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【社説】

京急の衝突事故 踏切の危険減らさねば

 立ち往生していたトラックと、時速百二十キロの快特電車が衝突した京急線事故は、踏切の危険をあらためて突きつける。原因の検証を進めるとともに、危険を減らす抜本的な対策も考え続けたい。

 事故翌日の六日も車両撤去の作業は続き、休みになった学校もあった。都市の動脈が寸断されれば沿線住民などへの影響は大きい。

 防げる事故だったのかの検証がまずは必要だ。京急の安全システムでは、警報機が鳴っているのに踏切内に車などが取り残されていれば、センサーが検知して専用の信号機が発光する。今回、検知装置や、踏切から十~三百四十メートルの間に三カ所設置されている信号機は正常に働いていた。仕組み上は、運転士は踏切から六百メートル手前で異変に気付くことができ、その時点で非常ブレーキをかければ衝突は避けられる。だが事故は起きた。

 他社の一部路線のような、障害物を検知したら自動でブレーキがかかるような仕組みは導入していなかった。それぞれの会社の理念に基づき、適切と判断したシステムを構築しているのだろうが、事故が起きた以上、導入を検討する必要はあるだろう。

 もちろん、事故の一番の原因は、トラックが踏切内で立ち往生したことにある。長さ十二メートルの車体で狭い道路から踏切に進入しようとして曲がり切れず、何度も切り返していたという。会社が指示した道路とは違う道路を通っていた。何らかの理由でふだんと違う道に迷い込んだようだ。神奈川県警は自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)の疑いで、事故で亡くなった運転手が勤める運送会社を家宅捜索した。各運送会社は確実なルートでの走行を運転手に徹底してほしい。

 踏切を巡っては、高齢者が遮断機が上がっている間に渡り切れずに事故に遭うなどの問題も顕在化している。事故が起きた神奈川新町第一踏切は、ピーク時には一時間で四十分以上遮断機が閉じている「開かずの踏切」だった。国土交通省は全国で五百カ所以上を指定している。

 危険な踏切を減らしていく抜本的な方策は立体交差化、つまりは踏切そのものをなくすことだ。巨額の費用がかかり、地元の理解も必要となるので時間がかかっている。ただ、今回の事故もラッシュ時だったら、さらに被害や混乱が拡大していた可能性がある。危険の解消に向け、鉄道会社や自治体の粘り強い努力を求めたい。

 

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