TSUNAGARI代表の勝又氏が語る誹謗中傷と災害ボランティアの意義
今回の記事では、バッシングをもっとも受けている張本人であるTSUNAGARI代表の勝又氏にお話を伺った。
TSUNAGARI代表の勝又三成さん。自身も宮城県で被災し、東日本大震災被災直後にボランティア団体TSUNAGARIを設立。熊本地震では前震翌日から御船町・益城町の現地に入り、避難所運営サポート・物資の受け入れ仕分け運搬・ガレキ撤去などのボランティア活動を行っている。その傍ら、全国で講演活動も行なっている。
TSUNAGARIに向けられたネットでの誹謗中傷。代表勝又氏が誹謗中傷について思うこと
ーー勝又さんって、インターネット上ではかなり批判されていますよね。そのことに関してはどうお考えですか?
ネットで調べたら出てくる、熊本地震に関しての『押しかけボランティア』とか『御船町を乗っ取る』のことでしょうか?
もし本当に、僕の団体が怪しいだけの団体だったならば、これほど叩かれたらもう表に出ようとは思わないです。
何より、そもそも噂が事実じゃないので気にしていません。
どうしても僕が怪しい、信じられないと思うならば、僕に直接聞いてくださってもいいし、現場に来てTSUNAGARIの活動をその目で見て頂きたいと思います。
TSUNAGARI代表の勝又氏に『朝鮮人って本当ですか?』と直接聞いてきた男の子
ーーネットだけでなく、直接何か言われたことなどはありますか?
あります。ホームページ上でメールがきて『あなたの団体、怪しいことしてるんでしょ。代表が朝鮮人だとか…。自分はあなたの団体に募金したから、そのお金がどう使われているのか教えてください』ということが書いてありました。
そうした問い合わせのメールは、実は僕に直接届くようになってるんです。
メールを見て、実際に会ってみることにしました。
すると、相手は神妙な顔で
『あの…勝又さんは朝鮮人ってほんとですか?』
『日本人です。免許証も見せますよ。本当に気になるのであれば、僕の両親に聞いてもらっても大丈夫です。』
『えっとじゃあ…捕まったのは本当ですか』
『本当です。大なり小なり、人様に迷惑をかけたことに対しては大変申し訳なく思ってます。結果としては、不起訴でした。』
『不起訴だったんですか…』
そういった反応でした。
そもそも、朝鮮人だからどうとかも関係ないですよね。
そして、批判をするのであれば、ちゃんと調べてから来て欲しいとお伝えしました。
もちろん、その時も言わせてもらった通り、人に迷惑をかけたことは事実ですので、本当に申し訳ないと思っています。
クラウドファンディングのお金を寄付するにいたるまで
ーー熊本地震に関しては、クラウドファンディングの件も叩かれていましたよね。
そうです。結局色々あって、全額を寄付しました。
実はクラウドファンディングって、集まった締め日から約2ヶ月後ぐらいに現金が団体の口座に振り込まれるんです。
それをほとんどの方は知らないので、クラウドファンディングのサイトのお金が増えると、僕のポケットに今まさにお金が振り込まれてると思ってしまう。
だからよく、『お金何に使ってるんですか?』という電話もかかってくることもありました。
『いや、そもそもまだ1円も入っておりません…』といった対応をしていましたね。
結局、非難が集まってしまった時点で、このお金を使ってTSUNAGARIが何をしたとしても批判されるのではないか。
そう考えて結局、クラウドファンディング会社の手数料を除いた全額8,218,848円を御船町に寄付させていただきました。
僕だけなら批判されてもいいんですけど、僕に関わったいろんな団体に噂が飛び火したときは、本当に申し訳なく感じました。
拡散をする前に気をつけて欲しいこと
ーー色々と言われたい放題なのですね。誹謗中傷に関して何か思われることはありますか?
そうですね…正直、誹謗中傷の内容をみるたびに、『この人は現地を見にいったのかな』と何度も思いました。
僕自身も大事にしていますが、何か意見を言うときは、その目で現地を見て匿名でない形で言って欲しい…と思う限りです。
もちろん、善意の気持ちで情報を拡散した人もいると思います。
けれど、今後もし何かを拡散するとき、一旦止まって考えてみて欲しいんです。その情報を発している人がどんな人なのか、信頼できる情報なのか、何を目的にして投稿しているのか。一回でいいから確認して欲しいと思っています。
どんな投稿を過去に行なっているのか?本人の名前を使っているのか?
誰もが発信できる社会だからこそ、誰がどんな意図で発信しているのかを、より多くの人が気をつけられるようになればいいなと思います
TSUNAGARIへの誹謗中傷が実際の活動に影響を及ぼした事実
ーーネットでの誹謗中傷により、実際の活動に支障が出ることもあったと聞きましたが…
ありました。御船町では町長さんにわざわざ出てきてもらえないと、僕や団体のことを信頼してもらえないこともありました。
2018年9月の北海道地震に支援にいった時、初めの数日は誹謗中傷のネットを見た北海道の方に警戒されました。
理不尽に対する怒りよりも先に、悲しさを感じました。
一生懸命活動している僕らも、誰かを傷つけようとなんて思って活動なんてしていません。
ネットの情報は素早く情報を取れて役に立つことも多くありますが、事実ではない無責任な発言も中にはあって、善意で行動している人達が信じてもらうのに逆に時間がかかったり、苦労が増えてしまう…ということがあります。
現地の方との信頼関係を築くまで
ーーその状況で、実際にどのように現地の方を説得されたんですか?
説得というか…言葉よりも、一番大切なのは行動で見せることだと思っています。
何を言われたとしても、僕たちは今まで培ってきた経験を活かし、困っている人のために全力で活動するだけです。
もちろんひとりよがりの活動にならないように、自治体の方々ともしっかり連携させていただいて、意味のある活動をさせていただきました。
社会福祉協議会さんだけではできないこと、例えば屋根に登るような危険が伴う作業であったり、ボランティア保険外のこと、時間外労働などを主に担当させていただきました。
勝又氏の考える災害支援ボランティア
どんな人でも、ボランティアに来ることに価値がある
ーーボランティアに参加することって、勝又さんにとってどんな意味があるとお考えですか?
全国から、学生や社会人など関わらず、お金に余裕があるない関わらず、TSUNAGARIにはたくさんのボランティアが参加されております。
実際に参加されたら、立場に関係なくたくさんの人が一生懸命活動に取り組まれていることを知ることができます。
活動を通して、被災者の方が喜んでいる姿に立ち会うことができます。
またその瞬間に、どれほど小さなことでも自分が被災者の方たちのために何かができた、という実感を得られると思っています。
もちろんボランティアの参加者の中には、滞在期間が長い人もいれば短い人もいますが、期間の長さは関係なく、互いに「人のためになりたい」という思いで繋がりあっている関係であることには間違いないです。
そんな人たちと知り合えることが、参加された方の人生にもプラスになるとも思います。
数日間のボランティアは、意味があるのか
ーー実は僕自身、数日間だけのボランティア参加をさせて頂いたことがあるんです。その時、被害の規模が大きすぎて、「自分の力で結局何ができたのだろうか」と無力感を感じたこともあったのですが、それについてはどうお考えですか?
それは、1人で参加したその数日間しか見てないからだと思います。
長期的な支援が必要な災害支援においては、一人一人の活動が繋がりあっていることに価値があります。
何をするか、どれぐらいの期間滞在するか、作業内容などは参加されたタイミングによって全く異なります。
けれど、その一人一人の小さな作業内容や活動が繋がって、関わり合うことで長期的な支援になるんです。そうしてやっと被災地のためになれるんです。
もちろん、お金の支援をしていただく方も、活動を拡散していただく方も、実際に現場に来られない人たちの活動も、支援の中で大きな力となって現れているのだと思います。
子どもでも、障がい者の方でも、できることがある
「人のためを思う。そして行動する。」
規模感の大きい小さいに関係なく、とても価値があって尊いことだと思います。
誰かを助けたい、そういう思いを持っている方の参加を、なんらかの条件で断りたくない。
人を思いやる気持ちを持っている人なら、どんな方でもTSUNGARIの支援に来ていただきたい。
子どもや障がい者の方でも、思いを持っている方に対して、何らかの条件を理由に断ることはいたしません。
例えば車椅子の方でも、活動中の写真をとっていただいたりすることもできます。
力作業はできない方でも、土嚢袋の紐を結んでもらったり、物資の仕分けを手伝ってもらうこともできます。
求められているのはハードな力仕事だけではないんです。
どんな人でも、人を思いやる気持ちのある方ならば誰かを助けることができると思っています。
ハンディキャップがあるからこそ「誰かに、何かをしてもらったこと」がある。
そういった経験を持っているから、感謝の気持ちを誰かにお返ししたい。
そんな思いを持っている人こそ活躍できたら素敵だなと思います。
ボランティアに来れない人にも知って欲しいこと
ーー他に、何か伝えたいことはありますか?
本当にもう話しきれないほどたくさんありますね。
その中でも、もし一つ伝えるとしたら、ボランティアに来れないけれども遠方支援を考えてくれる人に伝えたいことがあります。
すでにお伝えさせて頂いた通り、現地に来ない支援の形でも、被災地では本当に助かっていますし、価値があると思っています。
現地の情報を拡散する前に、これは誰がどんな目的で書いていて、その情報は信憑性があるのか、古い情報ではないか?をしっかり確認してください。
そして、今回の熊本で改めて気をつけて欲しいと思ったのは物資の送り方です。
物資の仕分けにとても人手が割かれてしまうので、もし送る側が事前に分けてくださっていたら、被災地での手間がかからなくて、もっと効率的に配給できたと思います。
物資は、1つのダンボールには基本1種類で送って頂きたいです。一個の中に複数入ってると、仕分けに時間がかかってしまうため、開封がどうしても後回しにされて、仕分けする人手がない場所では、使われないということになってしまう所も沢山の被災地で何箇所もみてきました。
そうした使われない物を管理するのは最終的に役所で…役所の場合どうしても勝手に持って帰ることができないので、最終的には処分されてしまいます。その処分に費用がかかってしまうという悪循環が生まれますね。
あとは、ダンボールの外側に”細かく”何が入っているのかを記載してくれると、とても助かります。例えば子供用オムツ、だけじゃなくてサイズやどんなタイプなのか、枚数なども書いて頂ければとても助かります。
それが書かれていないと、毎回ダンボールを開けて確認しなければならなくなり、手間も時間もかかって、結局捨てられて…
物資が余って捨てられてしまうのは、被災地では仕分けに当たる人員の確保が難しいことと、物資をお送り頂く前に仕分けられていないのが本当の原因なんです。
しかし、実際にネット上で拡散されやすいのは『物資が余って捨てられた』という事実のみです。
被災地では平時とは違い、支援を行うにも状況や環境がものすごいスピードで変わっていきます。
「ベストはこうしたい!」というものがあっても人員や時間が足りず、悔しくも出来ないということも多く発生します。
しかし、そのような被災地での現実は、なかなかネットに発信されず、『ちゃんと配給しなかった』などの批判のみネットに残ってしまう…って感じですね。
物資に関することだけでもまだまだ話せます。
本当にもっともっと、現場にいったから伝えられることや、みんなが災害に対して当たり前に知っておかなくちゃならないことがたくさんあります。
もしも、ネットの誹謗中傷について気になる方がいらっしゃれば、包み隠さずお話しいたしますし、何より学術的な災害のことだけじゃなくて、実地で活動しているからわかる内容とか防災の知識ももっと多くの人に知って欲しいと思っています。
まとめ
どんな人でも「人を助けたい」という思いを持ってる人ならボランティア参加を断ることはしない。
善意の拡散でも、その情報源をしっかり確認して欲しい。
何か聞きたいことがあれば、講演も行なっているので直接呼んで頂き聞いて欲しい。
今までの行動に自信があるから、包み隠さず正直にお話することができる。嘘のない本当の信頼を得ることができる。
TSUNAGARI代表勝又氏(左)とSAIGAI JOURNAL津田(右)
最後に
何度も記事の中で触れたが、現在もインターネット上だけで残っている誹謗中傷により、TSUNAGARIのイメージは芳しくない。
それらは、これからTSUNAGARIが活動をするときの足かせになったり、寄付を募るときの障害になるだろう。
しかし、実際に勝又氏にお話を伺うと、事実とは全く違う内容がネットに拡散されてしまっている現実を知ることができた。
この特集では、TSUNAGARIという団体の公式活動と、インターネット上での批判とのギャップについて言及してきた。
その上で、実際に御船町の方々にインタビューを行い、TSUNAGARIという団体が現地でどのように活動していたのかのお話を伺った。
これらを全て読まれたことを前提に、読者の方々に問いかけたい。
あなたは、ネットの声と現地の声、どちらの声を信じるだろうか?