146話 地下迷宮攻略-成果と結末-
死霊王アダルマンは、自分の領域に侵入者が出た事を悟り、肉の付いていない唇を捲り上げる動作を行う。
その時、微かに歯が擦れて音を立てた。
判り難いが、死霊王アダルマンとしてはニヤリと笑ったつもりなのだ。
「ご機嫌が宜しいようですね、アダルマン様」
腹心の聖騎士だった男が、アダルマンに声を掛けた。
彼は死霊であり、肉体を持たない。しかし、生前と変わらぬ姿で立っている。
魔物である死霊へと変貌したが、人や魔物にとり憑くのではなく、数多ある死体から生前と変わらぬ姿の肉体を造り上げたのだ。
アダルマンは生前の肉体に未練は無く、寧ろ骨のみとなった今の姿を気に入っているのだが。
元聖騎士の隊長であったアダルマンの腹心は、生前の姿に思い入れと誇りがあったのであろう。
爽やかな――死霊が爽やかというのも変な話だが――容貌の青年の姿である。
青い鬼火が周囲を飛んでおり、肌が青白いので、生きていない事は明白なのであるけれども。
「うむ、機嫌は良いとも。アルベルトよ、お客が来たようだよ」
腹心、アルベルト元聖騎士隊長に、侵入者の存在を告げた。
その言葉に、
「なるほど、やっと来ましたか」
全てを理解し、アルベルト――今は、
彼等は嘗て、ジュラの大森林の戦場にて発生する大規模な死霊災害を未然に防ぐべく、慈善の心で浄化活動を行っていた。
その際に、アダルマン司祭と聖騎士4名で向かっていたのだが、思わぬ事態に遭遇してしまったのである。
戦場跡に辿り着いた時、そこに凶悪な魔物である
死闘の末、
教会の命令で行動していた訳でもなく、自らの信念で行動していたが故に、救助の者がやって来る事は無かったのだ。
かくして、彼等の命運もそこで尽きた訳だが、ジュラの大森林の安寧を願う心が奇跡を起こした。
奇跡というより、彼等にとっては災いであったのかも知れないけれど……
アダルマン達一行は、死者の呪いと大量の魔素を浴びて変質し、死霊と変貌してしまったのである。
だが、強靭な精神力により、アダルマン司祭とアルベルト聖騎士隊長は自我を保つ事に成功していた。
アダルマン司祭は、
アルベルト聖騎士隊長は、
そして、三名の部下達は、
それが数百年以上も昔の事であった。
不死となった彼等に時の支配は及ばず、年数を確かめる事も無いままに過ごしていたのだ。
だが、ジュラの大森林の新たなる支配者の誕生には気付いていた。
当然である。
暴風竜ヴェルドラの消失以降、森が荒れるのを予想し、手の者を放って情報を集めていたのだから。
結果、新たなる魔王に隷属する事を選択。そのまま、配下におさまったのであった。
「うむ。遂に、我等に安寧を与えて下さった魔王リムル様のお役に立つ時がやって来たぞ。
この迷宮内であれば、好きに死者を使役出来るし、長き洞窟生活と異なり、ここには刺激が満ち溢れておる。
この様な素晴らしい環境を与えて下さった我等の"神"に、忠誠の証を立てるのだ!」
「はは! このアルベルト、心得ております」
うむ、とアルベルトの返答に頷くアダルマン。
彼の信仰は一度死に、新たな信仰の対象として、魔王リムルが選ばれていたのだ。
当然、リムルはそんな事を知りもしないのだが。
寧ろ、『ゴメン、君達では勝てそうも無い』とか考えているのであるが、その事を知らないアダルマン達はやる気になっている。
今こそ、彼等の新たなる主に、勝利を捧げるつもりなのだ。
やる気に燃えるアダルマンと、それに同意するアルベルトは、顔を見合わせ頷きあう。
そして、やって来る愚かな侵入者への対策を講じ始めるのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
帝国からやって来た三名は、順調に攻略を進めていた。
ダムラダと別れて迷宮都市に入り、そこでギルドに登録を行った。
事前に情報を集めたが、どうもゲームの要素がテンコ盛りという感じに、ふざけた内容の
しかし、罠の察知はシン・リュウセイの得意とする所。
魔物の強さも、話を聞く限りは大した事が無いようだった。
問題は、ダンジョンの深さが不明な所。
一気に攻略を進めようにも、持ち運べる食料には限りがあるのだ。
だが、そんな心配も、
「ああ、大丈夫だ。階段を見つけたら、そこに宿屋への出入口がある。
そこで泊まれるようになっているんだ。なので、食料はそれ程持たなくても問題ない。
それに、中には商人が居るから、邪魔な物は買い取って貰えるぜ?」
と、至れり尽くせりのようなのである。
しかも、"蘇生の腕輪"という復活のアイテムがあるそうで……
「この中で死んでも復活出来るんだってさ……」
シンジが聞いて来た事を説明すると、マークとシンも微妙な顔をしたものである。
何と言うか、シリアスな世界の中で、ここだけがギャグの世界であるかのような、何とも言い難い気分になったのだ。
彼等も"異世界人"として、この世界でそれなりに優遇された能力を保有している。
しかし、ここの国ほどやりたい放題している所は無かった。
ユウキがかなり頑張って食事事情の改善を行ったりしており、それが帝国にも流通していたのだが、此処はそれさえも上回っていそうである。
たこ焼きやお好み焼き、焼きソバ。果ては、最近出来たばかりのクレープまで。
屋台が所狭しと並んでいるのだ。
トイレ事情も完璧。そして、宿屋の居心地も素晴らしい。
「俺、此処に住もうかな? なあ、帝国に戻るの止めない?」
「おい!」
「いや、スマン……冗談、冗談だって。怒るなよ、シンジ」
「怒ってるんじゃなくてさ、真面目に検討してもいいかな、って」
「……ボクもここに住みたい」
三人は顔を見合わせ、
「いやいやいや、やっぱ駄目だろ」
「だよな……。ユウキさんに文句言われるだろうし、戦争が始まるし……」
「だよね……残念……」
溜息を吐いて諦める。
活気ある町の様子や、食べ物の美味しさ。
住み心地の良さに加えて、娯楽と文化の中心であるかのように、新しい遊びが次々に生まれている町。
その遊びは元の世界で馴染み深いものばかりであり、帝国しか知らぬ彼等には懐かしいものであった。
帝国にも、文化や娯楽が無い訳でもないのだが、この町ほど自由では無かったからだ。
何よりも、戦争開始間近である。
この都市は、完全に目標地点であり、戦禍を免れない。
帝国側の軍事力を熟知している三人にとって、この国が帝国に勝利する可能性など、考えるだけ無駄であると思えるものだったのだ。
仕方なく、そういった未練を断ち切り、彼等は迷宮に挑む事になる。
………
……
…
そして現在。
迷宮攻略開始して、一週間が過ぎ去った。
シンジ達三人は、迷宮内の宿屋にて寛いでいた。
「っていうかさ、この一週間でめっちゃ稼いだんじゃないか?
ここの宿屋、最低限の設備だけだとか言ってたけど、それなりだしな。
その割に、宿代は安いし、要らない装備売った金、結構貯まったろ?」
マークがご機嫌で質問する。
少し興味があるのか、シンも顔を上げた。
シンジは二人に答えるように袋から金貨を取り出す。
「まあね。かなりの額が貯まったよ。
聞けば、ここの攻略組みの最高記録が、39階だったそうでね。
40階攻略に梃子摺っていたらしい。
ここらでポツポツ出始めた孔の開いた武器が、驚くような高値で売れるんだよね」
「何なんだろうな、あの孔。
40階層まではあんな武器出なかっただろ?
50階層手前辺りから、二、三本出たんだよな?」
「うん、そうなんだけどね。
実の所、30階層以上の宝箱に、稀に入ってたらしいんだよ。
確かに質は良い武器だし、それが理由かな? と思ったんだけど……
どうも秘密があるようだよ。
商人に聞いても、ニコニコして教えてはくれなかったしね」
「おいおい、怪しいな。
しかしな、質がいいって言うなら、コレだぜ。見ろよ、コレ!」
そう言いながら、マークは
美しい白銀の輝き。
ミスリルで造られた、至高の逸品。
「ユニーク武器だぜ? 帝国でも、中々手に入れる事が出来ないぞ?」
「というか、そのバルディッシュにも孔が開いているよな。何なんだろうな?」
「でも、綺麗な武器。形状は不気味だけど……」
「驚きだよな。真面目に此処を攻略する方が、お金も稼げるし、楽しめそうだし……
というかさ、
こんな武器を気軽に出せる時点で、俺達の想像している以上にこの国、ヤバイんじゃ?」
シンジの言葉に頷くマークとシン。
思い当たる事は多々あった。
そもそも、50階層のボスも強かった。
帝国周辺に発生する魔物の中では、あのクラスは100年に一度も生まれる事は無いだろう。
災害クラス、ユウキが定めたランク別けで言う所の、Aランクの魔物である。
この魔物のクラス別けについては、帝国も共通の呼び方を採用していた。その方が理解しやすいからである。
流通したのは商人からなので、共通にしなければ問題が発生しやすいというのも理由の一つなのだ。
それはともかく。
40階層が、Aランクと言われても納得しそうな、危険な
強靭な筋肉の身体で体当たりしてくるし、油断ならぬ魔物だったのだ。
そして、50階で出会ったのが、間違いなくAランクオーバーの魔物である。
30階層に居て、鎖と重りで身動きを封じられていたヤツが、自由に行動して来たのだ。
魔王配下の魔人に相当する、危険なボスであった。
まあ、三人でかかれば倒せぬ相手では無かったし、その気になれば一人で相手しても勝てるとは思うのだが、
「確かにな。あのクラスの魔物が、50階層を守護しているというのが気になるな。
守護者クラスのボスは10階層毎で、
40階層から、50階層になった途端、一気に強さがアップしたよな?」
マークがシンジに同意した。
順調に50階層を突破し、現在は55階層であった。
だが、次なる60階層のボスに対する不安が無い訳では無い。
51階からは、死霊系の魔物が出現している。ボスは不死者系統と考えて間違いなさそうだ。
マークは運良く手に入れた
それでも負けるとは思わないが、油断はしない方が良いというのが共通認識であった。
「まあ、最悪でも死ぬ事は無いみたいだし、油断しないように頑張ってみるか」
シンジの言葉にマークとシンも頷いた。
目的は、最下層。
研究施設の有無である。
最下層が何階まであるのか不明な以上、油断せず慎重に攻略を進めるべきであった。
彼等は方針を再度確認してから、その日は就寝したのだった。
そして、三日経った。
毒沼や、腐食地帯を攻略し、遂に59階層の階段手前に到着した。
この階段を降りれば――降りているのに階層表示は増えるのだが――60階に到達する。
遂にボス部屋手前に到達したのだ。
昨夜は十分に休息を取り、準備は万端である。
昨日の昼頃に階段前に到着したのだが、用心する為にも一度休息を取ったのだった。
三体の
死霊系の魔物の中では最強クラスの強さであり、間違いなくAランク以上の強さを持っていた。
ここに来て、敵の強さがかなり上昇しているのを感じていたのだ。
そんな訳で、休息を取った三人は気力も充実している。
この先のボスに対しても、冷静に対応すれば問題ないと考えていた。
三人は頷きあうと慎重に扉に手をかけて、そして一気に押し開く。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
激しい戦闘が始まった。
実に激しい戦いであった、と感想を陳べよう。
中だるみして、軽くトランプで遊んだりしつつ様子を見ていたのだが、ボス戦は真面目に観戦したのだ。
結果は、死霊王アダルマンの圧勝。
唖然とする程、鮮やかな勝利だった。
三人のスキルの解析も終了している。
シンジー ……推定Aランク[EP:64,000]
ユニークスキル『医療師』
攻撃手段は、ウイルス操作。空気成分操作、毒。
当然、治癒も行える。
マーク ……推定Aランク[EP:73,000]
ユニークスキル『投擲者』
何でも投げる事が可能。魔物さえも、掴めば投擲可能。
属性は無いようで、ダメージ貫通も併せ持つ。厄介な能力だった。
シン ……推定Aランク[EP:58,000]
ユニークスキル『観察者』
直感回避。危険察知。罠察知。魔物察知。気配察知。
とにかく、素早い。迷宮の天敵である。
大体こんな感じだろう。
能力は美味しく参考にさせて頂きます。
強さだけ見ると、死霊王アダルマンに勝てそうに見える。
ところが、だ。
死霊王アダルマンのヤツは、一年の間で大きく成長していたらしい。
というか、自我の無い
何しろ俺も知らなかったのだが、
「へへへ、ビックリしたでしょう!
実は、内緒にしてたけど……
アダルマンの所で、アルノーとか言う若造が修行していたのだよ!」
と、ラミリスがドッキリ成功! みたいな感じで俺に告げた。
ん? アルノーが、修行? アダルマン達ではなく、アルノーが?
違和感を感じて問い質した所、実は聖騎士達は、さっさと50階層を突破して60階層まで辿り着いたらしい。
だが、そこで一人の騎士に敗北を喫する。
数百年前、最強を誇った聖騎士。
アルベルト、
「最近の聖騎士は質が落ちたのか?」
そんな事を言いながら、生前の剣技を魔物のスペックで操り、アルノーを圧倒したのだそうだ。
って、聖属性が弱点だろ? と思った人は、俺と一緒の感想だ。
間違っていない。
今目の前で三人が敗北した原因にも繋がる、アダルマンの奥の手。
"聖魔反転"
このスキルの能力により、聖属性は魔属性に転じられる。対象は自分であり、抵抗される心配も無い。
聖なる骸骨など何の冗談だと思えるのだが、アダルマンとアルベルトは、聖魔反転により聖属性を無効化したのだ。
元々、物理攻撃にも抵抗がある上、各種属性攻撃には耐性を持っている。
そんな彼等が、弱点である聖属性に自らが転じてしまったのだ、手の施しようが無い状態なのである。
そういう感じで、三人はアッサリと敗北し、光の粒子になってしまったのだった。
ちなみに、後にもう一つの切り札として、
何でも、アダルマン達と死闘を演じた後、仲間になった
「
我等が勝利は、貴方様の為に!!」
そんな事を声高に叫ぶアダルマンを眺めながら、
(これって、60階層を守る戦力にしては過剰過ぎるよな……)
と思ったのが、素直な感想である。
落ち着いてから、ラミリスへの尋問を開始した。
この調子では、他にも隠している事があるハズだ。
「え、そんな……何も隠してないけど……?」
明らかに挙動不審になり、ソワソワし出すラミリス。
何か隠しているのは明白だった。
今後ケーキを禁止する、そう脅した途端、ラミリスはマシンガンのような勢いで喋りだした。
先ず、アルノー達は早い段階で60階に到達し、アダルマン達に敗北したらしい。
それから数ヶ月、アルベルトの指導の下、60階層で修行を行っていたのだそうだ。
そのアダルマンのスキル"聖魔反転"は、研究所にたまに遊びに来るルミナスに教わったのだとか。
研究所の吸血鬼達と、色々研究を手伝って仲良くなったアダルマンが、ルミナスに気に入られたのだそうだ。
ルミナスの"昼夜反転"を改良し、習得に至ったらしい。
当然、お礼としてルミナスにもこの技は伝わったのだそうだ。
そして、このスキルを習得したタイミングでアルノーがやって来た。
思えばタイミングの悪い男なのだが、ここで数百年前の最強騎士の手ほどきを受けられたのだから、幸運だったとも言えるだろう。
そんな感じで、60階層は危険な領域に変貌していたのだった。
「おいおい……で、アルノー達は今どこらなんだ?」
「ええとね、修行の成果か70階のボスも軽く倒して、今は79階で行き詰ってる!」
「ええと、61〜70階層はゴーレムゾーンだよな」
「そうそう。アッサリ倒されたけどね」
70階の守護者には、聖霊の守護巨像を完全再現して守らせていた。
以前、精霊迷宮にてラミリスが創っていたものを壊してしまったので、そのお詫びも兼ねて創ったのだが……
「アタシにはベレッタが居るからもういいよ!」
と言われたので、70階に配置したのである。
魔鋼による高い防御力に、超重量級で投げられる心配も無い。
ウィルス系も空調系も、まして毒など全く通じない、鋼の守護者。
俺の自信は、聖霊の守護巨像改め、
「ヴェルドラ、アダルマンとデモンゴーレム、どっちが強いと思う?」
「うむ。間違いなく、アダルマンだな」
やはり、か。
ここ一年で、大きく強さが変動してしまったようだ。
いや、元から強かったのだろうけど、見落としていたのだろう。
何しろ、
だからラミリスに、ドッキリなんて仕掛けられてしまうのである。
「よし、じゃあ今日付けで、51〜60階層と61〜70階層の入れ替えを行ってくれ」
「了解! 任せてよ!」
という事で、迷宮内の入れ替えを行ったのであった。
そして、もう一つ気になる事があった。
「ところで、80階層のボスって、そんなに強かったか?」
「え? 何で?」
「いや、アルノーってさ、
というか、アダルマンのヤツも何時の間にか
って、あれ? 80階層のは昆虫型の魔物に外殻を魔鋼でコーティングしたんだよな?
動きの遅いゴーレムの後で、高速機動を行う昆虫型を配置するって感じで……
おい……そこらはどうなっているんだ?」
「え、えっとね……」
挙動不審なラミリスを更に問い詰め、現状を把握する。
アルノーが行き詰っているのは、80階の守護者では無いようだった。
それ以前の、79階のフロアボス。
超速機動に、究極毒。
アルノーの鍛えた剣技に、反射神経を以ってしても、彼女に触れる事も出来ないのだとか。
どんだけだよ!!
絶叫したい気分になる。
「だってだって! アタシだけじゃなく、師匠も修行とか言って、蟲を鍛えてたよ!」
「ば、馬鹿者! 貴様、裏切ったか!?」
「だって、師匠だけ無関係みたいな顔して、ズルイ!」
「ぐぬぬぬ……」
どうやら、ヴェルドラも噛んでいたようだ。
この二人に任せていたのが失敗だったのだろう。
異常進化を遂げて、
人型に進化し、以前の昆虫のような外見では無くなっている。
美しい
そして、迷宮内強者。
下手すると、幹部クラスの戦闘力。
知りたくも無いけど、各種竜は竜王クラスに進化しているらしい。
4体の竜王が居るワケだ。
それに、
90階層の守護者、九頭獣クマラ
80階層の守護者、
79階層のフロアボス、
60階層の守護者、死霊王アダルマン
60階層の前衛、
そして、
50階層の守護者、ゴズールとメズールであった。
ぶっちゃけ、ゴズールとメズールを除く、残りの9名――というか、9体?――は、皆同等の強さなのだとか。
各竜王はラミリスの配下だが、残りの7名は俺の配下のままなのだそうだ。
ゴズールやメズールは、ラミリスの配下に入る方が良いと思うのだが。
何でも、ラミリスの配下に入るのを謝辞し、俺の下に付く事を希望したのだとか。
その為、何度でも使用可能な"復活の腕輪"をしているらしい。
俺の知らぬ所で懐かれていたようだ。
ともかく、この守護者達に迷宮に対する侵略以外では、適当に手を抜くようにと命じておいた。
そうでなければ、迷宮踏破など一般人では不可能であろう。
何が悲しくて、魔王が数体居るような勢いの迷宮に挑まないといけないのだ、という話である。
こうして、侵入者三人の活躍を観察すると同時に、迷宮の思わぬ現状に気付いてしまったのだった。
まあ、強くなるのは良い事なのだが、俺の想像を超えて進化されると不安になってしまう。
小心者の悪い癖であろう。
アダルマンには、見事な活躍を褒め、褒美として階層を変更したと伝えておく。
かなり感激し、今後もお役に立ちたい的な事を言っていた。
まあ、程ほどに頑張って欲しいものだ。
ついでに記しておくと、三人の侵入者は再侵入せずに帰還してしまったようだ。
何か目的があったのかも知れないが、
何しろ、後に待機していた
何度挑戦しても無駄だと思ったようだ。
もう少し情報を仕入れたい気もしたけど、問題ないだろう。
どうせその内やって来る。
そんな感じで、今回の騒動は幕を閉じたのだった。