ARTORIAS OF THE ABYSS 作:キサラギ職員
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その日は、おぞましいほどに美しい白銀の女神が空に坐す天候だった。
さらさらと流れていく風は、その生き物にとっても心地よいもののはずだった。風は植物と、地面と、動植物のにおいを運んでくる貴重な情報源である。一息吸い込めば風上の様子が手に取るように分かる。けれども、いまは、風は不快感を催される要素に過ぎなかった。
狼族は気高く誇り高い種族である。鴉族はグウィンと同盟を組んだが、狼族は決して何物にも従わなかった。深き森の奥で敵を狩り、子を宿し、そして死んでいく。侵入者には容赦もなく牙を剥く。脆弱な肉体を数だけは多い人間たちにとって狼は畏怖の象徴であった。
だが多くの生き物がそうであるように、狼もまた、不死身の生命体ではなかった。病気。怪我。戦い。生命を維持できなければ死んでいく。
そしてここにも、生命を維持できずに、やがて土に還っていく定めの狼がいた。彼女は一族の中でも体が弱く群れから追い出された一匹であった。すぐ傍らには共に旅をしてきた猫がいた。この世の始まりより生き続けているという大猫、アルヴィナである。アルヴィナは狼のすぐそばでじっと身を屈めており、悲しそうな眼をしていた。アルヴィナに医療は分からぬ。ただ狼が息絶えていくのを見守るしかなかった。
狼の足には返しのついた矢が突き刺さっており、それに塗られた猛毒によって今にも心臓が停止してしまいそうだった。真の戦士ともなれば猛毒でさえ受け付けず、深い毛皮で剣も通さなくなるが、小狼では無理難題であった。
狼はきゅうきゅうと鼻を鳴らすと、血に塗れた足に刺さる矢を歯でぐっと固定して、一気に引き抜いた。肉が返しに引っかかりえぐれる。血の流出はますます増大した。
それでも狼は諦めなかった。生きることを決して諦めない。それが狼という種族の誇りであるから。
狼は足を庇いながらもなんとか立ち上がると、ふらふらと歩いていき、小川の水面に顔を寄せて綺麗な水を飲もうとした。無理をするなとアルヴィナが口にしたが狼は首を振った。平衡感覚が遠のきその場に倒れこむ。視界に酷いノイズが走っていた。急速に意識が遠のいていく。痛みさえぼんやりとしていった。狼は、死を意識した。
ふっと視界が暗転した。
アルヴィナが威嚇する声が聞こえた。刹那、意識が凝結した。瞳を開くと、何者かが巨大な月を背景に立っているのが目に映った。アルヴィナは森の暗闇に溶けた。身を隠したのだ。
人二人分はあろうかという背丈。装飾性よりも実用性を取った鈍色に輝く巨剣。背負われた盾は竜の鱗のように逞しい。獣を思わせる兜からは尾のような飾りが伸び、首元はたてがみを彷彿とさせる布が守っていた。
狼は、その者に牙を剥き出した。そして警告の言葉を投げかけた。
巨人は、物言わず剣を大地に突き刺すと、ゆっくりと屈んだ。鎧が干渉してカチャカチャとやかましく鳴った。
相手は手負いとはいえ、狼である。にも拘わらず巨人は狼に手を伸ばした。
狼は残る力を振り絞り巨人の手に噛みついた。鎧は古き鉄を鍛えた高度な産物ではあったが圧力が一点に集中する攻撃には脆い。研ぎ澄まされた犬歯が鉄を破り手に食い込んでいく。巨人は苦痛に悲鳴を上げるかと思われた。
だが巨人は、呻き声一つあげることなく、もう片方の手で狼の咢を掴むと、驚異的な腕力を持って噛みつきを止めさせた。狼の力をもってしても巨人の力は尋常ではなかった。
狼は鼻をすんすんと鳴らして巨人の血を嗅ぐと、鼻面を持ち上げた。
巨人が己の指から流れる血を見つめながらこのような趣旨の言葉を言った。
――我はグウィン王に仕える騎士の一人、アルトリウスである。
狼は鼻でせせら笑った。
――それがどうした。巨人に情けをかけられる由縁はなかろう。
巨人は指に布きれを巻きつけつつ、言葉を続けた。
――縁ならば今できた。助けたいと思っている。
狼は鼻ではなく口で笑った。重傷なため苦しい吐息が漏れるばかりだったが。
暗闇からしみ出すようにアルヴィナが姿を現した。流石の騎士も、犬よりも大きな猫が突如出現するとは思っていなかったのか、兜の奥で感情に波が揺れていた。
アルヴィナは騎士と狼をじっと見つめていた。
狼はがっくりと頭から力を抜くと、目を閉じた。
――好きにしろ。
その日からだった。巨人―――後に深淵歩きアルトリウスの異名をとることとなる偉大な騎士と狼、それから猫の絆は。
なぜ騎士が狼を助けようと思ったのかは定かではない。騎士は他人との交流を好まず只管修行と忠誠の道に明け暮れる人柄であり、可能な限り他者との干渉を避ける傾向にあった。
一人と二匹の仲は潤滑な始まりとは言い難かった。騎士を、猫がひたすらなじった。猫にとって巨人とは世界を治める強大な種族であり常に打算と暴力で他者のものを略奪していく存在でしかなかったのだ。狼は、騎士に助けてもらった恩もあり、猫のように初めから嫌うことはしなかった。
理由の一つに、騎士の人外染みた強さがあった。
騎士はべらぼうに強かった。
騎士は竜狩りオーンスタインのように雷の力を持たない。
騎士は鷹の目ゴーのように遥か彼方の敵を射抜くことができない。
騎士は王の刃キアランのように敵を闇に葬り去る技術を持たない。
騎士が持っていたのは、他者を寄せ付けぬ剣術。そして精神力である。騎士はいかなる攻撃にもひるまず、ひとたび剣を握れば寄る敵全てを切り捨てた。例え竜が相手とて、鱗を断ち、火炎を真っ向から受けながらも肉薄して刺し殺した。相手が巨人とて、胴を膾切りにした。相手が混沌の化け物とて、熱をものともせず内臓を引きずり出した。
騎士は無双を誇った。故に、孤独であった。騎士に友は少なく、敵は多かった。強きものは敵を多く殺してきた者である。殺された側は恨みを抱く。騎士は敵を減らすと同時に増やしていた。
狼は怪我が治ったときに騎士に頼みごとをした。
剣術を教えろと。
騎士は面食らったように沈黙すると、狼が剣術をするなどと曖昧なことを言った。
だが狼は頼みを押し通した。元より騎士は会話が苦手である。狼と、狼の頼みごとを通そうと言葉による援護を行うアルヴィナの言葉を巧みに躱すことなどできぬ。
騎士は折れた。
ある日から、騎士アルトリウスの傍には二匹の動物が付き添うようになっていた。
白い猫。そして大狼である。狼は騎士アルトリウスとよく似た剣術を使うことで知られるようになった。
一人と二匹の絆は、種族を超えたものであった。狼族。猫族。神族。三者共に別の種族であったが、寡黙なアルトリウス、饒舌で皮肉を好むアルヴィナ、“小さき”狼シフは、確かに友情で結ばれていた。
年月が経過した。
騎士アルトリウスは、とある国へと足を運んでいた。すべきことは単純明快。化け物退治。古くより化け物退治は騎士の誉である。
場所は、人間性の坩堝。忌々しきダークソウルの欠片の掃き溜めである深淵に住まう魔物が目を覚まし、魔術の国ウーラシールを飲み込もうとしている。
人間性。それは、最初の火より見出された光や熱とは相反するソウル。すなわちダークソウル。人間だけが生まれ持つソウルである。太古の昔。ダークソウルに魅入られ人の姿を保てなくなった異形に恐れた者たちによって、これらは地下に封じられた。深淵の魔物――『深淵の主マヌス』は、これら人間性に飲まれ醜く変異したたった一人の人間だったという。そう、深淵とは原初から在ったのではなく、やむを得ず作られてしまったのだ。深淵とはダークソウルそのものに他ならない。
深き微睡みから目覚めたマヌスは意識の赴くまま復讐を果たそうとするだろう。誰かが闇を封じなければならない。
騎士アルトリウスは覚悟を決めた。騎士は自惚れてはいなかった。相手は命を懸けなければ倒せない相手であると。
装備を整えた騎士は、猫と狼を連れて戦に出かけた。
ウーラシールの惨状たるや、地獄と表現するのが生易しいほどであった。人間性に蝕まれたウーラシールの民の頭は膨れ上がり皮膚は爛れていた。大地は隆起して建物が崩れかかっていた。
アルトリウスは、辛うじて生き延びた人々から話を聞くことで、状況の把握に努めた。
何者かが宵闇を唆してマヌスの封印を解かせた。深淵が広がった。要約すれば、このようなものであった。
アルトリウスは、マヌスがいると思われる闇に踏み入っていった。
広大な暗闇。人間性に飲まれ異形の化け物と化した元住民らを殺しながら深みへと進んでいけば、そこにいたのは、人間性であった。人間という殻を破り人間性そのものと化した黒い精霊達が佇んでいた。小さいものもあれば、大きいものもある。人間性そのものと化す。それは言うならば闘争本能という概念そのものと化したようである。多種多様な混ざりものこそが人間であり巨人であり神である。単一の要素だけの生命は、生命と呼べるのだろうか?
闇に挑んだアルトリウスであったが、傷を受けてしまった。闇は深い。限りなく続く回廊と、異形の化け物、人間性と成り果てて恐怖も喜びもなく生命力を奪い取ろうと肉薄してくる元人間たち。アルトリウス。そしてシフは疲弊し、傷ついていた。戻ることも叶わない深い闇の中で一人と一匹は寄り添いお互いを守っていた。
人間性の闇に精神を蝕まれぐったりとして動かないシフ。アルトリウスはシフを抱え込むと、洞窟の隅の方へと連れていき、加護の込められた大盾を傍らに置いた。跪き、手を宛がうと、結界を構築する祈りを捧げる。ダークソウルに抗うための白教の力を込めて。術は盾を憑代にしてシフを魔法陣に囲い込んだ。
アルトリウスは、たとえ人間性の精霊にも発見することのできない隠匿の術を持つアルヴィナに、誰か助けを呼んでくるように頼んだ。ここは深淵の穴。都合よく誰かが通りかかるなど考えもしなかったが、深淵の魔物へ挑みかかるよりも遥かに勝算はあろう。
そして、アルトリウスは傷を負い、守りの盾を友のために残して、深淵の魔物の元へとたどり着いたのである。
無双を誇るアルトリウスとて闇の圧力の前には苦戦を強いられた。粘つくコールタールのような深淵の体液が鎧を穢していく。人間性の闇に仮初の意識を持たせた弾丸が放たれるたびにアルトリウスの肉体は傷ついた。マヌスの杖が振るわれれば、あろうことかアルトリウスは怯んでしまった。恐怖。狂気。心身ともに摩耗した彼はしかし闇に屈することなく立ち向かった。荘厳な飾りもなければ加護も持たぬ一振りの剣―――かつて砕け打ち直されたそれ――だけを頼りに、攻撃を続けた。
マヌスが放った深淵のヘドロをまともに受けた彼は、その泥を振り払うように頭を薙ぎ、背中に担いだ剣を腰の反動で跳ね上げると、地を蹴り空中で一回転しつつ闇の魔弾の弾幕を掻い潜り、もはや動かなくなった左腕を庇うことさえせず右腕に全力を注いで剣をマヌスの脳天目掛け振り下ろした。
マヌスの角とも髪ともつかぬ灰色の物体が欠けた。だがそれまでだった。刹那、マヌスの左腕がアルトリウスをがっちり捕縛するや、表面にびっしりと並んだ穢れた歯で弄り倒し、投げた。優に家三軒分の距離を飛んだアルトリウスは受け身をとり、剣を杖の代わりに立ち上がろうとした。
またも魔弾が周辺から染み出るとアルトリウスに殺到する。躱す暇も無く受けてしまった。彼は血反吐で兜を濡らしながら、大地を転がった。手から離れた剣が緩やかに回転して深淵の大地に垂直に刺さった。
アルトリウスに意識はなかった。目前に迫る深淵の魔物の魔力に前後不覚となっていた。決して怯まず剣を振るえば無双を誇ったという騎士が跪いていた。まるで佩剣式の如く。
マヌスが口を開いた。果たしてそれは言語という種別の情報伝達手段かもわからない。騎士にだけにしか聞こえない言葉である。闇に飲まれなければ聞くこともできない言葉である。
アルトリウスが面を上げた。
全身を深淵の穢れに濡らした騎士アルトリウスが帰還したという知らせを聞いて生き残った住民らが集まってきた。
騎士アルトリウスの姿を目にした皆は息を呑んだ。左腕は力なく垂れ、鎧は傷つき、凹んでいた。彼自身も歩くたびに足元が揺らめいていた。
高名な騎士アルトリウスが、帰ってきた。人々は歓声を上げて駆け寄った。
―――粘つく液の滴る剣が一閃された。
纏めて数人の人間の上半身と下半身が泣き別れた。
唖然と立ち尽くす住民らに騎士アルトリウス―――否、深淵の魔物の手先と化したアルトリウスが、獣の咆哮をあげて襲い掛かった。
アルトリウスの攻撃は無差別であった。理性を失い、深淵だけを糧に生きる化け物と化してしまったからだ。深淵の闇の影響で変異した化け物だろうが、人間性の精霊だろうが、無差別に殺傷した。目的はただ一つ。
――人間性を求めよ! ――人間性を捧げよ!
彼自身は人間ではない。ダークソウルを持たない巨人である。しかし、深淵の主マヌスは人間性を欲していた。彼は深淵の魔物と契約した。人間性を奪い、主人にもたらすことを生業としたのだ。皮肉なことに彼がかつて討伐の対象としていたダークレイスそのものに堕ちたのだ。
アルトリウスは傷ついていた。そして彼は何者かの誘導により闘技場へとやってきたのであった。かつて、この場で兵士を選別する儀式が行われていた。
アルトリウスは異形を見つけた。右腕一本で巨剣を掲げると、大地を蹴ってとびかかり、勢いに任せて刺突する。一度で死にきれず化け物が呻いた。アルトリウスは剣を大地に刺さるまで押し込むと、ぐりぐりと傷口を広げた。
つい、と顔を上げた彼の姿に理性など無かった。彼は新たなる獲物を見つけたのだ。
闇が渦巻き砂埃を巻き上げた。
彼は獲物を剣で救い上げ軽い身のこなしでしょい込めば、咆哮に乗せて、死体を投擲した。
シフは、救いを求めていた。
アルトリウスの大盾が傍らにあり、結界を張っていた。人間性の精霊たちがシフの生命力に吸い寄せられて結界の周囲に集まっていた。盾の加護は強大であり人間性は近寄ることができないでいた。代わりに盾は徐々に力に食い荒らされ穴あきになっていた。
早く、アルトリウスの応援に向かわねば。
シフは理解していたのだが、体が動かなかった。愛する友を助けるには体が重すぎた。毛皮は固すぎた。大気は粘り気が強すぎた。
猫の鳴き声がした。
目の前に誰かが立っている。風変わりな出で立ちをした人物である。性別は分からない。だが明らかににおいが違った。深淵でもなければ、森でも、ウーラシールのものでもない、どこか別のところの空気のにおいがした。
人物は人間性をあっという間に追い払うと、じっとシフを見つめていた。
シフは感謝の遠吠えをするとその場を去った。
深淵の魔物は祓われた。
未来からやってきた一人の英雄の力と、騎士アルトリウスという稀代の戦士の犠牲によって。
真実を知るものは僅かである。知るものも年月という波の前に消え去っていった。
ウーラシールは滅んだ。だがウーラシールの姫は救い出された。伝承によれば騎士アルトリウスが姫を救い出したという。経緯はさておき、彼は身を犠牲にして深淵を封じたのだ。彼は深淵を歩いたものとして異名を頂いた。それは紛れもなく彼の生涯を示していたであろう。
――深淵歩きアルトリウス(ARTORIAS OF THE ABYSS)。
――深淵のアルトリウス。
これが、彼の墓石に刻まれた、称号である。
――――そして、数百年という月日が経過した。
シフはかつてアルトリウスが散ったという闘技場にほど近いところに建てられた彼の墓場――ただし遺骨の類は無く――を守り続けていた。彼の遺品である巨剣を咢で操って、不届きものを排除してきたのだ。アルヴィナも協力していた。二匹にとって、アルトリウスの墓場は掛け替えの無い場所だったのだ。
来る日も来る日もシフは侵入者を下してきた。
いつしか墓場には卒塔婆のように侵入者の武器が刺さり転がるようになった。
アルトリウスを慕い、彼の墓石の傍に埋葬された戦士たちとともに、シフは過ごした。
アルトリウスという英雄の墓には多くの副葬品があった。盗賊団がやってきて奪い取ろうとしたこともあるが、シフは卓越した剣裁きでことごとく蹴散らしていった。もはや伝えるものがシフしかいないアルトリウス直伝の剣術である。
――その日も、満月だった。
暗月の神の微笑みさえ感じられる丸い衛星が空に浮かんでいた。
不届きものがやってきた。シフは匂いと目で感じ取った。森の封印を解いてアルヴィナが放った一団を掻い潜ってきた奴がいるのだ。シフは怒った。どうして人間という種族はこうも不敬を働くのかと。
シフは、風下からじりじりと接近すると、不届きものが墓石の前に刺さっている剣に近寄るのをじっと観察していた。
その者が剣に触れようとした頃を見計らい、月を背景に睨みを利かせる。引き返せば害は与えない。引き返さず墓場を荒らそうとするから始末しなくてはならない。
――だがシフの鼻腔に薄い痛みが走った。昔嗅いだことのある懐かしい香り。追憶である。
シフは、不届きものに近寄ると、足で胴体を大地に括り付けてにおいを嗅いだ。宝石のようにきらきらと輝く双眸で凝視した。記憶が蘇ってきた。忘れもしない。人間性の精霊に囲まれ身動きの効かなかったときに助けてくれた人だった。
シフは葛藤した。人物は恩人なのだ。人物がいなければ深淵の魔物を打倒することはできなかったであろう。しかし、人物は墓場を荒らしに来た。シフは人物を見つめたまま固まった。
人物が鼻を撫でようと手を伸ばす。
シフは顔を背けた。もし撫でられたら甘えたくなるかもしれない。例え恩人でも、殺すべき相手でしかない。シフにとって墓場を守ることは亡きアルトリウスとの友情を守ることと同意義だった。
空に浮いた憎々しいまでの月を背景に、シフは、ないた。
声高らかに、空に響き渡る済んだ声で、ないた。
人物を見ないように目を閉じると墓石まで緩慢な足運びで近寄っていけば、アルトリウスの剣を大地から引き抜いて水平に構え、人物に敵対の意思を見せつけた。
剣を逆向きに構えなおせば、人物が去るのを期待した。
人物が武器を抜いた。
シフは人物へと襲い掛かった。
よろしい、ならば、汝はこれより深淵の剣となる………。
誓約「深淵の騎士」
「深淵の主マヌス」との誓約。
かつてマヌスは人間であったが、人間性の闇に飲まれ異形と化した。
誓約者達は人間性を求め闇へと染まっていく。
あるいは、人間性こそが人間の証明なのか。
※こんな誓約ありません※