第131話 小人の勇者と未来予知
先に行っておきますが、本章で仁が
何故ならば、仁は今、
フリーの観光中だったら滅ぼしてました。
日が落ちたエルバレーの街で夕食を済ませ、街を行く人の数もまばらになってきたところで、本日最後の目的地へと向かう。
表通りを少し外れ、若干怪しげな雰囲気の漂う区画へと赴いた。
「考えてみれば、結構久しぶりだよな。ここにくるのも」
俺が向かっているのは、皆大好き奴隷商である。
「えーと、私の知っている限りでは、エステア王国でケイトちゃんを買った時以来かしら?」
「それ以降は大体メイドが購入していますものね」
「仁様に直接買っていただけた私は幸せ者です」
俺が奴隷商で奴隷を購入するのは、エステア王国で探索者見習いを買った時以来である。
それ以降も奴隷を買う機会はあったのだが、『奴隷商で』と言う但し書きが付いた場合にエステアまで遡る。
セラの言う通り、それ以降は全てメイド達が奴隷商に行っているからな。奴隷メイドが新しい奴隷を買うと言うのは、もはや恒例行事以外の何物でもない。
ちなみにさくらとドーラを宿に送り届けた後である。
夜の奴隷商なんて、女子供の行く場所じゃないからな。
……残ったのも全員女で子供である件については目を瞑る。ほら、全員元奴隷だから……。
「折角メイドのいない土地に来たんだから、久しぶりに俺が直接行こうと思ったんだよ」
メイド達はアドバンス商会を立ち上げ、その版図を広げている。
しかし、基本的に俺と仲良くない国には立ち入らない方針だ。故にエルディア方面には手を出していない。
そして、俺がいずれ行くであろう
エルガント神国はエルディア方面だし、エルディアを滅ぼしてすぐに俺が向かうことが確定したから、メイド達はノータッチなのである。
「ご主人様が直接向かうってことは、それなりに面白い娘がいるって事よね。楽しみだわ」
「俺もアルタのお勧めに従っているだけだからな。どんな奴がいるのか楽しみだよ」
俺とミオは面白さ重視であえてマップによる事前確認を封じているので、どんな奴隷がいるのかは知らない。アルタからの報告を受け、気紛れに直接行くことを決めただけだ。
マリアとセラは面白さよりも俺の護衛を重視しているので事前に確認しているが、俺の楽しみを奪うようなことはしないので口を噤んでいる。
マリアが若干不機嫌そうな顔をしているのが少し気になるが……。
しばらく歩き、奴隷商に到着した。
エステアの高級奴隷商とは異なり、こちらは普通の奴隷商のようで、それ程綺麗ではない。
中に入り、アルタの言う通りの注文を出して奴隷が連れて来られるのを待った。
「こちらの5名がお客様のご要望に合った奴隷達となります」
そう言って連れて来られた5名の奴隷をソファ(これだけは何処に行っても必ずある)に座って眺める。
ここまで来たら、ステータス確認を解禁だ。
右から順にステータスを確認して、3人目の少女で目が止まる。
その少女は目に凄い隈を作った7歳くらいの容姿で、
なるほど……。
名前:リコ
LV2
性別:女
年齢:15
種族:
称号:
スキル:<封印LV10><
少女は
現地勇者って少女限定なんかな?
それはともかくとして、面白い事にこの勇者、<封印LV10>を食らいながらしっかりとユニークっぽいスキルを持ってやがる。
<封印LV10>は勇者が生まれると同時に付与され、持っていると<封印>のレベル以下のスキルは無効化されるし、新たにスキルを覚えることも出来なくなる。
しかし、産まれると同時に持っていた
《仁様、彼女が持っているのは、私が習得しようと考えていた予知系のスキルなのです》
そこでマリアから念話があった。
ユニークスキルを確認してみる。
<
自身や周囲の人間に迫る未来の危機を予知できる。基本的に回避不能。ただし、危機に対して一定以上の力を持つ者が関与した場合、その未来が捻じ曲がることがある。
《ああ、なるほど。自分と同じ勇者が、自分の欲しがっていた予知系のスキルを持っていたから、マリアは微妙な顔をしていたんだな》
《!? 気付いていたのですか!? ……はい、少々嫉妬をしてしまいました》
俺に心情を見抜かれたことで、マリアが居たたまれないような表情をする。
《危機回避に特化した予知スキルですので、仁様をお守りするにはこれ以上ないシロモノだと思うのです。アルタに確認した所、仁様はもちろん、私にも未来を捻じ曲げることが出来るようですので》
後半の『一定以上の力を持つ者』に、俺やマリアは該当するようだ。
《だからこそ、彼女は何としてでも購入すべきかと思われます》
《そうだな。色んな意味で買わないと言う選択肢はないだろうな》
勇者で予知系のスキル持ち、買わない理由などどこにもないだろう。
と言う訳で、俺は店員にここにいる5名を購入することを告げた。
「よ、よろしいのですか?5名となると多少お値段も張りますが……?」
「ああ、構わない。身なりを整えて連れてきてくれ」
「はっ!直ちに」
折角売り先が決まった曰く付きの奴隷達だ。店員もチャンスを逃さないように大急ぎで支度を始める。
実はこの5名の奴隷達は、「曰く付き、縁起の悪い来歴有り」と言う条件で呼び出した。
勝手な推論ではあるが、予知スキル持ちの勇者であるリコはその予知によって周囲の人々から気味悪がられていたのではないだろうか。
他の4名を同時に買うのは、本当の目的を誤魔化すためであると同時に、全員がそこそこレアなスキル持ちだったからだ。後、赤(敵)マーキングじゃなかったからだ。
逆にこの5人以外は全員が赤マーキングなので購入する理由はない。
しばらくして、身支度を整えられた5人が連れて来られた。
俺は店員に5人分の料金を支払い、<奴隷術>による契約を施させる。
その間、リコはずっと呆けたように口を開き、状況についていけていない様子だった。
「なんで?私は誰にも買われないで死ぬはずだったのに……」
誰にも聞こえないようなリコの呟きは、俺の耳にははっきりと届いた。
奴隷商を出て、物陰から『ポータル』でカスタールの屋敷へと転移する。
リコ以外の4人は『ポータル』に驚いていたが、リコだけは上の空で場所が変わったことにも気付いていなかった。
4人をメイド達に任せ、俺達はリコから話を聞くことにした。
「それで、お前はいつ、どこで死ぬ予定だったんだ?」
「!? な、なんでそれを……?ま、まさか貴方も未来が……?」
俺のセリフに尋常じゃない程に驚くリコ。
「いや、俺には未来がわかる訳じゃない。ただ、お前に死を予見する力があることだけは知っている。その未来を覆せないと思っていることもな」
リコの諦めの表情、それは今まで自身の予知が外れたことが無いが故のモノだと考えている。いくら死の未来が見えても、それを覆せたことが1度も無いからこそ、全てを諦めたような表情をしているのではないだろうか。
「今まで……。1度も未来は変えられませんでした……」
「だけど今回、自分が死ぬ未来が変わったんだろう?」
「……その通りです。私は今日の深夜、奴隷商を襲った賊に殺される予定でした。どんなことをしても私が買われることはなく、何も出来ぬまま殺されるはずだったのです」
今度は困惑の表情を浮かべて俺に聞いてくる。
「貴方はいったい何者なのですか?女神様の使いなのですか?今まで、このような力を私に与えた女神様を恨んでいたのに……」
ちょっと良い事を聞いたな。
リコはエルガント神国にいたけど、女神を信奉していた訳では無いようだ。
洗の……論破する手間が省けたな。
余談だが、『女神様の使い』の辺りでマリアが手に力を込めていた。
気にしすぎだって……。
「俺は女神とは無関係だよ。お前の予知する未来は、一定以上の力がある者だったら、捻じ曲げることが可能なんだ。今まで、お前の周囲にはそれが可能な者がいなかっただけだ」
「捻じ曲げ……られる?」
寝耳に水と言ったようにポカンと口を開けるリコ。
「強い力があれば、望まない未来を拒絶することが出来るってことだ」
「つよいちから……」
俺の言葉を聞き、リコの中に小さいけれど闘志の炎が灯ったのを確信した。
よし。久しぶりにこのセリフを使うか。
「力が欲しいか?ならば俺に従え」
「ちから……。欲しいです……。望まぬ未来をねじ伏せるちからが……」
そう言ってリコは悪の親玉っぽい雰囲気を纏っている俺の前で跪く。
奴隷なので、従うも何もないんだけど、能動的に忠誠を誓っているのと、奴隷として無理矢理いう事を聞かせるのでは、効率が全然違うからね。
ミオは『力が欲しいか』の辺りで口とお腹を押さえて笑うのを全力で我慢していた。
マリアとルセア(転移してきた時に駆けつけてきた)はリコが跪いた辺りで満足そうに頷いていた。
「良いだろう。ならば、まずは封じられた力を解き放とう」
そう言って、俺は跪くリコの頭に手をかざし、<封印>を回収する。
ミオは笑いをこらえすぎて涙目だ。
「か、身体の奥から力が沸いてきます」
マリアやシンシアは<封印>を取り除いただけではそこまで変化を感じなかったようだが、リコはその違いに気付いたようだ。
名前:リコ
LV2
性別:女
年齢:15
種族:
称号:仁の奴隷、
スキル:
武術系
<剣術LV3>
魔法系
<光魔法LV3>
技能系
<鑑定LV1><魔物調教LV1>
身体系
<身体強化LV2><HP自動回復LV2><MP自動回復LV2><心眼LV1><覇気LV3>
その他
<勇者LV3><
うん?基本的な<勇者>スキルセットの他に、もう1つユニークっぽいスキルがあるぞ?
<
五感が鋭くなり、反射神経が向上する。処理能力も上がるので、上がった五感に振り回されることも無い。
ふむ……。こっちはレベル制だったから、<封印>されていたって事かな。
<封印>の解除を実感できたのも、このスキルの影響かもしれないな。
……なんて言うか、とんでもない掘り出し物だな。
まあ、昔から掘り出し物と巡り合う確率は高かったけどね。
リコのステータスを確認した後は、リコの身の上話を聞くことにした。
リコはエルガント神国の小さな村に産まれ、幼いころから<
マリアと同じく、<封印>のせいで物覚えが悪いと判断されていたため、余計に風当たりは強かった。
奴隷として売られることが決まったのは、父親の死が原因だそうだ。
早くに母親を亡くしていたリコは、父親の死を予知し、何とか回避しようと気味悪がられるのを承知で手を尽くした。しかし、結局は回避できなかったばかりか、父親の死の原因はリコではないかと言う噂まで立ってしまった。
村の者達はそんなリコを気味悪がり、ついに奴隷商に売ることを選択した。
リコ曰く、村の人々に対して恨み言を言うつもりはないらしい。
過去の自分を振り返り、あの状況ならば捨てられて当然と考えてしまったのが理由だ。
だからと言って和解を望んでいる訳ではないらしく、過去の事として割り切って生きていくつもりのようだ。
「未来を変える力を持たなかった私がいけないのです。強く……ならないと……」
話を終えたリコは、強い意志の宿った瞳でそう呟いた。
明らかに先程までよりも闘志の炎が強くなっている。
リコの話を聞き終わったので、今度は俺達の事情を説明する。
……と言っても、細かい部分の説明はメイド達に任せようと思う。
どうせしばらくはリコの教育期間に充てられる予定だからな。
しばらく教育をしたら、リコを俺達の旅に同行させようと思う。
シンシアの時もそうだったが、現地勇者は色々と癖が強いから、しばらくは同行させて様子を見ておきたいんだよな。
丁度、リコは護衛向きの能力を持っているから、サクヤ専属の護衛とするのも良いかもしれない。……まあ、サクヤの事はタモさんが護衛しているんだけどね。
と言う訳で、俺達はざっくりとした能力の説明と、リコの能力や今後について説明するに留めておいた。
「私がこの世界の勇者……ですか?勇者なら、強くなれるのですか?」
「ああ、俺の知る限り、この世界の住人としてはかなり強くなれるぞ」
「それなら、別に構いません」
具体的なことは聞かず、『強さ』に直結しているかだけを問うてきた。
シンシアは対魔物の戦闘狂だが、リコからもそれに近いモノを感じる。
「強くなれるなら、どんな修行もやってみせます。絶望的な未来なんかに、負けたくありません」
どうやら、俺が闘志の炎にくべた薪は、俺の思っていた以上に強く燃え上がってしまったようだ。良きかな、良きかな。
リコをルセアに預けて、俺達はエルバレーの宿に戻る。
一応、リコもメイド扱いで同行させる予定なので、メイド修行も並行して行うらしい。
リコとしてはメイド修行なんていいから、戦闘訓練をしたいと言ったのだが(シンシアの時も見た気がする)、ルセアに威圧されて大人しくなった。
ルセアが俺に躾・教育が不十分な
お留守番をしていたさくらとドーラに事の顛末を話す。
「と言う訳で、予知能力を持った勇者が新しく配下に加わったことになるな」
「予知……ですか……。凄いスキルですね……」
急に出てきた超常的なスキルにさくらも驚いているようだ。
「そうだな。自身や周囲の人間の危機しか予知できないみたいだけど、普通に考えればそれでも十分だよな。後は、その予知を回避できるだけの力があれば完璧だ」
《すごーい!》
多分、ドーラはよく分かっていない。
「それにしてもご主人様、リコちゃんに忠誠を誓わせた時、かなりノリノリだったわよね」
ミオがニマニマと笑いながら俺の方を見てくる。
ええ。全力でノリノリでしたよ。
「ミオちゃん、ああいうのは1番最初が肝心なのです。あのやり取りで、リコさんは仁様が忠誠を誓うのに相応しい存在であると魂に刻み込んだはずです。私も久しぶりに良いものが見れました」
「……」
満足そうに言うマリアに、ミオもコメントできないようだ。
あれだな。ほぼ最初から信者だったマリアが言うと説得力があるな。
一応言っておくと、リコは
「……何にせよ、リコは強くなるだろうな。目的と適性が完全に一致しているのだから」
運命を捻じ伏せられるほど強くなりたいと願い、それを叶えるに相応しい
金狐の常夜に引き続き、未来の最強候補の1人になるかもしれない。
翌朝、ベッドから降りて窓を開けると、昨日向かった奴隷商館のあった方角から煙が立ち上っているのが見えた。
マップで確認した所、まさしく件の奴隷商館が焼けた跡のようだ。
リコの言ったように深夜の内に賊が忍び込み、最終的に火を点けたと言うことだろう。
生き残りは……いない。
犯人達はすでに捕まっているようで、これから捜査や尋問が始まるのだろう。
「はは……、これがリコの予知の結果と言う訳か。中々に強力だな」
俺が購入しなければ、リコも賊に殺されていたと言うことだ。
ギリギリセーフ……。
恐らく、俺が焼けた奴隷商最後の客だ。
無用な面倒事に巻き込まれる可能性があるので、とっととエルバレーの街を出発することに決めた。大臣達も1日休んだおかげで復活していたからな。
エルジャガー……間違えた。エルバレーを出発して、1週間がたった。
地図に当てはめて考えれば、そろそろ神都が見えてくる頃だろう。あ、もちろん
先触れが余計な事をしでかした街を避けて大回りしているので、神都までは馬車で後3日くらいはかかる見込みだ。
ちなみにこの1週間、何度も街に立ち寄ったが、俺達の正体はバレることが無かった。
各街にも奴隷商は有るのだが、エルバレーほど面白い奴はいなかったので、購入はメイド達に任せることにした。
奴隷購入に関して、メイド達にはかなりの実績があるからね(5000名以上)。
「結局、森の中を突っ切って短縮した分、遠回りして時間を使ってたら世話ないよな」
「ゴメンね。私もエルガント神国がここまで明確に敵意、いえ殺意を向けて来るとは思わなかったの。嫌悪感はあっても、常識でグッと堪えるモノだと思ってたのよ」
サクヤもエルガント神国の対応は予想外だったようで、申し訳なさそうにしている。
最悪でもここまでされる可能性がある、と言う予想を余裕でぶっちぎっていたそうだ。
「サクヤちゃんが悪い訳じゃないですよね……?」
「さくらちゃん、ありがと。でも、甘く見てたのは事実だから……」
さくらの励ましに少しだけ笑顔を見せるサクヤ。
「こんな事なら、
「色々、面倒な事になりそうだけどね……」
しかし……。
「面倒な事なら、
「……言われてみたら、その通りね」
現時点でも十分に面倒な状況なので、色々と今更なのである。
「首脳会議の話が出た最初の時、サクヤは『他国の領空を精鋭騎士団で突っ切るのは、色々と問題がある』って言ったけど、そもそもそれがおかしい」
「どうゆう事?」
「呼んだのはエルガント神国側なんだから、こちらの移動手段に文句は言わせないぞ、くらいの強気で臨んでも良かったんじゃないか?」
「お兄ちゃんじゃないんだから、流石にそこまで強気にはなれないよ……」
俺の強気発言にサクヤも苦笑する。
実際問題、来いと言うのなら、それに相応しい誠意は見せるべきだと思うんだよな。
エルリムの街のような、クソ以下の対応なんてもってのほかだ。
「おいおい、エルガント神国には会議に行くのに、そんな弱気でどうするんだよ」
「首脳会議で弱気になるつもりはないけど、無駄に敵を作るつもりもないからよ。会議の前から挑発的な事を言っても、誰も幸せにはならないからね」
個人的には会議の前から強気の姿勢を見せて、自身の立場や主張をアピールしていくというのも有りだと思うけど……。
交渉自体はサクヤに任せているから、あまり口を出すべきじゃないかな。
「会議で弱気になるつもりが無いのなら良い」
「大丈夫よ。任せておいて。お兄ちゃんやカスタールに不利益をもたらすような条件を飲むつもりは全くないから」
「ああ、それは任せるよ。サクヤが何を言っても、俺達で守るから安心しろ」
「そっちもお願いね」
言ってしまえば敵地で強気な発言をするのだ。身の危険が無い訳ではないだろう。
交渉をサクヤに任せる以上、その身の安全を確保するのは俺達の仕事だ。
そんな話をしていると、エリアが切り替わり、エルガント神国の神都がマップで確認できるようになった。
今回は護衛と言うことも有り、躊躇なく高レベルの存在や、特殊なスキルを持った者を確認していく。
「ぶほっ!?」
「うぇ!?どうしたのご主人様、いきなり噴き出して!」
思わず吹き出してしまった俺を見て、ミオが変な声を上げる。
「あ!そうかマップ……。でも、一体何が……?」
「……危険人物を検索したんだよ」
すぐに俺が噴出した理由を察したミオだが、具体的に何を見て驚いたのか分かっていないようだったので補足する。
「なるほど。どれどれ……」
ミオだけでなく、他のメンバーも同じように検索をかけているようだ。
「何と言うか……、とても多いですね……」
《すごいのがいっぱーい!》
「ええ、厄介なスキル。不自然な称号。
「仁様の護衛として、警戒レベルを引き上げないといけませんね」
皆が口々に言うように、エルガント神国神都エルガーレには、あまりにも多くの危険人物、要注意人物が滞在していたのだ。
それは一般市民にもいるし、首脳会議に来た王侯貴族にもいる。もっと言えば、エルガント神国首脳陣にもいるのだ。
これ、全員を紹介していたら日が暮れるな……。
「さて、とりあえず敵対の可能性が高い奴だけピックアップしていこうか」
「はい。私はグランツ王国の国王が敵対する可能性が高いと思いますサノキア王国で馬車襲撃計画もありましたので」
マリアが挙げたのは、首脳会議に参加しに来たと思われる、グランツ王国の国王であるゼノンと言う男だ。
確かにこの男はどう考えてもヤバい。戦力的にもさることながら、何よりも種族がヤバい。
名前:ゼノン・グランツ
LV169
性別:男
年齢:9
種族:人間(憑依者)
スキル:
武術系
<剣術LV10><槍術LV10><弓術LV10><盾術LV10><格闘術LV10><騎乗戦闘LV10>
技能系
<統率LV10><鼓舞LV10><乗馬術LV10>
身体系
<身体強化LV10><跳躍LV10><索敵LV10><HP自動回復LV10><MP自動回復LV10><気配察知LV10><毒耐性LV10>
<
称号:グランツ王国国王、グランツ王国初代国王
ゼノンの種族は人間だ。ただし、後ろに『憑依者』と付く。
年齢が9歳であること。レベルやスキルレベルが異常に高い事。称号に両立している『グランツ王国国王』と『グランツ王国
<
魂の形が近い者の肉体に憑依することが出来る。肉体の主導権は精神力の強い者が持つ。
つまり、ゼノン・グランツ……いや、名も知らぬグランツ王国の初代国王は、代々自分の子孫に乗り移って生き長らえていると言うことなのだろう。
レベルやスキルと言うのは肉体ではなく精神、魂に付与するもののようで、憑依した後も引継がれるのだろう。そうでなければ、このスキルレベルはおかしい。
「まあ、読み取れる情報だけでも、色々やらかしているのは確実よね」
「そうだな。明らかに普通の感性は持っていないだろうな。確かに、敵対しそうだ……」
ミオと2人で頷き合う。
どう考えても普通の人生を送って来た人間には見えない。
決め付けるのは良くないが、普通に話が通じる相手か疑問になるラインナップである。
以前、グランツ王国の話が出た時、9歳の子供が王位に就いたのには、「魔族が暗躍していたから」と言う可能性を挙げたが、その可能性は低くなった。
本人単体で憑依できるのだから、王位を譲るのも簡単だろう。
逆に、<
「首脳会議に出るだろうし、関わらないで済む可能性が0だからな」
「王族だけど、女性じゃないからお兄ちゃんの琴線にも触れないしね」
「サクヤ、『女性の王族だったら配下にしていた』みたいな言い方するの止めてくれないか……。もし、俺達の予想通りの存在だったら、男女関係なく配下になんかしないぞ」
「そうなの?」
サクヤの俺に対する認識が酷い。
女性の王族を数多く配下にしているのは認めるが、その条件の中に人間性は含まれるからな。王族女性なら誰でもいい、なんて事は絶対に言わないぞ。
元エルディア王女のクリスティアのように、チャンスがあっても配下にしない事もある。結果的にサクヤの奴隷、つまり俺の配下になったが、殺しても構わなかったくらいだからな。
「もちろんだ。やり過ぎた奴を配下にするつもりはないからな」
「ああ。確かお兄ちゃんは真っ当な相手にしか、真っ当な対応をしないんだよね」
「そう言うことだ」
出会った時点で(俺判定で)やり過ぎていた者を配下にしたことはないし、するつもりもない。ただし、口止めのために奴隷にする場合は除く。
「可能性は低いけど、ゼノンが真っ当な奴だったり、こちらと敵対する意思が無いのならいい。でも、もし明確に、直接的に敵対したとしたら、容赦なくぶっ潰すつもりだ」
「出来ればやり過ぎないで……」
サクヤが半分諦めたような顔をして言う。
「スキルレベルやステータスが高いとはいえ、俺達はそれを上回っているから、単純な戦いなら負けることはないと思う。ただ、相手は長く生きた人間だ。どんな手を打ってくるかわからないから、油断だけはしないようにしよう」
「今回は大臣達もいますから、今までと同じようには行かないかもしれませんわね」
セラの言うように、今回は配下ではない大臣達が一緒だ。
彼らを守りながら厄介な相手と戦うのは、中々に厳しいものがある……かもしれない。
「ああ、だから首脳会議の際には、護衛のメイド騎士も最高レベルの精鋭を連れていくつもりだ。既にルセアには話を通してある」
「さすがご主人様、抜け目ないわね」
当然の事ではあるが、メイド騎士の中にも強さの上下は存在する。
首脳会議の際には最高レベルのメイド騎士を連れていき、大臣達の護衛も万全の状態にしておきたい。
……完全に、首脳会議が敵地扱いだよな。
3人目の勇者登場。またしてもロリ。いや、中身は15だからロリ判定は微妙?
まだ先の話になりますが、エルフの勇者(多分出る)は結構な年齢にするつもりです。
後、人魚の設定を一部変更しました。
①「肉体の成熟が早い」を「王族のみ、肉体の成熟が早い」に変更。
②<魅了の歌声>をレベル無しスキルからレベル有りスキルに変更。
①はロリ人魚が出る可能性を残す為。②は同じ人魚でも種族固有スキルで差を出す為(竜人種の《竜魔法》と同じ)です。