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【社説】

トヨタとスズキ 大変革期勝ち抜く決断

 トヨタ自動車とスズキが資本提携することで合意した。両社は業務提携を進めてきたが、自動運転など次世代技術開発を巡る競争が激化する中、連携を強化して大変革期に立ち向かう決断を下した。

 トヨタはスズキの発行済み株式の4・94%を九百六十億円で、スズキは四百八十億円相当(約0・2%)のトヨタ株を取得する。二〇一八年の世界販売はトヨタグループが約千五十九万台で、スズキは約三百三十三万台。トヨタと資本提携するマツダとスバルも加えると、千六百万台超の「トヨタ連合」が形成され、国内では日産自動車・三菱自動車、ホンダの二陣営と競う構図になる。

 トヨタとスズキは一七年に業務提携し、トヨタが得意とするハイブリッドシステムや、スズキが高いシェアを誇るインド市場などで連携を深めてきた。こうした効果を見極め、「機が熟した」(トヨタ幹部)と、より深い結び付きとなる資本提携に踏み切った。

 次に協業を加速するのは、グーグルなど米IT大手との技術競争が激しい自動運転分野だ。トヨタは最近、ソフトバンクと自動運転サービスなどを担う共同出資の新会社を設立したり、異業種との連携を進めている。トヨタの豊田章男社長は、五月の記者会見でも「これからは『仲間づくり』がキーワードになる」と強調。スズキとの資本提携もその一環だ。

 トヨタの仲間が増えることで、効率的な投資が可能になる。例えば自動運転で不可欠な安全技術でも、システムを搭載する車両が多いほど量産効果で開発費用は安くなる。安全に対する信頼度を高めることで、トヨタの技術の「世界標準化」を視野に入れる。

 スズキは、提携で得る資金のうち二百億円を自動運転関連に投入する。規模が小さいスズキにとり後ろ盾がほしい分野だった。海外でも、独フォルクスワーゲンと米フォード・モーターが自動運転分野に提携関係を拡大するなど、合従連衡が進む。

 ただ、技術革新の環境が整う一方、自動運転時代が到来すると道路などインフラがどう変わるのか、といった分野では「地に足がついた議論になっていない」(東海東京調査センターの杉浦誠司氏)のが実情で、明確な将来像は示されていない。交通事故死や渋滞をなくすのが自動運転の最終的な目標だ。大変革期の主導権争いで問われるのは、安全かつ効率的で、汎用(はんよう)性の高いシステムをいち早く築けるかだ。

 

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