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この作品 「正義と悪と舞台裏」 は「悪堕ち」「魔法少女」等のタグがつけられた作品です。

某所にて素敵なシチュエーションを発見し、そこから着想をえて一本SSを書きあげまし...

ザハーク

正義と悪と舞台裏

ザハーク

2017年12月14日 00:02
某所にて素敵なシチュエーションを発見し、そこから着想をえて一本SSを書きあげました。
魔法少女悪堕ち物ですが全年齢ですのでごあんしんください。でもちょっと百合っぽい表現は含むので注意してください。

悪堕ちは好きだ。でも悪堕ちした対象が堕とした奴の予想をこえて大暴走するのもそれはそれで大好きなんだ…!
「レイナちゃん、いくよ!」
「ええ、終わりにしましょう!アキナ!」
「セイクリッド…シュート!!」
「馬鹿な!この私が、こんなところで…ぐあああああああっ!!」
 私とアキナの力を合わせた必殺技が、悪の組織「ダークネスサイド」の首領、マーシレスに直撃する。
 これで、全部終わりだ。私たち「魔法少女シャイニング・ツイン」の活躍によって悪は滅び、私たちが生まれるよりもずっと前から続いてきた悪の組織と正義の組織の戦いに、とうとう終止符が打たれるのだ。
「えへへ…やったね!レイナちゃん!」
「ええ…本当に、これで全部、終わったのね…」
 太陽のような笑みで近づいてくるアキナの頭を、優しく撫でる。ねえ、アキナ。ごめんね。私は今まで、そしてきっとこれからも、あなたに一つだけ嘘をついているの。
 私ね?本当は、正義とか平和とか、そんなのどうでもよかったのよ、アキナ。私はただ、あなたの幸福と、その笑顔が守れれば、それでよかったの。アキナの側に居られるのなら、永遠に悪の組織と戦い続けてもいいだなんて思えるほどに、あなたのことが、好きだった。でも…そんな日々も、これで終わりなのね。私と違ってアキナには友だちが多いから、きっと今までのようには、私だけとずっと一緒にはいられない。そんなのあたりまえだってわかっているけれど…でも……。
「レイナちゃん、どうしたの?魔力を使いすぎちゃった?」
「あ…ごめんねアキナ。これで全部終わった、って思ったらちょっと気が抜けちゃって…」
「あはは、私ももうくたくただよ。さあ、最後にあの人を組織の人たちに引き渡して、それで全部おしまいだよ!」
「ええ、行きましょうか」
 私たちは、気絶しているマーシレスを2人がかりで拘束し、一応何か危険なものを隠し持っていないか調べることにした。こういった基地がボタン一つで大爆発する仕組みになっているのはよくあることなので、用心に越したことはない。
「あれ?この綺麗なマーク、なんだろう…」
 私たちの攻撃によってマーシレスの衣服が破れ、その胸元が露わになっていた。そこにはアキナの言う通り、奇妙な文様が悪の首領らしからぬ綺麗な水色の輝きを放っている。私はそのマークに見覚えがあったが、同時に驚愕し目を見開いた。
「レイナちゃん…?」
「これ…このマークは、癒しの水のエンブレム…何年も前に姿を消した『マジカルヒロイン・マーシフル』の証だわ!」
「ええっ!?つまりこの人はマーシレスじゃなくて、マーシフルさんだったってこと?」
「いえ、確かに彼女が操ったダークウォーター・パワーは間違いなくマーシレスのものだったわ。つまり…この人は…」
「えっ…ねえ、レイナちゃん、私よくわかんないよ。この人昔はヒーローだったの?なら…姿を消して、それからどうして悪の首領になってるの?」
「ふう…何とか間に合ったか。それは私から説明しよう」
「!!」
 2人同時に背後を振り向くと、そこには私たちにとっては見慣れた姿があった。
 声の主の名は戦納院 永劫(せんのういん えいご)。私たちの属する正義の組織「エターナルジャスティス」のトップだ。このタイミングで、しかもなぜ彼が直々にここまで来たのだろうか?
「さて、まずはおめでとう、といったところか。君たち2人の活躍によって、悪の組織は滅び去った」
 彼のトレードマークである不自然に輝く宝石が埋め込まれたステッキで床をコツコツと叩きながら、戦納院は語り続ける。
「おそらく君たちはこれから魔法少女の任から解放され、悪の亡びた後の世界で自由と幸福に満ちた人生を謳歌するつもりなのだろう。しかしだ、もしもそうなったなら、私たちはこれから一体どうすればいいのだ?」
「どうすればって、そんなの、自分で考えなよ…」
 その目に満ちた異様な輝きに気圧されたのか、アキナの顏が珍しく引きつっている。逆に私は、なぜか奇妙なほどに落ち着いていた。
「悪の組織が生まれる前、この国は死に瀕していた。隅々まで開発されきった国土、心を荒ませ常に攻撃するべき生贄を求め続ける民衆、徐々に希望の失われてゆく未来、やり場のない憎悪とわけのわからぬ閉塞感によって、この国は緩やかに滅びの道をたどろうとしていた…だから我々は、作ることにしたのだ」
「つくるって…なにを?」
 アキナに口を挟まれても、彼の言葉が止まることは無かった。
「拓くべき地が無いのならば、今あるものを壊して作りなおせばいい。憎むべきものが必要なら、『好きなだけ憎んでもよいもの』をあらかじめこちらで設定してしまえばいい、やり場のない憎悪も閉塞感も、全て『それら』のせいにしてしまえばいい…」
 その口から、私たちを取り巻く世界の真実がこぼれだす。
「笑いたければそうしたまえよ。我々『正義の組織エターナルジャスティス』はまず悪の組織を自ら作るところから活動を開始したのだ」
「そんな…!そんなの、嘘だっ!!」
「嘘ではない!実際我々の計画はこれ以上なく成功した!悪の組織の破壊活動によって停滞していた経済が再び激動の時代を迎え、国民は悪の組織への憎悪と嘲笑によって一致団結し、それに立ち向かうヒーローたちを希望の象徴として崇めた!悪と正義の戦いのさなかで国は再び活気に満ち溢れ、往年の生気を取り戻すにいたったのだ!」
「そして国民の心を惹きつづけるためには、定期的に『役者』を交換する必要があった、といったところかしら?」
「レイナちゃん…?」
「ははは!そのとおりだ!君は実に賢いな!そうとも、正義と悪の華々しい戦いも、マンネリが続いてはいつか飽きられてしまう。そうならないために我々は、常に新しい悪と、それに立ち向かう新たなヒーローを生み出し続けてきたのだ!ああ、民衆とは情熱的にして薄情なものだ…新たな悪の組織とヒーローの戦いが始まれば、前のヒーローがその後どうなったかなど、まるで気にも留めないのだから…さて、私がどうしてこんな話を長々と続けているか、わかるかね?」
「わかってたまるか…あっ…?」
 戦納院に突撃しようとしたアキナが、途中で糸の切れた人形のように倒れてしまう。私もこうして立っているのが精いっぱいで、ここから一歩たりとも動けなくなっていた。
「この常に眩く輝き続ける宝石は、国の技術と予算を惜しみなく投入して生成された、我々の信念の結晶にしてこの『二元論計画』の結晶だ。この輝きを長く見つめた者は、自我が希薄化しやがて外から都合のいい情報を書き込むのにちょうどよい精神状態へと変化する…そう、ちょうど今の君たちや、そこで拘束されて転がっている女のようにだ。ヒーローとして最後になにか、言い残すことはあるかね?」
 アキナは既に気絶してしまっているようだ。私は残された精神力を振り絞って、戦納院に今最も言うべき言葉を吐きだした。
「ねえ、もし私の希望を聞いてくれるなら…アキナを『次の』首領にして、私はその側近にしてくれないかしら?」
「おや。逆でなくてもよいのかね?」
「それでいいのよ。だって、もしも私が首領になってしまったら…アキナに忠義を尽くすこともできないし、アキナを庇って死ぬこともできないでしょう?」
「なるほど、ところでこれはたんなる興味本位で聞くのだが…君はその気になれば私の行動を阻止することもできたはずだ。なのに何故、何もしなかったのかね?」
「ふふふ…そんな洗脳グッズを使い慣れていると、人の心の動きに疎くなるのかしら?私はずっとアキナの側にいたいだけなの。それができるなら、別に正義でも悪でもどっちにつこうが関係ないのよ…アキナのためならなんだって守れるし、なんだって壊せるわ!」
 そう…それが、私の偽りの無い本心だった。
 マーシレスの正体に気が付いた時から、私は延々と続く正義と悪の対立に隠された真実に気付き…この胸を、期待に高鳴らせていたのだ。
 ああ、これでまだ、アキナと一緒に戦える。大好きなアキナとこれからも2人でいられるんだ…永遠に。
「ふふ…ははは…はーっはっはっは!私も今まで多くのヒーローたちを洗脳してきたが、ここまで潔い宣言をされたのは初めてだ!まさか正義のヒーローの片割れともあろうものが、実は洗脳するまでもなく悪そのものだったとは!私が保証しよう!君は、間違いなく歴代最強にして最悪の存在となるだろう!」
 戦納院の持つステッキがさらに輝きを増していき、私の意識が薄れていく。アキナ…これでずっと、一緒だよ?
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