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転生したらスライムだった件 作者:伏瀬

帝国侵攻編

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143話 恐るべき軍団

 ある程度細かく軍事編成を纏め上げて、ベニマルの部屋へと向かった。

 出来たばかりの組織表を見せる為だ。

 指揮権自体はベニマルが有するのだが、任命を含む統帥権は俺にある。

 ややこしいのだが、本来は統帥権に指揮権も含まれているのだが、これを分離させたのだ。

 軍の指揮に関しては、素人の俺が口出しを行うべきではない。

 なので、指揮に関するすべての優先順位はベニマルに預けたわけだ。

 以前述べたように、軍の指揮に関する事は俺の命令よりもベニマルが優先される訳である。

 だが、戦略的な命令は話が別。

 戦争前の将軍任命しかり、戦時中の戦争終結の判断しかり。

 将軍職未満の任命は、ベニマルの権限に於いて勝手に行っても問題ないが、軍団の将軍任命は俺の裁量に委ねられる訳なのだ。

 という訳で、出来上がった組織表をベニマルに手渡した。


「マジか? ゴブタを将軍に?」


 やはりそこか。

 確かに、あの馬鹿を人の命を預ける責任者にするのは、不安になるのも頷ける話だ。

 だが、ゴブタが隠れて特訓をしていたのも、この国を守る為なのを俺は知っていた。

 何より、ああ見えて仲間からの信頼は厚いのだ。


「大丈夫だろ。ああ見えて人徳はあるようだしな」

「まあ、それは認める。やらせてみるか」


 ベニマルは頷き、納得したようだ。

 ガビルについては何も言わなかった。

 ガビルは確かにお調子者だが、あれで将軍に向いている性格をしている。

 部下の面倒見も良いし、引き際も心得ている。

 戦略的な思考が苦手な面が見受けられるが、戦術局面での判断は的確なのだ。

 一軍を与えても問題ないだろう。

 ゲルドは言うまでもない。頼もしい将軍である。

 帝国の動きに備えての、各地点での見張りの強化を打ち合わせし、ベニマルの部屋を出た。

 後の細かい事はベニマルに任せておけば良い。

 魔物の兵士の集合地点の確認や、食料配布についてゲルドと打ち合わせなど、ベニマルも忙しいのだ。

 長々と邪魔しては駄目なのであった。

 え? 手伝えって? 何の話か僕には判らないです。

 素人は手出し出来ない。

 便利な言葉だな、と思った次第だ。






 さて、ベニマルの部屋を出て向かった先は、ラミリスの工房である。

 培養魔人形達の育ち具合の確認と、魂が生成されたかどうかが気になっていたのだ。

 あの人形が完成し、自律行動が取れるか取れないかで、大きく話が違ってくる。

 今すぐに出来上がる訳では無いし、今度の戦争に間に合うかどうかも不明だけど、それが判明するだけでも大きな違いがあるのだ。

 Aランク相当戦力が、1,000体。

 それが自律行動を取れるなら、その利用出来る幅は大きく広がるだろう。

 まあ、自律行動を取れない場合であっても、集団運用を行うだけで一軍を上回る最強軍団になり得るのだが。

 死をも恐れぬ破壊のゴーレム軍団、的な扱いが可能なのだから。

 その場合は、簡単な命令を与えて、特攻させるという利用方法を考えていた。


 転移し、一瞬でヴェルドラの大部屋に到着する。

 当たり前のように通り抜け、奥の大扉を開けて中に入った。

 ヴェルドラの私室には気配が無かったので、またラミリスの手伝いをやっているか、アホな実験をしているのだろう。

 中では、予想通りアホな実験が行われていた。

 俺の渡した魔玉コアを使って、組み合わせを試していたようだ。

 相変わらず、ベスターが記帳。

 ディーノも一緒に仕事しているようだが、ここの仕事は遊びと紙一重だ。

 働きたくないとか寝言をほざいていたが、知らぬ間に働かせている事もあるだろうな。

 そこには、ラミリスやヴェルドラといった馴染みの4人だけでなく、お客がいた。

 樹妖精ドライアドのトレイニーさんだ。


「これはこれは、リムル様。お久しぶりで御座います」


 トレイニーさんが挨拶して来る。

 相変わらず、半透明な美少女さんだった。


「トレイニーさん、お久しぶり。迷宮運営の協力、ありがとうございます」

「いえいえ、迷宮に住まう場所まで与えて頂いておりますし……

 ラミリス様の配下として、当然の事です」

「いやいや、助かってるのは本当ですし。これからも宜しく頼みます」


 お礼を言っておいた。

 迷宮内での運営を手伝って貰って、大助かりなのは確かなのだ。

 ところで、此処には何をしに来たのだろう?

 その答えは、


「培養魔人形には、やっぱり魂が宿らないんだよ。

 それで、色々考えて見た。

 ベレッタとのリンクで、全部起動させる事も出来るけど、それじゃ宝の持ち腐れだしね。

 でね、思いついたってワケ!

 精神生命体に近い樹妖精ドライアド樹人族トレントの、仮初の体にすれば良いじゃん! ってね。

 実際、サリオンからの技術内容のデータで、人造人間ホムンクルスへの憑依があったしさ。

 そんな訳で、トレイニーに実験に付き合って貰ってたのさ!」


 との事だった。

 なるほど。

 体を持たずに移動するのは結構大変で、樹妖精ドライアドには可能だが、樹人族トレントには制限が厳しい。

 Aランク魔物の中でも上位という、実質魔人よりも強い樹妖精ドライアド

 だが、その肉体を持たずに魔力が洩れるままというのは負担が大きい。

 その為に、本体である樹木から離れたら、それ程大きな力は行使出来なくなってしまうようだ。

 この培養魔人形を利用するならば、樹妖精ドライアドだけではなく樹人族トレントも自由行動が可能になるとの事。

 そして、樹人族トレントもAランクに相応しい能力を出せるし、樹妖精ドライアドだと遠方でも真の実力を発揮可能となる。

 素晴らしいアイデアであった。

 実験結果は大成功。

 適合率も問題なく、十名程の樹妖精ドライアドに百数十名の樹人族トレントが、新たな肉体を得る事が出来そうだ。

 完成したら乗り移るそうである。

 トレイニーさんは、実験の推移を見守る役目。後、見た目に拘りがあるそうで、なるべく自分の姿に似せようと頑張っているのだそうだ。

 姉妹連中の分まで、トレイニーさんが面倒を見ているらしい。

 樹妖精ドライアドは女性型が多く、樹人族トレントは男型が多い。

 性別は無いはずだが、具現化した姿は何故か見た目がハッキリと分れるのだ。

 樹人族トレントには見た目の拘りは無いようで、主に樹妖精ドライアドの姉妹分だけなのだと言っていた。


 美少女と聞けば、俺の出番である。

 ある程度は俺も弄れるので、協力を申し出た。

 そもそも、骨格を弄らずして、外見を変えるのは難しい。

 姉妹の数は十数名いるらしいので、思念リンクで姿形を教えて貰いながら、人数分の骨格を整形し直した。

 後は、魔素の流れを調整し、筋肉の付き具合を整えてやれば完璧である。

 サービスとして、骨格に金を練りこんで、神輝金鋼オリハルコンへと変質させておいた。

 これで後は、所有者の意思でもある程度の調整は可能になるだろう。

 こちらの世界でも、金は万能金属だ。なので、非常に魔素との相性も良く馴染みが良い。

 希少金属なので大量には用いる事は出来ないけど、魔鋼と混ぜるには丁度良いのであった。


「ありがとうございます、リムル様!」


 トレイニーさんの感謝の言葉を受け、フヨリと揺れて返事する。

 この程度何でも無い。普段からお世話になっているお礼でもあるし。


「じゃあ、後は頼む。ラミリス、魂が宿りそうなら教えてくれ」

了解ラジャ! 直ぐに飛んで行って教えるよ」


 魂が生成されたら教えて貰えるように頼み、自分の執務室に戻った。

 仕事は残っている。

 ここでずっと研究も手伝いたいが、それだけをしているわけにはいかないのだ。

 心を残しつつ、自分の部屋へと戻るのだった。



 ………

 ……

 …



 その悪魔は、荒ぶるように、魔の領域を蹂躙する。

 冥界、或いは地獄とも呼ばれるその精神世界に於いて、暴力の化身となりて有力な悪魔デーモンを倒していったのだ。

 力無き者は早々に逃げ出し、有力な者は徒党を組んで迎撃を行う。

 しかし、その悪魔にとっては、取るに足らぬ弱者の嘆きにしか過ぎない。

 完璧に敵対者を破壊して、悠然と蹂躙を続けるのみだ。

 悪魔デーモンは、精神生命体である。

 故に、その肉体を破壊されても、時が経てば自己修復を行い復活する。

 それを知っているのか、遠慮する事も無く向かって来る者へ容赦しない。

 恐るべき暴力の権化であった。


「クフフフフ。この様な雑魚を集めても仕方ありません。

 そういえば昔、私に匹敵する者共が何体か居ました。

 彼等に会いに行ってみましょうか」


 その謎の言葉を残して、赤い髪の悪魔はその場から瞬間転移テレポートして消え失せる。

 後に残るは、悪魔デーモン達の残骸であった。



 ………

 ……

 …



 自室に戻り、監視体制の構築について検討する。

 諜報員がジュラの大森林の要所要所や、海岸沿いから山頂各所に配置されてはいるのだが、それだけでは情報収集に不安が残る。

 というか、実際の戦闘が始まった場合に上手く機能しない事が予想された。

 なので、監視を魔法で出来ないかと考えていたのである。

 監視目的の遠見系の魔法は、呪術系統の中に存在するのは知っていた。

 だが、思ったよりも使い勝手が悪く、その対象の姿を確認する程度のものだったのだ。

 融通が利かない上に、その地点のみしか監視出来ない。

 違う場所を見るには、再度魔法を発動させる必要がある。

 俺達魔王とか、上位者の様子を視るのは不可能。常に張っている魔法障壁により弾かれるからであった。

 なので、既存の魔法では上手くいかなかったのだ。


 だが、俺には当てがあった。

 例えば、〈物理魔法〉"神之怒メギド"だ。

 あの魔法は、水玉を浮かべて太陽光を集め収束させる魔法。

 この水玉を各所に浮かべ、現地の様子を写し転写させる。

 或いは、高高度より映像を写し拡大させて、モニターへと映像を映し出せるようにする。

 監視衛星を魔法で作り出すという事だ。

 この魔法作製には、〈物理魔法〉〈精霊魔法〉『空間法則操作』を利用すれば可能だとラファエルが解答している。

 後は、細かい要望を纏めて、ラファエルと打ち合わせるだけ。

 この監視体制が出来上がると、情報を集めるのが簡単になるだろう。

 手に入る情報量も莫大なものになり、敵が軍隊ならば、その動向を掴むのは造作も無くなる。


 日本海海戦の際、連合艦隊司令長官東郷平八郎の指揮下で、日本海軍がロシアのバルチック艦隊を撃滅した。

 この海戦に於ける最も重要な課題は、遭遇出来るかどうかだったと言われている。

 捕捉迎撃する地点の予想。

 これが外れれば、この戦いが行われる事も無く、日本は負けていたのだ。


 つまり、俺達の状況にも似ていると言える。

 各所に戦力を分散させていたのでは、戦力数に於いて劣勢と予想される以上、敗北の可能性が高い。

 帝国の動向を掴み、戦力を集中させるのが勝利の決め手となる。

 帝国が戦力を分散させた場合は、時間の計算を行った上での各個撃破も可能となるかも知れないのだ。

 戦いを有利に進める為にも、何より確実な勝利を掴む為にも、この魔法の完成は必須であった。


 と、格好を付けて言っているが、実はもう完成している。

 ラファエルさんに要望を出しているのは、細かい所を使いやすくしてくれというクレームみたいなものだ。

 え? 自分でやらないのか?

 馬鹿を言ってはいけない。

 智慧之王ラファエルは俺の能力なのだ。つまり、俺が頑張っていると言えるだろう。

 ちょっと最近働き過ぎかもしれんな。






 ちょっと一息入れてから、完成した監視魔法を使ってみよう。

 そう考えて、隣の部屋に待機している侍女にお茶の用意を頼んだ。

 シュナに用事が無ければシュナがやってくれるのだが、居ない時は侍女が控えている。

 至れり尽くせりなのだ。

 元ゴブリンが進化した女性ゴブリナだが、見た目は殆ど人間と変わらない。

 最近、簡単な化粧が流行し始めており、ますます綺麗になっているようだ。

 お茶を用意し、運んで来た。

 そして、お茶を俺に差し出してから一礼し、


「ディアブロ様がお戻りのようです。

 面会を申し入れて来ておりますが、どう致しますか?」


 と、尋ねて来た。

 此処に来て貰うように伝言を頼む。

 侍女はもう一度礼をして、俺の前から去って行った。

 どうやら、まだ俺に対して緊張するらしく、動きがぎこちないのだ。

 ディアブロとか幹部クラスならば、遠慮しないで入って来ればいいのだが、周囲が止めるのである。

 面倒なだけであった。




 笑顔を浮かべてディアブロが入って来た。

 こう言っては何だが、笑顔のディアブロは邪悪そのものに見えるな。

 俺はともかく、他人なら不吉の象徴に思えるだろう。

 如何にも悪い事をしていそうな、邪な雰囲気を纏っているからだ。


「リムル様、只今戻りました。

 今日はリムル様にお目通りさせたい者共を連れて参りました。

 是非とも、会ってやって頂ければ、これに勝る喜びは御座いません」


 相変わらず、恭しい態度で俺に挨拶して来るディアブロ。

 コイツは俺の事を唯一の主と定めて、神のように接してくるのだ。

 何やら、子飼いの者を集めるとか何とか言っていたので、その者達だろう。


「お前の眼鏡に適う者は居たのか?」

「ええ、たったの十名程ですけれども……。

 申し訳御座いません、軍団を用意出来ず、自らの無能を恥じるばかりです」

「ああ、いや。気にするな。取り敢えず、会おう」

「おお、有難う御座います! では、此方に待たせておりますので」


 本気で軍団を用意するつもりだったのか。

 恐ろしい悪魔だ。

 そんな事をこそっと考え、ディアブロについて歩いて行く。

 どこまで行くのかと思えば、魔物の国テンペストの外まで出た。


「クフフフフ。

 結界を通り抜ける事も可能だったのですが、壊す事になっては問題ですので」


 と、ディアブロが謝って来たが、一体何を連れて来たのだ?

 レオンの国を参考に、大型結界を発動する仕組みを組み込んだ。

 そのお陰で、町を覆いつくす敵味方識別型の防御結界が常時張り巡らされているのだ。

 それを破る程の大物となると、Aランクを超える災害指定クラスの魔物のみである。

 それも、破っている間にすぐ反応され、衛兵により処理されるだろう。

 知恵無きAランクなど、既に我が国の錬度の高い兵士の敵では無いのだ。

 だが、結界を破壊するとなると、魔人でも上位者にしか出来ない。通り抜けるのと壊すのでは、大きな違いがあるのだから。

 マジで、どんなヤツを連れて来たんだ? 本当に魔人クラスだろうか?


「姿を見せる事を許す。顕現せよ!」


 立ち止まったディアブロが、そう命じた。

 顕われたのは、十体の悪魔。

 って、その中の三柱は、上位魔将アークデーモンじゃねーか!

 上位悪魔召喚でも、上位魔将アークデーモンを呼び出すのは至難の業だ。

 何しろ、一柱で戦術級の強さを有するのだから。

 大きな代償を用意して、初めて召喚が可能かどうかというレベル。

 人間が呼び出そうとした場合、国家規模の大規模な儀式が必要になるくらいの相手なのである。

 それが三柱。

 そう言えば、ディアブロも元は上位魔将アークデーモンだった。

 当時の知り合いか何かなのかも知れない。

 残りの7体は、上位悪魔グレーターデーモンだったが、どうやら特殊個体のようだ。

 大悪魔と言うべき貫禄があった。


「この者共は、私の嘗ての友でして……

 是非ともリムル様のお役に立ちたいと泣いて懇願するもので、同行を許そうと思いました」


 笑顔で説明するディアブロ。

 だが、泣いたのは本当だろうが、俺の役に立ちたいと言ったかは疑問が残る。

 何しろ、全員ボコボコにされた痕跡が残っていたのだ。

 何か言いたげな雰囲気を出していたが、発言はしなかった。

 ディアブロにきつく言い含められていると思われる。


『我等、魔王リムルの忠実なる下僕シモベです。何なりと、御命令を!』


 一斉に頭を下げ、俺に忠誠を誓う悪魔達。

 ディアブロは満足そうにその様子を眺め、頷いている。

 本当、味方で良かった。

 恐ろしいヤツである。




 さて、新たに仲間になった十名だが、精神生命体である悪魔は受肉させねば顕現するのに魔力が垂れ流しになる。

 なるほど、わざわざ中に入れずに外で待機させていたわけだ。

 そこでふと、先程のトレイニーさんの事を思い出した。

 あれ? 培養魔人形に宿らせたらいいんじゃね? そう考えたのだ。

 早速実行である。

 先ずは、悪魔達を暴食之王ベルゼビュートにて捕食。胃袋に収納した。

 そのままディアブロを伴って、ラミリスの工房に転移する。

 ラミリス達に事情を説明し、培養カプセルの中の人形にそれぞれ宿らせた。

 結果、受肉は大成功。

 魔水の中で眠るように漂う悪魔達。

 目覚めれば、受肉した完全体となり、役に立つ事だろう。

 そうそう、名前を付けないと不便だろう。

 そう考えて、彼等に名付けを行う事にした。

 大量に魔素を奪われると不味いので、慎重に。

 余裕を見て、一日一人に制限する。

 先ずはディアブロとの喧嘩友達だったという三柱の上位魔将アークデーモンからだ。

 上位悪魔グレーターデーモンは二名づつが、それぞれの副官なのだそうだ。

 一体ははぐれのユニーク個体。

 喧嘩を吹っかけて来たらしく、ついでに潰したらしい。

 見所があると連れて来たのだとか。

 ともかく、名前を付ける事にした。


 テスタロッサ 

 ウルティマ 

 カレラ 


 これが、三柱の上位魔将アークデーモンの名前である。

 名付けると同時に、一瞬で受肉と進化を完了し、悪魔公デーモンロードとなって培養カプセルから出てきた。

 三柱とも、美しい女性型である。

 最初のテスタロッサを名付けた時、目の前で一気に進化と誕生を見せられて驚いたものだが、流石に慣れた。

 その力は恐ろしく圧倒的で、強さの次元が非常識だった。


「マジかよ! 旧魔王連中より圧倒的じゃねーか!」


 と、ディーノが呻いていたが、ヴェルドラとラミリスは動じない。


 そんなものだろ?

 リムルだったら、当たり前よね!


 という感じで、軽く受け流していた。

 ベスターが隅の方で、


「私は何も見ていない、ははは、知らん。何も知らんし、関係ない……」


 自分の頭をペチペチと叩きながら、うわ言のように繰り返していたのが哀愁を誘ったが。

 それは見なかった事にしてあげようと思う。


 続いて、上位悪魔グレーターデーモン達だ。


 ヴェノム

 ヴェイロン

 モス

 シエン

 ゾンダ

 アゲーラ

 エスプリ


 それぞれに名付けを行った。

 コイツらも、当然のように一瞬で進化完了し、培養カプセルから出て来る。

 力ある上位魔将アークデーモンとして。

 出鱈目な戦力を獲得した感じだが、これはまだ序の口だった。


「リムル様、素晴らしき名前と力を授けて頂き、歓喜に堪えません。

 今後とも忠誠を誓う事、ぜひお許し下さい。

 一つお願いが御座います。

 我等が、配下だった者共の魂がここに……。

 お許し頂けるならば、この人形を用いさせていただければ――」


 何個あるのか知らないが、許す事にした。

 下位悪魔レッサーデーモンの魂らしいので、培養魔人形に宿らせるのに丁度良いだろう。

 能力的に上位悪魔グレーターデーモンになるだろうが、それも問題ない。

 魔素量を大量消費したので、これ以上の名付けは無理そうだが、それも問題ないだろう。

 数十体のAランク以上の能力を持つ上位悪魔グレーターデーモンか。

 下手をすれば、ユニーク個体並みの強さを持つ者なら、ノーマルの上位魔将アークデーモンより強いヤツが生まれるかも知れない。

 そんな事を考えつつ、許可を出したのだが……

 上位悪魔グレーターデーモン達には100体づつの部下が居たらしい。

 総数700体もの下位悪魔レッサーデーモンの魂が、培養魔人形に宿ったのだった。

 コイツ等が受肉し外に出たら、恐るべき戦力の増加である。

 いや、十名の悪魔達だけでも大概なのだが……

 またまたやってしまったのかも知れない。

 知らないふりをしよう。

 全部ディアブロの責任なのだ。

 俺は無責任に、ベスターの隣に並んで座り、そんな事を思ったのだった。


 この後、ここで生まれた悪魔達は、顕現せし上位悪魔グレーターデーモンとなる。

 魔人をも超える能力を持つ、恐るべき大悪魔達。

 俺の予想は正しく、上位の者は召喚される生まれたばかりの上位魔将アークデーモンよりも強かった。

 想像を絶する軍団となるのである。


 黒色軍団ブラックナンバーズ700名。


 最も数が少ないのに、軍団を称するその集団。

 魔物の国テンペストの最強部隊であり、恐怖の象徴。

 悪魔が培養カプセルから解き放たれる時、それが黒色軍団ブラックナンバーズの誕生の瞬間であったのだ。

 悪魔の名前は、スーパーカーシリーズです。

 値段が戦闘力、という訳ではありません。

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