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SNSで話題「鹿だまり」はなぜできる? 奈良の鹿の1日を追う

2019年08月22日(木)放送

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今、多くの人が夏の風物詩としてツイートする奈良の「鹿だまり」。ユーチューブに鹿の情報をこと細かく投稿する「nara dear channel(奈良ディアチャンネル)」も国立博物館前だけにできる鹿だまりを動画で発信し、反響を呼んだ。なぜ鹿は国立博物館の前にだけたまるのか…取材班は鹿の1日を追跡した。

奈良国立博物館前の「鹿だまり」

取材班が訪ねたのは奈良国立博物館。この博物館で学芸部・情報サービス室長の岩井共二さん(50)が出迎えてくれた。岩井さんは展覧会の日時などを伝える公式ツイッターの担当者で、2年前から博物館前にやってくる「鹿だまり」を自ら撮影してネットに掲載。誰よりも、鹿だまりのそばにいて鹿だまりを愛する投稿者である。

午後4時30分。早速取材を、と思ったが「鹿だまり」がない。今日はたまってくれないのだろうか…

Q鹿の数はこんなものですか?
「まだ時間が早いので、そんなに集まっていません。これから集まってきます。」(奈良国立博物館学芸部情報サービス室長 岩井共二さん)

その時、西の方角から鹿の群れがどんどんやってくるではないか。この群れは、オス1頭がメス5頭を引き連れて到着。次々にやって来る鹿。混んでくると、席の確保にも一苦労のようだ。

1時間後の午後5時30分。いつものように鹿を数える岩井さん。その数、約400頭。きょうも鹿だまりが完成した。

鹿だまりを一目見ようと集まった観光客は、外国人を中心に100人を超えた。

「ベリーキュート!(とてもかわいい)」(台湾人からの観光客)

しかし、なぜ、ベリーキュートな鹿が何百頭もここに集まるのか。鹿だまりを愛する男、岩井さんが立てた仮説は2つ。

「ここが涼しいから」説と「集団行動」説

「最初に集まってくるところが、通気口ですね。地下の施設の排気口があるんでけど、それにひかれて夕方に涼みに来るのかなと。」(奈良国立博物館 岩井共二さん)

まずは≪仮説①≫「ここが涼しいから」説。確かに、通気口を中心に鹿は集まる。取材をした日の気温は午後5時でも34℃。サーモカメラを通すと…鹿の体温が39℃前後で通気口付近は32℃から33℃。確かに涼しいが、鹿は通気口から離れた場所にもたまっていることから、完全には説明できない。このあたりに程よい木陰ができるせいか…とも考えたそうだが、ほかにも木陰があるので説得力不足か。

ならばと、岩井さんが続いて考えたのが≪仮説②≫「集団行動」説だ。鹿の集団行動とは、いったいどのようなものなのか。
去年5月に奈良市内で撮影された映像には、1頭の鹿につられて他の鹿が大移動する様子が映っている。こうした習性から、「とりあえず、みんなでたまっとく?」となっている可能性もある。

集まる理由はまさかの“寄り道”?

そこで取材班は、鹿を観察・保護して20年以上の「奈良の鹿愛護会」甲斐義明さんに聞いた。すると、こんな見解が飛び出した。

「(鹿たちは)夕方前になって国立博物館の場所にたくさん集まって、ちょっと一旦“寄り道”して、休憩しながらみんなで集まって(暗くなったら)森へ帰る、ということをしているようです。(Q寄り道なんですか?)寄り道ですね。」(「奈良の鹿愛護会」保護教育課長 甲斐義明さん)

甲斐さんによると、鹿たちは日の出とともに奈良公園に“出勤”し、昼間は県庁の向かい側で過ごしているという。「まっすぐ家に帰りたくない」という、まるでサラリーマンのような話は本当なのか。鹿だまりができるまでの鹿たちの行動を追った。

国道を渡って茶店で休憩する鹿たち

午後3時すぎ。日が陰りだすと鹿たちは東へ東へ移動し始める。ここで最大の難関、南北を走る国道169号をどうやって渡るのか。信号が青に変わり人間と一緒に横断歩道を東へと渡り始めた。しかし、中には渡りきれない鹿も。どうするのかと思いきや、車のほうが鹿を待ってくれていた。こうして、渡りきると国立博物館の裏手に出る。

実は寄り道はすでに始まっていて、茶店で入れてもらった水ももらう鹿たち。中には、豪快に蛇口から一気飲みする鹿も…

「毎日同じ鹿が来ていますから。(Q毎日同じ?)はい。顔なじみの子ばっかりなんですよ。」(茶店の人)

さらに東側の池では、ひとっ風呂浴びている鹿たちも。こうして、午後5時前、西日を避け、東へ行きついた先に最後の寄り道先、国立博物館がある。この夏は最高で600頭の「鹿だまり」ができ、一大観光スポットとなった。

死んだ鹿の胃袋から3.2kgのポリ袋

一方で、「奈良の鹿愛護会」のツイッターには、こんなショッキングな写真も投稿され話題となった。原因不明で死んだ鹿の胃袋から、3.2kgものポリ袋とみられる塊が見つかったのだ。

「人が鹿せんべいを(買ったあとに)ビニール袋に入れて、その中に何か入っていることを知っているんです。ビニール自体もにおいがついているので、鹿たちも食べてしまうのかなと思います。」(「奈良の鹿愛護会」保護教育課長 甲斐義明さん)

この投稿写真を見た観光客は…

(女性)「ポイ捨てをするのを見ますね。」
(女性)「その辺に(ごみを)捨てたりするから食べちゃうんやろな。」

7月には、愛護会主催で約130人のボランティアが公園内を清掃した。

「非常に和やかな、鹿が過ごす生活の場でもあるので、鹿たちを大切にしていただければと。」(「奈良の鹿愛護会」 甲斐義明さん)

「鹿だまり」は8月末ごろまで

午後7時、辺りが薄暗くなると鹿たちの「寄り道」はそろそろお開きに…

「山に帰る寄り道だとも言われますけど、安心してこの鹿だまりに立ち寄っていけるような環境をこれからも作っていきたい。」(奈良国立博物館学芸部情報サービス室長 岩井共二さん)

鹿だまりが見られるのは、8月末ごろまで。秋風が吹きだすと今度は「恋の季節」を迎えるという。

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