受け皿も足りず、保育士不足も懸念される中、保育ニーズが高まると予想される幼保無料化が10月から始まる。政府が目標に掲げる待機児童ゼロの達成は沖縄県で可能なのか。県内の待機児童対策は待ったなしの状況だ。
申し込んでも保育園に入れない待機児童の割合が、沖縄県は2・08%と全国で最悪であることが厚生労働省の調査で分かった。速報値では昨年より168人減ったものの1702人の待機児童がいる。自治体ごとの待機児童の数も上位10位以内に那覇市と南風原町、沖縄市が入った。
県内では各市町村で認可保育園の設置は増えている。しかし、人手不足や雇用環境の改善によって働く場が広がり、子どもを預けて働く保護者が急増した。4月1日時点の申込者数は昨年より3千人以上増えて、初めて6万人を超え、保育需要は高まり続けている。
しかし、施設整備が進んでも保育士が足りずに受け入れを制限する園もある。認可園は国の基準で保育士が担当する子どもの数は定められ、低年齢の子が多いほど保育士が必要だ。県のまとめでは0―2歳児が待機児童の87%を占める。低年齢児では定員に空きはあるが、保育士不足で受け入れられない施設があるという。
政府は2020年度末までの待機児童ゼロを掲げ、全国的には待機児童数は調査を始めた1994年以降、最少となった。目標に近づいた形だが、この数字で見えない実態もある。自宅近くなど特定の施設のみを希望するケースは待機児童には含めない。そうした「潜在的待機児童」は昨年より約6千人増えて約7万4千人に上る。県内でも22市町村で1500人以上の潜在的待機児童がいる。
安倍政権が待機児童ゼロを掲げるのは、女性の就業率を80%に引き上げるためだ。日本は出産・育児期の女性の労働力率が極端に低下する「M字カーブ」が問題になっていた。解消するには働きながら子育てができる環境整備が必要だ。
ただ、現状は保育園に入れただけで幸運な状態で、保護者が自由に施設を選べる状況にはない。自宅から遠くて短時間勤務にせざるを得ないなど就業抑制につながる場合もある。保護者の生活実態や細かいニーズに応え、質の高い保育を確保していかなければ、待機児童は減っても潜在的待機児童は増えるという矛盾が生じる。
保育の受け皿拡大と質の向上には保育士の確保が大前提だ。処遇を改善して、保育現場の人材難を解消しなければならない。
幼保無償化に向けて市町村はさらなる待機児童対策を迫られているが、市町村の努力だけで解消はできない。全ての子どもが良質な保育を平等に受けられるよう、無償化だけでなく国の責任でさまざまな政策を駆使すべきだ。