挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ 作者:コーダ

第11章 ギルド編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
238/264

第162話 神の視点と魔族の真実

雑なネタバレ回です。

 俺の異能の1つである<千里眼システムウィンドウ>は、マップ内のありとあらゆる情報を取得することが出来る。


 マップ内に居る者全てのスキルやステータスを閲覧することが出来るし、その気になれば喋っている内容すら把握することが出来る。

 ただ、あまりにも情報量が多いため、基本的にはアルタに処理を任せ、重要度の低い情報は報告されない。

 そもそも、アルタが異能として発現したのは、マップ情報の処理が発端だ。


 マップ機能は所在エリアから隣接3エリア分まで確認できる。1つのエリアは最低でも数kmはあるので(小さな村など、一部例外有)、合計すれば半径5km程度の情報は全て把握済みとなる。

 加えて言えば、俺だけでなく、俺の配下のいる場所も所在エリア扱いされる。

 つまり、俺の配下がいる場所から半径5kmが情報取得圏内となる。

 そして、俺の配下はアドバンス商会員や冒険者として、世界各地に存在している。


 それだけの範囲の情報があれば、大抵のイベントは発生する前から予想が付くのだ。


 そう、現在遠征中のクロードが、ギルド連合地区に入った所で、これから起こるイベントの予想が立ってしまったように……。


 こちらが、今回クロード達を呼んだ冒険者ギルドの総長さんです。


名前:ユリスズ

性別:女

年齢:3110

種族:ハイエルフ

称号:エルフの姫巫女、エルフ王族、人柱、冒険者ギルド本部総長

スキル:

武術系

<剣術LV10><槍術LV10><盾術LV10><弓術LV10><格闘術LV10>

魔法系

<精霊術LV10><精霊魔法LV10><封印術LV->

技能系

<魔道具作成LV10><森の英知LV->

身体系

<身体強化LV10>

その他

<不老LV-><巫女の継承LV-><業火の意思LV-><霊格視オーラビジョンLV->

*LV10未満のスキル多数により省略。


 そして、温泉地の源泉、火山山脈の地下深くに眠るのがこちら。


火災竜・ボルケーノ

種族:災竜

称号:反存在、封印されし災禍


 もはや、ネタバレなんて生易しい言葉では済まない領域である。


 現在進行形で災竜を封じている『姫巫女』が、クロードのパーティ、つまり、同じハイエルフの『姫巫女』であるユリアを呼び出したのだ。

 災竜関連でイベントが起きるに決まっている。


 更に笑えるのが、ユリスズさんには独り言の癖がありました。

 考えていることを一旦口に出して、状況を整理するのが目的のようだけど……ええ、全部筒抜けですよ。ユリスズの目的は一通り聞き終わりました。


 ユリスズの目的を一言で言うと、ユリアの回収と『姫巫女』の代替わりだ。

 ……二言になった。


 話によると記憶喪失だったユリアは、行方不明になった次代の『姫巫女』だったらしい。

 それも『火災竜・ボルケーノ』ではなく、『風災竜・テンペスト』の『姫巫女』だ。

 いきなり災竜が増えた……。


 今はギルド連合地区にいないが、ユリスズは『風災竜・テンペスト』を封じている『姫巫女』と交流があるようで、行方不明になったユリアの捜索を依頼されていたそうだ。

 その状況で、Sランクとなった冒険者パーティの中に、行方不明になった『姫巫女』が居たら、好条件を出してでも呼ばざるを得ないよね。

 クロード達への招集依頼が必死だった理由も、これで納得できたな。


 『風災竜・テンペスト』の『姫巫女』は既に随分と長く生きており、ユリアに役目を引き継ぎたいと考えている。必要とあらば力尽くでも連れ帰るとの事。

 Sランク冒険者を力尽く・・・とは、結構な自信だな。


「……なので、仁様の方針をお聞きしたいのです」


 クロードの問いに対し、返答を考える。


 クロード達はユリスズの目的を知り、俺の判断を仰ぐことにした。

 リーダーであるクロードと関係者であるユリアが『ポータル』で帰還して、残りのメンバーはギルド連合地区に待機中だ。


「災竜に関しては基本的に放置だな。必要な理由があるなら倒すけど、理由が無ければ手を出すつもりはない」


 災竜は本質的には俺の敵だが、今まで何事も無く続いていた世界だ。

 強い理由もないのに危険を犯すつもりはない。


「それで、ユリアはどうしたいんだ?『姫巫女』を継ぎたいのか?」


 俺がユリアに尋ねると、ユリアは首を横に振った。


「いいえ。仁様のご命令でもなければ、そんなモノになろうとは思いません。少なくとも、記憶を失っている今の私には……」


 逆に言えば、俺が『姫巫女』になれと命令をしたり、失われた記憶を取り戻した場合には『姫巫女』になる可能性があるようだ。

 なお、<多重存在アバター>の精神保護により、『姫巫女』一番の負担である精神汚染は防げるので、『姫巫女』になること自体に大きな問題はない。


「それじゃあ、ギルド連合地区に行くのを止めるのか?向こうは力尽くでも連れて行くつもりらしいからな」

「その件で、仁様にお願いがあります」

「言ってみろ」


 クロードが覚悟を決めた顔をして言うので、俺も居住まいを正して聞く。


「僕達はギルド連合地区に行きます。そして、正面からユリアさんの引き渡しを拒否します。最悪の場合、Sランクの資格を剥奪されたり、冒険者ギルドと敵対することになるかもしれません。勝手な事だと分かっていますが、その御許しを頂きたいのです」

「いいぞ」

「「え?」」


 許可を求めてきたから、許可をしただけなのに、呆けた顔をされても困る。


「俺、何か変な事を言ったか?」

「い、いえ、考える事も無く即答でしたので、少し驚いただけです」


 いや、考えるまでもないだろう。


「俺が冒険者になったのは、『お約束』と『便利だから』の2つが理由だ。クロード達にSランクになってもらったのは、Sランク冒険者としての影響力が欲しかったのが理由だ」

「『お約束』は大事よね」


 ここまで大人しく話を聞いていたミオがうんうんと頷く。

 どうしても、一言入れておきたかったらしい。


「どんな理由があろうとも、人攫いを計画するような奴はまともじゃない。その矛先が関係者に向かうのなら、敵対を躊躇する必要はない。俺なら、迷わずに潰すだろうな」

「ああ、なるほど。だからエルディアは潰されたんですのね」

「言われてみれば、エルディア王国が潰された流れに似ているわね」


 セラとミオが納得したように呟く。

 国のトップが誘拐をしてきて、身内になったカスタールに戦争を仕掛けたエルディアは、今言った通り俺の手で潰されることになった(ただし、直接の理由は誘拐ではなく、戦争の方である)。

 有言実行の男、進堂仁です。


「クロード達が決めたのなら、冒険者ギルドと敵対しても構わない。Sランク冒険者の称号は多少惜しいが、人攫いがトップに居る組織の称号と考えると、その価値も大暴落だからな」


 ユリスズの話を聞き、自分でも驚く程あっさりと冒険者ギルドに対する興味が失せた。

 冒険者資格、もう更新しなくてもいいかな。


「あ、ご主人様が完全に興味を失っている」

「仁君、興味を無くすと本当に無関心になりますよね……」

「関心、無関心の差が非常に大きいのですわ」


 皆が好き勝手言うが、否定できる材料はない。否定する気もない。


「ああ、そうそう。面倒な事になるから、ユリスズを殺すのだけは止めておけ」


 ふと思い出したので補足しておく。


 殺すと『火災竜・ボルケーノ』が出て来ちゃうからね。

 ついでに言うと、冒険者ギルドも機能不全に陥る可能性がある。と言うか、陥る。

 何故なら、冒険者ギルド所属の証であるギルドカードは、ユリスズによって作成された魔法の道具マジックアイテムだからである。

 『姫巫女』専用スキルである<森の英知>が必要なので、他の者には作れないのだ。


「最初から、そこまでする予定はありません」

「それさえ分かっているのなら、クロード達の好きにすると良い。半殺しまでなら許可する」

「許可されても困ります……」


 敵対しても半殺しにもしないなんて、クロード達は優しいな。

 配下の中では穏健派なだけはある。なお、一番の過激派はメイド部隊(最大派閥)である。



 クロード達が『ポータル』で戻った後、俺達もギルド連合地区に行く準備を始めた。


 冒険者ギルド関連でクロード達にトラブルが起きるのは確定しているが、それはそれとして、温泉地の観光は行うのだ。

 もう少し冒険者ギルド本部に近づいたら呼んでもらう手筈になっている。


「もし災竜が復活したら、ギルド連合地区は消えてなくなるだろうからな。リスクがある以上、観光するなら早い方が良いだろう」

「サラッととんでもない事を言うわね……」


 ミオが若干引いているが、これは偽りようのない本心だ。


 クロード達にユリスズを殺す気が無くても、災竜のいる土地と言うだけで、非常に大きなリスクを孕むことは間違いがない。

 何らかの理由で災竜が復活した場合、災禍は確実にギルド連合地区を飲み込むだろう。

 折角の観光地だ。滅ぶ前に1度は堪能したい。


「本音を言えば、観光地が消えること自体が嫌なんだけど、その為に敵対(予定)する相手を守るって言うのも嫌なんだよな」


 災竜の被害を防ぐ方法は2つ。

 『姫巫女』を守るか、亜空間で災竜本体を倒すことだ。

 敵対する『姫巫女』を守る気にはなれないし、亜空間に封印されている災竜を倒すには『姫巫女』の協力が必要だ。

 これはどうにもならない。


「そもそも、ご主人様が守る必要なんてないわよね?だって、今まで何千年も無事だったのだから、今日明日でそんな簡単に変わる訳ないじゃない」


 ミオが楽観的な事を言うが、俺はそうは思わない。


「普通に考えれば、そう簡単に封印なんて解けないだろう。しかし、ギルド連合地区は俺がこれから向かう土地だ。俺が行くのだから、イベントの1つや2つ起きるに決まっている。その1つが、封印の解放である可能性は、決して低くはない」


 織原曰く、『騒動イベントに巻き込まれるのは主人公の権利にして義務』。

 俺が主人公かどうかは別にして、騒動を起こしやすい、もしくは騒動に巻き込まれやすい体質なのは事実だ。


「説得力が凄いわね。流石は『動乱の騎士』……」


 ミオがジーンの2つ名を口にする。

 ジーンが関わった土地は、国が揺らぐ程の騒動が起きる事から付いた2つ名だ。


 アルタに確認した限り、ギルド連合地区が揺らぎそうなイベントはほかに見当たらない。

 そうなると、災竜の封印に関わるイベントが起きる可能性は高くなる。


「言っていることは滅茶苦茶なのに、仁君が言うと説得力を持つのが不思議ですね……」

「考えてみれば、ご主人様が訪れた土地の封印や結界は、大半が解けていますわよね?」


 セラの言う通り、俺が行った場所の特殊な封印や結界は消え去る定めにある。

 テンプレって言う奴ですね。


 パッと思いつくのは『竜人種ドラゴニュートの秘境』の結界、イズモ和国の鬼神の封印、アト諸国連合の魔神、砂漠の『精霊界』、エルガント神国の結界石くらいか。

 『地災竜・アースクエイク』も入れていいかな?封印自体は無視したけど……。

 記憶にある限り、無事なのは『人魚の国』の結界くらいだろうか?


「じゃあ、ご主人様が行かなければ、変な事にはならないの?」

「いや、俺が1度認識した時点で手遅れだろうな。遅いか早いかの違いしかない。そして、遅いと温泉に入れなくなる可能性があるのだから、早く行くべきだ」

「もはや呪いね……」

「俺は困っていないから問題なし!」


 例え呪われていたとしても、その呪いがデメリットやリスクになっていないのなら、何の問題も無い。気にする必要もない。


 そんな話をしていると、クロードからの念話があった。


《仁様、申し訳ありません。ギルド連合地区にお呼びするのが遅れそうです》

《遅れるのは構わないが、何かあったのか?》

《はい、魔物に襲われている馬車を助け、近くの街まで護衛することになりました。恐らく、今日中にお呼びするのは難しいかと思います》

《……分かった。予定が決まったらまた連絡してくれ》

《はい、失礼いたします》


 クロードとの念話を切る。


「クロードはクロードで素敵なテンプレやっているよな」

「ご主人様、その手のイベントはほぼ経験無いものね」


 テンプレイベント『馬車の危機』。

 クロードは頻繁に遭遇するのに、俺はほとんど遭遇したことがない。

 あえて言うのなら、この間真紅帝国のストロベリー皇女を助けたくらいか?


「そう言う意味では、クロードも結構トラブル体質だよな。しかも、割と正統派の……」

「ご主人様が邪道すぎるのよね」

「否定はできない」


 邪道トラブル体質、進堂仁です。

 王道も好きなんだけどね!


「それで、これからどうするんですの?予定では今日中にギルド連合地区に行く予定でしたけど……」

「そうだな……」


 セラに予定を聞かれたので考える。


 クロード達に文句を言うつもりはないが、今日はギルド連合地区に行く気満々だった。

 まだ昼を少し過ぎたくらいなので、本日の予定変更に問題はない。

 流石に、この予定変更でギルド連合地区が崩壊するとは考えたくないな。

 フラグじゃないからな!


 クロード達に適当な場所に『ポータル』を設置してもらって、そこから馬車で温泉地に向かうと言う手もある。

 しかし、今回は馬車移動をする予定なので、クロード達の現在位置から首都を目指すとなると、時間がかかり過ぎるので遠慮したい。


「大人しく、地元で暇をつぶそうか」


 地元とは、『ポータル』設置先の事である。……かなり範囲が広いかもしれない。



「と言う訳で、やって来ましたサノキア王国」


 アルタのお勧めと言う事で、俺達はサノキア王国にやって来た。


「『ポータル』設置したの私達じゃないけど、地元扱いで良いのかな?」

「まあ、わたくしにとっては本当に地元なんですけどね……」


 ミオの問いかけに答えるセラは、サノキア王国の出身者である。

 全く良い思い出は無いみたいだけどね。


「ようこそいらっしゃいました。七宝院様達は別室でお待ちです」

「分かった、案内してくれ」


 俺達を出迎えてくれたのは、サノキア王国の女王、エカテリーナである。

 補足すると、エカテリーナは俺の奴隷であり、幼馴染の咲を信奉している者でもある。

 同じ立場の女性が後4人いたはずだが、ここに居るのはエカテリーナ以外には騎士服を着た1人だけだな。


 サノキアにも『ポータル』はいくつかあるが、そのほとんどは俺ではなく、エカテリーナを含むサノキア王家関係者が設置したものだ。

 今回、エカテリーナの執務室付近の『ポータル』を使用させてもらった。

 ……国家の警備的にどうかと思うが、割とよくある事(カスタールの場合、女王の私室に直通)なので何も言うことはない。


「承知いたしました」


 俺達はエカテリーナ直々の案内で七宝院達がいる部屋へと向かう。


「到着いたしました。七宝院様、進堂仁様がお見えになりました」

「どうぞ、お入りください」


 部屋に到着し、エカテリーナが声をかけると、中から七宝院が返事をした。

 エカテリーナが部屋を開け、俺達に入室を促す。


「お久しぶりです、進堂様」×17


 俺が部屋に入ると、七宝院を始め、17名の女性が一斉にお辞儀をしていた。

 一糸乱れぬ所作に軽く引く。


「あ、ああ、久しぶり」


 この17名は俺やさくらと一緒にこの世界に召喚された勇者……いや、元勇者達だ。

 エルガント神国で勇者であることを捨て(命も一度捨て)俺の奴隷になった者達だ。

 もっと言えば、元の世界の時点で俺の信奉者だった者達だ。


「そう言えば、お前達は全く俺の屋敷に来ないよな」


 少なくとも俺が会うのはエルガント神国から帰る時以来だ。

 当然、俺の屋敷に来ることを禁止はしていない。


「進堂様はお気になさらないでしょうが、私達が気にするのです。進堂様のお役にも立っていない内から、進堂様に近づくことなど、許されることではありません」


 他の16名も力強く頷いている。

 この17人、何故かやたら結束力が高く、異常なまでの一体感を持つ。


「ま、まあ、お前達がそう言うのなら、俺は無理にとは言わないから」


 お、俺は配下の自主性を重んじます。


「凄いわね。ご主人様が引いてるわよ」

「彼女達と接する時の仁君、若干普段と違いますよね……」

「ご主人様、こういう扱いに慣れていないんですわね」

「…………」

《マリアー?かおがこわいよー?どうしたのー?》

「何でもありません。大丈夫です」


 流石の俺も『自分の信奉者』は弄りにくい。

 マリアは表面上は奴隷、護衛と言う立場を前面に出しているから気にならないが、七宝院達は徹頭徹尾信奉者としての態度を崩さない。


「でも、アルタの話によると今日は違うんだろ?」

「はい、ようやく進堂様にもご報告できる成果を得ることが出来ました。……盛大に誇れる内容ではありませんが、役立たずではないと証明できたなら幸いです」


 若干卑屈な言い回しなのは、ここに至るまで勇者達が魔族に対して碌に戦果を挙げていないからだろう。


「……それで、その後ろに倒れているのが、成果なのか?」

「はい。私達が倒し、捕縛・・した魔王軍四天王『幻影のロンドリーネ』です」


 信奉者の1人に引っ張り出されたのは、部屋の隅にぐるぐる巻きにされて転がされていた魔族の少女だった。


 実は、七宝院達は魔王軍四天王の1人を捕獲……捕縛することに成功していたのだ。

 俺に相対した魔族は死亡(精神的な意味を含む)しているので、捕縛された四天王と言うのは初めてなのである。


 基本的に魔族は殲滅する方針だが、元魔族で転生者である成瀬母娘の例から、魔族、いや魔王軍四天王を調べたいと思っていたところなのだ。

 しかし、成瀬母娘以来、魔王軍四天王に会うことはなかった為、機会が訪れなかった。


「良くやってくれた。十分な成果だよ」

「あ、ありがとうございます!」


 俺が礼を言うと、17人全員が喜色を浮かべた。


「それで、どこに居たんだ?」

「はい。居た、と言うよりはこの国に来ました。どうやら、私達が勇者の中でも主力と判断したようで、調査に来ていたようです。隠密系の呪印カースを持ち、隠れていたようですが……、普通にマップに引っかかったので……」


 ああ、うん。

 隠密系の能力はマップがあると本当に残念なことになるからね。


 後は見つけた四天王をボコって終わりだそうだ。

 確かに盛大に誇れる内容ではない。


 そして、思っていた通り、魔王軍四天王はまだ増えているようだ。

 俺が知っているだけで5人目である。カスタールで倒した『虚構のロマリエ』。エステア迷宮で倒した『大軍のゼルベイン』。エルディアで倒した成瀬母娘こと『変貌のクラウンリーゼ』とキャリエリウスだ。

 キャリエリウスの2つ名が無いのは、名乗る前にアルタの反撃で心神喪失したからだ。


A:『堕落のキャリエリウス』と言うようです。エルディアに居た魔族が呼んでいました。


 補足ありがとう。


 とにかく、5人目が現れた以上、『四天王』と言う単語を鵜呑みには出来ないと言う事が確定した。ふざけるな。


「それで、今回は進堂様が尋問をなさると言うのは本当なのでしょうか?」

「ああ、丁度いい能力を手に入れたからな」


 丁度いい能力と言うのは<生殺与奪ギブアンドテイクLV9>と<多重存在アバターLV7>のコンボの事である。

 まさしく、今回の様な状況の為にあるような能力……ではないな。汎用性が高すぎるだけだな。本当に滅茶苦茶な能力だよ。


「では、お手数をお掛けして申し訳ありませんが、進堂様にお任せいたします。私達の拷問では口を割りませんでしたので……」


 あ、拷問はしたんだ……。


「ちょいと失礼」


 俺はそう言ってロンドリーネの頭を鷲掴みにする。

 <生殺与奪ギブアンドテイクLV9>発動。続けて<多重存在アバターLV7>も発動。


「あ、ああ、あああああああああああ」



 異能の発動開始から5分が経過した。


「よし、ここまでだな。調べた結果、色々と面白い事が分かったぞ」


 俺が手を離すと、身体中から色んな汁を垂れ流しにしたロンドリーネが崩れ落ちた。

 こんな有様だけど、ロンドリーネも最終的には配下に加えることになるのかな?


「それは良いけど、相変わらずえげつないわね。ブランもトラウマになってるわよ」


 ブランとはミオのテイムしたフェザードラゴンの事だ。

 竜人種ドラゴニュートへの敵意を、テイムする直前に同じ要領で消したのだ。


「そうだな。有用なのは間違いがないけど、ちょっと見た目が悪い能力だな」

「ちょっと……ですか?」


 さくらがロンドリーネを見て困惑したように言う。

 ロンドリーネは、パッと見ただけでは生きているようには思えない程度の惨状だ。


「いや、五体満足で生きているし、少し垂れ流しているだけじゃないか」

「そうですね。奴隷商でも色々と垂れ流しでしたし、これくらいならマシな方でしょう」


 奴隷商でもっと酷い格好になっていたマリアが同意する。

 欠損もしていないし、飢えてもいない。十分にマシな状況だな。


「嫌な事思い出させないで欲しいですわ」

「私も嫌な事思い出した……」


 そして、流れ弾に当たる奴隷組セラとミオ

 未だに奴隷商での生活は良い思い出にならないようだ。なって堪るか。


「進堂様、それでどのような事が判明したのでしょうか?」

「……話を戻そう」


 話が脱線した所で、七宝院が軌道を修正してくれた。


「まず、思っていた通り、魔王軍四天王は俺達の世界の住人だ」

「それは予想通りですわね」

「ご主人様、それは転生なの?それとも転移?成瀬母娘の話を聞くと、最後の記憶は車に轢かれるところだったって言うから、転生だと思うんだけど……」


 ミオが鋭い質問をしてきた。


「ミオの言う通り転生だ。魔王には<四天任命フォースオーダー>と言う呪印カースがある。この呪印カースを使うと、俺達の世界で死んだ者が転生し、そこに魔族に相応しい人格が上書き・・・されるようだな」

「サラッと何個も凄い事を言われたわね。四天王を調べるだけで、魔王の呪印カースまで分かるものなの?」

「ああ、この呪印カース、魔王と直接繋がりがあるみたいで、逆探知みたいに色々と分かったぞ。ただ、途中で魔王に切断されてしまったけどな」

「相変わらず、凄い事をやってるわね……」


 切断されるまでの僅かな時間で、色々とやる事はやったけどね。


「この呪印カースで四天王になった者には、四天王に相応しい人格と呪印カースのセットが与えられる。このセットは4つ以上存在する。セットは魔王との繋がりが無ければ効果を発揮しない。繋がりを維持できるのは4人まで。……コレが四天王の証明って事になる。魔王からは大まかに四天王の状態が分かるようで、成瀬母娘も記憶が復活した時点で繋がりを断たれていたみたいだ」


 実は、成瀬母娘は四天王時代の呪印カースを持っているのだが、記憶が戻った時点で意味のない空スキルになっていた。

 成瀬恵クラウンリーゼに中二病呪印カース存在加算アドラステア>を見せてもらおうとしたのだが、失敗したという悲しい思い出がある。


 今回、<生殺与奪ギブアンドテイクLV9>と<多重存在アバターLV7>を受けたロンドリーネは、魔王に再起不能と判断されて繋がりを断たれたようだ。


 四天王の枠の内、ロマリエ、ゼルベインの枠にクラウンリーゼとキャリエリウスが入った。

 その後、2人の繋がりが断たれたことで、新しく空いた枠にロンドリーネが入った。

 つまり、まだ見ぬ四天王は2人。加えて新人四天王が2人追加されるはずだ。


「魔王の意思によって四天王が変わると言うのでしたら、私達が捕縛したのは無駄になってしまったのでしょうか?」


 少し残念そうに七宝院が尋ねてくる。


「いや、<四天任命フォースオーダー>の発動は魔王にとっても相当な負担になる。魔王としても気軽に使える選択肢ではないはずだ。色々と制約もあるみたいだしな」


 制約があれば抜け道もあるのだが、それは今は置いておこう。


「少しでもお役に立てたのなら良かったです」

「安心しろ。この事が分かっただけでも大手柄だ」

「はい、ありがとうございます」


 17人が揃って安心したような表情になる。

 この一体感よ……。


「後、もう1つ重要なのが、四天王は勇者に殺された場合、追加する事が出来なくなる……枠自体が潰れるみたいだな。今後、四天王を殺すのはお前達に任せた方が良いだろう」

「承知いたしました」


 最悪、マリアに任せても良いかもしれない。


「重要な発見はこれくらいだな。他にも細々と分かったことはあるが、この場で発表する程ではないだろう」


 アルタに頼み、関係者へ連絡してもらうくらいでいいだろう。


A:お任せください。


「今後の方針だが、七宝院達には引き続き力を付けてもらいつつ、魔族、可能なら四天王を倒してもらい、いずれは魔族領に攻め込んでもらうことになる」

「はい、分かりました」×17


 17人が一斉に頷く。

 何とか七宝院達偽勇者に魔王を倒してもらいたいな。


「そう言えば、今回の件は公表するのか?」


 俺は七宝院と女王エカテリーナに尋ねる。


「国家的には公表する方が好ましいですが、進堂仁様の都合に優先させるほどではありませんので、ご自由にしていただいて構いませんよ」


 エカテリーナは女王をしているが、サノキア王国自体に愛着がある訳ではない様子。

 咲に言われたからやっているだけ、らしい。


「今回の場合、四天王は暗躍していました。公表するとなるとその死体が必要になるのですが、彼女を殺した方が良いのでしょうか?」

「……駄目だな。悪いけど、今回の件は公表無しにしてくれ」


 ロンドリーネから魔族の人格を取り除き、元の人格を取り戻す予定だ。

 もし、ロンドリーネの人格に問題があるようなら配下にするつもりはないが、少なくとも有無を言わさずに魔族として処刑するような真似はしない。


「はい、私達は進堂様にさえ成果をお見せできればいいので、特に問題はございません。ロンドリーネの処遇は如何なさいますか?」

「俺が預かる。いいか?」

「もちろんです」


 と言う訳で、魔族の少女ロンドリーネは俺が預かることになりました。


「『清浄クリーン』」


 垂れ流しなので必須です。



*************************************************************


裏伝


*本編の裏話、こぼれ話。


・<四天任命フォースオーダー

 魔王専用の呪印カースであり、歴代の魔王が四天王を生み出すのに使用していた。

 効果は地球で死んだ者を(死んだ時点と同じ形の肉体で)転生させ、その肉体に魔王軍四天王として相応しい人格と呪印カースを上書きするというモノ。


 上書きされた方の人格は、新しい人格が完全に馴染むと消えてしまう。完全に馴染む前なら、とても強い衝撃を与える事で、復活させることも可能(普通は無理)。

 上書きする人格と呪印カースはセットになっており、10以上のセットが存在する。このセットは歴代の魔王で共通。

 しかし、過去の魔王で使用したセットであっても、新しく書き込んだ人格に以前書き込まれた時の記憶は残っていない。


 人格と呪印カースを維持するには魔王との繋がりが必要となる。

 この繋がりは最大で4つまでしか保持できない。それ故に四天王となる。

 四天王が死んだら、新しく繋がりを作れるが、『勇者』の称号を持つ者によって四天王が倒された場合、この繋がりの最大数が減る。


 魔王の持つ『最凶の三呪印カース』の1つにして、歴代で最も活躍する呪印カースである(他の呪印カースは勇者との直接対決くらいでしか使われない)。

 なお、今代の魔王が最も多く<四天任命フォースオーダー>を使わされたというのは、言うまでもない事だろう。


主人公が行く前に明かされるボス敵。

本人未登場で明かされる魔王のスキル。

雑だ。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。