マグネシウムの働きと1日の摂取量
公開日:2016年7月25日 03時00分
更新日:2019年8月 9日 11時51分
マグネシウムとは
マグネシウムとは生体内で約50~60%がリン酸塩や炭酸塩として骨に沈着しています。残りの約40%は筋肉や脳、神経に存在します。カリウムに次いで細胞内液に多くしますが、細胞外液には1%未満しか存在しません。生体内では、多くの酵素を活性化して生命維持に必要なさまざまな代謝に関与しています。
マグネシウムの吸収と働き1)
食品として摂取したマグネシウムの吸収は主に小腸で行われ、腎臓で排泄されます。腸管での吸収はビタミンDによって促進され、過剰のカルシウムやリンによって抑制されます。摂取量が不足すると、腎臓でのマグネシウムの再吸収が促進されたり、骨からマグネシウムが放出されたりすることで、マグネシウムの血中の濃度を一定に保っています。
マグネシウムは補酵素としてまたは活性中心として300種類以上の酵素の働きを助けていています。エネルギー産生機構に深く関わっており、栄養素の合成・分解過程のほか、遺伝情報の発現や神経伝達などにも関与しています。また、カルシウムと拮抗して筋収縮を制御したり、血管を拡張させて血圧を下げたり、血小板の凝集を抑え血栓を作りにくくしたりする作用もあります。
マグネシウムの1日の摂取基準量2)3)
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、1日のマグネシウムの推奨量を18~29歳男性では340㎎、30~49歳男性では370㎎、50~69歳男性では350㎎、70歳以上の男性では320㎎で、18~29歳女性では270㎎、30~69歳女性では290㎎、70歳以上の女性では270㎎と設定しています(表1)。
通常の食事による過剰障害は報告されていないため、一般的な耐容上限量は設定されていませんが、サプリメントなどの通常の食品以外からの摂取量を成人で1日に350㎎(小児の場合は体重1㎏あたり5㎎)と制限しています(表1)。
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
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年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量a | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量a |
0~5(月) | - | - | 20 | - | - | - | 20 | - |
6~11(月) | - | - | 60 | - | - | - | 60 | - |
1~2(歳) | 60 | 70 | - | - | 60 | 70 | - | - |
3~5(歳) | 80 | 100 | - | - | 80 | 100 | - | - |
6~7(歳) | 110 | 130 | - | - | 110 | 130 | - | - |
8~9(歳) | 140 | 170 | - | - | 140 | 160 | - | - |
10~11(歳) | 180 | 210 | - | - | 180 | 220 | - | - |
12~14(歳) | 250 | 290 | - | - | 240 | 290 | - | - |
15~17(歳) | 300 | 360 | - | - | 260 | 310 | - | - |
18~29(歳) | 280 | 340 | - | - | 230 | 270 | - | - |
30~49(歳) | 310 | 370 | - | - | 240 | 290 | - | - |
50~69(歳) | 290 | 350 | - | - | 240 | 290 | - | - |
70以上(歳) | 270 | 320 | - | - | 220 | 270 | - | - |
妊婦(付加量) | +30 | +40 | - | - | ||||
授乳婦(付加量) | - | - | - | - |
- 通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量は成人の場合350㎎/日、小児では5㎎/㎏体重/日とする。それ以外の通常の食品からの摂取の場合、耐用上限量は設定しない。
- 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量。
- 推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量。
- 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
- 耐容上限量:過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量。
平成27年国民健康・栄養調査におけるマグネシウムの1日の摂取量の平均は243.9㎎で、推奨量と比較すると、不足気味です。食品群別の摂取量を見ると、野菜、穀類、豆類からの摂取量が多くなっています。
マグネシウムが不足するとどうなるか1)
マグネシウムが不足した場合には、不整脈が生じやすくなり、慢性的に不足すると虚血性心疾患、動脈硬化症などのリスクが高まります。また、吐き気、精神障害などの症状が現れたり、テタニー(筋肉の痙攣)を起こしやすくなったりします。さらに、近年、長期的なマグネシウムの不足が、骨粗鬆症、心疾患、糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクを高める可能性が示唆されており、今後さらに研究が進められることが期待されます。
マグネシウムの過剰摂取の影響
マグネシウムを摂り過ぎた場合は、過剰分は尿中に排泄されるので通常の食事では過剰症になることはありません。しかし、腎機能が低下している場合には高マグネシウム血症が生じやすくなり、血圧低下、吐き気、心電図異常などの症状が現れます。また、ダイエットや便秘などに効果があるといって摂取されている「にがり」(主成分は塩化マグネシウム)やサプリメントなど、通常の食事以外でマグネシウムを過剰に摂取すると、下痢を起こすことがあります。
マグネシウムを多く含む食品4)
マグネシウムは表2のとおり、藻類、魚介類などに多く含まれています。他には、精製されていない穀類、野菜などの植物性食品や豆類にも豊富に含まれています。
きんめだい生100g(一切れ)にはマグネシウム73㎎、ほうれん草生100g(2分の1束)にはマグネシウム69㎎、玄米ご飯120g(茶碗一杯)にはマグネシウム59㎎、納豆50g(1パック)にはマグネシウム50㎎が含まれています。
順位 | 食品名 | 成分量100gあたり㎎ |
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1 | 藻類/あおさ/素干し | 3200 |
2 | 藻類/あおのり/素干し | 1400 |
3 | 藻類/わかめ/乾燥わかめ/素干し | 1100 |
3 | 藻類/てんぐさ/素干し | 1100 |
5 | 藻類/ひとえぐさ/素干し | 880 |
6 | 穀類/こめ/[その他]/米ぬか | 850 |
7 | 調味料及び香辛料類/バジル/粉 | 760 |
8 | 藻類/ふのり/素干し | 730 |
9 | 藻類/(こんぶ類)/刻み昆布 | 720 |
10 | 藻類/(こんぶ類)/ながこんぶ/素干し | 700 |
10 | 藻類/まつも/素干し | 700 |
12 | 藻類/(こんぶ類)/みついしこんぶ/素干し | 670 |
13 | 藻類/(こんぶ類)/がごめこんぶ/素干し | 660 |
14 | 藻類/ひじき/ほしひじき/鉄釜、乾 | 640 |
14 | 藻類/ひじき/ほしひじき/ステンレス釜、乾 | 640 |
16 | 藻類/わかめ/乾燥わかめ/板わかめ | 620 |
17 | 藻類/(こんぶ類)/ほそめこんぶ/素干し | 590 |
18 | 藻類/えごのり/素干し | 570 |
19 | 藻類/(こんぶ類)/りしりこんぶ/素干し | 540 |
20 | 魚介類/(かに類)/加工品/がん漬 | 530 |
20 | 種実類/かぼちゃ/いり、味付け | 530 |
20 | 藻類/あらめ/蒸し干し | 530 |
20 | 藻類/(こんぶ類)/まこんぶ/素干し | 530 |