挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
異世界転移で女神様から祝福を! ~いえ、手持ちの異能があるので結構です~ 作者:コーダ

第9章 エルガント神国編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました
205/264

第141話 勇者の蘇生と信奉者

木野達は6章、外伝8話で登場しています。

この章のテーマの1つに外伝キャラの本編参入があります。

工藤君とか、水原さんは直接出てきませんけどね。……工藤君どうしているんだろう?生きてる?

「『アンク』」


 俺は寝台に寝かせた木野に『アンク』の魔法を放つ。


 <無詠唱>スキルに<拡大解釈マクロコスモス>を使用したことで、さくらの創造した<固有魔法オリジナルスペル>も詠唱無しで使用できるようになった。

 なお、<固有魔法オリジナルスペル>はLV10魔法以上と言う扱いらしく、<無詠唱>(魔法レベルによって消費MP増加)で必要なMPの量がとんでもないことになった。

 ヤベェ。


「もう1度、『アンク』」


 今度は木野の横に寝かせた七宝院に『アンク』を放つ。


 1回目で思っていた以上に魔力(MP)を消費したので、今度は<無限収納インベントリ>にストックされていた『アンク』を使用した。

 実はメイド達が『アンク』のストックを作ってくれていたのだ。

 他にも有用な魔法は<無限収納インベントリ>にいくつもストックされている。

 ……最初からそっちを使えば良かったよ。


 2人の身体が光輝き、光が治まる頃にはボロボロになっていた身体が元の姿を取り戻す。


 こうして改めて見ると、木野が日本人形みたいに整った容姿をしているのが分かる。

 七宝院の方もかなり整った容姿だな。こちらは大和撫子と言ったところか。


 ……2人共、なんか見覚えがあるんだよな。どこかで会ったことがあるのか?


 『アンク』によって蘇生した2人が目を覚ますが、その瞳は何も映してはいなかった。


 木野の事を日本人形のように整った容姿と言ったが、虚ろな目をして横たわっていると、本当に人形にしか見えなくなってくる。

 言い方は悪いが、今の2人は聞かれたことに答えるだけの人形のような状態なので、あながち間違っていないことも問題かもしれない。


「さて、それじゃあ、最初の質問だ。お前達の名前は何だ?」

「……木野あいち」

「七宝院神無です」


 虚ろな目のまま、2人が答える。

 平坦で感情を感じない声だな。まあ、自我がほとんどないのだから当然か。


「記憶が途切れる直前の出来事を覚えているか?」

「大聖堂へと侵入してきた男に攻撃を仕掛けました」

「……進堂様が危なかったので、思わず射線上に飛び出した」


 七宝院の方は良いとしよう。問題は木野だ。

 コイツ、今普通に進堂様って言ったよ?

 あの時はジーンの格好だったから正体を知っているのも不自然だし、そもそも何で敬称がついているんだ?


「ジーンが仁君だと知っているのですか……?」

「……知っている。進藤様がよく使うニックネーム」


 さくらの問いに木野が答える。

 まあ、元の世界でジーンと言う名前を頻繁に使っていたのは事実だが、何故その事を木野が知っているのだろうか?


「何故、元の世界で俺が使っていたニックネームを知っているんだ?」

「……進堂様の事を調べていたから」


 ……だから何故!?


「お前にとって俺は何なんだ?何故、俺に敬称を付ける?」

「……私にとって進堂様は神様。神様に敬称を付けるのは当然」

「は……?」


 俺の直球ど真ん中に対し、木野は見事なピッチャー返しを決めて来た。

 思わずマップを確認すると、木野は完全な黄色(信者)マーカーになっていた。

 黄色っぽい赤(敵)ではなく、完全な黄色だった。

 ついでに言うと、七宝院も同様だった。


「俺が神様?一体何のことだ?」

「……中学生の頃、進堂様に命を救われた。その日から進堂様は私にとっての崇拝対象」


 中学の頃?俺はもう1度木野の顔をじっと見つめる。

 ………………………………ああ!


「思い出した!飛び降り自殺をした『ノーパン』か!」


 中学時代、飛び降り自殺をしようとした女子を助けたことがあった。それが木野だったのか。それ以降ほとんど顔を合わせていなかったから忘れていたよ。

 その時に名前も聞かなかったからな。


「……ご主人様、なんで『ノーパン』呼ばわりなの?」

「さっきも言った通り、中学時代に木野は飛び降り自殺をしたんだ」


 ミオの質問に答える。


「した?しようとした、じゃなくて?」

「ああ、実際に飛び降りたけど、下の階にいた俺が掴んだんだよ」

「何その偶然……。ご主人様って元の世界でもご主人様なのね」


 『ご主人様』を変な意味を持った名詞として使わないで欲しい。


「その時、スカートが捲れたんだけど、パンツを履いていなかったんだ。だから、俺の脳内では『ノーパン』呼びになったんだ」

「この子が不憫すぎる!?」


 昔から適当な名前を付ける癖があったからな。特に脳内で。

 今は時々しか出て来ない癖だが……。


「どうやら、イジメが原因だったらしい」

「…………」


 イジメと聞き、さくらがとても嫌そうな、悲しそうな顔をしている。


「家が貧乏だったのが原因らしいから、当たり付きの宝くじを渡したんだっけ……」

「当たり付きの宝くじって斬新な表現ね。そして、なんとも強引な解決方法……」

「でも、仁君のおかげで彼女は救われたんですね……。私も覚えがあるから分かります……」

「それで、その方は仁様を崇拝するようになったのですね。納得です」


 いや、マリアよ。そこで納得されても困るのだが……。


 待てよ。木野が俺の事を崇拝しているのは良いとして(あまり良くはないが)、ほぼ同じような状態の七宝院の方はどうなんだ?


「七宝院、お前にとって俺は何なんだ?」

「私にとって、進堂様は神様です」


 今度は七宝院に聞いてみたが、木野とまるきり同じ答えでした。

 何この状況……。


「お前は何故、俺を崇拝する?」

「私は小学生の頃、誘拐されて小屋に閉じ込められていたところを助けてもらいました。目の前で奇跡を起こされたら、崇拝する以外に出来ることはありません」


 ………………………………ああ!

 あったあった、崖から落ちた時に偶然に助けた女子がいた。うん、七宝院の面影があるよ。


「思い出した。あの時の『人質』か」

「ご主人様……、もしかして『人質』が脳内での呼び方?」

「ああ、その通りだ」


 ミオが呆れるように尋ねてくるので答える。


「その子も不憫!」

「ちなみに言うと、誘拐犯の持っていた拳銃に怯えて漏らしていたので、途中から呼び方が『お漏らし』に変わったけどな。今はその座はミオのモノだ」

「必要のない親近感!後、その座は要らないです!」


 我らがパーティのお漏らし担当であるミオが、その道の先駆者と交差する。



「どうやら、敵意は無いみたいだし、そろそろ完全蘇生させた方が良いかもしれないな。質問に虚偽なく答えるのは良いんだが、聞かれたことにしか答えないのは少々面倒くさい」

「そうね。少なくともご主人様に対する敵意はなさそうだし、それでもいいんじゃない?この様子なら嘘もつかないでしょ」

「奴隷化して行動を縛るので、そもそも嘘はつけないと思います」


 マリアの言うように、蘇生と奴隷化はセットにしているので、この後も嘘をつかれる心配はほとんどないだろう。


 その後、さくっと2人を奴隷化し、『アンク』を再度使用しての完全蘇生を実施した。


 完全蘇生された『ノー……木野と『お漏……七宝院は周囲をキョロキョロと見渡し、お互いの姿を見つけたところで驚き、俺を目にした時点で完全に停止した。

 2人は俺を見つめたまま涙を流し始めた。


「進堂様がこんなに近くにいらっしゃるなんて……これは夢でしょうか……?」

「……痛い。夢じゃない」


 木野は迷わずに自身の頬をつねっていた。

 そのアグレッシブさ、嫌いじゃないぜ。


「進堂様が近くにいるのに敵意が沸いてこないと言うことは……、やはり祝福ギフトが使えなくなっていますね。つまり、私達は1度死んだのでしょう」

「……そして、進堂様が蘇生した」

「恐らく、そう言うことなのでしょう。……これは、運が良かったのでしょうか?悪かったのでしょうか?判断に悩みますね」

「……結果オーライ」


 2人して現状を冷静に分析し始めた。

 この様子だと、祝福ギフトに関して色々と気付いているようだな。


「蘇生したばかりでそこまで頭が回るのか。詳しい説明の手間が省けて楽だな」


 俺が声をかけると、2人はハッとしたような顔をして、俺の方に向き直った。

 その瞳は真剣そのもので、俺の言葉を聞き逃さないようにしているかのようだった。


「想像通り、お前達を蘇生したのは俺だ。そして、その事情も一部は知っている。例えば、お前達が何故か俺の事を信奉していることとかだな」

「そ、それも存知でしたか!?もしかして進堂様は私達の事を覚えているのですか?」


 七宝院の質問に対し、俺は首を横に振って答える。


「いや、何となく見覚えはあったが、思い出したのは先程だな。大まかな話は2人を蘇生させた時に尋問して、そこから記憶を辿って思い出した」

「そうですか。忘れられていたのは残念ですが、思い出せていただけたのなら幸いです」

「……不幸中の幸い?」


 いや、そこで疑問形になられても俺には答えようがないよ?


「進堂様、いくつかご確認させていただきたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」


 気を取り直した七宝院が尋ねてくる。


「ああ、なんだ?」

「まず1つ目ですが、私達が死亡した経緯についてお教えいただけないでしょうか?」

「……多分、ゼノンの攻撃」


 意識のある期間が異なるので、2人の間にも若干の情報差がある。

 かいつまんで説明しよう。


「まず、七宝院とシャロンを倒したのは真紅帝国の皇帝、スカーレット・クリムゾンだ」


 七宝院はスカーレットが名乗る前に気絶したからね。

 ここから話さないといけないのだよ。


「彼が噂の……、申し訳ございません。続けてください」

「スカーレットの乱入で会議が中断、その後再開した。会議の最中、グランツ王国のゼノンが乱心して、教皇リンフォースを含め、会議室にいた多くの人間を虐殺した。大聖堂もボロボロにされたし、大聖堂の外ではゼノンに従う化け物2匹とスカーレットが戦闘中だ」


 よし、大分短くまとめられた。


「それでは、ここは何処なのですか?戦闘中というには随分と静かなようですけど……」

「ここはエルガーレから30分ほど離れた場所に設置した仮設住宅だ」

「……カスタールのメイドは、わずかな時間で仮設住宅を建てるという噂は本当だったのですね。いえ、進堂様の関係者なら、それくらい不自然ではありませんか……」


 不自然だよ!


「……もし、私達以外の勇者の現状をご存じだったらお教えいただけないでしょうか?」

「他の勇者達はさっき言った化け物に襲われ、行動不能に陥っている。死者はいないようだ」


 死んではいないが、まともな回復役がいない状況では戦線復帰は困難だろう。


「良かった。死者がいないのならば何よりです」

「……私達は死んでいたけど?」


 意外と辛辣な木野の一言である。


「そ、それを言われると辛いです。ですが、そのおかげで進堂様と接点を持てたので……」

「……結果オーライ」

「そうですね」


 学年は1つ違うようだけど、随分と気心の知れたやり取りをしているな。

 俺を崇拝している者同士、何か繋がりがあったのだろうか?嫌な繋がりである。


「……問題は蘇生方法」

「ええ、その通りです。進堂様、私達を蘇生させた方法はまだ使えるのでしょうか?」

「ああ、一応は何度でも使えるが、誰か蘇生させて欲しい相手でもいるのか?」


 もちろん、蘇生させてやる、なんて安請け合いはしないけどね。


「はい。私達と同じ進堂様の信奉者達に使っていただきたいのです」

「うん?俺の信奉者ってお前達だけじゃないのか?」

「はい。私達を含め、17名の女性が進堂様を信奉しています」

「マジかよ……」


 そこまで行くと普通に宗教である。

 ただし、信奉対象にその自覚はありません。


「蘇生すれば祝福ギフトが消えますので、進堂様に対する敵意も消えます。進堂様の力をお借りするのは心苦しくもありますが、もし進堂様が蘇生して下さると知ったら、彼女達も喜んで自害するでしょう」

「何それ怖い」


 蘇生するのが前提とは言え、喜んで自殺されても困るんですけど……。


「マリアちゃんがいっぱいいる……」


 思わずミオが呟いたのでマリアの方を見てみると、マリアは無言で首を横に振った。

 違うと申すか。


「よく見たら、進堂様の他にも人がいたのですね……」

「……本当。気付かなかった」


 2人は今更ながらに周囲を見渡し、ミオやマリア達の存在に気付いたようだ。

 俺を発見してから、俺以外に注意を払っていなかったことが窺える。


「進堂様、彼女達は進堂様とどのような関係なのでしょうか?」

「あー、一言で言えば、俺の配下だな。俺をリーダーとする集団と言ってもいいだろう」


 それぞれ立場は違うが、全員に共通して言えるのは俺の配下と言う1点だけだ。


「是非、私もそこに加えてください」

「……私もお願い」

「え?もう既に入っているよ?背中に奴隷紋があるだろ?」

「「え?」」


 マリアとミオが鏡を持ってきて、2人の背中が見えるようにする。


 余談だが、2人は現在真っ裸である。

 蘇生させるためには仕方ない事なのだが、驚くべきことは2人とも一切その件について言及していないことだ。今は勇者とは言え、元は普通の女子高生だよね、この2人?


「ほ、本当のようですね……」

「…………」


 やはり、奴隷になると言うのはショックな出来事なのだろう。

 2人とも愕然としている。


「嬉しいです!これで名実ともに進堂様の所有物となれました!ああ!今日は何と良い日なのでしょう!」

「……感無量!」


 違った。喜んでいた。怖い。


「これは何としても他のメンバーに伝えなければなりませんね。きっと皆さん喜んで死に、喜んで奴隷となるでしょう!」

「……間違いない!」

「何それ怖い」


 怖い。


「コホン。それでは最後の質問です。私達は何をすればよろしいでしょうか?蘇生させた、奴隷にしたと言うことは、私達に何かさせたい事があるのですよね?それをお教えください。言ってくだされば、私達は何でもいたします」

「何でも?」

「ええ、何でもです。性奴隷でも肉壁でも何でもです。私達の全てを自由にお使いください」


 明らかに一般的な日本人の発想ではありませんね。

 怖い。


「ところでご主人様、今のところ17名の女性がご主人様の事を信奉しているらしいけど、男性は1人もいないの?ご主人様、女性しか助けないの?」

「ミオ、人聞きの悪い言い方は止めてくれ。そもそも、俺は信奉される程の事をした記憶はない。縁のあった相手に、ちょっとした手助けをしたくらいだ」

「……あれが……ちょっとした手助け?」


 何故か木野が戦慄している。


「補足しておきますが、私達は女性だけで集団を作りましたが、男性にも進堂様に救われた者はいるそうです。そちらの方は集団を作っておらず、学校内にはほとんどいなかったそうですけどね」


 七宝院が俺のフォローをしてくれた。……多分、フォローなのだと思う。


 俺の記憶でも、『ちょっとした手助け』の対象に男女の区別はしていなかったはずだ。

 信奉者になるほどの事をしたつもりもないが、女性しか助けないと思われるのも心外だ。

 今の配下の男女比を考えると、そう思われても仕方のない事かもしれないが……。


「と言うことらしい。大したことをした記憶はないし、誰を助けたという記憶も曖昧だが、男性を助けたことがあるのは間違いない」

「曖昧な記憶ねー。後、どう見ても助けた側と助けられた側に認識の違いがあるわね」


 七宝院と木野がうんうんと頷いている。


「他の信奉者はどんな理由で俺を崇拝しだしたんだ?聞けば思い出すかもしれないな」


 多分、顔を見ても思い出せないだろうけど、エピソードを聞けば思い出す可能性はある。


「本当は本人が直接言うのが1番なのでしょうけど、進堂様がお望みと言うことなら、否と言う子はいないですね。……例えば、川で溺れて流され、滝から落ちたところで進堂様が投げたルアーに引っかかり、一命をとりとめた子がいます」

「ああ、そんな事もあったな。あの時は珍しくルアー釣りをしていて、大物かと思ったら人だったんだよな。ある意味、特大の大物だったな。流石に魚拓はとれなかったが……」


 流石に死にかけの女子に拓を取らせてくれとは言えない。

 あ、そうだ。帰ったら大海蛇メープルの魚拓を取ろう。折角主を釣ったのに、他の事に気を取られて拓を取り忘れていたからな。


「……お望みでしたら、その子の拓を取りますか?多分、嫌とは言わないと思いますよ?」


 七宝院がそんな提案をしてきたが、俺は首を横に振って拒絶の意思を伝える。


「いや、それは主義に反する。アレは大分前の話だから、その女子も大なり小なり成長しているだろう。釣った後、育ってから拓を取るのはルール違反だ」

「出た。ご主人様の謎の主義」


 メープルの場合、LV的な意味はともかく、サイズ的な意味での成長がないからセーフ。


わたくしは主義以前に女子の魚拓を取りたいと言う、ご主人様の発想自体が恐ろしいですわ」

「セラ、俺の元いた世界にはパイ拓と言う言葉があってな、女性の胸に墨を塗り、その拓を取ることを指す。つまり、女性の拓を取りたいというのは、男性にとってそれほどおかしな欲求ではないのだよ。少なくとも、俺の元いた世界ではな」


 俺はセラの胸を見ながら、諭すように言う。

 セラの胸は拓の取り甲斐がありそうだ。


「お、恐ろしい文化ですわ……。ご主人様の元いた世界は魔境ですわ……」


 セラが胸を庇いながら戦慄する。


「セラちゃん、ご主人様の冗談だからね?」

「……では、その様な言葉はないのですわね?」

「いや……、それはあるんだけど……」


 流石のミオもあるモノをないとは言えないようだ。


「やっぱり魔境ですわ!」

「いや、あるにはあるけど、皆がそんな欲求を持っている訳じゃないし、そもそも少数派マイノリティーな性癖だからね。はいそこ、マリアちゃん!七宝院さん!木野さん!自分の胸を見て、どうやって拓を取ろうか考えない!」


 ミオの突っ込みが冴え渡る。

 ちなみに言うと、ミオのセリフ順に微、豊、壁となっております。


 閑話休題。


「話が明後日の方向に飛んだので、そろそろ元の話に戻すぞ」

「ご主人様が話をどこかに飛ばしたくせに……ぴっ!?」


 ミオを黙らせて話を続ける。


「確か、七宝院と木野に何をさせるかと言う話だったな」

「はい。進堂様の望むように私達をお使いください」

「……絶対服従」


 何でも言うことを聞くと言われ、『とりあえず脱げ』と言いそうになった。

 絶対服従と言うのなら、とりあえず剥いてみようと思うのは自然な流れだ。

 しかし、2人は既に全裸なので、これ以上剥くことは出来ない。それをすると、エロからホラーになる。


「2人には今まで通り勇者を続けてもらう」

「しかし、私達の祝福ギフトは死亡と同時に失われました。祝福ギフトなしで勇者を名乗るのは難しいのではないでしょうか?」

「ああ、それは問題ない。俺の方で代替品を用意するからな」


 祝福の残骸ガベージから分離したスキルを与えれば、表向き今までと変わらない行動が出来るはずだ。


「進堂様が出来るというのでしたら、間違いなく出来るのでしょう」

「……それは確実。進堂様、勇者を続けさせる目的は何?」

「簡単に言えば、勇者があまりにも不甲斐ないので、テコ入れをしたい」

「不甲斐ない勇者で申し訳ありません」

「……申し訳ない」


 2人揃ってションボリする。


「魔族が暴れ回ると、観光できる土地が減るからな。いずれは倒さなければならない相手だ」

「相変わらず、仁君は観光者目線ですね……」

《おいしいものたべにいきたーい!》


 俺はさくらとドーラの言葉に頷く。

 観光地の名物料理を食って、名所を巡るのは俺のライフワークの1つだ。


「でも、魔王を倒すのは勇者の仕事だ。俺は魔王退治の英雄になるつもりはない。だから、お前達には勇者をまとめ上げ、魔王討伐を成し遂げてもらおうと思う」

「分かりました。この身に代えても魔王を倒して御覧にいれます」

「……絶殺」

「命には代えるな。ハッキリ言って迷惑だ。優先順位は生き残ることを上にしろ」


 その身に代えられて目的を達成されても、全く嬉しくはない。

 『命を大事に』が基本方針だ。


「進堂様がそうおっしゃるのでしたら、その様にいたします」

「……絶対順守」


 本当にマリアが2人増えたような印象を受けるな。

 異世界で価値観が違うマリアはともかく、同じ学校の生徒がコレと言うのは中々に驚きである。


「それでいい。……ああ、そうだ。この後の話なんだが、お前達にはスカーレットと協力して2匹の化け物と戦ってもらいたい。もちろん、俺もサポートはする」

「分かりました。進堂様の協力が得られるのでしたら万人力です」

「……億人力」


 慣用句とケタが違う気がするのですが……。



 それから、俺達は2人に俺達の持つ能力の概要について説明をした。

 一応、スカーレットを待たせているので、詳しい説明はまた後で、と言うことになった。


 次に2人の祝福ギフトを元にしたスキルを2人に返した。


祝福ギフトと同じ効果、いえ、比較にもならない程に強力になっています」

「……使いこなすのが困難?」


 そのままでは効果が微妙なので、<拡大解釈マクロコスモス>によって強化している。

 祝福ギフトではなくなったので、他の祝福の残骸ガベージを吸収しても強化されなくなってしまったからね。代替手段は必要だろう。


 ついでに有用なスキルをいくつか渡し、安定した戦力になるように調整した。

 大抵のスキルはLV3あれば十分なので、渡したスキルは全てLV3にした。

 最終的なステータスがコチラ。


名前:木野あいち

LV42

性別:女

年齢:16

種族:人間(異世界人)

スキル:

武術系

<剣術LV1><投擲術LV5><格闘術LV3>

魔法系

<回復魔法LV3>

技能系

<忍び足LV3><忠誠LV10>

身体系

<身体強化LV3><HP自動回復LV3><MP自動回復LV3><物理攻撃耐性LV4><状態異常耐性LV4>

その他

十人十色カラーバリエーションLV->

称号:仁の奴隷、転移者、異界の勇者


名前:七宝院神無

LV39

性別:女

年齢:17

種族:人間(異世界人)

スキル:

武術系

<剣術LV5><槍術LV5><格闘術LV3>

魔法系

<回復魔法LV3>

技能系

<統率LV3><算術LV3><忠誠LV10>

身体系

<身体強化LV3><HP自動回復LV3><MP自動回復LV3><気品LV6><根性LV1>

その他

高貴なる引力ノブレス・グラビテーションLV->

称号:仁の奴隷、転移者、異界の勇者


 かなりバランスよく仕上がったのではないだろうか?

 ……ああ、<忠誠>がカンストしているのは無視しているよ。そう言えば、最近マリアの<忠誠>もカンストしてたっけ……。

 俺の配下、やたらと<忠誠>スキルが上がっていくんだよな。


 スキルの話ではないが、称号の『異界の勇者』が消えていない事については少し驚いた。

 称号と祝福ギフトには直接関係がないのか、1度祝福ギフトを得たら永続的に称号が残るのかは不明だ。それほど強い興味もないが……。


 なお、その時の2人の反応がコチラ。


「ああ、進堂様から贈り物が貰えるなんて……。生きていて良かったです」

「……今日は記念日」


 やはり、マリアが増えたようにしか見えん。


次回、ゼノン戦終了。

あ、次回は珍しく仁以外の視点です。あまり頻繁に他者視点をするつもりは無いのですが、今回は仁視点だと簡潔になりすぎるので……。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。