アオイヤマダ カラダ

踊っているとき、
私のカラダは
無敵になる

まっすぐ伸びた背筋と首。前髪も水平線のように横にまっすぐ。アオイヤマダ、19歳。活躍の幅はすでに広く、カラダと動きの表現も大胆かつ多彩。ゆえにもはやダンサーとも言い切れないが、よく踊る美しい人であるのは間違いない。ミュージックビデオやテレビのCM、ステージでのパフォーマンス、あるいはInstagramで彼女の動きを見ればわかるはず。
美しくて荒々しく、端正で生々しい。観る者にいろんなことを語りかけるのだ。例えば感情なら、喜怒哀楽のぜんぶ。饒舌なカラダをもつ人が、カラダについて感じることとは。

普段の暮らしの中でカラダがいきいきする瞬間は?

やっぱり踊っている時。踊っている時は意識がカラダの動きのほうにあるから、怪我をしていても痛みを感じなかったり、暑さや寒さもあまり感じません。踊っていると、なにに対しても『負けない! 勝てる!』って、心にもカラダにも気合いが入るんです。

最初に踊り始めた時、アオイさんにとってダンスはどういうものだった?

スクールに通い始めたのが6歳くらい。最初は正直、ダンスって楽だなって。私は、自己主張が強くて目立ちたいくせに、人見知りで人と喋りたくない性格で。先生が喋り、私はカラダで応えればいいダンスは、そんな性格と一番フィットしたんです。最初は単純に音にあわせるのが楽しかったし、音楽の意味に沿って踊ってみたり、空間に合わせてみたり……いろいろな段階を経て、踊りのスタイルもすごく変わってきていて。大きな節目だったのは長野から上京してきた15歳の時。今のマネージャー含め、新しい出会いがたくさんあって、私が生まれる前に活躍されていた人の映像や80年代のアンダーグラウンドシーンの情報を聞くようになって、踊ることの意味を考え始めました。踊りって正直、必要のないことじゃないですか。でも、目には見えないけど、人間の心の動かすためには必要なものかもしれない。そういうふうに最近は踊りに対して深く入り込んで考えています。おもしろさもどんどん増して、まだ自分は満足できないなと感じているところです。

上京して環境が変わったことで、カラダへの意識も変化した?

変化しました。その頃は踊りをただの自己満足で終わらせたくないと考えていて。大きな話ですけど、自分が動くことによって誰かが救われたらいいなって。でも、上京してすぐホームシックになって心がグラついて。それも相まって、自分のカラダがどうあるべきか考え始めました。まずは食べるものを変えたら心が安定したので、次はカラダだと思って、ダンス以外のカラダの動かし方をしてみようと、毎朝筋トレする習慣をつけました。そしたら、すごくプラス思考になったんですよ。最近はヨガもやっています。ヨガで呼吸をする時に「背骨に空気を通す」とイメージするんですが、それが実感としてわかるようになってきました。踊る時も呼吸は意識しますが、背骨に空気を通すということはそれまで考えたことがなくて。でも、意識し続けているとそこが動くようになる。目に見える部分を鍛えるのは簡単だけど、無意識の部分に意識を向けて動かすのは実践しないとわからないですね。

踊る時に大事にしているものは?

カラダの状態と心の状態をフィットさせること。泣いている時や踊りたくない時に踊っても、意外とそれが良かったりして。心の状態がどうであれ、そこに素直に向かえば踊りは良くなると思います。でも、なにかを見せてやろうと思ったり、心に反抗するとあまり良いものにはならないかも。あと、私にとって「自然」は大事。単純にきれいだなっていうよりは、心が解放されて落ち着いたり、植物の咲き方や形に不思議さを感じて、好奇心をくすぐられます。植物に脳があったとしたら、人間の脳とは全然違うと思うし、私が思いつかなかないものを植物は持っているから、そこからもらうものはたくさんありますし、その動きにインスパイアされることもあります。

踊るうえで憧れている人や、動きはある?

小さい子供の、意図的ではない、予測不可能でエネルギッシュな動きにすごく憧れます。靴を右から履くとか、生活の小さな動きの積み重ねで筋肉が作られてカラダに癖が出てきますよね。そういう意味で、大人に比べたら子供はカラダも脳も柔軟だから、炭酸が弾けるような、軽やかでスルスルした動きをしていていいなと思います。あと、普段踊ってない人がいきなり踊ると、思いがいっぱいに溢れていて素敵です。ダンサーは踊ることが主体になるけど、なにかを伝えたくてカラダを動かしている人のほうが魅力的に見えます。

アオイさんにとって「強い女性」とは?

見捨てない人かな。褒めることはきっと誰でもできるけど、その先の、表面だけではないコミュニケーションを取れる人は強いし、そうやって接してくれる人がいると「見捨てられてない!」って思えます。私はどちらかというと弱い人間だけど、踊っている時だけはなぜか「このまま死んでもいい」とすら思えて。まわりの人たちも必死に創造しようとしているのを見ると、私もそれに負けてられないと思うんですよね。

踊る時のシューズやウェアのこだわりは?

足の内側の骨が人より少し出ているので、シューズの形は気にしています。あと、視覚から入る情報って強いと思うので、ウェアの色も大事。その日の気分で結構違うんですけど、踊る時は風景に合わせてひとつの絵になるようにしたいから、その場所に馴染む色の服を着るようにしています。

アオイヤマダ × カラダ × ASICS

もともとは喋ることすら苦手で、人見知りだった女の子がダンスと出合った。やがて時には言葉を使う以上に、踊りは人に多くのことを伝えられることを知った。「人間の心の動かすためには必要なものかもしれない」と彼女は言う。そしてこうも「痛くも暑くもない。踊っている時は無敵です」。ムテキ。自分の弱さを認めながらも、そんなふうに言い切れる瞬間を持つ人はきっと強い。そんな彼女のカラダを包むのは、女性のもつ強さをテーマにしたウェアがふさわしいに決まっている。

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PROFILE

アオイヤマダ

踊る人

2000年、長野県松本市生まれ。子どもの頃よりダンスを始め、現在までずっと没頭。米津玄師やナルバリッチなどのミュージックビデオや、数多くのTVCM、イベントなどへの出演のたびに注目を集める新世代のアーティスト。ダンスコンテストの受賞も多数。
Instagram @aoiyamada0624