142話 軍事編成
ライナーをSランクとしていましたが、正しくはAランクでした。
訂正しておりますので、宜しくお願いします。
ラミリスが作製している培養魔人形にも、名前を付けてやらねばなるまい。
魔鋼製の骨を持ち、骨に纏わり付くように魔素の筋肉が生じていたけど、この世に誕生――完成――するのはもう少し先になるだろう。
通常の魔物を培養カプセルで発生させた場合、その能力は1.5倍から2倍程度のものであった。上位の魔物であればあるほど、発生に時間が掛かるのは変わらない。
発生を促進させると、どうしても下位の魔物が生じるので、こればっかりはどうしようもないのだ。
培養魔人形1,000体も、今は根幹部分が出来上がっただけである。
誕生にはまだまだ時間が掛かると思われた。
しかし、予想では上位魔人クラス。
最低でも下位魔人であるゲルミュッドを超える能力を持つ、恐るべき人形になるはずだ。
つまり、生まれながらにAランクである。人間で言う所の、聖騎士クラスの戦闘力があると言う事だ。
生まれたての能力でそれならば、鍛えてレベルを上げてやればどれほどの強さになるのか楽しみだ。
問題は、魂が宿るのか? という事だろう。
魔物にも核となる魂があって、初めて魔素を取り込み発生する事が出来る。
培養魔人形は、魂を得るという過程を無視し、力の発生からスタートさせているのだ。
力だけ持つ意思無き人形が出来上がるだけかも知れないな。まあそうなった場合は、サリオン王朝のクローンに憑依する技術を流用し、一般兵による操作を行うのもアリだろうけど。
ベレッタにリンクさせ、操作させる事も可能だとラミリスは言っていたが、ベレッタの処理能力で1,000体は難しいかも知れない。
何より、ベレッタはラミリスの配下になったのだ。いつまでも頼るわけにもいかないだろう。
まあ、完成してから考えよう。
執務室に戻り、一息つく。
考えるべき事は沢山あるのだ。
先ず、第一軍団。
ゴブタを総大将として、ハクロウを軍事顧問に据える。
傘下の兵は、
・・・
A-ランク相当[EP:9,000〜9,900程度]の戦闘力になり、隊長格となっている。
・・・最初期からの4,000名が上級兵となり、三人一組で行動を行うらしい。
この一年で大きく兵数を増やしているが、問題なく運用出来ているとの事。
兵士の大半は、ここジュラの大森林の各部族の、戦士団出身者等である。
上級兵はBランク相当[EP:5,000〜6,000程度]の戦闘力まで育ったそうだ。
続く、第二軍団。
ゲルドを総指揮官とした
傘下の兵は、
・・・当初からのゲルド配下の
個人の能力もB+ランク相当[EP:7,500〜8,000程度]とかなり高い。
ゲルドと一体化したような鉄壁の守りを可能にする。
新人部隊を纏め上げる、小隊長の役割も担う。
・・・新参の
ただし、戦闘に携わるのは15,000名程で、残り20,000名は後方支援や工作兵だ。
そして最後の、第三軍団。
ガビルを副指揮官に任命した、虎の子の遊撃飛空兵団。
傘下の兵は、
・・・言わずと知れた、テンペスト最強部隊。
A-ランク相当[EP:9,500〜9,900程度]の戦闘力はそのままだが、指揮能力は高い。
個体によっては、Aランクに達した者も居るようだ。奥の手に『竜戦士化』がある。
・・・
その能力はC+ランク相当でそれなりにベテランだ。だが、その本質はそこには無い。
この兵団の特徴は、
制空権を支配する、戦争に於いて最も高い攻撃力を持つ部隊なのだ。
テンペストの取って置きとも言える、秘密兵団であった。
※ちなみに、
B+ランク相当の魔物だが、ミリムの協力を得て捕獲したのだ。
以上が、
それを統べるのは、軍事大臣に任命されたベニマルだ。
ベニマルに全軍の指揮権を与えているので、ぶっちゃけ俺の動かせる軍は無い。
だがまあ、ベニマルの軍師として何故かラファエル先生へのリンクがあるので、俺の意思が反映されないという訳でもないのだが。
ベニマルには、親衛隊として
戦闘訓練の様子を見て思ったのだが、パワーでは劣るものの、実際戦えばゲルミュッドと互角には渡り合えるだろう。実質、レベルも考慮すれば、人間で言うAランクに劣らない。聖騎士と一対一でも負けない程なのだ。
魔物の強さの基準は、殆どが
生まれながらに強い魔物にはレベルの概念が無いのだ。しかし、
通常の判断基準よりも上だと考えても、過大評価では無いと思うのだ。
隊長クラスは、ハクロウの地獄の特訓に耐える猛者ばかり。かなり鍛えられているのである。
そして、ソウエイ率いる情報部隊。
これは、4人の隊長以外は俺も詳しくは知らない。謎の部隊なのだ。
戦闘力は無いとソウエイは言っていたが、信用していない。暗殺系は得意そうだったからである。
ソウエイの完全なる手駒として、その存在を知る者も少ないのだ。
実は、ちょっと怖い感じの部隊として、噂だけは流れているようだけど。
ちなみに、第三軍団はソウエイにも指揮権が分譲される場合もある。情報収集を行うのに、空からの偵察が有効だからだ。
ベニマルとソウエイの取り決めで行うので、ソウエイが申請し受理された場合のみ、第三軍団はソウエイの指揮下に入るのだ。
当然、申請も無いままに命令する権限はソウエイには無い。
命令系統の遵守は徹底しているのだった。俺が直接命令出来る部隊が無い事からも、それは明らかである。
そうそう、シオン配下の
死なない事を生かし、恐ろしい特訓を行ったようで、B+ランク相当[EP:8,000〜8,500程度]まで強くなっていた。
一番の成長率であろう。
聖騎士達との戦闘でも活躍していたし、間もなく限界突破してAランクに到達する者も出るかも知れない。
現在最強なのは間違いなく
最も死ににくく、時間を稼ぐにも適した部隊なのだ。
俺の親衛隊に相応しいと、幹部会で決定されたのだった。
一応言っておくと、親衛隊とは言え俺の命令に従う事は無い。俺を守る為に存在する部隊なので、俺の命令に従い勝手な行動を行うのは厳禁なのだそうだ。
そんな感じの説明をシオンが得意気に説明してくれた。
だけど、雑用とかでも頼めば気軽に応じてくれるんだけど……シオンには言わない方が良いだろう。
建前と本音は、使い分けてなんぼなのだ。
で、新設されたばかりの、シオンの直属部隊。
シオン親衛隊という、云わばシオンのファンクラブ。
正式な部隊では無いので、その数も能力も未知数だが、大丈夫だろうか? 死人が出ていなければいいのだが。
シオンが隠れて育てているので、実態は不明なのだ。まあ、多くても1,000名は超えていないので、前線に出せる部隊では無いと思う。
ダグリュールの息子達が隊長格で頑張っていたようだし、この前のレオンとユウキの戦いの際も手際よかった。それなりに役に立つのかも知れない……不安は残るけどね。
ちなみに、ドワーフ王からはシオンの活躍について、お礼の手紙を貰っている。
あの時は真面目に役立ったようで何よりだった。
現在の俺が把握出来ている
後、ディアブロ。
ヤツは御前に精鋭を揃えましょう! とか言い残し、旅立っている。
ヒナタへの協力を問題なく行ってくれたので、案外内政にも向いていそうなのだが……。
本人は、戦うのも好きそうだし、好きにさせたらいいか。
だが、東の帝国との戦いが終わったら平和になるだろうし、その時は内政に携わって貰いたい。実際、リグルドよりも執政に向いていると思う。
ただ注意しないといけないのは、間違うと絶対王政並みに徴税率とか上げそうという点だ。ゲームじゃないのだ、税収率90%とかにしたら大問題である。
ディアブロは平気でそういう事をしそうだから、そこだけは注意しないと駄目だろう。
とまあ、これが現在の
ゴブタ麾下、約12,000名。
ゲルド麾下、約37,000名。
ガビル麾下、約 3,000名。
総数およそ52,000名と、大幅に戦力が増強されている。
だが、これはあくまでも
考えてみれば、第二軍団が兵士というより工作兵という扱いだからこそ可能な数字であろう。
これでもまだ、兵を養うのに余裕があるのだから、かなりの国力上昇っぷりである。
だが、東の帝国に備える戦力としては少ない。
これ以上増やす方法としては、臨時に魔物を召集するという手段があった。
一応、各集落にも御触れとして、召集予定は伝えてある。何時でも召集に応じれるように準備だけは行って貰っていた。
労働力を事前に集めるのは負担を掛ける事になるので、戦争状態になってから集合して貰う手筈なのだ。
なるべくならば、常備兵のみで勝負を着けたいと考えてはいるのだが……。
予想では50,000名程の魔物が集まるだろう。
これは第四軍団として、
指揮は、ベニマルに任せる。
寄せ集めを運用するには、ユニークスキル『大元帥』に頼るのが良いだろうし、彼が適任なのだ。
後は、評議会からの軍事協力としての傭兵部隊。
どの道、
そういう意図の下、傭兵部隊が召集され、続々と集まって来ている。
指揮官は、委員会よりの協力で派遣された聖騎士アルノー。
現在、30,000名程集まっているようだ。食べさせるだけなら大丈夫だが、後どの程度集まるのやら。
一応、東南方面軍として、俺達が防衛を受け持つ事になっている。そして、北西方面軍として、神聖法皇国ルベリオスを中心とした部隊が守護に回る。
現在は北西方面は戦時下では無い為、各都市に残りの巡回兵を配置したままとなっている訳だ。
とは言え、30,000名もの傭兵がいるとは思えないので、各国の騎士団からも応援が出ているのだろう。結構脅しが効いたというのも、各国が協力的になっている理由の一つかも知れない。
アルノーが言うには、
「多分だが、後30,000程は各国から集まるだろう。遠方からの傭兵が遅れているようだしな。
後は、予備戦力として残しておく事になる。総数で、60,000名が限界って所だ」
との事。
傭兵、そして各国の応援の騎士達。
全部掻き集めてその数字なのは、多いのか少ないのか……。
忘れてはならないのが、テンペストの周辺都市となった冒険者達の住む迷宮都市である。
そこから義勇兵として、
志願した者からなるその部隊は、勇者の名の下に、マサユキが指揮を取る。
「何で僕が……」
と、どんよりとした顔をしていたが、彼なら何もせずとも結果が上手く運びそうだ。
こういう時は頼もしい味方であった。
その義勇兵の数が、凡そ10,000名。驚く程集まったものである。
まあ、戦争が開始したら、迷宮はお休み――内部は迎撃モードで、遊びが無くなる変遷を行う――のだし、する事が無いのも理由の一つだろう。
食事だけは保障すると宣言してあるし、手柄を立てれば報酬も出すと噂が流れているようだ。
多分、ソウエイ辺りが流した噂だろうけど、報酬くらい支払ってもいいし問題ないのだ。
という訳で、俺達の国だけで、5万。召集する魔物が5万。
周辺国家から6万。冒険者達が1万。
合計で、17万に達する、大軍団が編成される事になる。
現在の集合率は50%程度だが、慌てる事は無い。全ての準備は着実に進んでいるのだから。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
その頃、東の帝国――ナスカ・ナムリウム・ウルメリア東方連合統一帝国――に於いても。
出撃の準備は着実に整えられていく。
もう間もなくで、帝国は長き眠りから覚め、その暴威を振るおうとしていたのだ。
[]の数字は目安ですので、無視して貰った方が良いかも知れません。
いつの間にか修正される場合があるので、ご了承下さい。