<社説>ピンクドット沖縄 人権守る社会を目指そう

 LGBTなど性的マイノリティーを含む全ての人を受け入れ、差別や偏見にさらされずに暮らせる環境をつくろうという機運が高まってきたと言える。

 本紙が実施した県内41市町村へのアンケートで、性的少数者に関する施策、行政サービスの必要性について「感じる」「ある程度感じる」との回答が合わせて28自治体となり、約7割となった。那覇市が導入する同性パートナーシップについては石垣、浦添など7市町村が「検討している」と答えた。県内自治体で関心が高まっている様子がうかがえる結果となった。
 県内では那覇市が先駆的な取り組みを進める。2015年に全国で2番目の「性の多様性を尊重する都市・なは宣言」(レインボーなは宣言)を出し、16年に戸籍上の性別が同じカップルを結婚相当の関係と認める「同性パートナーシップ制度」を導入した。浦添市は「性の多様性を認め合うまち」を宣言した。性的少数者の人権を尊重する動きは広がりつつある。
 ただ、当事者にとっては今も社会に差別や偏見が残り、カミングアウト(告白)しにくい現状がある。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った日本の学校でのLGBTの子どもに対するいじめ調査では、当事者の86%が「オカマ」といったLGBTへの暴言を、教師や児童・生徒が言うのを聞いたことがあると回答した。中でも「教師が言うのを聞いた」は29%に上った。
 子どもの頃から周囲との違いに悩み、侮蔑的な言葉を吐かれることがどれほど心を傷つけるか。長じても就職などで差別を受け、愛し合っていても同性パートナーとの結婚は認められない。
 差別や偏見は、それをなくすべき国会議員からも頻発する。決定的なのは昨年、自民党の杉田水脈(みお)衆院議員による月刊誌「新潮45」への寄稿であった。杉田氏は「『LGBT』へ支援の度が過ぎる」と題し、LGBTのカップルについて「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と切り捨て、行政が支援策を取ることを批判した。その後も自民党の国会議員からLGBTへの差別発言が相次いだことを考えると、社会の差別や偏見は根強く、この状況を変える道のりは遠いと言える。
 LGBTの人たちが生きやすい社会とは、障がいのある人や外国人など少数派と言われる人を含め、全ての人の人権が守られる社会ということだろう。誰もが生きやすい社会を目指す「ピンクドット沖縄2019」が1日、那覇市で開かれる。09年にシンガポールで始まったピンクドットは13年に日本で初めて沖縄で開催され、企業や団体の輪が広がっている。
 人が個性と能力を十分発揮し、互いを認め合う社会へ。身近な問題として考え、思いを共有したい。