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【社説】

ウクライナ紛争 ロシアも和平へ動け

 ウクライナの新内閣が発足した。ゼレンスキー大統領が和平交渉に臨む態勢がこれで整った。五年にわたる東部紛争の終結へウクライナとロシアが真摯(しんし)に向き合うことを期待したい。

 ウクライナでは首相と閣僚の任命権は議会が握る。五月に就任したゼレンスキー氏は議会に足場がなく、自前の政府をつくれなかった。その状態を解消するため、七月に前倒しして実施した議会選でゼレンスキー新党が過半数を制し、政権基盤を確立した。

 新内閣を構成するホンチャルク首相と閣僚十七人は平均年齢が三十九~四十歳と若い。女性閣僚も六人を数える。この清新さは、既成政治にうんざりした国民の期待にかなっている。半面、国政運営に未熟さが出ないよう政権は気を引き締めてほしい。

 欧州の最貧国とも呼ばれる経済の浮上と蔓延(まんえん)する汚職の一掃は大きな課題だが、最優先に取り組むべきは、親ロシア派武装勢力との間の内戦状態の解消である。

 二〇一四年のロシアによるクリミア併合に続き、ロシア系住民の多い東部で始まった戦闘は一万三千人ともいわれる犠牲者を出している。ドイツとフランスが仲介した四年前の停戦合意は履行されないままだ。

 出口の見えない紛争に倦(う)む国民は和平交渉を期待している。対ロ強硬一点張りで進展をもたらさなかった前政権とは違い、ゼレンスキー氏がロシアとの対話を望んでいることを歓迎したい。

 ソ連崩壊後、欧米とロシアが影響力を競い合う舞台となったのがウクライナだ。旧ソ連圏を自分の勢力圏と見なすロシアには、ゼレンスキー政権が目指す欧州への統合は容認できるものではない。

 とはいえ、クリミア併合はかえってウクライナを西側に追いやることになった。ほかの旧ソ連諸国にも強い警戒感を呼んだ。

 先の先進七カ国首脳会議(G7サミット)の総括文書には、ロシア、ウクライナ、ドイツ、フランスの四カ国首脳会議を数週間以内に行うことが記された。実現すれば一六年十月以来三年ぶりになる。

 ロシアは四月、東部地域の住民を対象にロシア国籍の取得手続きを簡素化し、ウクライナに揺さぶりをかけた。

 だが、和平交渉を前進させないと、欧米の経済制裁の解除は遠のく。経済低迷から抜け出す道筋も描けない。プーチン大統領も紛争終息へ踏み出す時だ。

 

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