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 東京電力が、新潟県に持つ柏崎刈羽原発の将来について、新しくて出力が大きい6、7号機の2基が再稼働した後、「5年以内に、1~5号機のうち1基以上で廃炉も想定したステップ」に入ると表明した。

 原子力規制委員会の主要審査を通った2基を動かしたい東電に対し、地元の柏崎市長が、認める条件として残る5基の廃炉計画を示すよう求めていた。その回答が、これである。

 初めて廃炉に言及したとはいえ、計画を示すどころか「まずは再稼働を」と迫るような言いぶりだ。理解に苦しむ。

 6、7号機の審査が大詰めだった2017年、東電が重要施設の耐震性不足をきちんと報告・説明していなかったことが明らかになった。朝日新聞は社説で「原発を運転する資格があるか」と改めて問い、福島第一原発事故への賠償や廃炉の費用は再稼働に頼らず稼ぎ出す方策を考えるべきだと訴えた。

 東電は今夏にも、地震の際に柏崎刈羽原発の一部設備に異常があるとの誤情報を発信し、陳謝している。そこに「再稼働ありき」のような姿勢だ。不信感を抱く住民が強く反発したのは当然である。

 柏崎刈羽の2~4号機は中越沖地震後の12年間止まったままだ。1号機は原則40年の運転期限まで残り6年。これらの再稼働は極めて難しいとみられている。それでも東電が廃炉を確約できないのには理由がある。

 福島の事故で経営が立ちゆかなくなって実質国有化された東電は、国とともにまとめた再建計画で柏崎刈羽の1~5号機も段階的な稼働を想定している。火力発電の燃料費が節約でき、1基で年1千億円ほどの収益改善を見込む。廃炉に動けば再建の前提が崩れかねない。

 温暖化対策として、発電時に二酸化炭素を出さない原発や再生可能エネルギーの「非化石電源」の割合が法律で義務づけられたことも理由にあげる。達成には「現時点では1~5号機は必要な電源だ」という。

 だからといって再稼働を迫るなら筋違いだ。原発は安全対策コストの上昇で、経済合理性からも廃炉の決定が相次いでいる。現実にあわせた再建計画の再考や、将来の電源構成の見直しが必要なのではないか。

 この先、東電の原発をどう位置づけるのか。政府が前面に出て総合的な判断を示し、国民に説明して理解を得るべきだ。

 東電が目ざす6、7号機の再稼働は今後、新潟県柏崎市の同意が焦点となる。地元の判断が大切なのはもちろんだが、東電に限らず原発は「国策民営」が実態だ。自治体任せでは、国は無責任に過ぎる。

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