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異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ 作者:コーダ

第9章 エルガント神国編

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外伝第11話 ダンジョンマスターの追憶②

東の短編は大よそこの形式で進める予定です。

「カンパーイ!」×3


 乾杯の音頭と共に進堂、東、浅井の3人はジュースの入ったコップを打ち合わせる。


 本日はクリスマス。

 街が賑わう中、3人は進堂家でクリスマスパーティをしている。


「いや、何で野郎3人でクリスマスパーティなんかしてんだよ……」

「浅井、今更そんな突っ込みですか?」


 浅井の当然の疑問に対し、東が呆れた様な顔を向ける。


「どうせすることも無いし、3人で集まってクリスマスっぽい事をして暇をつぶす。確か、そんな趣旨だったよな。それに、浅井も反対はしなかっただろ?」

「ああ、それは理解しているんだが、思った以上に華が無いというか、侘しいというか……」


 テーブルにはケーキや飲み物、チキンなどが並べられている。

 進堂も東も料理が全く出来ず、浅井も本格的な物は作れないので、買ってきた物である。

 興の乗った進堂が部屋を無駄にデコレーションしているため、雰囲気自体は煌びやかである。それ故、男子3人と言うむさ苦しさが余計に強調された。


「何でしたら、浅井お得意の人脈を駆使して、今から女性を集めたらどうですか?」

「いや、クリスマス当日に呼びつけるのは流石に無理だって」


 東の軽口に浅井は首を横に振って答えた。


「でも浅井はモテるから、急に呼びつけても1人や2人集めるくらいは出来そうだよな」

「俺目当てで来た女子とか、絶対に空気が凍るだろ……。だったら、3人それぞれが女子を連れてくるくらいしないと、バランスが取れねえよ」


 1人だけ女連れで、野郎同士の集まりに参加する程の勇気は浅井にもない。


「僕は嫌ですよ。恋人なんていませんし、僕に寄って来るのは海外の企業の息のかかった美人局ハニトラくらいなものですからね。ええ、不愉快です!」

「天才も大変だねぇ……」


 これには進堂も苦笑いである。


「僕は普通の学生生活がしたいって言っているのに、誰も聞く耳を持たないんですよ。本当、いい加減にして欲しいですよね」

「まあ、トーメイが学生生活しているせいで、技術の発達が遅れているって言うのは、方々から聞こえて来るけどな。そう言う連中には今のトーメイの状況は看過しづらいだろうさ」


 東が本気を出せば、技術分野の進歩が加速するのは間違いが無く、可能ならば学生を止め、自らの企業で働いて欲しいと思っている者は少なくない。

 ついでに言うと、日本よりも海外の方がその傾向が強く、東の通学路にはナイスバディの外国人女性が不自然な程に多い。


「多分、この家の周囲も見張られていると思いますよ」

「ああ、居るな。何人か見た・・

「見つけていましたか。呼べば来るんじゃないですか?絶対に呼びませんけど」

「俺も見知らぬ外国人女性を家に入れるのはちょっと……」


 家主の進堂も難色を示す。当然である。


「他に呼べるとなると、浅井の妹のひじりちゃんくらいですかね?」

「……パーティの華として、自分の妹を呼ばれる俺の気持ちが分かるか?それにアイツは別のクリスマスパーティに行っているから無理だ」

「それは残念ですね。浅井をからかうには丁度いいんですが」

「トーメイ、この野郎……」


 東は「聖夜にひじりで丁度良かったのに」と呟く。


「しかし、そうなると女性を呼べる見込みが無いのは俺だけと言う事になるな。悲しいな」


 浅井と東は、相手を選ばなければ女性を呼べると言う事で、進堂が疎外感を感じていた。


「え、ジンが言うのか?」

「鈍感と言うのは恐ろしいものですね……」


 進堂は2人から不思議な物でも見る様な目で見られていた。


「ん?何のことだ?」


 意味の分からない進堂が首を傾げる。


「俺の知る限り学校内だけで17人……いや、18人か。学校外も含めたらそれ以上だって言うのに、全く気付いていないだと……」

「僕ですら気付いたのに……。敵意には敏感でも、好意には鈍感、どこの主人公ですか……」

「まあ、純粋な好意かって言うと、微妙なところだけどな」

「そうですね。どちらかと言えば、あの人達のはほとんど信こ……いえ、言わぬが花ですか」

「一体何のことだよ!」


 自分の話のはずなのに全く理解できず、進堂が声を荒げる。


「ジン、例えば同級生の女子、いや、先輩でも後輩でも教師でもいいから、女性から告白されたらどうする?」


 進堂の疑問には答えず、浅井は質問を返した。


「いきなり何だ? ……そうだな。多分断るんじゃないか?恋人作ったら、3人で遊ぶ時間が減るだろ。少なくとも、高校卒業までは遊び優先だろうな」

「……僕がまともに遊べるのは、高校生まででしょうからね」

「だな。流石に大学までは待ってくれないだろうよ」


 東の優秀さはそれこそ世界の発展に影響するレベルだ。

 道楽でしかない学生生活を、更に4年追加してくれと言うのは流石に難しいだろう。

 最悪、武力行使に出かねない。そして、返り討ちからの血みどろの抗争になりかねない。


 その事を東も理解しているので、今しかない学生生活、そして、進堂、浅井との遊びを全力で楽しんでいるのである。

 進堂も女性に興味が無い訳ではないが、それ以上に浅井、東と遊んでいる方が楽しく、時間制限があることも相まって優先順位が決まってしまっているのだ。


「東の件が無く、高校卒業後も遊べるようなら、恋人の1人でも作っても良かったかもな。いや、それでも遊び優先で色恋を後回しにしたかもしれないか……」

「ジンはどんだけ遊ぶのが好きなんだよ……。後回しにされた色恋が可哀想だ」

「少なくとも、2人と遊べなくなるまでは後回しだな」

「それ、下手をすると10年やそこらじゃ済まないですよね?」


 進堂のトンデモ発言に苦笑する2人。


「でも、ジンが老いて動けなくなる姿も中々想像できないよな」

「どちらかと言うと、進堂が死ぬ姿が想像できないです」

「あ、何か分かるかも」

「まるで人外みたいに言われているな……。そう言う東は、脳だけになって延々と生きていそうだぞ。ガラスの筒の中で、保存液に浸かった状態で」

「誰がラスボスですか」

「あ、それも分かるかも」

「逆に浅井は孫に囲まれて幸せに死にそう」

「俺だけ普通だな!?」

「そうですね。1番一般的な死に方しそうですね」

「喜べばいいのか!?悲しめばいいのか!?」


 それは誰にも分からない。



「海外の企業どころか、異世界迷宮の社長とは、人生、何が起こるか分かりませんね」

「アズマ様、シャチョウ、とは何ですか?」

「きゅい?」


 久しぶりに元の世界の夢を見た東の呟きに、傍にいた迷宮保護者キーパーのカナと、角付きウサギホーンラビットのシロが疑問の声を上げる。


「すいません。久しぶりに元の世界の夢を見たんですよ」

「アズマ様、元の世界の夢を見ると、必ず朝一でコメントを入れますよね?」

「そうでしたか?それだけ印象が強いのかもしれませんね」

「きゅい!」


 今までも度々似たような事があり、カナも少しずつ慣れて行った。

 元の世界の事を嬉しそうに話す東に対しては、複雑な感情を抱きつつ、東が楽しそうなので何も言えないという、いじらしい状況になっている。


「それで、今度はどんな夢を見たんですか?」

「そうですね。あえて言うのなら、将来について語り合っていた時の話ですよ。よく考えると、内容はまともとは言えませんけどね……」

「きゅい?」


 脳を取り出して永遠を生きるというのは、将来の夢の話と捉えて良いのだろうか?


「将来の夢、ですか。さっき言っていた、シャチョウと言うのがアズマ様の夢なんですか?」

「いえ、社長は別に夢じゃありません。後、カタコトでシャチョウと言うのは止めてもらえませんか?美人局ハニトラの事を思い出すので……」

「? ……分かりました。もう言いません」


 分からないなりに何かを察したカナである。

 もう大分長い付き合いなので、東の表情から大よその感情は読み取れる。


 東は、とてもとても悲しい感情を堪えているようだった。

 東をここまで悲しませる美人局ハニトラとは何なのだろうか?

 カナはとても気になったが聞けなかった。


「結局、恋愛をする暇はありませんでしたが、子育ての真似事だけでも出来て良かった、と考えるべきですかね」

「エステア王家の事ですか?そう言えば、何故アズマ様の血縁でもない者にこの国の統治を任せることにしたのですか?それもアズマ様が態々孤児を育ててまで……」


 エステア王国の初代国王は元々は孤児だ。

 あえて、迷宮保護者キーパーにはせず、普通に育てて迷宮の上に創った国の王とした。


「僕には子供が出来ませんから、その代替みたいなものですよ」


 異世界転移の副作用のようなもので、東に子供は出来なくなっている。

 血を残すことは出来ないが、せめて子供のような存在を後世に残したいと考えたのだ。


(本当に残念です……)

「何か言いましたか?」

「いいえ、何でもありません」


 見た目は迷宮保護者キーパーになった時の幼い姿のままだが、精神的には既に成人以上のカナである。東に対して色々と思うところがあるようだ。


「尤も、そう言う意味ではカナも娘みたいなものですけどね」

(それは本っ当に残念です!)

「何か……」

「いいえ!何でもありません!」

「そ、それなら良いのですが……」

「きゅー……」


 シロがカナを慰めるように一鳴きした。



「……カナ、それは何のつもりですか?」


 東にとって、カナは長い付き合いになる迷宮保護者キーパーであり、かけがえのない存在だが、時々、東にも理解できない突拍子もない事をすることがある。


「ば、ばぶー」


 長い付き合いの女性が、赤ん坊の格好をして、揺り籠に入って部屋で待っていた時、どのような反応をすればいいのだろうか?

 ちなみに、カナの外見年齢は10歳くらいであり、迷宮保護者キーパーになる前に初潮を迎えている。


「もしかして、この間の子育ての話題から……」

「!? ば、ばぶー。カナ、赤ちゃんだから何のことか分からないばぶー」


 カナとしても、女性として見られるのは既に諦めている。

 ならばせめて、東の無聊を慰めようとしての決心だった。本当に突拍子もない事である。


「カナ、今年で何歳になりますか?」

「……ばぶー。生まれたての0歳ばぶー」

「……………………」


 外見年齢である10歳で迷宮保護者キーパーになった。

 そして、そこから50年の付き合いである。


 東はカナに近づき、肩を叩いて首を振りました。


「カナ、気持ちは嬉しいのですが、そう言う事ではありません。……カナも疲れているんですね。気付いてあげられず、申し訳ありませんでした」

「え?」

「僕は何も見ていません。しばらく、散歩に出てきますから、その間に……」

「え……?」


 そう言って、東は部屋を後にした。

 残されたカナは赤くなったり、青くなったりした後、決心した。


(シンドウ様、アサイ様。私がこんな格好をする羽目になったのは貴方達のせいです!いつか一発、殴らせてください!)


 もし、カナが生きている内に2人に会う事があったら、とりあえず一発殴る。

 カナはそう強く心に誓うのだった。


 ……これ、進堂と浅井が悪いのだろうか?


「きゅい……」


クリスマスからちょうど半年離れた本日。

これはもうクリスマスと言っても過言ではありませんよね。だからクリスマスネタを一部含みます。

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