記のような不穏な説を念頭に置くと、どこか(軽井沢?)のホテル・ホテル周辺に軟禁されているように見えなくもない。とりあえず、日記に描いてあるような、海や花火に出歩いている様子は一切見られない。一応、かろうじて花火についての収録シーンはあるのだが、絵日記で触れられていたような、大きくて丸い花火など到底見ることができなさそうな環境だ。ホテルの裏手のような暗闇で線香花火を一人で行う鳩羽つぐの姿が映されているだけなのだ。
おそらく8月の鳩羽つぐは宿泊しているホテルから離れるような遠い場所に行くことは許されておらず、アサガオを描き写していた時のように、タブレット端末を使って「どこかに行ったていで嘘の絵日記を描いている」可能性が高い。出歩ける場所が制限されているため、「いっぱいあるく」ことができないから、夜中になっても元気に冷蔵庫やベッドで遊んでいるのではないだろうか。
考随分長くなったので、取り急ぎ今回の考察の結論を述べたいと思う。
鳩羽つぐを失った「誰か」が、別人の少女を誘拐し『鳩羽つぐとして仕立て上げたうえで、鳩羽つぐの夏休みの続き』を過ごさせているのではないだろうか。
そして、その誰かは鳩羽つぐの夏休みを映像媒体として世間にこうして配布することで、今画面に映っている少女を本物の「鳩羽つぐ」として認知させているのではないだろうか。そう考えると、一番最初の動画も少し印象が変わってくるような気もする。
「鳩羽つぐです」、と挨拶する少女は本当に最初から「鳩羽つぐ」だったのだろうか。
※この素晴らしく作り込まれた商品が「不気味」だけの感想だけで終わるのが忍びなく、拙いながらも初めて考察を上げました。拙い点等ご容赦ください。紙の汚れや手書きの文字の形ですら考察の論拠となるため、上記文章を書き起こした程度では、商品価値や考察の楽しさを損ねることがないと判断したからこそ絵日記の文章を大雑把に書き起こしたのですが、関係者から問題があると指摘を受けた場合は速やかに該当の文章を削除します。