2017年ノーベル文学賞にイギリス人作家のカズオ・イシグロ氏が選ばれた。カズオ・イシグロ氏は、『日の名残り』『充たされざる者』『わたしを離さないで』『忘れられた巨人』など多くの作品が日本語に翻訳されており、日本でも親しまれてきた作家だ。また、2016年には『わたしを離さないで』がTBS系金曜ドラマ枠にてテレビドラマ化もされている。
カズオ・イシグロ氏は日本人の両親のもと、長崎に生まれ、5歳のときに渡英。その後、イギリス国籍を取得している。日本では二重国籍が認められていないため、現在日本国籍は持っていないことになる。
カズオ・イシグロ氏の受賞には、「日本人として誇らしい」といった感想がネット上に散見され、またメディアでもカズオ・イシグロ氏が日本にルーツを持つことを強調し、喜々として取り上げる報道が数多かった。
確かに、カズオ・イシグロ氏は、受賞後のインタビューで「作風は日本文化が関係している」「川端康成、大江健三郎の後の受賞ということに感謝している」など日本に結びつけた発言も行っている。そうした報道に間違いはないだろう。
また自身と同じルーツを持つ人物が、なんらかの偉業を成し遂げたことに対して、喜びの声を上げることそのものを単純に否定することも出来ない。それぞれの境遇の中で、自身のルーツに強い思い入れを持つことはいろいろな形である。問題はそれが排外的な行動に移るかどうか、だろう。
だからこそ、ネット上の反応や報道を見ていると、賞賛の声ばかりが聞こえる現状に対してもやもやを覚えてしまう。民進党・蓮舫氏が党代表を辞任する前に取り沙汰された二重国籍問題を思い出さずにいられないからだ。
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