文在寅「最悪の一手」が招く、在韓米軍撤退と日米韓「激変の未来図」

アメリカが視野に入れる「ウルトラC」
髙橋 洋一 プロフィール

日韓GSOMIAの破棄で一番困るのは、日本ではなくアメリカである。それをわかっていなかった韓国の自業自得といえる。

アメリカとしては、世界の至る所で火種がくすぶる状況で、せめてアジアでは日韓が協調して負担を少なくしてくれというのが本音であるが、韓国の駄々っ子ぶりに頭を抱えているところだろう。

 

「在韓米軍撤退」の後、何が起きるか

もっとも、ここまでのアメリカの反応は、せいぜいポンペオ国務長官止まりであった。しかし先日のパリG7サミットで、これまで表立って韓国に言及してこなかったトランプ大統領が「韓国は金正恩になめられている」と述べた、と報じられた(https://www.sankei.com/politics/news/190826/plt1908260009-n1.html)。

このことは海外のマスコミでは報じられていないが、サミット参加当事者にしかわからない情報であり、安倍首相に近いところが情報源とされている。

ここで思い出されるのが、トランプ大統領が2016年の大統領選で公約していた「在韓米軍の撤退」である。意外に思うかもしれないが、トランプ大統領は公約の実行率が高い。アメリカの左派メディアはトランプ大統領を今でもとにかく批判しているが、トランプ大統領から見れば、「大統領選で勝利した以上、どんどん公約を実行して何が悪いのか」といったところだ。

韓国も、対米関係でルビコン川を渡ってしまったので、手始めに前政権で導入されたTHAADや米韓軍事演習の見直しを行い、在韓米軍の撤退の方向で動いてゆくだろう。

文在寅大統領は、最終的には、悲願とする南北統一と社会主義国家化を目指すのだろう。そうなれば当然、米韓相互防衛条約の破棄につながり、アジアの安全保障枠組みは大きな変更を余儀なくされる。

もちろん韓国国内でも、文大統領の側近のスキャンダルが噴出するなど、流れは一方的というわけではない。韓国国内の保守系も黙っていない。

しかし、トランプ大統領が「在韓米軍撤退」を公約に掲げていることを考えると、韓国もその方向へのモメンタムを強める。アジア地域の安全保障の枠組みは、大きく変更されるかもしれない。

それだけでも重大事項であるが、本コラムでは、さらにその次どうなるかを考えよう。

こうした韓国の行動は、アメリカからはどう見えているのか。

朝鮮半島の社会主義化は、対中戦略として当然望ましくない。いまトランプ政権が注力しているのは、安全保障や経済などあらゆる分野での中国の覇権の阻止である。だから、今でも韓国のGSOMIA破棄を批判し、再考するように促している。

ただし、こんな暴挙に出た韓国が、アメリカに言われてしおらしく反省する確率は高くはない。もともと感情で動く傾向のある国だ。面子を重視して、愚行を続けるかもしれない。

そうなると、長期的戦略として、アメリカも別の手を考えざるを得ない。トランプ大統領の公約である在韓米軍撤退の後のことだ。ひょっとしたら、トランプ政権は既に「別のオプション」に着手しつつあるのかもしれない。