jin-jour(ジンジュール) |人材育成、リーダーシップ、モチベーション、メンタルヘルス対策など 人事の視点から、働く人と会社の関係を元気にする情報を発信

ログイン
MENU

メニュー

×

須藤元気氏インタビュー [2011.05.16]

須藤元気氏インタビュー(1) 「マットに上がった瞬間にマインドチェンジができれば、結果は必ず出せる」


元K-1ファイターは、新しい時代の指導者として拓大レスリング部を常勝集団に変貌させた。「監督にできることは、選手の士気を高めることだけ」と語る須藤元気監督の“今どきの若者”に120%の力を発揮させるその秘密とは――。(文:中村陽子)

■「勝ちたい」「でも負けるかもしれない」
振り子のように揺れる心に打ち勝つ方法

かつて格闘技の世界でその名を馳せ、“変幻自在のトリックスター”と呼ばれていた須藤元気さん。独自のスタイルで会場を沸かせたK-1の元スターファイターだ。2006年の大晦日、人気絶頂のときに引退。08年に母校・拓殖大学レスリング部の監督に就任。昨年は、チームを初の学生団体4冠に導いた

名選手は名監督にあらずといわれるが、須藤さんは就任1年目から結果を出し続けている。古いタイプの指導者は「今どきの若者は心が弱い」と悩む。けれど須藤さんの口からは、一言もそんな言葉は出てこない。彼は新しい時代の指導者だった。

「学生は、社会人の選手よりも精神的に不安定です。普段は強い選手でも、いざ試合となると力を発揮できないことは意外と多い。それは、気持ちが揺れているからです。対戦相手との間にさほど実力の差がないなら、『自分は勝てる』と迷いなく思えれば、結果は出せる。けれど『勝とう』と思った瞬間に、『負けたらどうしよう』という迷いも同時に湧いてきてしまうものです。『勝ちたい』『だけど負けるかもしれない』という相反する思いの間で振り子のように揺れてしまう。

だけど、それはそれでいいんです。だれもが心の中は揺れている。それが人間です。試合の前日まで、『もしかしたら負けるかも』という心の揺れがあってかまわない。大切なのは、試合の瞬間。マットに上がった瞬間に『勝てる』とマインドチェンジができれば、結果は必ず出せるのです

■場の空気を味方に付けるか、敵に回すかで
力がどのぐらい発揮できるか変わる

「監督としての唯一の仕事は、試合当日に選手たちの士気を高めることだと思っている」という須藤さんは、「絶対に勝つんだ」「俺たちは強い!」という空気を見事なまでに作り上げる。

昨年の全日本学生レスリング王座決定戦。団体戦決勝の対戦相手は早稲田大学だった。実力は相手のほうが上。そこで須藤さんは、奇策に出た。

「試合前に部員全員をマットの上に乗せて円陣を組み、『勝つぞ! 俺たちの強さを見せてやろう』とコールしました」

すると会場の空気が変わった。会場全体が、拓大レスリング部を応援する空気になったのだ。迷いのない「自分は強い」という気持ちに加え、場の空気という援軍を得て、拓大レスリング部は団体優勝を果たした。120%の力を発揮できた結果だった。

「戦いは、場を制した者が勝つ」
5万人もの観客の前で戦った経験をもつ須藤さんの言葉には重みがある。彼の現役時代の入場パフォーマンスは異彩を放っていた。古代マヤ文明の王として神輿に担がれて入場したこともある。それは、自分を鼓舞しつつ、場を制することを強く意識したものだった。

「お客さんが僕のパフォーマンスを面白がってくれると、会場全体がアウェイではなくホームに変わる。みんなが僕を勝たせようと後押しをしてくれる」

たとえ窮地に陥っても、須藤応援団と化した場の空気が反撃への意思と力を蘇らせてくれる。これほど強い味方はない。

■今この瞬間の「自分ならできる!」という思いが
目の前の現実を作り上げる

現実は、意思の持ち方ひとつで変わる。その瞬間、どのように自分の意思を持つかがすべて」と須藤さんは語る。「強さも、やはり意思である」とも付け加えた。

人は、何かに挑戦しようとするとき、そこに根拠を求めてしまうものだ。「過去に試合に勝った経験がある」という根拠があれば、「自分は強い」と己の力を信じることはたやすいだろう。けれど根拠ばかりを求めていては、「実績のない自分には、無理かもしれない」とすぐに弱気な心が顔を出す。

「だけど僕は思うんです。最初に『自分は強いんだ』という意思があってこそ、勝てるのだと。過去が“今”をつくっているわけじゃない。今この瞬間の『勝つんだ』『自分にはできるんだ』という意思が、目の前の現実を作り上げていくのです」

選手たちとの間で、あるルールを取り決めている。

「人間の頭の中では1日に6、7万回もの考えが、浮かんでは消えているといいます。『自分なんて……』という否定的な考えも、繰り返し浮かぶ。だからルールを決めました。『否定的なことを言わない』というものです。言葉には力があります。『自分は強い』『自分ならできる』と言葉にすれば、強い意思へと変えることもできるのです」

“いまどきの若者”だけが精神的にもろいわけじゃない。人はみんな強気な自分と弱気な自分を抱えている。目の前に成し遂げたいことがあるのなら、気持ちをコントロールすればいい。
須藤元気さんが伝えているのは、自分自身の弱い心との闘い方だ。そして、拓大レスリング部は常勝軍団となった。

須藤元気(すどうげんき)Profile
1978年東京生まれ。拓殖短期大学卒業。短大時代には全日本ジュニアレスリング優勝。卒業後に渡米し、サンタモニカ大学でアートを学びながら格闘家としての修行を続け、帰国後に逆輸入ファイターとしてプロデビュー。UFC-J王者を経て、K-1などで活躍。2006年大晦日のK-1を最後に現役引退。作 家、タレント、ミュージシャンなど幅広く活動しながら、2008年、母校拓殖大学レスリング部監督に就任。『今日が残りの人生最初の日』(講談社)、『風 の谷のあの人と結婚する方法』(幻冬舎文庫)など著書多数。自ら立ち上げたパフォーマンスグループ「WORLD ORDER」のPVが国内外で話題となるなか、新曲「MACHINE CIVILIZATION」以降の作品のダウンロードフリーを宣言して注目を集めている。http://www.worldorder.jp/


管理職のeラーニング講座、お試しできます

無料トライアル受付中

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

シリーズ記事

キーワード

ログイン

×

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品