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【社説】

米軍機の窓落下 重大事故の認識を欠く

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のCH53E大型輸送ヘリがまた、窓を落下させた。大惨事につながりかねない事故だ。政府は同型機の飛行停止を申し入れ、安全管理を徹底させるべきだ。

 落下した窓は縦五十八センチ、横四十七センチのプラスチック製で重さは約一キロ。被害は報告されていないが、決して軽視してはならない。

 落下地点は当初「沖縄本島の東沖」とされたが、米軍によれば、乗員が飛行場に戻って窓が無いことに気付いたという。陸上に落ちた可能性も否定できない。

 事故があった八月二十七日夕から県や市への通報が二日もかかったのも重大な問題だ。米側から日本政府への連絡が一日後、防衛省も事実確認などに一日かけていた。日米間には、米軍機からの落下事故は速やかに地元に通報する合意があるにもかかわらずだ。

 さらに、事故を受けて県などが同型機の飛行停止と原因究明を求めたのに対し、岩屋毅防衛相は早々に飛行自粛まで要請する考えはないことを表明した。「被害情報がない」との理由だ。米軍、日本政府とも住民の生命と財産を守る使命感、事態の重大さへの認識が著しく欠けている。

 沖縄県の統計では、本土復帰後昨年末までに米軍機からの部品や搭載物の落下は七十件に上る。

 CH53Eヘリは二〇一七年十二月、体育の授業中の児童がいた宜野湾市の小学校校庭に重さ八キロ近い金属製の窓を落とした。

 その六日前には近くの保育園でも同型機のものらしい部品が見つかり、ことし六月には浦添市の中学のテニスコートにゴム製のテープを落とした。生徒の足元から数十センチの場所だった。同型機は一七年十月、沖縄県東村の牧草地に不時着し炎上、大破している。

 なぜこうも事故が続くのか。CH53Eは一九八一年から運用が始まり、老朽化が進んでいる。今回落ちたのは機体後部に固定されている窓だ。通常は落ちるはずがないと専門家はみる。原因には、米軍内の整備体制の不備も絡んでいるのではないか。

 今回も政府は米軍に実効性のある再発防止策を講じるよう申し入れたというが、形だけに終わらせてはならない。事故頻発の背景として、米軍と日本政府に「沖縄だからある程度の負担は仕方ない」との誤った考えがあるのなら見過ごせない。県民の基地不信は増幅している。整備不良の軍用機が頭上を飛ぶことを許してはならない。政府には真摯(しんし)に対応する責務がある。

 

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