現在、ユニークな店舗や文化が多くの人を呼び込む中央線沿線の中でも、中野、高円寺は特色のある若者文化が花開いた場所であった。中野には1966（昭和41）年に「中野ブロードウェイ」が誕生し、現在は「サブカルの聖地」として絶大な人気を誇っている。また、高円寺は、1960年代後半から70年代にかけて、有名なロック喫茶やライブハウスが開店し、フォークやロックを演奏する若者が集まる街となった。
1966（昭和41）年に開業した「中野ブロードウェイ」は、「昭和通り」（現「早稲田通り」）の南側に建てられた全長140m、幅45m、高さ31mの複合ビル。地上10階、地下3階のビルの低層階（1～4階）はショッピングセンター、中・高層階（5～10階）は集合住宅であり、吹き抜けから続く「中野サンモール」のアーケードで、「中野駅」前と結ばれていた。現在のように「サブカルの聖地」として名を知らしめるようになったのは、1991年（平成3年）のバブル崩壊後のことである。画像は1966（昭和41）年開業当初の「中野ブロードウェイ」の遠景。【画像は1966（昭和41）年】
1980（昭和55）年に入店した、わずか2坪の漫画専門の古書店「まんだらけ」は、全国からマニアが集まる店となり、この後に続くようにサブカルチャー関連の品物を扱う店が増加していった。現在も幅広い分野の趣味、嗜好を満たす個性的な店舗が多く、外国人にも人気の観光地となっている。
現在でも営業を続けるライブハウス「JIROKICHI」 MAP 27
吉田拓郎が1972（昭和47）年にリリースしたアルバム『元気です』のB面には、自ら作詞・作曲した『高円寺』という曲が含まれている。また、『ピンキーとキラーズ』のピンキーこと今陽子は、1975（昭和50）年に吉田健美作詞、杉本真人作曲の『東高円寺』という曲を歌っていた。このように、高円寺は、戦後の1970年代から、さまざまな音楽シーンに登場する街として知られてきた。
当時の高円寺は、吉祥寺、国分寺と並んで「三寺」と呼ばれ、フォーク・ロックの聖地として若者たちが集う場所となっていた。高円寺が「フォーク・ロックの街」となった要因には、JR中央線沿線の中でも物価やアパートの家賃が安かったということもあげられるが、大きなきっかけとして1968（昭和43）年に開店したロック喫茶「ムービン」の存在がある。この店はわずか8坪ほどだったが、新譜の収集に力を入れていたこともあり、音楽に志を持つ人々が集まるようになっていった。常連客の中からデビューして有名な音楽関係者となっていった者も少なくない。
1975（昭和50）年頃に「ムービン」が閉店する前後からロック喫茶やライブハウスが増え始めている。同年には老舗ライブハウスの一つである「次郎吉」（現「JIROKICHI」）が誕生、現在も「稲生座」「ペンギンハウス」などのライブハウスが存在する。こうした歴史や店舗によって高円寺の音楽文化は育まれ、定着し、今日でも文化的側面の一つを形成している。
