前出の実業家も上海出身の女性も、中国政府が裏で主導しているのではないかと見ている。つまり、大阪の集会は中国政府主導の「愛国デモ」に違いない、というのだ。

 ちなみに大阪府警察に事前に集会の許可申請があったかどうかを問い合わせてみたところ、電話口の担当者は「即答できかねる」としながら、この集会が行われていたことは把握していなかった。

中国人留学生が香港人留学生を罵倒

 こうした集会の裏にあるのは、「香港デモをなかなか鎮圧できない手詰まり感だ」という指摘もある。打つ手がない中国政府が世界各地の在外公館を通じて愛国示威活動に火をつけ、中国に有利な国際世論を形成しようとしている可能性は十分に考えられる。振り返れば、2012年に中国各地で勃発した反日デモも、当局が操る“官製デモ”だった。

 中国人が国外で騒ぎを起こしているのは日本だけではない。大阪の集会は大きな混乱を生むことはなかったようだが、オーストラリア、イギリス、ドイツ、カナダなどでは現地の中国人と香港人の間で激しい対立が起きている。

 7月24日、オーストラリアのクイーンズランド大学に通う香港人留学生が香港の反送中デモを支持する集会を開いたところ、乱入した大勢の中国人留学生との間で殴り合いになる騒ぎになった。複数の報道は、中国人留学生が相当野蛮な言葉を使って香港人留学生を挑発していたことを指摘している。

 また、オーストラリアのシドニー技術大学での衝突では、中国人留学生が香港人留学生に「香港から出ていけ」「香港を我々に残せ」などという暴言を浴びせたという。メルボルンでは日常的にさまざまなデモが行われるというが、デモに慣れっこのはずの市民もさすがに眉をひそめた。