雨中の快勝は、悲願の金メダルへのヒントを少しでももたらしただろうか。スタンドにはソフトボール女子日本代表の宇津木麗華監督の姿があった。「やはり星野さんから(の付き合い)ですからね。ドラゴンズが気になります」。試合前には与田監督や伊東ヘッドコーチらと旧交を温めた。
8月末から開催されたジャパンカップでは、惜しくも準優勝。ただ、試合中に打球を受け、あごを骨折した上野由岐子が復帰登板にこぎ着けたことは収穫だ。手術したのが4月30日。令和への改元を病床で迎えた日本のエースは、集大成の五輪に向けて大きな一歩を踏み出した。
12年ぶりに五輪で実施されるソフトボールは、野球と並んで金メダル獲得は使命といっていい。強烈なプレッシャーが宇津木監督にのしかかる。「それはまだこれからね。まずはアメリカの情報を集めます」。24日から上海で行われるアジア・オセアニア予選を視察。それと並行して、宿敵・米国の戦力を分析する。前哨戦は終え、次に当たるのは五輪本番だ。
使命を帯び、重圧を背負う。それが監督という職業の宿命だ。宇津木監督と談笑しながら、与田監督は「まだ順位を上げなければいけません。そのためには決めたことを動かさず、やり通すこと」と話していた。宇津木監督は勝負師に求められる像をこう説明した。
「監督は変人の方がいい。そう思います。野球もソフトボールも表と裏があるでしょ? 使い分けないと。優しいだけじゃダメ。怒るときはしっかりと怒らないと」
宇津木監督は金メダルを目指す。プロ野球ではリーグ優勝が目標だ。その差はさておき、指揮官は変人であれ。表と裏を使い分けよ。愛をもって優しく接するのが表とするなら、愛をもって厳しくするのが裏となる。もちろん感情にまかせて怒鳴るのとは違う。代表メンバーが決まるのは来年3月。鬼となりふるい落とさねばならぬのは、競技にかかわらず監督が背負う苦しみでもある。