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水原希子は「日本人じゃないから許して」と言ったのか 氾濫続くヘイトスピーチのためのデマ

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水原希子インスタグラムより

 モデルで俳優の水原希子が、著名人にSNSとの向き方を聞く朝日新聞のインタビュー連載「じぶん流@SNS」に登場し、SNSの影響力の大きさだけでなく、その怖さを語っていた。

 芸能人が当たり前にツイッターやインスタグラムなどのSNSを活用するようになる中、毎週といっていいほど様々な炎上や騒動が起こっている。水原自身、SNS2度ほど大きな騒動に巻き込まれている。

 一度目は、2013年に水原が、友人のInstagram投稿に「いいね!」した際に起こった。水原の友人は、中国の現代美術家の写真作品である、天安門に向けて中指を立てる写真をインスタに投稿。水原はその投稿に「いいね!」を押した、というものだ。この「いいね!」が中国への批判と取られて、水原は大バッシングを受けてしまう。その後、水原は中国への批判意図はなかったが誤解を招いて申し訳なかったとする謝罪動画をネットに公開。今回の騒動に対する考えや、アメリカ人の父親と日本で育った韓国人の母親を持つ自身のルーツを説明し、自分は多様な文化的背景によって異なる文化の友人たちを得ており中国への差別意識は持っていない、世界平和を支持していると訴えた。

 二度目は昨年9月に発覚したもので、水原が出演するCM動画が添付されたツイートに向けて、ヘイトスピーチが浴びせられていた件だ。

 水原によれば、一度目の騒動の後から、「水原希子は日本人じゃない」と批判されるようになり、二度目の騒動の時に「なぜ日本人を起用しないのか」という批判が出てきたそうだ。特に後者については、騒動が発覚してから、2週間くらい泣き続けていたこと、自分の知らないところでいろんな人に迷惑をかけていて、申し訳ない気持ちで押しつぶされそうになったことなどを「じぶん流@SNS」で語っていた。

 ネットではこのインタビューに対して、「(一度目の騒動のとき)自ら日本人じゃないって言ってただろう」「日本人のふりをしているくせに、都合が悪くなったら日本人じゃないは通用しない」「日本人じゃないのは事実」といった反応がみられている。

 こうした反応を返す人々は、いまだに一度目の騒動でアップされた謝罪動画で、水原が「日本人ではない」と説明していたというデマを信じてしまっているようだ。ひろゆきが二度目の騒動の際に、この謝罪動画で水原が何を語っているのかを検証する記事をネットにアップしているのだが(言ってないことを言ったことにする頭の残念な人達)、これをみれば分かる通り、水原は「日本人ではないから許してほしい」などと一言も話していない。前述した通り、アメリカ人の父親と日本で育った韓国人の母親を持ち、2歳の時に日本に移住したという自身のルーツを語っているだけだ。

 また、水原が言っている「日本人じゃないという批判」は、水原が国籍上で日本人かどうかという事実とはまた別の話だ。水原が受けてきたように、日本ではコリアンへの差別が未だに強く残っている。「日本人じゃない」と水原を批判する人々は、暗に「お前は韓国人だろう」といって、批判・差別をしているのだ。

 水原は今年3月『NEWS ZERO』(日本テレビ系)でインタビューを受けた際に、子どもの頃、自分のバックグラウンドを受け入れられず恥ずかしいと思っていたことを語っていた。水原は表面化した2つの騒動に限らず、ルーツを理由とした様々な差別・偏見を受けてきたのかもしれない。

 先日、水原はツイッターで「ファッション業界って華やかな世界に見えて、実はとてもジャッジメンタルな世界でもある。未だに強く蔓延る差別は存在してると身をもって感じる。特にハイファッション。こちらは何もしてなくても一方的にジャッジされる感じが辛い」と投稿していた。朝日新聞のインタビューでも「ファッション業界にはセクシュアルマイノリティーの人たちもいて、自分がサポートしない理由はない」と語り、「世界に広がったセクハラ告発の「#Metoo」の動きにもすごく刺激を受けてい」るとも言っていた。

 SNSで差別を可視化された水原が、SNSを使って差別への批判を行っている。SNSに可能性を感じ、発信を続けていく、ということだろう。水原は朝日新聞のインタビューで、SNSは情報の正しさや、誰が言っているのか、人を見極める力が一番大事だとも語っていた。「差別すること」を目的にしているとしか思えない形で情報を曲解したり、デマを流したりする人びともいる。こうした情報に踊らされて、結果的に自身が差別に加担してしまうことのないよう、氾濫する情報との接し方には気をつけたいものだ。

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