きのこの風味がすごい! シンプル炊き込みご飯

66回目のテーマは「きのこの炊き込みご飯」。具材は、椎茸、しめじ、三つ葉、調味料は醤油だけ。シンプルながら、きのこの風味を強く引き出し、松茸ご飯に匹敵するおいしさです。ポイントは醤油の使い方と余分な調味料を加えないこと。

スーパーに行くと早くも松茸が出ていました。最近では比較的お手頃な価格の輸入松茸もありますが、それでもやはり高級品。今日は安価な椎茸を使って松茸ご飯風の炊き込みご飯を作ってみましょう。松茸独特の香りこそありませんが、椎茸でも充分楽しめます。味を補うためにしめじを混ぜれば、松茸ご飯に負けないおいしさです。

炊き込みご飯は『芯が残っている』や『べちゃべちゃになってしまった』という具合に意外と失敗しがち。失敗を回避するコツはお米に事前に浸水させておくことです。炊き込みご飯には濃い味の出汁を使うとくどくなるので、すっきりとした薄めのだしを使うのが一般的。鰹と昆布のあわせ出汁を使う場合は出汁を引いた後、冷やす手間が必要ですが、今回は水出しの昆布だしを使います。これなら冷やす手間もかからず、簡単です。


きのこの炊き込みご飯

材料

米…2合
昆布だし…炊飯器の目盛りに従うか、360ccが目安
薄口醤油…大さじ2 (もしくは濃口醤油大さじ1+塩小さじ1/2=3g) (Tips1 薄口醤油を濃口醤油で代用する方法)
椎茸…6枚(1パック)
しめじ…1房(1パック)
三つ葉…1束


1.昆布5gを水500ccに3時間以上(10時間以内)浸けておき、昆布だしを引いておく。米はたっぷりの水に30分間浸し、吸水させてから水を切っておく。(Tips2 炊き込みご飯のコツ)


2.椎茸は軸を切り落とし、半分に切ってから5mm厚のスライスにする。軸は根元の硬い部分を切り落とし、手で裂く。しめじは根元を切り落とし、手でばらしておく。


3.炊飯器の内釜か鍋に米を入れ、醤油、昆布だしを注ぎ、軽く混ぜる。


4.米の上に2の椎茸としめじをのせて、通常通り炊飯する。

(ここでは5.5合炊きの炊飯器を使っていますが、入り切らない場合は量を調節してください。きのこは加熱すればかさが減るのでたくさん入れても大丈夫です)


5.そのあいだに三つ葉の根元を切り落とし、熱湯で20秒ほど茹でてから水にとり、軽く絞ってから5cmの長さに切っておく。


6.炊きあがったら5の三つ葉を加えて、米をほぐしたらできあがり。


★レシピの解説

【Tips1】 薄口醤油を濃口醤油で代用する方法

材料表に薄口醤油が出てきました。薄口醤油は関東以北にお住まいの方の台所にはない調味料の代表で、これを使えばお店のような炊き込みご飯を簡単につくることができます。

薄口醤油はJASの分類では淡口醤油(読み方はこれでうすくちしょうゆです)と書き、色の薄さと塩分濃度の高さが特徴。薄口醤油は決して味が薄いわけではなく、素材の味や風味を活かしたいときに用います。

この薄口醤油、古くなると色が濃くなり、風味も悪くなるので、冷蔵庫で保存する必要があり、購入するのをためらう調味料のひとつでした。しかし、最近では鮮度保持パック入りの薄口醤油が登場し、常温でも長期間保存することが可能になったので、購入して損はありません。

ただ、どうしても薄口醤油を台所に置きたくないという人もいるか、と思います。今回の場合は薄口醤油大さじ2を濃口醤油大さじ1に塩3g(小さじ1/2)、水大さじ1を加えることで代用できます。昔の東京では薄口醤油を入手することが困難で、多くの和食店では濃口醤油を水で薄めて、塩や酒で味をととのえるなどして代用していました。調味料がない場合は工夫で乗り切りましょう。


【Tips2】炊き込みご飯のコツ

炊き込みご飯のコツは最初に述べた通り、あらかじめ米に水を吸水させておくことです。というのも塩分を含んだ水は吸水しづらいので、適当につくると米に芯が残ってしまうことがあるからです。また、ご飯の上に素材を載せて、中には混ぜないようにするのも米の炊きあがりを均一にするためのコツです。

炊き込みご飯には他にみりんや酒を加える人もいますが、余分な調味料を加えないほうがすっきりとした味に仕上がります。調味料は味をつけるためではなく、引き出すために使うものです。素材がよくなった現在では調味料は少ないほうがおいしくできるでしょう。

今回は松茸ご飯風にきのことご飯だけでつくりましたが、ここに油揚げを加えるとボリュームが出ます。おかずをつくらず味噌汁と炊き込みご飯だけで食事を完結させるのであればその手もアリです。しかし、ここでも余分な材料は加えないほうが素材の味が生きてくると思います。


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樋口直哉

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