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インタビュー:山種美術館ミュージアムショップ

前回の「インタビュー:ミュージアムショップ「オルセー美術館展」」が好評でしたので、ミュージアムショップ担当者インタビュー第2弾を。

今回は昨年2009年10月に渋谷区広尾に移転した山種美術館のミュージアムショップにスポットをあてたいと思います(実際のインタビューは「オルセー展」よりもこちらの方が先でした)


山種美術館ミュージアムショップ

山種美術館のミュージアムショップは2つの会社が商品を納品しているそうです。そのうちのひとつ「(株)アドアーツ」http://www.adarts.jp/ に伺いミュージアムグッズ制作についてお話を伺って来ました。

対応して下さったのはアドアーツの仲快晴氏です。

Tak「山種美術館にミュージアムグッズを入れるきっかけを教えて下さい。」

仲氏「元々弊社は大手食品、家電、化粧品メーカーのパッケージデザインなどを、デザインからクオリティー管理までひとつの会社で行ってきました。また印刷屋さんから新しい技術開発の依頼が舞い込んだりもしました。

補足(みなさん必ず何度も目にしたことのある商品のパッケージデザインを手掛けていらっしゃる会社です。大人の事情で具体的なメーカー名は出せませんがトップ企業がずらり。)

仲氏「ドイツの印刷機製造メーカーの日本法人からカレンダー印刷の依頼があったのが2007年。これがその時弊社がデザインから印刷まで手掛けたものです。



Tak「色味がとても美しいですね」

仲氏「7色印刷で刷られています。これが認められ幾つかの賞を頂戴しました。

Tak「単なる商品広告の仕事とはまた違いますね。それにしても奇麗なしあがりですねー」

仲氏「これを聞いた大阪の印刷株式会社さんが、うちのカレンダーも作って欲しいとの依頼が。お金は幾らかけても構わないという話だったので思い切り贅沢なカレンダーを制作しました。


Tak「東京国立博物館所蔵の作品をカレンダーになされたのですね。」

仲氏「この印籠見ただけでは分かりませんがひとつだけその質感を表現するために凹凸が印刷面に施されています。

補足(尾形光琳「八橋蒔絵螺鈿硯箱」の螺鈿の光沢や印籠の凹凸など、紙に印刷されているとは到底信じられません。目の前にしても。)

Tak「何だかここまで来ると常軌を逸しているというか…」

仲氏「これまで広告媒体しか手掛けてこなかったのでこうした文化的な仕事が出来ることがとても嬉しかったんです。

Tak「やっとミュージアムグッズの話に近づいて来ましたね。」

仲氏「このカレンダーが『第58回国際カレンダー展』で金賞を受賞したのも大きな自信となりました。そこで文化的な仕事を本格的に手がけてみようと思ったのです。

Tak「山種美術館を選ばれた理由は何だったのでしょうか?」

仲氏「会社から一番近い美術館が山種美術館だったんです(笑)


緑豊かなイギリス大使館の裏にオフィスを構えるアドアーツさん。

【英国大使館関連エントリー(内部の写真もあります)】
- 英国大使館大使公邸内の絵画 | 弐代目・青い日記帳
- Lunchtime reception to meet F1 ...
- 映画「ブーリン家の姉妹」 | 弐代目・青い日記帳

Tak「あーなるほど、ここの会社(千代田区一番町)から引っ越す前の山種美術館歩いてすぐの距離ですね。」

仲氏「山種美術館へ直接出向き、何か作らせて欲しいと直談判したわけです。

Tak「お話は聞いてもらえました?」

仲氏「はい。学芸員のTさんに。

Tak「何か山種美術館からこんな商品が欲しいとかリクエストはあったのでしょうか?」

仲氏「一年後にここは移転するので、新・山種美術館の顔になるような商品が欲しいとのことでした。グッズを一からブランディングして欲しいと。


山種美術館サイトより転用

Tak「まず最初に手掛けたのはどの商品だったのでしょうか?」

仲氏「和紙を使ったポストカードや一筆箋です。でもこれが困難を極めました。和紙はインキを吸ってしまうので印刷するのが大変難しく、まずは紙選びから始めなければなりませんでした。結局、ある四国の和紙が最良だと分かりそこから仕入れることにしました。

Tak「日本美術をグッズにするにあたり気を付ける点何かありますか?」

仲氏「日本料理と同じで、素材を生かそうと常に考えています。日本美術が持っている凛とした雰囲気をそのまま商品化しようと。余計なデザインは不要です。

Tak「その辺、もう少し詳しくお聞かせ下さい。」

仲氏「ある一部分だけ抜き出して面白可笑しなグッズにはしたくありません。たとえ一部分でも作品の匂いがするようなそんな商品を作りたいと思っています。それにはしっかりとした技術がないと出来ないことになります。

Tak「最も苦労なさるのはどんな点でしょう?」


アドアーツ:仲快晴氏

仲氏「同じ日本絵画を絵葉書、クリアファイル、など素材の違うものに同じ色で印刷するのが最も難しい点です。違う素材に同じ色。これには特殊な最新デジタル技術を用いています。因みにこれが出来るデザイン会社は世界で3社だけ。日本では弊社だけです。

一朝一夕に出来る技術ではなく、広告媒体等で長年培ってきたノウハウを生かしています。

Tak「売れ筋商品は?」

仲氏「一筆箋がうちのはよくお買い求め頂いています。それとポストカードとクリアファイルですね。

Tak「ポストカードは100円のものと150円のものが同じサイズでもありますが?」

仲氏「弊社が卸しているのが150円の高い方のものです。和紙を使用しているので指で触って頂ければ違いは明らかです。100円の方はもうひとつの業者さん(アートボックス)が卸しているものです。



仲氏「150円でも和紙や特殊印刷かけているので利幅は極僅かです。

Tak「今回の展覧会(「江戸絵画への視線」)用に新しく抱一と宗達の屏風絵をクリアファイルにされ販売されていますが、A4版が1枚650円とは通常よりもお高めですね。」

仲氏「これは自信作なんです。まずファイル自体が厚くペラペラではありません。しっかりとした作りになっているので長く使って頂くこと目的にしています。



仲氏「それと印刷技術面でこの商品の為に開発した新開発の高輝度「金」インキを使用しています。これまでのものになかったしぶい輝きが出ています。また絵柄を前面に、金地を背面に分けて印刷してあります。これにより作品の奥行き感を表現しました。

Tak「屏風の箔足まで表現されていますね!」

仲氏「よくそこまでやらなくても。と言われますが根っからの凝り性なもので(笑)

Tak「一筆箋にも何か特殊な加工が施されているのでしょうか?」

仲氏「罫線をただの線にしたくなかったので絹糸を一度写真に撮り、それを一本一本罫線として貼り付けています。だからよく見るとブレがあったり違いがそれぞれの線に個性として出ているかと。



Tak「ちょっと病的な凝りようですね。」

仲氏「よく業界の人から『変態』と言われます(笑)それを最高の褒め言葉として頑張っています。

Tak「そろそろ、最後の質問とさせて頂きます。山種美術館さんとのお付き合いが初めてなわけですが、これから先の目標や夢はありますか?」

仲氏「商品のパッケージはすぐ捨てられる運命にあるものです。それから一歩大きく前進しミュージアムグッズという長く使って頂ける商品開発に至りました。但し一貫してきたのは高いクオリティーのモノを作り出すことです。そのポリシーは変えずこれから他の美術館のグッズも手掛けていけたらなと思います。

実際、評価され東京国立博物館で開催された『細川家の至宝展』のポスター等のデザインもさせて頂きました。(『龍馬伝』(江戸東京博物館)も)ゆくゆくは美術館全体の設計デザインに携わってみたいと思っています。

Tak「色々と貴重なお話お聞かせ頂きありがとうございました。」


山種美術館ミュージアムショップ

いかがでしたでしょうか。ミュージアムショップ、インタビュー記事第2弾「山種美術館編」お楽しみいただけたでしょうか?

次に足を運ばれる際は是非手にとってみて下さい。このインタビュー記事読む前と後では手にした時の重み必ずや違っているはずです。

現在開催中の「江戸絵画への視線」は9月5日までです。

行かれる前にこちらをご一読あれ!
山下裕二氏講演会「知られざる山種コレクション」

「江戸絵画への視線」の後には「開館1周年記念特別展 日本画と洋画のはざまで」2010年9月11日(土)~11月7日(日)も控えています。

山種美術館へのアクセス:
JR・東京メトロ日比谷線 恵比寿駅より徒歩10分
恵比寿駅前より都バス(学06番 日赤医療センター前行)広尾高校前下車、徒歩1分
渋谷駅東口より都バス(学03番 日赤医療センター前行)東4丁目下車、徒歩2分

↑渋谷駅から学バスがおススメ!

山種美術館のもうひとつの楽しみ「Cafe 椿

「江戸絵画への視線」特製和菓子

毎回展覧会毎に新作和菓子が登場。いつしかこちらも楽しみのひとつに。創業昭和10年「青山・菊家」による全て手作り特注品和菓子。キンキンに冷えた「冷やしあめ」との相性も抜群。ここの和菓子1個からでもお持ち帰り出来ます!

ツイッターやってます。
@taktwi

【お願い】
オルセー展、山種美術館の他にも「うちのお店も負けず劣らずスゴイですよ!」というショップ運営者の方、是非インタビューさせて下さい!!メールお待ちしております。メルアドはこちら

この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=2213



JUGEMテーマ:アート・デザイン


新しく生まれ変わった山種美術館のミュージアムショップは、企画展示スペースと常設展示スペースの中間に位置しています。鑑賞の途中に気軽にお立ち寄りいただけるような落ち着いた空間に、シンプルでモダンな大人のためのオリジナル・グッズをご用意しています。日本画専門の美術館らしく、グッズにも季節感を盛り込み、四季折々の自然美を感じていただけます。美術館の中にある「もうひとつの美術館」として身近に感じつつ、なごみの空間でお買い物を楽しんでいただければと思います。

<館長自らがセレクトしたミュージアム・グッズ>
日本画の持つ素材と質感を丁寧に取り入れた「山種ブランド」
ミュージアム・グッズは、山種美術館の近代日本画コレクションの持ち味(日本画の素材と質感)を、丁寧に取り入れてオリジナルにデザイン・製作されました。グッズアイテムは、すべて山﨑妙子館長自身が「自ら使ってみたくなる」といった視点で セレクトしました。女性館長ならではの柔らかなまなざしと繊細な気配りで選りすぐったものばかり。実用性を重視しながらも、遊び心と美しさにこだわった「山種ブランド」です。例えば、作品を粋(いき)にトリミングしてデザインした便箋、封筒、カードは、アクセントとして図柄の一部をレリーフ加工(凹凸加工)。便箋の罫線には絹糸実物を撮影してあしらっています。その上質な仕上がりは他では決して手に入らない味わいが特徴です。
また、若年層にも人気の和ブランド「コラゾン」社や京都の老舗「川島織物(現:川島織物セルコン)」とのコラボレーションに よるグッズなど、幅広い客層に対応する多彩なアイテムをご用意しています。
インタビュー | permalink | comments(1) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

こんにちは。
素晴らしいインタビューです。
山種美術館のミュージアムショップ大好きなので、ほんとに感心し、嬉しく思いました。
この展覧会は行く予定ですが、先に読めてよかったです。
ありがとうございました。
すぴか | 2010/08/08 4:16 PM
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